■キャラ
東:平のことになるとへっぽこになる恋愛脳。周りからバレバレだが本人は完璧に隠せていると思っている
佐藤:冷静沈着な女。純粋にへっぽこな東を心配している(このままだと宗教とかに騙されそうで)
平:名前のみ登場。これだけ周囲にバレバレな東に気づかない鈍感男
★AIのべりすとを利用、調教、協力して書いています。
★本作はハーメルン/Pixivで公開しています。
※ハーメルンは男性向けのエロ、凌辱、鬼畜系も置いてあるので注意ください。
作者:eronosuke
ハーメルン:https://syosetu.org/user/514099/
Pixiv:https://www.pixiv.net/users/125632702/novels
■東Side 墓穴を掘りまくる女 東
「で? その気になる人の具体的な性格とか特徴とか、何かないわけ?」
大学一年の春。駅に近いカフェテリアの窓から差し込む夕焼けが、高校から変わらぬ黒髪ショートカットの佐藤葵の無表情をさらに冷たく際立たせていた。
私の喉がうぐっと鳴った。やっぱり避けては通れない話題か。
「え、えーと……それは……まだ秘密っていうかぁ……」
「秘密? なんでそんな情報もなしに相談できると思ってるわけ?アズ、私のこと占い師とかだと思ってる?」
ごもっとも! でも、言えないんよサト! 相手がサトも知る、あの平だからこそ、余計に!
『平 秀司』
私の中学からの知り合いにして、高校3年から大学生になった今も現在進行形で私の心臓を握り潰さんとしている男の名前。
高校入学と同時に茶髪にして垢抜けて、そこそこモテる雰囲気イケメン枠。
でも中身はちょっと捻くれてるというか、繊細なガラスのハート持ちというか……。
「言えないならアドバイスなんてできないんだけど」
「そ、そんな冷たいこと言わないでよぉ! だって……だってぇ!」
私が声を荒らげると、サトは面倒くさそうにため息を吐いた。
「じゃあヒントだけでもちょうだい。今までアズがくれた情報は『同じ高校の知り合い』だけでしょ」
「高校三年の時のクラスは? 趣味は? 部活やってた?」
ぐぬぬ……。この追及から逃れる方法はないのか……?
私は必死に思考を巡らせる。平を特定させず、それでいてサトが納得する範囲の情報提供……。そうだ!
「えーっとね! まずクラスは……うん、まあ、私たちと同じクラスじゃなかった、かなぁ! たぶん!」
「はぁ?たぶん?」サトの眉が吊り上がる。
「いやいや、間違いなく! 私たち1組だったから、高校の時のクラスなんてもう覚えてないけどさ、相手は2組から7組あたりだったと思う! 多分!」慌てて私。
もちろん嘘。忘れるわけない、平は8組だ。同じ8組の西さん本田さんが羨ましかったなあ。なんで同じクラスになれなかったのか、って泣いちゃった時期もあったなあ。
おっと思考がそれちゃった。とにかく8組を範囲外にすることで、サトの脳内コンピュータから平を除外させたいという私のささやかな抵抗だ。
「次に趣味だけど……うーん……音楽! 音楽は好きみたい!私も同じバンドの曲、一緒に歌ったりする!たまに一人で登下校してた時はいっつもイヤホンつけてたし!」
これも半分嘘が混じってる。平の好きなバンドを教えてもらって一緒にカラオケ行ったこともあるんだけど、私がいると平は滅多に歌ってくれないんだもん。でも音楽好きなのは本当だ。
それに私といるときはイヤホン外してくれるんだよなあちゃんと話聞いててくれるんだよね平ホントそういうとこだぞ無自覚に誘ってんのか感情揺さぶられすぎるんだけどまったく平は
「部活は? 入ってたの?」サトの言葉が思考を遮る。
来た!ここが正念場! 絶対に平を特定させるわけにはいかない!
「ぶ……部活は……うーん……帰宅部だったかな? 毎日まっすぐ家に帰ってたように見えたしな!」
事実、平は確かに帰宅部だ。でもここで大事なのは「コンビニでバイトしていた」という事実を伏せた上で、家に帰ってるという誤情報を与えること。
「ふーん……2組から7組。音楽好きで帰宅部。なるほどね」
サトが腕を組んで何かを考え始めた。え、今の情報だけで分かっちゃうの? そんな馬鹿な……!
私は冷や汗が止まらない。どうしよう、特定されるかもしれない。それだけは避けなければ。
「ねえアズ」
「ひゃいっ!」
突然呼ばれ、声が裏返ってしまった。
「その人ってさ、もしかして……」
ゴクリと唾を飲む。まさかね?
「……イケメン?」
「へ?」
予想外の角度からの問いかけに、思わず間抜けな声が出てしまった。
「顔は良いのかって聞いてるの。それって重要な要素じゃない? アズってそういうの結構気にするタイプだし」
確かに昔の私は容姿にこだわっていた傾向はあるけど……。今はこだわりないっていうか、平なら何でも良いって言うか。
中学の頃の丸々としてた平も可愛かったなあ。今日帰ったら久々に中学のアルバム見てみようかな。
おっとまた思考が飛んじゃった。
ここで「うん!いつでもキラキラしてて眩しくて、超イケメンだよ!」と本心を言ってしまえば、さらにサトの中で正解が平に近づいてしまうんじゃないか?
でもこれ以上嘘をつくのも罪悪感が……。
「……うん」
結局小さく頷いてしまった。サトがふぅん、と鼻を鳴らす。
「じゃあ最後ね。アズとその人は知り合いでしょ。どんな感じでアズのことを見たり接してたの? 例えば、いつも優しいとかちょっと意地悪とか」
「ど……どんな感じって言われても……!」
頭の中がグルグル回る。平は私に対してどんな態度だったろうか。基本優しいけど、時々意地悪なこと言ってくるし……。
「そ、そうねぇ……なんていうか……掴みどころがないっていうか……」
「もっと具体的に」
「具体的にぃ!?」
鬼か!サトは鬼なのか! オニサト!
「うーん……例えばだけど……私のことからかってくるのに、なんか見透かしてるみたいにじっと見つめてきたり……あと繊細で傷つきやすいところがあって…私が近づくと逃げるのに、あっちからはすり寄ってきたり…すごく優しいんだけど本人はそれを他人に見せたくないみたいな…」
あれ?なんか私喋りすぎてない?
「それに、夜寝るときに自分が喋ったことを反省する癖があって、昨日ニコニコ笑いながら私に話してくれたことを、次の日スゴく落ち込んで忘れてくれとか言ってきたり」
あああああ! 喋れば喋るほど詳細になっちゃう! サトがジッと私を見てるのが怖い!
「つまり複雑な人間性を持ってるってこと?」
「そ、そう! そういうこと!です!」
もうヤケクソだ。とにかく適当にまとめてしまえ!
「分かった」
少しだけ考え込んでいたサトが口を開いた。緊張で心臓が飛び出しそうな私に向かって、
「その人……平じゃない?」
とサラッと言ってのけた。
「……は?」
時間停止。思考停止。私の世界が音を立てて崩れ去っていく音が聞こえた気がした。
「え? 待って? なんで? 何でバレたの? 私ちゃんと名前出さなかったよね?」
「いやだって……イヤホンつけてて帰宅部で見た目イケメンの複雑な人間性……あの学校にそんな人、平以外いないでしょ」
サトはあっけらかんと言う。
「しかも2組から7組って言ったけど、あれ明らかに嘘ってバレバレだし。アズってほんと分かりやすいよね」
「ぎゃあああああ!!!」
ついに恥ずかしさの限界を超えて叫んでしまった。カフェにいた数少ない客たちが驚いた顔でこちらを見る。気まずい沈黙が流れる。
「もういい! 忘れて! 全部忘れてーっ!」
私は顔を真っ赤にして両手で覆い隠す。サトは肩を竦めて「仕方ないなぁ」と呟いた。
こうして私の壮大な(?)作戦は秒で破綻したのであった。
これからサトとどんな顔して会えばいいんだろう……。ダメだ。もう考えるのをやめよう。
恋の駆け引きは、どうやら私には向いていないらしい。
でも、私が相談できる相手はやっぱりサトしかいない。またよろしくね、サト。
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■佐藤Side 推理好きな女 佐藤
カフェテリアの窓際の席。東紫乃――アズは今日もまたよく分からない悩みを持ち込んできた。
高校では伸ばしていた金髪を肩口までバッサリと落とした彼女は少し幼く見える。
「で? その気になる人の具体的な性格とか特徴とか、何かないわけ?」
訊ねるとアズは分かりやすく焦った。「え、えーと……それは……まだ秘密っていうかぁ……」
この時点で既にホントにやる気があるのか疑わしい。
恋愛相談に乗ってほしいなら最低限の情報共有が必要だと何度も言ってるのに。
「秘密? なんでそんな情報もなしに相談できると思ってるわけ?アズ、私のこと占い師とかだと思ってる?」と私が少し意地悪く問えば
「そ、そんな冷たいこと言わないでよぉ! だって……だってぇ!」と泣きそうな声。本当にアズは感情の起伏が激しいな。
そもそも“高校三年から気になりだした人”とは誰のことか?
アズは一貫して名前を出さないので、私も最近気づいたのだけれど、答えは明白だ。
彼女が高校三年の頃、頻繁に一緒に登下校していた『平秀司』。おそらくアズの片思いの相手は平で間違いないだろう。
よく思い出してみるとアズは平と話をした後は、異様に機嫌が良かった。
逆に平が他の女子といるところを見ると呪い殺しそうな目を女子に向けていた。
あの頃はアズって躁鬱の気があるのかな、くらいに思っていたのだが。
「じゃあヒントだけでもちょうだい。今までアズがくれた情報は『同じ高校の知り合い』だけでしょ」
するとアズは“多分2組から7組”だって? いやいや8組だけ外すなよ。アズは私のこと高校が何クラスあったか覚えてないほどボケてると思ってるの?
嘘があからさますぎて、アズの将来が心配になってくる。ツボとか買わされそうだ。
音楽好きという情報も微妙に正確ではなさそう。“一緒に歌ったりする”なんて仲ならもっと進展してるだろうから、そこは除外する。
登下校を一緒にしていてイヤホン装着は発言に具体性があり真実だとすると……ここでも該当者は絞られる。
決定打はまっすぐ家に帰る帰宅部という情報。平が学校近くのコンビニでバイトしていたことは友人であれば周知の事実だ。
まさか平がバイトしてたことを知らないほどアズと平は浅い関係性なのか――いや違うに決まってる。
ただ単にアズが嘘に嘘を重ねているだけだ。
ここまで来ればもう推理小説のように答え合わせをするまでもない。
・見た目イケメン
・イヤホン付けてて音楽好き
・帰宅部
・1組以外のクラスでアズと接点が多そう(=アズと一緒に登下校)
・複雑な人間性(=繊細で面倒くさそう)
ピースは完璧に揃っている。だから私はあっさり言った。
「その人……平じゃない?」
「は?」
アズはまるで氷河期の化石のように固まった。完全に虚を突かれた顔。
「え? 待って? なんで? 何でバレたの? 私ちゃんと名前出さなかったよね?」
「いやだって……イヤホンつけてて帰宅部で見た目イケメンの複雑な人間性……あの学校にそんな人、平以外いないでしょ」
あえて事実のみを述べる。
アズは耳まで真っ赤になって叫んだ。「ぎゃああ!!」
カフェが一瞬静まり返った。注目されることでさらに羞恥心が増すアズの心理が私には分からない。とりあえず落ち着け。
「もういい! 忘れて! 全部忘れてーっ!」
両手で顔を覆うアズ。完全降伏のポーズ。私は肩を竦めて「仕方ないなぁ」と答えた。
……何が仕方ないのか自分でもよく分からないが、少なくともこの“相談会”はまだまだ続くだろう。
アズは相変わらず自分の感情整理さえまともにできていない。これでは彼女の恋は進むどころか立ち往生したままだ。
私は恋愛起因の人間関係がいまだに理解できない。
こんな私を恋愛相談の相手として選んだアズは、ちょっとおかしいんじゃないかと思うけど。
いずれにせよ今後しばらくは、アズと平の挙動を注意深く観察するのが面白そうだ。
それくらいは友情の一環として許される範囲だよね、アズ。