最初は敵として出てくるタイプの魔法少女   作:てんぷらのちぎり

15 / 15
十五話目 そして魔法少女は二人になる

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 見知らぬ部屋。白い部屋。

 私は天ケ瀬さん達の組織が所有している建物に軟禁されていた。

 

「では、全て自分の意思で犯行を行ったと?」

「はい」

「父親に脅されていたりは?」

「していません。パパは……私に期待なんてしてなかったから」

 

 決まった部屋、決まった時間に事情聴取をされるだけ。

 食事はきちんと出されているし、聞けば学校の様子とかも教えてくれる。

 どうやら、今は私は風邪を引いて休んでいることになっているみたい。

 

「……頑なだな」

「本当のことですから」

「自分から捕まってくれたのにか?」

「はい。私の目的は、達成されたので」

 

 あの日、研究所が倒壊した後。

 私は、天ケ瀬さん達に投降した。

 パパが目的を達成して、研究所もなくなった。

 もう、私が戦う意味はなくなったから。

 

「……一言、君が父親のせいでしたと言ってくれれば。解放できるんだが」

「嘘を言う気はありません」

 

 今私を尋問しているのは、天ケ瀬さんのお兄さんの、天ケ瀬良助さん。

 根が真面目で優しい人なのが質疑応答から伝わってくる。

 何とかして、私を解放しようと、答えを誘導しようとしてくるから。

 

「困ったな。マギデバイスも君専用で、他の人には使えない。かといって、従順な君を捕まえておくのは、リソースが無駄になるんだが」

「そういえば、私が嘘を言うとお思いですか」

「――言わないだろうな。君程自責心が強い子は早々いない」

 

 自責している。

 それは、当然のことだ。

 私はパパの言うがままに、非道を行った。

 天ケ瀬さん――小春ちゃんを、殺そうとした。それも、何度も。

 

 許されるわけがない。許されていいわけがない。

 私は罰を受けるべきなのだ。

 

「なら、早く裁いてください」

「だがなぁ。今回の件を司法に持ち出すのもできんし、真っ当な法で君を裁くことはできないんだ」

 

 黒鎌の魔女の一連の事件は、闇に葬られることになったみたい。

 真実を知らせることの社会的影響を考慮した結果、らしい。

 一人の科学者が、国家的な犯罪を起こせてしまう事実は、あまりにも不都合だとか。

 

 そうだよね。

 たった一人の手によって国家が脅かされるなんて。

 あってはならないことだ。

 

「だからこそ、私は裁かれなければならないんです」

 

 そう。だからこそ、私は許されてはいけない。

 私のしたことの大きさを把握しているからこそ。

 どうか、許さないでほしい。

 こんな邪悪を、許してはいけない。

 

「……はぁ。この手は使いたくなかったが」

「何ですか?」

「入ってくれ、小春」

 

 ……え?

 ひょっとして、ここの壁って。

 向こう側から見えるタイプの壁だったりする?

 今までのやり取りは全部見られてて聞かれてるみたいな。

 ちょっと、それは想定してなかったかも。

 

 部屋の戸がノックされる。

 お兄さんが立ち上がって、そっと扉を開ける。

 そこには、小春ちゃんが立っていた。

 

「結奈ちゃん」

「天ケ瀬、さん」

 

 数日ぶりにみた小春ちゃんの姿は、まるで変わらない状態で。

 でも、とても悲しそうな表情をしている。

 

「聞いたよ。もう一週間もずっとこうしてるって」

「……」

「ねぇ、どうして? 結奈ちゃんは悪くないよ」

 

 小春ちゃんはこういってくれるけれども。

 私は、私を許せない。

 パパの悲願を叶えるために、私は全てを犠牲にした。

 その犠牲には小春ちゃんも含まれるところだった。

 

 なのに、どうして。

 どうして小春ちゃんは、そんな顔で私を見るの?

 

「逆に、どうして天ケ瀬さんは私を許せるの?」

「え?」

「私は……天ケ瀬さんを。アークライトを、何度も殺そうとしたんだよ?」

 

 小春ちゃんが生きてるのは偶然に過ぎない。

 本当に、道中で死んでいてもおかしくはなかった。

 そのぐらいの攻撃をしたし、殺すつもりでもあった。

 知らなかったとは言え、到底許せることではない。

 

「許すよ!」

 

 はずなのに。

 

「私は! 結奈ちゃんを許すよ!」

 

 どうして、あなたはそうやって一歩を踏み出せるの?

 

「どうして?」

「だって、今こうしていられているから!」

 

 言いながら、彼女は私の手を取る。

 

「私は死んでない。結奈ちゃんもこうして生きてる。それが全てじゃ駄目?」

「駄目……じゃないけれど」

「それに、結奈ちゃんがここにい続けると、お兄ちゃんたちが少し困ることになるんだよ」

 

 私がいることで困らせてる?

 それは、問題だ。

 

「だから、ほら! 私と一緒に魔法少女、しない?」

 

 ……うん?

 話の流れが、いきなり変わった気がする。

 

「お兄ちゃん曰く、今後もあの怪物が出てくる可能性があるの」

「それで、私を?」

「うん。一緒に戦ってほしい」

 

 でも、私がもう一度マギデバイスを手にするだなんて……。

 お兄さんが、深くため息を吐いた。

 

「君が父親に操られているのであれば、責任問題として君に咎はない。だから、マギデバイスを再び手にしてもらうことも可能になるんだ」

「お兄ちゃんは遠回しすぎるの!」

 

 私が、もう一度戦う?

 あの怪物を倒すために?

 

「……それは、パパのせい、なんだよね」

「まあそうなるな。枢木櫃間博士の研究の名残ともいえるだろう」

「そうだよね」

 

 ……パパは、ママに会えたんだろうか。

 話を聞いた感じ、次元間ポータルからあの怪物が出てきたのなら。

 パパは、あの怪物に殺されたのだろうか。

 

「……これは私の憶測なんだが」

「お兄ちゃん?」

 

 何だろう。急に。

 

「君のお父さんは、生きている可能性がある」

「っ!? それは、どういうことですか」

「櫃間博士がポータルに入った直後、ポータルで激しい変色が起こった。あれはつながった次元が変わったという仮説が立てられる」

 

 つまり、怪物が出てきた次元と、パパが向かった次元は別ってこと……?

 それなら、パパは無事にママと出会えた可能性も、ゼロじゃないってことだよね。

 胸につっかえていた何かが、ポロリと取れた気がした。

 

「……もし」

「もし?」

「私にできる罪滅ぼしが怪物退治であるならば」

「やってくれると?」

 

 黙って頷く。

 もしも、私のしたこと全てが無駄ではなかったのなら。

 そう思えるのなら。

 少しは、前を向いてもいいのかもしれない。

 

「じゃあ! 私と一緒に魔法少女だね!」

「……なんで魔法少女なの?」

 

 これはずっと気になっていた。

 私は魔法少女を名乗ったことはない。

 マギデバイスを使って魔法少女を名乗り始めたのは、小春ちゃんが初めてだ。

 

「だって、魔法少女はみんなを救うヒロインなんだよ! 私たちにピッタリでしょ?」

 

 花咲くような笑顔で、彼女は答えた。

 ああ、何というか。

 想像通りだ。

 

「あ、でも魔法少女をやるなら、名前が必要だよね。私がアークライトだから――」

「カローン」

「え?」

 

 名前なら、決まっている。

 あの日に、決めた名前が。

 

「私の魔法少女の名前は、カローン」

 

 これは冥府の船の渡し守の名前。

 立ちふさがる者どもを、まとめて。

 冥府と現世を明確に隔てる、番人として。

 私は、魔法少女になる。




一旦これで一区切りです。続きを書くかは……まあ未定という事で。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

機械仕掛けのTS魔法少女さん(作者:匿名希望)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

命懸けで魔女と戦う魔法少女達のピンチに颯爽と現れる『機械仕掛けの女神様』。どんなバッドエンドも喜劇に変えてあげます。ただし、その輪の中に主人公は含まれないし、魔法を使う度に人間性が削られるものとする。


総合評価:987/評価:7.92/連載:6話/更新日時:2026年07月07日(火) 07:05 小説情報

TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる(作者:辻契約マスコット)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 悪の組織『シン・アーク』と魔法少女達が日夜戦う世界にTS転生した光の魔法少女オタク(自称)は、ある日悪の組織に連れ去られ、洗脳悪堕ち魔法少女にされてしまった!▼ 一方その頃、彼/彼女の今世の義妹はマスコットと契約し、魔法少女として戦う覚悟を決める。▼ これは、愉快な悪の組織の洗脳悪堕ち魔法少女と、愉快なニチアサ風光の魔法少女の、姉妹の戦いのお話し。


総合評価:1378/評価:8.28/連載:6話/更新日時:2026年07月11日(土) 21:51 小説情報

推しの魔法少女を助けたいTS転生魔法少女(作者:きし川)(オリジナル現代/冒険・バトル)

生前、途中で視聴をやめてしまった魔法少女作品の世界に女の子として転生した男は視聴をやめる原因となった推しを助けるべく魔法少女となって戦う。


総合評価:382/評価:8/連載:5話/更新日時:2026年07月19日(日) 05:43 小説情報

ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない(作者:なはた)(オリジナル現代/冒険・バトル)

▼フィジカルよわよわなTS銀髪魔法少女がクール系敵幹部を必死に装いながら魔法少女達と戦うお話。


総合評価:3092/評価:8.41/連載:13話/更新日時:2026年07月15日(水) 12:37 小説情報

魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう(作者:偽りの名つむぎん)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 白銀アオイは魔法少女の幼馴染だ。ある日、魔族に襲われて死んだ白銀アオイは、卑弥呼という組織に悪の魔法少女として改造されてしまう。▼ 死んだし、大した目的もないから、悪の魔法少女ムーブしまくるか!!▼ そんな軽いノリで悪の魔法少女ムーブを始めたら、魔法少女は曇るわ、脳を焼かれるわ、おまけに物語の本筋まで変わっていくわ。▼ 自分が世界に大きな影響を与えていると…


総合評価:1857/評価:8.19/連載:11話/更新日時:2026年03月21日(土) 20:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>