蒼き氷刃の事件目録 ―探偵達と歩む非日常的な執筆生活― 作:凜々
米花町の商店街の一角、普段は芳醇な豆の香りが漂うコーヒーショップの周囲は、いまや無機質な黄色い規制線によって物々しく囲まれていた。色とりどりのケーキを詰めた箱を手に、蘭はその境界線の前で途方に暮れていた。
「あ、朱里さん!」
「おや、蘭ちゃんじゃないか。……その箱、もしかして有名店の新作かな? だけど残念、今は甘い香りに浸れる状況じゃないみたいだね」
不意に背後から声をかけたのは、朱里だった。いつもの凛とした佇まいで野次馬の波をかき分けると、蘭の隣で足を止める。
「そうなんです……お母さんとここで待ち合わせしてたんですけど、ちょっと喫茶店をでてお土産にケーキを買っていた間にこんなことになっちゃって。そんなに長い時間離れていたわけじゃないのに」
何でこんな短時間に事件が起こるのか・・・・蘭が困り果てたように言っている。
もしかしたら、蘭がいるのならコナンもいるかもしれない。
「(あの子がいるのなら、事件が起こってもおかしくないかもね・・・)」
コナンと出会ってから間もない朱里でも短い間に事件に複数回遭遇していた。
あの子の事件遭遇率は異常ではない。同じ家に住んでる蘭は私よりももっと事件に会っているのかもしれない。
「それにしても、お母様とこの店で待ち合わせなんて。お母様もこの辺りに詳しいのかしら?」
朱里が何気なく尋ねると、蘭は少し誇らしげに、けれど困ったように笑った。「はい。母は妃英理といって、今は弁護士をしているんです。」
「妃英理……ああ、あの『法曹界の女王』か。彼女が君のお母様だったとはね」
驚く朱里に、蘭は目を輝かせる。「朱里さんもご存知なんですか? 」
「確か東都大学だったよね?私も学部違えど同じ東都大出身だからね。彼女の伝説は語り継がれているよ。」
「えっ、本当ですか! 朱里さんも東都大学なんですね!」
凄惨な事件現場のすぐ傍らで、二人は意外な共通点に声を弾ませた。弁護士として活躍する母の学生時代の噂や、大学周辺の馴染みの店の話。規制線の内側の緊張感とは裏腹に、東都という共通の地名が、二人の距離を日常の温かさで繋いでいった。
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中には入れないけれど、驚きの共通点を見つけ盛り上がる蘭と朱里。
盛り上がり始めれば、あっという間に時間は過ぎていき、ようやく規制線が解除された。
「あれ、朱里姉ちゃん?」
「やっぱり、コナン君もいたんだ・・・」
「どうしてここに?ていうかやっぱりって何?」
「さっき、蘭ちゃんと規制線の外で会ってね。少し喫茶店離れている間に事件起きてて入れなくなったーって言っているものだから。てっきり君もいるんじゃないかと思ってね。」
「(ははは・・・・悪かったな。確かに、俺が行く先々で事件が起きている気はするけどさ)」
朱里に暗にコナンのいるところ事件ありと言われ引きつった笑いを浮かべ、心の中で冷や汗を流した。
「あ、朱里さん。紹介しますね。こっちが私のお母さん。っでこちらが朱里さん。朱里さんも東都大出身なのよお母さん。」
蘭は自分の母、恵理にいかに空手がすごいのか、を目を輝かせながら自慢していた。
面を向って、そこまで褒められるとさすがの朱里も照れ笑いを浮かべた。
「あら、最近は結構、蘭ともよく会うのよね?一人娘だから一緒に暮らしていないから心配で・・・だって、あの人はデリカシーないし・・・」
たとえ一緒に暮らしてないけども娘を心配する姿は立派な母親だった。
「えぇ、任せてください。」
妃を安心させるように、力強く返事をした。