世界ネフリティスのとある島にて平和に暮らしていた少年、アルマ。不便でも家族で笑いあえる日々だった。
そんなある日のこと、アルマに悲劇が降りかかる。
※一次創作の主人公の過去の話です。残酷な描写があります。

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一次創作の主人公、アルマの過去の話になります。



第1話

世界、ネフリティス。この世界に複数存在する大陸や島。フェガロペトラ大陸を中心としてそれらは存在していた。

 内、フェガロペトラ大陸より南西に存在する諸島。

そこはピスティス諸島と呼ばれていた。大小様々な島が連なっているところで、小さい島でも少人数の人は住んでいた。その中にひっそりとある小さな名も無き島。

 その島に住むとある家族の話。

 その島にいるのは不思議な力を扱う不思議な家族。

 曰く、『見えぬ隣人』と暮らしている。

 その家族は父、母、2人の息子がいた。父は口数が少ないが、優しい性格で穏やかな表情で子どもと妻を見守っていた。

 母は天然だが明るく、いつも周りを照らしてくれる光のような存在であった。

 2人の息子のうちの兄は、のんびりしているところはあるが手先が器用でちょっと複雑なものでも作り上げてしまう子だった。

 弟は、引っ込み思案なところはあるが周りに気遣い気配りのできる子どもだった。

 弟――名前はアルマ。アルマは家族が大好きで、『見えぬ隣人』こと精霊たちも大好きであった。心優しい所を精霊たちも気づいており、精霊たちもまたアルマやその家族を愛していた。

 この島には大きな街というものは存在していない。もしそのようなところに行くのであれば、船や隣人の力を借りて比較的大きな島へと渡る必要があるのだ。

 便利に溢れているわけでは無いとはいえ、アルマも家族もこの島が大好きだった。不便さもまた捉えようなのだろう。

 そんなアルマの家族だが、全員が幻想種イリュジオンという種族であった。この種族はほかの種族には見えない『精霊』と契約を結び、共に戦う種であった。そして全員がオッドアイである。目の色によって扱える精霊や技が異なる。

 アルマの父は炎の精霊に強く愛されていた。猛々しい炎から静かな優しい炎まで様々。

 アルマの兄――ライルは元素系の精霊ではないが、特殊な精霊に愛されており、比類なき才能を有していた。

 母は様々な精霊に愛されていたために、生活の色々なところで精霊たちが手助けをしてくれていた。

 そしてアルマは、炎の精霊に愛された父と、様々な精霊に愛されていた母の間の子であるがゆえなのか、とても精霊たちに可愛がられてきた。

 都会のような刺激的なものは無いかもしれない。それでも、家族仲良く不自由すらも楽しめるこの環境は、かけがえのないものだった。

 

 そんなとある日。

「待ってよ、ライル兄ちゃん!」

 走りながらアルマは言う。この時のアルマは10の歳を迎えていた。追いかけくるアルマの方へゆっくりと顔をライルが向ける。

「ん〜?どうしたの、アルマ?」

 大きなカゴを背負ったライルが返す。アルマは頬を膨らませて答える。

「薬草採取、僕も連れてってくれるって言ったじゃん!」

 ライルは頭をかいていた。

「え、そうだっけ?」

「忘れてるし!兄ちゃんが言ったのに!」

「ごめんごめん、まだ始まってないから許して〜」

 そんなふうに和気あいあいと話していた。

 そして、アルマがライルに聞く。

「今日は何を採りにいくの?」

 ライルが空を見上げながらのんびりと答える。

「え〜っとねぇ、アンフィス草とスズナリ草かなぁ」

 それを聞いたアルマの目が輝く。

「え!アンフィス草?!やりたいやりたい!」

 ぴょんぴょんと跳ねて元気よく主張する。が、ライルはそんなアルマのおでこを小突く。

「だ〜め。アンフィス草は危ないから、アルマはスズナリ草を採って」

 小突かれたおでこを押さえながらむくれるアルマ。

「僕できるよ!本で見たもん!」

 ライルはアルマの頭を撫でて言う。

「手が痛くなるよ。アルマは手が綺麗なんだから、大事にしないと」

 むう、とアルマは頬を膨らませる。

「男の手が綺麗って意味ないんじゃない…?」

 ライルはにやりと笑みを浮かべる。

「そんなことないよ〜(棒)」

 明らかに棒読みで言う。何かと理由をつけて触らせない気が滲み出ていた。

「あー!兄ちゃんが誤魔化してる!」

 ぽこぽことライルを軽く叩くアルマ。ライルは笑いながら薬草の生えている場所へと向かった。

 しばらく談笑しながら道を歩くと、森があった。木々が鬱蒼と茂っており、光が木の葉で遮られている。少し視界は悪いが、まだ朝方ということもありそこまで暗くはなかった。

 ライルはキョロキョロと辺りを見渡している。そして、声を出す。

「お、スズナリ草みっけ」

 薄いピンクの花を鈴なりにつけている花がいくつか咲いていた。そしてアルマの頭をポンポンと軽く叩くと、

「ほら、スズナリ草の採取頼んだよ」

 と言う。アルマはスズナリ草の近くまで小走りで駆け寄り、しゃがみこむ。

「兄ちゃん!どれくらい採ればいい?」

 と、アルマが聞くとライルは少し考えて、

「んー、30くらいかな……あ、1箇所から集めちゃダメだよ、色々なところから採ってね」

 1箇所からだけだと、その場所の繁殖を薬草たちが辞めてしまう。バランスよく取るのが薬草摘みの基本であった。そんな話を本で読んでいたアルマは元気よく返事をした。

 少し時間が経った頃。アルマは目標の本数までスズナリ草を摘み、ライルを探した。森の少し奥へ行くと、手袋をしていたライルがしゃがみこんでいる。

「兄ちゃん、スズナリ草採れたよ」

 その声にライルは振り向き、にっこり笑う。

「お〜、早いねぇ」

 アルマはえっへんと胸を張る。

「もちろん!ちゃんと予習はしてるからこれくらい余裕だよ!」

 ライルも立ち上がる。

「こっちも大体いい量採れたから、引き上げるか」

 と、膝下に付いていた土を払う。

 その後、談笑しながら帰路に着いた。

 家に帰ると、父と母が話していた。そして、扉の開く音を聞いてふたりが音の方をむく。

「……戻ったか、おかえり」

「あら、早かったわね〜!どう?採れた?」

 父はいつも通り物静かな対応で、母は明るく話しかけてくる。

 ライルは手袋をくずかごに捨て、アルマの頭を撫でた。

「いやぁ、助手くんが優秀でね〜、スムーズに終わったよ」

 アルマは嬉しそうにほくそ笑んでいた。

 決して裕福とは言えないけれど、暖かい家庭だった。家族みんなで協力して、互いを認めあって生きていく。

 都会のような便利さはなくとも、アルマの一家はそれで良かった。

 平和であれば、良かった。

 ――――平和であれば、良かったのに。

 

 そんな当たり前の日常が続いたある日の夜のことだった。

 アルマは夜中に目を覚ました。

 なんてことはない、ただ急に覚醒したと言うだけ。

 アルマは窓の外を見るが、外には星が瞬いていただけだった。

 どうやら今日は新月なのか、月は見当たらない。

 アルマは軽く伸びをする。

 少ししてから、下の方で物音がした。

 時計というものが暗くて見えないので、今が何時かは分からない。ただ、ガタン。という音がしたので、アルマは気になってベッドから飛び降りる。

 精霊の力を借りて、ぼんやりとしたあかりを作り出し、部屋の外へ出る。

 アルマのいる2階も、1階の方も明かりはついていない。明かりがついていないということは、もう母も父も寝静まっている頃なのだろうと思った。

 魔物でも入ってきてしまったのだろうか。

 一応、ライルのいる隣の部屋をノックしてみる。

 中から音はしなかった。さすがに兄も寝ているのだろう。

 ここら辺ではそんなに危険な魔物はいないが、一人で行くのは少しだけ不安だった。

 しかし、兄や母達を起こすのも何というか、気が引ける。

 アルマは意を決して下へ降りる。

 暗い階段なので、踏み外さないよう慎重に足を出す。

 ぎし、ぎしと木が軋む音がする。

 そして1階へと降りる。アルマは大きすぎない声を出す。

「誰かいる……?」

 そして、1階の扉を開ける。

 開けた時、嫌な臭いがアルマの鼻を突く。鉄錆と木の混じった臭い。暗くて当たりは見えない。

 ぼんやり照らしているあかりを足元に飛ばす。

 どす黒い何かが足元を埋めている。

 1歩、踏み出すと木の軋む音と同時に足に何かが付く。

 変に生ぬるくブヨブヨした何かと、湿っている何か。

 アルマの背中に悪寒が走る。嫌な臭いと気色の悪いなにかの感触。アルマは、恐る恐る明かりを前方に飛ばすと、そこには

――――ズタズタに引き裂かれ、原型を留めていない大きな赤黒い塊が落ちていた。

 臭いはそこからきている。

「ひっ…………?!」

 声を出そうとしたが、喉で詰まり短い音が出る。

 そして、家の入口の扉を見ると、誰かが立っていた。ぼんやりした明かりで見えたのは、

 ――――――――兄の、ライル。

 目を細めてアルマを見ている。そして、ライルはそのまま煙のように消えてしまった。

 何が起きているのかまだわかっていない。だが、先程見えたのは兄だ。混乱する頭で赤黒いそれに近づくと、顔が見えた。

 ――父と、母。

 苦悶の表情で息絶えている。顔は残っているのに、身体は原型を留めていない。

 あまりに無惨な光景に、アルマはその場で嘔吐する。

「なんで、なんで、なに、なんで??」

 意味がわからない。目の前にあるこれはなんなのだ。理解ができない。理解したくない。

 アルマは頭を抱えてガタガタと震える。

「違う、ちがう……、これは夢、夢、ゆめ、だよね?こんなはずない、ちがう、夢、ゆめ…………」

 頭の中が解けないコードのように滅茶苦茶になっている。言葉すらも覚束無い。

 アルマは頭を掻きむしる。

「いやだ、お父さん、お母さん……?違うよね、ゆめだよね??」

 再び塊を見るが、何度見ても夢は醒めない。

 鉄錆と生臭い空気は拒絶してもアルマを包む。

 アルマの精神が限界を迎えかけた時、声がする。

「これは……?きみ、大丈夫か?」

 アルマは開ききった目を声のする方へ向ける。そこに居たのは大きな帽子を被り、夜空のような瞳を持った女性が立っていた。

「え…………?」

 女性はアルマに駆け寄る。そして、塊を見る。

「なにか酷い臭いがしてきたから、気になって来てみたが……なんだ、これは」

 今の状況の理解を拒んでいるアルマを見て、女性は

「君は、少し外に出ていた方がいい。ここにいては危険だ」

 そう言って、アルマを家の外へと連れ出し、少し離れたところで座らせる。

 アルマは呆然としていた。

 どれくらいの時間が流れたかは分からない。アルマは依然として呆然と座っていた。

 そこに女性が現れる。

「とりあえず、亡骸は弔わせてもらった。……大丈夫かい?」

 アルマは消え入りそうな声で呟く。

「夢…………だよね……?」

 虚ろな瞳のまま、聞いた。

 女性は静かに首を振る。

「受け入れたくはないだろうが……夢ではなかったよ」

 その言葉を聞いたアルマは虚ろな目のまま、涙を零し始めた。

「どうして……?」

 ボロボロと大粒の涙を零す。

「僕たちは、何も悪いことなんてしてないのに……」

 女性はアルマにかける言葉が思いつかなかった。

 ただ、アルマは泣くことしか出来なかった。目の前で見てしまったものを、理解するのは簡単なことではない。受け入れ難い事実を、目にしてしまったのだから。

 

 どれ程の時間を泣いていたのか。他にも食べることもできず、何も飲むこともせずに朝日が2回ほど登った頃。

「…………喉、乾いた……」

 アルマは小さく呟く。

 女性はずっとアルマの傍にいた。ようやく発した言葉を聞き逃さなかった。

「……少しは落ち着いたか?」

 そう言いながら、水をアルマに渡す。アルマは小さく頷くと、水を受け取り飲み干してしまった。

 ずっと泣き続け、身体の水分が枯れてしまったことでようやく涙も止まった。それまでは泣いていて、状況を知ることすら出来なかったから、女性はゆっくりと口を開く。

「……何があったのか、聞かせては貰えないだろうか。

 いや、思い出したくないのなら、問わないが……」

 アルマは遠くを見つめたまま、首を振る。

 そして、ぽつりぽつりと話し始める。

「夜にね、目が覚めたんだ。いつもは目なんか覚めないんだけど……。下から、音がしたんだ。それで、部屋を出たら明かりが点いてなくて。兄ちゃん呼んだけどいなくて。

 ……怖かったけど、下に、降りた。そしたら……

 そしたら、お父さんと、お母さんが…………

 兄ちゃんが居て、消えた……」

 あったことを見たありのままに紡ぐ。正直、文をなしている状態では無いが、それは精一杯のアルマの言葉だった。これ以上詳しくは、あまりに酷と言える。

「……そうか」

 女性は考え込む。アルマは、俯いて塞ぎ込む。

「状況からして、君の兄が両親を手にかけたとしか思えないが……何せ私は事後を見たに過ぎないからな。判断はつけにくいが……」

 と、女性は呟くと、

「兄ちゃんだよ」

 と被せ気味にアルマは言う。

「え?」

 女性は弱々しい声とは違うアルマの冷たい一言に驚く。

「あんなの、兄ちゃんしかいない」

 冷たい言葉から、棘のような言葉に変わる。冷たいが、怒気をはらんでいた。女性はアルマの顔を見る。

 女性の背筋に嫌な汗が流れた。

 アルマの目は、怒りとも悲しみとも捉えられない苦々しく歪む目をしていた。

「なんで……だよ」

 悔しさなのか、それとも怒りなのか。アルマは震えるほどに手を握りしめていた。

「少年…………」

 こんな小さな子どもが、怒り狂っている。それも、軽い怒りじゃない。激しい憎悪を持った怒り。

「……絶対許さない、でも……」

 憎々しげに言葉を吐くが、語尾が弱くなる。

「……今の僕じゃ、何も出来ない……」

 アルマは悔しそうに涙を流す。強く握りしめていた手からは、血が流れていた。

 女性は少し考え込み、口を開く。

「……少年、君が本気で兄に復讐したいと望むなら……」

 その言葉を聞いて、アルマは女性の方を向く。

 目には涙を湛えているが、眼差しは怒りに満ちていた。

「……私が力を貸そう」

 力を貸す、その言葉にアルマは目を見開く。

「……どういう、こと?」

 女性は重々しい雰囲気で言葉を紡ぐ。

「私はね、本気で望む者たちに望むものを与えられるんだ。君が本気で兄に復讐したいのなら、復讐する為の力を与えられる」

 この提案は、あまりに都合が良すぎるのかもしれない。だが、そんなことは今のアルマには些事でしかなかった。

 アルマは身を乗り出して女性に問う。

「力をくれるの?!どうやって?!」

 食い気味になったアルマに驚く女性。手で軽くアルマを制する。

「君が逸る気持ちも分からなくは無いがね、一旦話を聞いてくれ」

 落ち着いた女性のトーンにアルマは1度落ち着く。そして、女性の目を見ていた。

「……いいかい、力を手にするには、君が『心から願う』ことだ」

「……心から、願う……」

 女性はアルマをしっかりと見ながら話を続ける。

「生半可な思いでは叶わない。だから、本気で望む事だ……出来るか?」

 女性の視線は揺らがなかった。真っ直ぐアルマを見て、条件を語る。

 アルマも目を逸らさずに女性を見ていた。そして、頷く。

「……僕は絶対兄を許さない。追いかけて、必ず仇を討つ」

 もうアルマの目に迷いはなかった。うつろな視線でもなかった。ただ、憎しみがその目に籠っていた。

「……わかった。ならば、心の底から力を願うといい。その思いが揺らぎがなければ、願いは叶うだろう」

 そう言うと、女性は杖を構える。そして、ブツブツと詠唱を始める。

「”――――想念は力となり、願望は現実へと昇華する。

汝が心に描きし理想、そのすべてを此処に具現せん。

限界は既に失われた。

望むがままに、在るべき姿へ至れ

汝が願い、叶わんことを”」

 ぼんやりとした光が女性の周りを飛び交い、その光はアルマの方へ。そして、アルマの周りをふわふわと浮かぶ。光は段々と赤い光に変わり、濃く強い光になる。

 アルマは光を視認した後に目を閉じ、強く願った。

 ――――必ず、兄を殺すと。

 そして足元から赤黒い稲妻が走り、アルマの身体を這い上がっていく。

 アルマは痛みで歯を食いしばった。だが、両親が受けた痛みはこんなものじゃないはずだ。あの苦悶の表情を思い出した。思い出すだけで怒りが込み上げてくる。

 バチバチと嫌な音を立てて、光がアルマを包む。

 そして、光が破裂した。

 アルマはゆっくりと目を開けた。

 自分の手を見る。見た目はそれほど変わっていないが、身体に流れる魔力が見違えるようだった。溢れるような魔力を感じ、アルマは強く拳を握る。

「これで……」

 女性は軽く汗を拭う。

「……どうやら、君の潜在能力が呼応したようだね。とてつもない魔力を感じる」

 アルマは握った拳を下げて、凄惨な現場となった家へと向き直る。

「……()はすぐにでもあいつを追いかける。旅人さん、感謝します」

 女性は目を伏せる。

「そうか……君の旅路が成功することを祈るよ」

 アルマは女性に一礼をすると、最低限の荷物を抱え、家を後にした。

 アルマの目は、激しい憎悪を湛えていた。一点の曇りもない激しい憎悪が。

 

 若干10歳にして家族を失い、殺した犯人である兄を追う旅へと踏み出した。アルマがまず目指したのは、この世界ネフリティスの中心にある大きな大陸である「フェガロペトラ大陸」。世界には複数の大陸がある以上、特定の1人を見つけるのは至難の業であろう。途方もない旅となるだろう。

 それでも、アルマは絶対に兄を許さない。必ず自分の手で息の根を止めると誓ったから。両親の仇を討つと決めたから。

 家族で不便でも楽しめて、笑いあった日々はもうない。あの平和な日常は突然の終わりを告げた。

 お別れの言葉すら残させないで。

 たった10歳に訪れたあまりに無惨な運命。泣いて過ごすことをアルマは選ばなかった。藁にも縋る思いで手に入れた力を提げて、復讐の旅は始まった。

「――――必ず殺してやるからな」

 

 

 ――――凄惨な運命を背負った少年を見送った女性。少年の背が見えなくなるまで見続けていた。

 そして、姿が見えなくなると、女性は大きく伸びをする。

「想像以上の潜在能力だね、これは」

 そう言うと、女性は口の端を歪めた。

「さて、彼がどんな旅をするのかね」

 そう呟くと、女性はその場から姿を消した。


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