偽典サクラ大戦 ~我は花咲く木とならむ~ 改訂版   作:出口豊志朗

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第四章 ファンたちの宴

    一

 

 花組オヤジ会主催の「初代花組を語り合う会」は、会員だけの限定企画として立ち上がったはずだった。しかしなぜか噂が広まったうえ開催場所までがもれてしまったようで、当日は会場の公営会館周辺に野次馬三十人ほどが集まる騒ぎとなった。ダンディ商会の面々が会の模様を後日会報として外部にも公開するからと宥めることで、ようやく野次馬を散らすことができた。もし神崎すみれが通信で参加すると知っていれば、騒ぎを治めることはできなかっただろう。

 その会も、予定していた時間はあっという間に過ぎていった。会場内に集まった会員男女は百名あまり(オヤジ会の名は発起人たちを指したもので、オヤジでなくても入会できる)。再会した会員同士の近況報告に始まり、成長を見守った脚本家、音楽監督の公演、初代花組初期の面白エピソードの披露は尽きることなく、新生花組の活躍と今後の活動予定の紹介に割り当てた時間があやうくなくなるところだった。そして、宴もたけなわとなったところで、会場のスクリーンに大帝国劇場支配人室に座る神崎すみれの姿が写った。

「よっ、すみれ!」

「日本一!」

 まるで舞台に登場したかのように、掛け声をあげる会員たち。が、すみれが一礼すると会場はしわぶき一つしない静寂に満たされた。

『本日はこのような素敵な会に、通信ではありますが参加することができて光栄です。会場の様子はこちらからも観ることができたので、皆さんの楽しそうな笑顔に胸が温かくなりました。初代花組の最後の公演から十年も経つというのに、あの時と変わらない熱量で初代花組を愛してくれる皆さんがいる……それが、いつか初代花組を蘇らせる原動力になると感じました。

 また、多くの方が新生花組を見守ってくださっていることも、伝わってきました。皆さんがお話の通り、初代花組も初めは惨憺たるものでした。なにせ、わたくし以外の役者が大根だらけでしたから』

 ここで会場が大きな笑いに包まれる。

『そんな時代を皆さんの温かい声援、拍手で乗り切り、素晴らしい舞台をお見せできるまでに成長していきました。初代花組同様、新生花組もごひいきのほど、よろしくお願いいたします。また劇場で、お会いしましょう』

 すみれの優雅な一礼に、万雷の拍手が響き渡った。中にはこらえきれず涙を流すものもいる。すみれが笑顔で手を振ったところで、通信映像は終了した。興奮冷めやらぬ会員たちを鎮めるのに、ダンディ商会の面々は苦労しつつも苦笑いを浮かべていた。自分たちも運営側でなければ同じようなものだろう。

「皆さん、花組ファンとして節度ある行動をお願いしますよ!」

「あらかじめお伝えした通り、帰りはバスで各方面の駅までお送りしますから、乗り場のほうへ移動してくださ~い」

「会場付近の方々にご迷惑のないよう、旧交を温めるのは駅付近に予約済みの店でお願いします!」

 段取り手際の良さもあって、ひとたび誘導がはじまれば会場からは潮が引くように人が去り、四台の蒸気バスは陽気な客を詰め込んで夜の街への消えていった。それを見送ったダンディ商会の三人は、駐車場わきのベンチに腰を下ろす。

「片付けは明日だ。もう会場の鍵も閉めてあるから、ここで解散するぞ」

「釣れますかね、昏睡事件の犯人を」

「充分エサは撒いたんだ。これで無理なら仕方ないさ。いい会が催せただけでも充分だ」

「今度は俺も、参加者側で楽しみたいっス」

 武田の言葉に団はうなずき、手を打った。

「やはり花組さんはサイコーだな。生涯花組ファンとして、これからも応援するぞ! さあ、今日はこれで帰るとするか!」

「へい!」

「おつかれさまでした!」

 団の言葉で、西村、武田はそれぞれ受け持ちの方向へ歩き出した。団も彼らを背にして灯りの少ない公園へ向かう。これだけのお膳立てをしたのだ、初代花組ファンを狙った昏睡事件、それに犯人がいるならば食いつかないはずがない。

 

 団、西村と別れた武田が向かった先は、雑木林の抜け道だった。闇に眼が慣れれば星明りもあって歩くには支障ないが、どうしても歩幅は小さくなる。当然人の気配はなく、木々のざわめき、虫の鳴き声だけが辺りに満ちている。弱い犬ほどよく吠えるというが武田が騒がしいのは臆病の裏返しで、すでに及び腰になっている。そんな武田だからこそか、虫すらも気付かぬ気配を察知して頭上を見上げた。

「な、なんだよ! なにかいるんだろ!」

 武田の叫びで、周囲の虫の音が静まる。響き渡るのは、風につられた葉擦れの音のみ。焦れて、武田は続ける。

「おいこら、俺様にはわかってるんだよ! さっさと出て来いよ!」

 言い終わらぬうちに、視線の先から白い塊が落ちてきた。

「ヒィ――ッ!」

 尻もちをついた武田は、そのまま器用に手足を動かして後ろに移動する。落ちてきた塊は白い陣羽織の人影だった。手には日本刀が妖しく輝いている。それを目にした武田は、反射的に上体を起こし、そのままの勢いで両手を地に着いた。そう、見事な土下座だった。

「お、おお、お助けを! 家には腹をすかせて俺を待っているカカァが三人、ガキが十人いるんで!」

 目をつぶり、頭は擦りつけたまま手を合わせて拝む武田に足音が近づく。

「ちょっと静かにしてくれたまえ」

 頭上から落ち着いた声で諭され、武田は恐る恐る顔をあげる。見覚えのある顔だった。

「私は村雨白秋という。キミは、ダンディ商会の武田くんで良かったかな」

 村雨の名乗りで、武田は合点がいく。帝劇付近でたまに目にする女性だった。風変わりな装いと、人間離れして美しい風貌で興味を持ったのだった。

「な~んだ、あんたか。俺はてっきり……いや、あんたが黒幕か!」

 武田は飛び上がり、元来た道へ走ろうとした。が、足がもつれてそのまま倒れこむ。顔面から地面に突っ伏し、腰だけが浮いている間抜けな格好だ。そこに再び近づく足音。

「いいから落ち着いてくれ。私は敵じゃない。キミたちが露骨に囮作戦を計画してるようだったから、それに相乗りしたんだ。キミが一番弱々しいから先回りして潜んでいたんだが、まさか気づかれるとは思わなかったよ」

「へ、へぇ。それじゃあ、どちらかと言えば助っ人で?」

「まあ、そうなんだが……まいったな。この騒ぎで逃げられたら作戦を邪魔したようなものじゃないか」

「でも、ボスやアニキもいますんで、そっちに行ってるかも」

「キミはどちらが狙われると思う?」

「そんなのわかりませんよ! アニキじゃないですか? 赤くて目立つし」

「赤いほう……わかった。そちらへ向かおう」

 言うが早いか、白秋は音もなく駆け出した。後には腰をぬかした武田一人。

「あ、待って。明るいところまで連れてって~!」

 

 団は会の高揚に浮かれた様を演じつつ、襲撃に備えて気を巡らせ闇に包まれる公園を進む。と、先の噴水に人影が見えた。それは、黒いスーツ姿の女性だった。団は緊張を表に出さぬよう注意しながら声をかける。

「どうしたんだい、お嬢さん。こんな暗い夜道で独り歩きは危ないよ」

 すると人影も団に近づいてきた。女性はこの暗がりの中で、サングラスをしているようだった。

「何を企んでいるのかしら」

 開口一番、核心をついた言葉が投げつけられる。団は素早く反応し、女性から距離をとった。懐に忍ばせていた銃と匕首を取りだし、構える。

「嬉しいねぇ、俺を選んでくれるなんて」

 油断なく相手を伺う団に対し、女性はあくまで自然体だ。

(的だ。女、金髪、西洋人。背は五尺五寸。黒スーツにサングラス。こいつはヤバい。お前らは来るな)

 団は首元のマイクに、小声で呟いた。相手の力量次第で捕縛か逃走かを選ぶ段取りだったが、逃げる隙も見当たらぬ実力差を見てとった団は、情報伝達に集中する。

目の前の女性もそれは察しているようだが邪魔することなく、腕を組み口元をほころばせていた。

「お嬢さん、お待たせした。さて、こんなしょぼくれたオヤジになんの用だい?」

「まずはお礼を。あなたのおかげで効率よくターゲットを選ぶことができたわ」

 ホルスは組んだ腕をほどくと、ありもしないスカートの裾を摘まむようにし、膝を曲げて身体を沈めた。優雅なお辞儀に団は口笛で称賛した。

「そうして品定めして次の獲物を決めたうえで、とりあえず襲いやすそうなオレを前菜にしようって腹かな」

 おどける団に、女性は首を横に振る。

「いいえ、もう前菜は充分。メインディッシュは、あなたよ」

「……それは光栄だ。で、あんたは何を企んでいるんだ?」

 団の問いかけに、女性は笑みを浮かべた。右手をゆっくりと団に差し出して、小首をかしげながら語りかける。

「あなたは、かつて世界華撃団連盟が消失したと発表された帝国華撃団が、帝国歌劇団花組のメンバーだった、と言ったら信じるかしら」

 唐突な問いかけに、だが団は落ち着いて答える。

「そんなこと、花組オヤジ会のメンツならみんな気づいてるだろうよ」

「あなたもそう言うのね……じゃあ、彼女たちの消失の発表をどんな想いで受け止めたの?」

「決まってるだろ、『花組さんが消えるわけがねぇ、必ず生きて戦っている!』だ」

「ファンの鏡ね。その通り、華撃団は幻都を封印するための人柱になったの。彼女たちは、いまも幻都に捕らわれ続けている。それを助けたいと思わない?」

 想像もよらない話に、さすがの団も答えに窮する。

「あたたたちファンの熱い想いを集めれば、彼女たちを助けることができるの。だから……」

「俺は花組さんを信じている! これまで帝都を守ってきた皆さんを信じている! だから俺がどうこうする必要はねぇ」

「あら、冷たいのね。ファンならその身を捧げるのも幸せなのじゃないかしら」

「それは了見違いだ。誰でも身の丈に合った役割があるんだよ」

 この問答自体が人を昏睡に陥らせるなら、それに嵌るのは愚策だ。団はためらわず、女性に向かって匕首を突き出す。それを飛んでかわす女性を銃で狙い、引き金を引く、引く、引く!が、女性は空中にもかかわらず向きを変えて弾丸をよけ、さらに重力を無視した軌道で団にとびかかり、組み敷いた。

「無理やり、は好みではないのだけれど、あなたの想いは大きな力になる。だから、ごめんなさいね」

 団の顔に近づくサングラスの奥が、青い光を放ちだす。相手は女性だというのに、団は四肢を動かすことができない。

「俺の役割はな、花組さんが帰ってきたとき、それを迎える仲間のつながりを残すことなんだよ!」

 団の啖呵が闇夜に響くと同時に、誰かが駆け寄る気配がした。

「よくおっしゃいましたわ!」

 何かが空を切る音がし、団の拘束が解かれた。反射的に体を起こし、後ろへ跳ぶ。

 目の前に現れたのは、薙刀を構えた神崎すみれの後ろ姿だった。団を襲った女性は、少し離れたところで両手に短剣を煌めかせている。

「すみれさん!」

「ダンディーさん、離れて。この場はわたくしにお任せなさい」

 相手から目線を外さずにすみれが言う。短剣を構えた女性は、楽しげに笑いながら、名乗りを上げた。

「先にお願いするわ。わたしのことは、ホルス、そう呼んでくれるかしら」

「三下風情が名乗りを上げるなんて、ちゃんちゃら可笑しいですわ」

 言葉を交わしながらも、すみれはホルスとの間合いをゆっくりと詰めていく。

「それにしても、よく誰を狙うかがわかったわね」

「あなたが狙うものがファンの強い想いなら、一番の獲物はダンディーさんに決まってるでしょう」

 短剣と薙刀、間合いの差の大きさに、攻守、優劣が瞬く間に入れ替わる。詰めようとするホルスと、引きはがしたいすみれ。すみれは素早いホルスの動きを先読みし、二歩下がって迎え撃とうとする。ホルスは察して軌道を変え、二歩の間合いを一歩に縮める。自然、すみれは腕を縮めた勢いのないさばきになり、ホルスは腕を伸ばすため手数が減る。団は銃で援護できないかと照準を定めようとするが、動きの速さに的を絞れずにいた。

 そうする間に、徐々にすみれが押されていく。なにしろ実戦は十年ぶりだ。それに、すみれの身体に染みついた戦い方は、霊力を前提にして洗練されたものだ。自分が磨き上げた技だというのに、霊力が枯渇した身では扱いきれない。すみれはそのもどかしさを味わいながら、薙刀を振るい続ける。

 いよいよホルスはすみれの動きを見切った。すみれが突きつけた薙刀を器用に蹴り上げて、すみれの胴をがら空きにする。そして手にした短刀三本に妖力を込めて投げつけた。一撃目は脇腹をかすめ、続く二撃目は右足の健を裂く。そしてよろめいたすみれの胸に、三撃目の短剣が深々と突き立った。すみれは声を上げる間もなく、うつ伏せに倒れた。

「すみれさん!」

 団はあわてて両者の間に割って入り、匕首を握りなおす。ホルスは悠然と団を見据えて話しかけた。

「彼女の命を取る気はないわ。あなたのその熱い想いを、わたしに託してくれれば、ね」

 ホルスが再び団に向かって手を差し伸べる。すみれを助けるにはその誘いに乗るしかない、と団は腹をくくった。匕首と銃を足元に落とし、ゆっくりとホルスに近づく。

その様子を薄れていく視界におさめていたすみれは、自分自身を 咤した。

(動け、わたくしの身体、動くのよ!)

 必死で念じるが、急速に失われる血液と共に力と意識が遠のくのを感じていた。同時に、自分の不甲斐なさに腹が立った。このままではあの時と、幻都で崎姫の悪夢に翻弄されたときと変わらないではないか。

(わたくしは花組の皆に、米田さんに託された帝都を守る使命がある。そして、生きて帰ってくるさくらさんと、同じ舞台に立つという約束がある)

 そこまで思いをはせた瞬間、すみれの身内をこれまで感じたことのない力が巡った。

 初めて霊力の発動を感じたときと似ているが、それとも違う。霊力が自分から湧き出る力だとすれば、この力は何かに包み込まれ昂りを刺激するような感覚だ。

 同時に、焼けるような痛みが治まっていることに気づいた。慌てて視線を移すと、胸に突き立っていたはずの短剣が消えている。代わりに灯る桃色の光が目に付いた。それのせいで傷口までは確認できないが、断たれた足の腱も気にならず、このまま動けそうだった。

顔を上げると団の身体でホルスの姿が隠れている。つまり、向こうからも自分は見えていないはずだ。

 すみれは即座に駆け出し、団の右脇をかすめるようにホルスがいるであろう空間を突いた。不思議な力のせいか、薙刀がやけに軽く感じられた。

 しかし手ごたえはない。

 辛くもかわしたホルスに詰め寄ろうと団の脇をすり抜け、薙刀を振るう。ホルスはそれを短剣で受け流し、すみれの懐に入り込む。斬撃を柄で受けたすみれは、体を落として下段回し蹴りを見舞う。それを飛んでかわしたホルスは、金色の髪を振り乱しながら、短剣を投げつけた。すみれは地を転がりながら、振り回す薙刀の遠心力を利用して飛び上がり、ホルスの脳天めがけて一閃する。さすがに短剣では受けきれないと悟ったか、ホルスは後ろに飛んだ。

 そのホルスの背中めがけて、何者かの斬撃が襲い掛かった。それは追いついてきた村雨白秋の一撃だった。ホルスは体をひねると噴水まで飛びずさり、間合いを取り直す。

「これをかわすか!」

 仕掛けた白秋のほうが驚いている。

「白秋さん?」

 予想外の増援にすみれも驚く。白秋はすみれに一瞬だけ視線を向け、あらためてホルスに向かって無造作に近づいた。

「ホルスくんだったか? しかしてその正体は、伯林華撃団設立の立役者であるラチェット・アルタイル、で良いのかな?」

「さあ、どうかしら」

 直球の質問を、ホルスははぐらかす。

「五年前、奉天省、平頂山、蓮華洞、紫金紅葫蘆。どうだい?思い出してくれただろうか」

 つづいて白秋は、脈絡なく単語を並べ立てる。どうやら中国の地名のようだった。

「それに答えることで、何か私にメリットはあるのかしら」

 しかしホルスは取り合わずに、軽くいなす。

「メリットはなくても、答えないデメリットはあるだろう?」

「そういう駆け引きはうんざりだわ。言ってなかったかしら?わたしは効率の良いやりかたが好きなだけ」

 ホルスは指先で短剣二本を見せつけるようにくるくる回すと、白秋へ投げつけた。背後のすみれと団を気にした白秋は、刀でそれをはじく。

「とんだ邪魔がはいったことだし、今日はこれで失礼するわ」

 言い残すと、ホルスは音もなく姿を消した。

「すみれさん、傷の具合は!」

 団が駆け寄り、血で濡れた着物をどうしたものかとオロオロする。

「それが、どうも傷がふさがっている……というより、もともと傷がないような感じですの」

 すみれは身体を検めるが、胸元の傷も切り裂かれた右足の健も、その名残は切り裂かれた着物と足袋、そして血でしとどに濡れた着物の重さだけだった。先ほど灯っていた桃色の光も今は失せ、幻覚だったのかと自分を疑いたくなった。ともかく、どうにも要領を得ないが無事なようであった。

「釈然としませんが……お話ししたいこともたくさんあります。ひとまず公営会館に戻りましょう。ついてきてくださいな」

 すみれは言うと、激しい戦闘などなかったように、優雅に歩き出した。

 

    二

 

 白秋、団、そして後から合流した西村と武田は、すみれの導きで公営会館に戻ることになった。会が催された一階には脇目も振らず、すみれは最上階の一室まで進んでいった。その歩みには迷いがない。

彼女が扉を開けると、驚いたことに大帝国劇場支配人室と瓜二つの調度が並べられていた。

「さあ皆さん、お座りになって」

 自分は執務机を挟んで座り、団たちにソファを勧めた。団たちは状況が呑み込めずに首を傾げながら、左右に分かれて腰をかける。

「すみれさん、これは?」

 驚く団に、すみれが笑いかける。

「ダンディーさんが何か企んでいるようでしたから、すぐに駆け付けられるようにこの部屋を借りて改装しておきましたの。急ごしらえで家具も有り合わせですけど、気づかれなかったようですわね」

「じゃあ、初めからすべてお見通しで?」

「あなたがわたくしに直接お願いだなんて、ただ事ではないでしょ。だから、何を企画しているかを確認したの。それに合わせて企画の噂だけが広がったものの、わたくしの参加だけはしっかり秘密にされているという不自然さ。そして、会員たちをひとまとめに移動させるための手配。まあ、自分たちを囮にしようとしているようにしか見えませんわね」

「さすがはすみれさん。いやぁ、拙い仕掛けでお恥ずかしい限りです」

 そこですみれは語調を少し強めた。

「ダンディーさん、わたくしを巻き込まないようにするお気持ちは有り難く受け取ります。でも、こんな危ないことはおやめください。かつてのギャングとしての腕っぷしを疑っているのではありません。でも裏社会に通じたあなたなら、こうした事件にはそれを相手するに相応しい組織が存在する、それはご存知でしょう?」

「その辺りは弁えておりやす。ただ……何でしょう、この十年くすぶってたせいで何かやらずにはいられなかったんです」

 団は自分の両の掌に目を落としながら、自嘲を籠めて答えた。西村と武田も、悔しそうな表情で顔を伏せる。

「いえ、言葉が過ぎました。ただ、おかげで初代花組ファンの昏睡事件に明確な黒幕がいることがわかりました。ファンの想いを集めて力に変えるという目的も含めて。ダンディ商会のお手柄ですわね」

 すみれの称賛と笑みに、ダンディ商会の面々はそれまでの険しい表情を崩し、頬を赤らめる。その様子を見て安心したすみれは、矛先を白秋へと移した。

「さて、白秋さん?」

 指名され、面倒そうに首を振る白秋。

「私は、どうして大人しくついてきてしまったんだろうね」

「いいから、知ってることをお喋りなさい。帝劇食堂、出禁にしますわよ」

「……それは困る」

 観念した白秋は、昏睡事件に関わったきっかけと、この場に居合わせた経緯を話した。

「なるほど。帝劇帰りのファンが昏睡したことを偶然耳にして、念のため調査していくと他にも同様のことが起きていた。被害者を辿っていくと、いずれも初代からの花組ファンであることに気づいた、と」

「その通りだ」

「白秋さん、あなたもそこまで調べてるなら……」

「ああ、すまない。謝ろう。だが、もう少しラチェット・アルタイルについて確信を得てから、と思っていたんだよ」

「あんなもの、偽物に決まってるでしょう?」

「何を根拠に?」

「むしろあなたは、なぜホルスをラチェット・アルタイルと疑っているの? 五年前に会ったような口ぶりでしたけど」

 白秋の説明は、こうだ。

 当時、ふと思い立って訪れた中華民国奉天省で、西遊記の金角大王・銀角大王に縁のある土地、平頂山蓮華洞があると知ったらしい。

 白秋は物見遊山で入り込んだ蓮華洞で隠し通路を見つけ、好奇心のままに奥に進んだところで、伝説の宝具・紫金紅葫蘆を見つけたのだという。

 さてせっかくなので頂いていこうと近づいたところで、突然現れたラチェット・アルタイルに阻まれた。事情がありそうなので、結局は紫金紅葫蘆を彼女に譲ることにしたとか。

「どこをとっても白々しい話……まあよいですわ。その時、ラチェットは名乗りをあげたの?」

「いや、そのときは『謎のトレジャーハンターよ』と言っていたか」

「では何の関係もない可能性も?」

「いや、そこは私も確かめている」

 帰国ののち帝劇食堂が開くまでの時間つぶしに劇場内にある記念資料を見ていたところ、海神別荘のパンフレットに掲載されたラチェット・アルタイルの写真を見かけたらしい。それであの時のトレジャーハンターが彼女だと気づいた、ということだった。

「あなたの見立て、かなり大雑把ですわね……とは言え、その程度の根拠でしたら、断じて否、ですわ」

「だからどうしてそう言い切れるんだい? 私の調査はダグラス・スチュアートの件まで及んでるよ。彼らの前だから詳細は言わないが」

 白秋は、状況を飲み込めない様子のダンディ商会の面々を見る。白秋が言外に伝えているのは、ラチェットがダグラス・スチュアートと結託して、帝都を混乱に陥れたことだった。しかし、すみれは反論する。

「過ちを犯したからこそ、正道を見出す人もいるんです。いえ、耐え難い苦難を乗り越えた先にこそ、正道は人の前に現れるのです。わたくしのように生まれながらにして花道だけが伸びているトップスタアは、例外中の例外なのですわ」

 熱弁を奮いながらも悦に入るすみれに、白秋はため息をつく。

「では、君の見立てを聞かせてもらおうか」

「まず、敵の狙いは大帝国劇場。わざわざ帝劇に縁ある人物の霊力を集めているのは、それが帝劇襲撃に都合がいいから。ただの怨恨でやるには手が込んでいるから、狙いは中庭の霊子水晶か、天宮國定というところかしら。

あなたがご執心のホルスは夜叉と同じく何らかの術で生み出された人造人間。夜叉との関連を考えるとWLOF残党との関係が濃厚。いかが?」

「あまりに手持ちの情報に頼りすぎていないか? それに、ラチェット・アルタイルが帝劇ファンの霊力をあつめて幻都をどうにかしようと動いている可能性も否定できまい」

「それは彼女への侮辱です。撤回なさい!」

 ダンディ商会の面々には事情の半分もわからないが、久しぶりに耳にするすみれの啖呵に胸をうたれていた。白秋は男たちの姿に呆れながらも、これまでの飄々とした態度をあらためて真剣な眼差しですみれを見返した。

「人は変わる。いや、事情が変われば考えは変わる。例えば幻都に捕らえられた者たちに残された時間がわずかだとしたら? 準備を行っている者たちに深刻な事態が生じ、乾坤一擲の作戦が必要になったら?」

 その物言いにすみれは思わず立ち上がり、机をバンッと叩く。

「そうだとしても!」

 気丈な物言いと裏腹に、すみれの肩が震えている。白秋の提示した残酷な筋書きが、彼女を深く傷つけていた。

「そうだとしても……人の道に外れた手段で救われることを、何より彼女たち自身が望みません。舞台の裏で流していいのは、血と汗と涙だけ。小手先や邪道で一瞬華やかに見せられても、すぐにメッキが剥がれます。そんなその場しのぎで彼女たちを救おうなんて、ありえません」

 すみれは乱れた呼吸の音だけが室内に響く。ややあって白秋は立ち上がり、すみれに向かって深く頭を垂れた。

「大変失礼した。深くお詫びする」

「いえ、わたくしも大人げなかったですわ。あなたには、わたくしの話はただの願望に聞こえるかもしれない。それでも、そこを曲げてまで状況を複雑に考える必要性を感じないのです。とはいえ白秋さん、あなたはあなたの思うように動いてくだされば結構ですわ」

「いや、あなたの信じるものを、わたしも信じよう」

 団も立ち上がり、すみれに語り掛ける。

「今回は勇み足でした。でも、あっしたちも花組さんを救いたい気持ちは同じ。その邪魔になるようなことが起きてるなら、どうか手伝わせてください」

 西村と武田も立ち上がり、深くうなずく。

「みなさん……ありがとう」

 すみれは、ダンディ商会の面々たちに心から感謝した。十年もの間、降魔大戦当時の花組やスタッフの安否を直接問うこともなく、その生存を信じて力を貸してくれているのだ。

『俺の役割はな、花組さんが帰ってきたとき、それを迎える仲間のつながりを残すことなんだよ!』

 ホルスに対して団が言い放った言葉を思い返す。

 役者と観客という絆を越えた想いに、鼻の奥がツンとした。これこそが帝国歌劇団花組の力の源だと、すみれは今さらながらに感じ入るのだった。

 

 一同は、目的を被害拡大の防止に定めた。花組オヤジ会会員の安全を確保するため、白秋が用意する護符をダンディ商会が会員たちに配る。加えて初代花組の縁起物とでも言って、会員以外の手にも渡るよう配慮する。護符には攻撃を感知すると白秋に伝わるよう細工する。敵の目標が大帝国劇場なら、それほど離れた場所に拠点は置かないだろう。事態に即応できるよう、すみれは帝都全域に月組を配することにした。

「花組には声をかけないのか?」

「狙いが天宮國定の場合、わざわざ打って出るのは愚策。それに今は休みを取らせているの。皆、それぞれに久しぶりの休暇を満喫していると思うわ」

 そうして、一同は解散する流れとなった。ダンディ商会を見送った後、すみれは立ち去ろうとする白秋に声をかけた。

「白秋さん、先ほどの戦いのことなのだけど」

 その言葉に、白秋は手に取ろうとした刀を離し、すみれに向きなおった。

「ホルスの短剣で、わたくしは深手を負いました。胸のほうは動脈まで傷ついていたはずです。地面には水たまりのように血が流れていました。だというのに突然力が湧き出して、傷は治り、失ったはずの血液が気にならない状態にまで回復していたのです。なにか気づいたことはありまして?」

「わたしが君たちを捕捉したとき、キミはすでに反撃の準備をしている様子だった。だから想像もつかないのだが……一時的に霊力が戻った、というわけではないのか?」

 白秋の言葉に、すみれはかぶりを振った。

「少なくとも霊力ではありませんでした。なにかこう、温かいものが湧き出て全身を包み込むような感覚でした」

「もしかすると、ホルスに取り込まれたファンたちの精神力が助けてくれたんじゃないか?」

 白秋の思い付きを、すみれは否定できなかった。確かにあの時感じたものは、力というよりも愛情のような感触があった。事実、舞台で観客から拍手を浴びたときの高揚感がもっとも近い。

「そう……かもしれませんわね」

とはいえホルスから流れ込んだとすれば、そもそもホルス自身がそれに気づかないはずがなく、すみれが付け入る隙も見せなかったはずだ。すみれは不思議な力については、一旦棚上げにすることにして話題を変えた。

「白秋さん、あなたがこの事件の核心に一番近づいていると思いますの。だから少しでもわかったことがあれば情報を流してほしい。そしてもし黒幕を叩くタイミングになったら、必ず私にも連絡をちょうだい」

「それは構わないが……流れによっては一報入れる隙もないかもしれない」

「そういうこともあるでしょう。でも、わたくしを遠ざけるためにわざと連絡を寄こさなかったら……わかってますわね?」

「ああ。ならば今後は密に連絡をとったほうがいいだろう。仕方がないから明日からは休日でも食堂へお邪魔するとしようか」

「あらあら、ではシェフに用意するように伝えておくわ」

 軽口の応酬を終えたすみれは、後始末があるのか部屋の奥に下がっていった。

 白秋は椅子に立てかけていた刀を腰に据えなおし、部屋を、そして公営会館を出た。

 そこで、白秋は不意に視線を感じた。

 目を向けると公営会館前の広い駐車スペースのさらに先、フェンスの向こうに黒い影が見える。蒸気バイクにまたがった、フルフェイス、バイクスーツの人物だった。相当の距離があるが、向こうもこちらを捕捉していることがわかった。白秋に手招きしているからだ。まったく身に覚えのない相手だが、わざわざ一人になったところを狙ってのお誘いだ。ろくな話ではあるまい。

「やれやれ、早速すみれに嘘をつくことになるかもな」

 白秋は目を伏せてため息をついた。

 彼女は不意に、自分が事件を追っているのか、自分が事件に巻き込まれているのかがわからなくなってきた。

 

    *

 

 ホルスは立ち並ぶ電柱のうえを、飛び石を渡るように跳んでいた。闇夜の、しかも頭上のこと。まだ眼下の往来には人の流れがあったが、気づく者はいない。気づいたところですぐに視界から消え、捉えることはできないだろう。

 風のように駆けながら、さて、とホルスは思考を巡らせる。

 目先の標的である大帝国劇場。その支配人である神崎すみれが、このタイミングで出張ってくるのは想定外だった。あのような見え見えの罠に関わってはいまいと考えたが、その罠自体を餌にするとは。少々、見くびっていたようだ。

今回の襲撃で『霊力の芽』集めは終わらせ、次いで本命を狙うつもりだった。それまで顔を合わせることはあるまいと思っていたのだが……果たして彼女は自分の存在をどう判じたのだろう。夜叉のように依り代からつくりだされた写し身と見たか、それとも正真正銘の本物と納得したか。

まあ、いずれであろうとそれで自分たちの動きが変わるわけでもない。

 我知らず、ホルスは笑みを浮かべていた。団に向けた演技の笑いではなく、我知らず沸き起こる無意識の笑みだった。

ようやく物語を進めることができる。

その実感が喜びに転じているのだった。ホルスは鼻歌交じりに帝都の空を舞って行った。

 

    三

 

 今宵の夢の舞台、演目は宝島のようだった。

 

 物語は遠い異国、倫敦から始まる。

 マリア演じるシルバー船長は物語の始まりを高らかに歌い上げる。そして告げる。

『これは昔話。今の賢い少年少女たちなら、主人公ジムが夢に向かう姿を聞くだけで、自分たちの夢を追い求めるきっかけになりはしないか。なら、ときにはそんな昔語りもいいだろう』

 

 紅蘭演じるジムは、冒険に憧れる日々を過ごす。

倫敦の街には、幸運が落ちていると大人は言う。誰しも平等に幸運が訪れ、幸せになるチャンスが散りばめられている、と。しかし裏では、結局お金がなければどうしようもない、という諦めの声も聞こえてくる。結局のところ貧しさは、彼の人生からいかなるチャンスも奪い、道を閉ざしているように思えた。

 せっかく手に入れた宝の地図も、大人の力を借りなければそこへ行くこともかなわない。そこへ行く力をもつ大人、シルバー船長は『夢を見たところで、大人になれば忘れてしまう。日々の暮らししか見えなくなる』と、自嘲を込めてジムを現実に向き合うように諫める。しかしジムは冒険を、夢を諦めないと啖呵を切った。その清々しいまでのまっすぐさが、シルバー船長を動かした。冒険の幕が上がったのだ。

 

 観客の少年は、冒険の旅の始まりと溢れるロマンの予兆に興奮した。

 観客の少女は、シルバー船長から漂う大人の魅力に胸をときめかせた。

 観客の大人は、夢を語るジムを微笑ましく見守りつつも、シルバー船長が語る〝現実〟に胸が痛んだ。

 千人をゆうに超える観客それぞれの心に、色とりどりの波紋が沸き起こった。

 

 シルバー船長の船に乗り込んだものの、ジムの冒険は順風満帆というわけにはいかなかった。

 彼らが横切る海では織姫演じる魔女が、身の程をわきまえない人間への怒りから力を振るう。

『私が支配するこの海では、人間の命など、ましてや形の見えない愛なんてものは、波にのまれて容易く壊れ、深い海の底に沈む定めなのだ』

そうして、ジムは海へと投げ出される。ジムは悪夢で死の恐怖に震え、目覚めれば大ダコに襲われ死にそうな目にあった。

『誰だって突然死ぬんだ。でも死ねば極楽が待っている。だから、構わず死んでしまえ!』

 それでも彼は進んだ。進む先にこそ幸運が待っていた。

 

 観客の少女は、南海の魔女が絶大な力を振るう様に、昂ぶりを覚えた。

 観客の少年は、恐ろしげな南海の魔女に恐怖を覚えながら、ジムを懸命に応援した。

 観客の大人は、物語のシリアスさと合間に差し込まれる喜劇に翻弄されるうちに、世事が頭から離れ舞台で起きることに、ただ一喜一憂する。

 千人をゆうに超える観客それぞれの心に、色とりどりの風が吹き抜けた。

 

 ジムが辿り着いた島には、カンナ演じる海賊王と部下、さくら演じるジャングルの女王がいた。

 海賊王は『欲しいものは奪えばいい、嫌われようが仲間がいれば気にならない』と、うそぶく。

 ジャングルの女王は『情熱を燃やし、熱く野生に生きるのだ』と、全身で命の煌めきを表現する。

 ジムは状況に翻弄されても明るさと前向きさを失わない。その思いが一本の糸を紬ぎ、ジムを前へ、前へと誘うようだった。

 

 観客の少年は、海賊王の気ままな振る舞いに憧れたそばから、その傍若無人な振る舞いに腹を立てた。

観客の少女は、ジャングルの女王が示す、真っ直ぐなまま自分を貫く姿に光を見出した。

 観客の大人は、ジャングルの女王の歌と踊り、野生の鼓動に、久しく忘れていた身内を巡る熱い血潮を思い出した。

 千人をゆうに超える観客それぞれの心に、色とりどりのさざ波が立った。

 

 そうしてジムは南海の魔女と対峙した。

 ジムを守ろうとするシルバー船長。南海の魔女こそが、彼から夢や希望を奪った張本人だった。魔女は力を思うままに振るい、ジムとシルバー船長を追い詰める。過去のトラウマに心折れそうなシルバー船長。それでもジムは、諦めない。魔女に勝つ力などない。それでもあきらめずに立ち向かう。そうして、最後にはそのひたむきさが勝利を呼び込んだ。

 

観客の少年少女は、息をのむ展開に一喜一憂し、ジムと一体になって栄光を手に入れた。

観客の大人は、これはジムの物語ではなく、シルバー船長の……自分自身の物語なのだと感じた。いつか自分にも、誰かのラッキーが訪れるかもしれない。それまで腐ってしまってはいけないのだと、気持ちを新たにした。

 千人をゆうに超える観客それぞれの心に、七色の虹がかかった。

 

いざゆかん 船を出せ

輝く仲間と 冒険の旅へ

肩を組んで 歌いながら 冒険を!

 

いざゆかん 船を出せ

風に倒れるな 波を乗り越えろ

くじけるなよ(旗をかざせ)旗をかざせ

勇気の旗を

 

君たちが輝きだ 君たちが宝モノ

 

 ジムとシルバー船長、紅蘭とマリアのエンディング曲が、会場の心をひとつにした。

 勇気を、前に進むための力を尊く思った。この公演そのものが、自分にとっての勇気を思い出させる御旗としてはたたき続けることを信じた。

 

 初日の緊張感溢れる空気を、観客たちは楽しんだ。

 中日の完成度を増していく公演を、観客たちは楽しんだ。

 楽日の役者の開放感と終わりを迎える一抹の寂しさを、観客たちも分かち合った。

 観客たちは帝国歌劇団花組から注がれる愛を、まるで幼子が無条件に親からの愛情を受け入れるように全身で感じ取った。そして、自分たちが心の底から彼女たちのことを大切に思っていること、愛していることが伝わっていると、信じて疑うことがなかった。

それは、巴里のレビュウでも、紐育のショウでも同じであった。

 互いの幸せを願い合う人としての根源的な力は、公演を重ねるにつれて不可思議な力に姿を変えていった。それは霊力でも妖力でもない力として凝縮され、信仰が生み出す神の如き力となっていった。

 その力が許しはしないのだ。

 彼女たちが不幸になる未来など。

 

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