『攻撃できないキャスターで聖杯戦争を勝ち抜く方法』   作:牛☆大権現

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帰る場所のために

 地下搬送路が開いていた。

 

 黒い穴。

 

 その奥から。

 

 無数の軍用ドローンが浮かび上がる。

 

 赤い単眼。

 

 機銃。

 

 爆薬。

 

 まるで。

 

 都市そのものが、

兵士を産んでいるみたいだった。

 

「……冗談だろ」

 

 アレクセイが息を呑む。

 

 数が多すぎる。

 

 十。

 

 二十。

 

 いや。

 

 百はいる。

 

『完全自律戦闘網!』

 

 カウレスが叫ぶ。

 

『これもう小規模軍隊だ!』

 

 フラットが引き気味に笑った。

 

『いや笑えないってコレ!』

 

『魔術師のやることじゃない!』

 

 その瞬間。

 

 ヴィクトールの声が街へ響く。

 

『これが次世代戦争だ』

 

 冷たい声。

 

『兵士は不要』

 

『感情も不要』

 

『都市が戦えばいい』

 

 ガコン――!!

 

 ドローン群が一斉展開。

 

 避難民へ照準が向く。

 

「っ!!」

 

 真澄が符を叩きつけた。

 

「東方木気・展開!」

 

 緑色の結界。

 

 瞬間。

 

 機銃掃射。

 

 ガガガガガガガガッ!!

 

 火花。

 

 結界が軋む。

 

「ぐっ……!」

 

「真澄!」

 

「平気!」

 

 だが。

 

 多すぎる。

 

 結界一枚じゃ、

全部は防げない。

 

 その時。

 

 園部秀雄が、

静かに前へ出た。

 

 薙刀を構える。

 

 老いた背中。

 

 だが。

 

 異様に大きく見えた。

 

「ランサー……?」

 

 アレクセイが息を呑む。

 

 園部は静かだった。

 

 呼吸が深い。

 

 雨音すら、

そこだけ穏やかになる。

 

「武とは」

 

 低い声。

 

「人を帰すためのものです」

 

 一歩。

 

 踏み込む。

 

 次の瞬間。

 

 薙刀が消えた。

 

「――ッ!?」

 

 アレクセイの目が追いつかない。

 

 いや。

 

 違う。

 

 速いんじゃない。

 

 “無駄がない”。

 

 ガガガガガガッ!!

 

 機銃弾が弾かれる。

 

 薙刀が回る。

 

 滑らかに。

 

 柔らかく。

 

 だが。

 

 異常に重い。

 

 一機。

 

 二機。

 

 三機。

 

 ドローンが斬り落とされる。

 

 その時。

 

 園部秀雄が、

静かに目を閉じた。

 

「真名、解放」

 

 空気が変わる。

 

 アレクセイの背筋が震えた。

 

 まるで。

 

 道場。

 

 朝の冷気。

 

 木の床。

 

 静かな鍛錬。

 

 そんな空気が、

戦場へ広がっていく。

 

「『修徳館・女武道の継承』」

 

 瞬間。

 

 結界展開。

 

 淡い白。

 

 柔らかな光。

 

 それが、

街全体へ広がった。

 

『っ!?』

 

 カウレスが叫ぶ。

 

『戦場判定が変わった!?』

 

 エルメロイⅡ世が、

即座に理解する。

 

『なるほど……!』

 

『ランサー、“戦場そのものの意味”を書き換えている!』

 

 ドローン群が止まる。

 

 赤い単眼が明滅。

 

 照準がブレる。

 

 ヴィクトールが初めて眉をひそめた。

 

『……何をした』

 

 園部秀雄は静かに答えた。

 

「ここは、道場です」

 

 一拍。

 

「子供を撃つ場所ではありません」

 

 その瞬間。

 

 都市術式が軋んだ。

 

 ガギギギギ――……

 

 赤い光が不安定になる。

 

 アレクセイは目を見開く。

 

「結界が……都市術式を押してる!?」

 

『概念衝突だ!』

 

 フラットが叫ぶ。

 

『ヴィクトールは“都市=戦場”へ変換してる!』

 

『でもランサーは、“ここは武を継ぐ場所”って定義してる!』

 

 植芝盛平が、

静かに頷いた。

 

「うむ」

 

「良い武じゃ」

 

 その時。

 

 ルーデルが空で、

小さく笑った。

 

「……道場、か」

 

 低い声。

 

 どこか懐かしそうだった。

 

「そういう場所は」

 

 一拍。

 

「守られるべきだな」

 

 その瞬間。

 

 爆撃機が旋回。

 

 次の瞬間。

 

 ルーデルの機関砲が火を吹いた。

 

 だが。

 

 狙ったのは、

避難民ではない。

 

 都市中央。

 

 ヴィクトール側の大型通信塔。

 

 轟音。

 

 爆発。

 

 アンテナが吹き飛ぶ。

 

『ライダー!?』

 

 ヴィクトールが叫ぶ。

 

「何をしている!」

 

 ルーデルは答える。

 

 低い声で。

 

「戦争にも、場所を選ぶ権利はある」

 

 アレクセイは息を呑んだ。

 

 その瞬間。

 

 ヴィクトールの顔から、

初めて余裕が消えた。

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