いわゆる、夢小説と呼ばれるものが好きだった。
素晴らしい原作の、かっこいい登場人物達。
本来なら絶対に私なんかに微笑みかけてくれるはずがない彼らが、
たちまち夢中になった。
あらゆる推しの名前を検索エンジンに入れた。
それでも満足できなくて、そのうち読んだ作品を必ず一度は作品名で検索するようになっていった。
そうして私は、夢見る女児から立派な夢女子に進化したのだ。
創作物は基本的になんでも好きだったけれど、原作キャラの妹として転生するものが特に好きだった。
特別だけれど非力な
それでも、私にはキラキラと煌めいて見えていたんだ。
思えば私は「かっこいい誰かに愛される」というシチュエーションが好きだったのかもしれない。
何度も、こんな世界に行けたらいいのに、と願った。
それこそ、死の間際でも願うほどに。
「おにぃさまー!」
どうやら神様は存在したらしい。
願いは叶えられ、気がつけば私は親の顔よりも見た典型的ファンタジー世界にうまれかわっていた。
ふわふわとした金糸の髪。
海を閉じ込めた右目と、炎を宿した左目。
玉のような白い肌に、小さな体。
ビスクドールよりも美しくて可愛らしいその少女が、
「どうしたんだい? エリス」
私が振り返り返事をすれば、
「花冠を作ったのです!
その、おにいさまに貰って欲しくて……」
「エリスが作ってくれたのかい? ふふっ私は幸せ者だね」
おずおずと差し出された花冠を受け取り、自身のイケメンフェイスに似合うキザな礼を言う。
口を緩ませて嬉しそうにする妹は、本当に可愛い。
それはもう、彼女に会えたというだけで、前世で死んでしまったという不幸が最大の幸運だったのではないかと思うほどだ。
神様には本当に感謝している。
そう、感謝している。
けど、けれども。
神様!!ちょ〜っと違う!!!
私がなりたかったのは
「おにーさま?」
花冠を持ったまま思考がトリップした私を見上げてくる世界一、いや宇宙一可愛い妹。
とりあえず頭を撫でておく。
……あ、目を細めて嬉しそうにしてる。
ハァ〜〜〜かっわいいなぁぁぁぁぁ!!!!
けど本当は私がそのポジションにいたかったかなぁぁぁ!!!!!!!
「エリスは可愛いね」
「えへへ嬉しいのです!」
内心を隠し、前世の私が見たら奇声を上げて喜ぶであろうイケメンスマイルを浮かべる。
まあ、流石に12年も生きていれば美少年ロールも板につくので……
チートも貰っておいて、これ以上望むのは強欲なんだろうけれど。
どーにかして理想のヒロインポジになれないものか。
叶わぬ願いを胸に厳重に仕舞い込んで、今日も私は妹の柔らかい髪を撫で続ける。
ちなみに