春、それは出会いの季節。
新しい友人や上司、もしかしたら恋人に出会えるかもしれない!そうやって君は心を踊らせることだろう。もしくは不安に押しつぶされているかもしれない。
そんな君にこそ読んで欲しい、少しおかしなコンビニと私のお話。
──────ちなみに、これを読み切った君はSAN値チェックだ。

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第1話

4月、私は大学を卒業してなんとか就職先を勝ち取り東京の閑静な住宅街に越してきた。

いままで全員知り合いみたいな田舎住まいだったから東京の人の多さや騒がしさには圧倒されるばかりだけど、これから頑張るつもりだ。実家のお母さんとお父さんにもしばらく帰んないから!と言ってきたし、憧れの東京、めいいっぱい成長してやる!と、意気込んでいた。...このコンビニに入店するまでは。

「らっしゃーせー」

越してきたは良いものの初日じゃ調理道具など揃えれてるわけもなく出来合いのものを買わなければいけなかった為、近くのコンビニまで来た。車を使わなくてもコンビニがある事に感動しつついつもの入店音と店員の適当な挨拶を聞きながらお惣菜コーナーを探す。..あったあった!結構品揃えが豊富で迷いながらもパスタを手に取り会計に向かおうとした、その時。

近くにいたOL風の女の人が決めポーズを取りキレキレで踊りながら何かを歌い始めた。

「叩けボーンゴ♪響けサ~ンバ♪」

...これ、マツケンサンバか?コンビニの中で突然歌い踊り出した女の人に戦慄しつつ気配を消して会計を済ませコンビニから出ることに成功した。オレ!!と背後から聞こえるが私は何も見ていないし聞いてない。都会は怖いと聞いていたがこれほどまでとは。都会ではスルースキルが大切だと忠告してくれていた近所のばーちゃんに心の中で感謝しつつ帰路に着いた。

次の日。家具の荷解きが終わり、お昼ご飯にしようと冷蔵庫を開けたが何も入ってない。

当たり前だが、晩飯の残りが毎回残っていた実家の冷蔵庫が少し恋しくなってしまった。まあそんなことを言ってても料理が湧いて出てくる訳でもないし大人しくコンビニに向かおうとする所で昨日の事件を思い出した。OLマツケンサンバ事件だ。まあ女の人も疲れてたんだよね、と無理やり納得しつつコンビニへと足を進めた。

自動ドアの前に立ち、いつもの入店音を待つ。...何も鳴らない..?故障かな..コンビニの不信な静けさに戸惑いを覚えつつも足を進める。今日はおにぎりにしようとお惣菜コーナ一の隣にたどり着いたその時。ジャン!!ジャジャン!!!

と入店メロディーを流すオーディオから聞いたことのある前奏が聞こえてきた。...マツケンサンバだ。確実にマツケンサンバの前奏だ。音楽に詳しい訳じゃないがこんな特徴的な前奏はマツケンサンバしか聞いたことない。しかも前奏と共にやけにきらびやかな衣装の店員さんが従業員入口から出てきた。周りのお客さんも一緒になって踊っている。しばらく呆気にとられていたが、気づいてしまった。囲まれている。曲は止まらない。やばい、サビが来る。周りの踊り子たちからの視線が痛い。お前がマツケン役だと目線で訴えかけられている。都会怖すぎる。切実に実家に帰りたい。必死に田舎のばーちゃんの助言を思い出す。昨日はあれに助けられたのだ、何か、何か言ってなかっただろうか...焦りながら考えているとひとつ思い出した。

「いいかい、都会はなぁ、周りに合わせることも大事なんじゃよぉ。」

えぇいままよ!!!!周りに合わせてマッケンサンバを踊る。テレビで何回か見たくらいだから実際はそんなに踊れていない気がするがもうそんなの構わない。叩けボンゴ!響けサンバ!!!踊れ南のカルナバル!!!

マ・ツ・ケ・ンサンバ!!!!オレ!!!!

私は踊りきることに成功した。謎の達成感を胸に会計に向かう。店員さんも普通にレジにたっている。格好はキラキラしたままだが。

お会計を済まし店を出る。...もう二度と私がこの店を利用することは無いだろう。

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