『攻撃できないキャスターで聖杯戦争を勝ち抜く方法』 作:牛☆大権現
赤い光。
都市全域の機械群が、
一斉にアレクセイへ照準を向けていた。
監視カメラ。
機銃。
ドローン。
全部。
全部が、
殺意へ変わっている。
「アレクセイ!」
真澄が叫ぶ。
だが。
間に合わない。
その瞬間だった。
パンッ――!!
乾いた銃声。
一機。
ドローンが墜ちる。
続けて。
パンパンパンパンパンッ!!
光のような早撃ち。
機銃群が次々沈黙する。
ボブ・マンデン。
帽子を押さえながら、
静かに笑った。
「おいおい」
「決闘の最中に横槍とは無粋だぜ」
その瞬間。
空気が変わる。
アーチャーの霊基が、
鋭く収束した。
「真名、解放」
低い声。
『一瞬の西部劇』
瞬間。
世界が止まったみたいだった。
抜く。
撃つ。
納める。
その全てが、
“既に終わった後”として知覚される。
ドローン群が、
時間差で爆散した。
ヴィクトールが目を見開く。
『因果先行射撃……!?』
『馬鹿な』
エルメロイⅡ世が即座に解説する。
『違う』
『あれは“決闘”の概念強制だ』
一拍。
『アーチャーは、
自分と敵を“一対一の早撃ち”へ落とし込んでいる』
『だから乱戦ほど異常に強い』
その時。
霧が揺れた。
パンッ――!!
ヘイヘの狙撃。
通信塔上部アンテナが砕ける。
「アサシン!」
アレクセイが叫ぶ。
霧の奥。
静かな声。
「撃ち続ける」
一拍。
「お前が進め」
同時。
白い迷彩が、
都市の熱源認識を狂わせる。
アサシンの宝具。
『白い死神』
真名解放ではない。
常時発動型。
だが。
最大展開。
霧。
雨。
煙。
白いノイズ。
それら全てが、
“狙撃圏”へ変わる。
都市側の照準が乱れる。
『熱源認識阻害!』
カウレスが叫ぶ。
『索敵精度が落ちてる!』
さらに。
舩坂弘が立ち上がる。
血まみれのまま。
骨が折れたまま。
だが。
止まらない。
「バーサーカー……!」
ヘレナが歯を食いしばる。
「本当に壊れるわよ……!」
舩坂は答えない。
ただ。
前へ出る。
都市機械群の銃火を、
真正面から引き受ける。
肉が裂ける。
血が飛ぶ。
それでも。
止まらない。
戦闘続行EX。
そして。
常時発動型宝具。
『不死身の分隊長』
“死ねない”という現象そのもの。
植芝盛平が、
静かに目を閉じた。
「……帰れなんだ兵士か」
その時。
空。
ルーデルの爆撃機が、
ゆっくり旋回した。
低い声。
「終わらせるぞ、ヴィクトール」
『黙れ、ライダー!』
ヴィクトールが叫ぶ。
『お前は兵器だ!』
『ならば何故理解できない!?』
『戦争とは進化だ!』
『国家も!』
『都市も!』
『人間も!』
『全て戦争で発展した!!』
赤黒い術式が脈動する。
都市全域。
地下送電網。
通信インフラ。
全部が魔力炉へ接続されている。
エルメロイⅡ世が低く呟いた。
『なるほどな……』
「先生!?」
『ヴィクトールは、
都市を礼装化しているんじゃない』
一拍。
『都市文明そのものを、
巨大な降霊装置として使っている』
アレクセイが息を呑む。
Ⅱ世は続けた。
『通信網は“神経”』
『送電網は“魔術回路”』
『物流は“血流”』
『監視網は“感覚器”』
『つまり』
一拍。
『都市を一つの生命体として扱っている』
フラットが顔を引きつらせた。
『うわぁ……』
『現代版ゴーレムじゃん』
『しかも超大規模』
ライネスが静かに補足する。
『だから魔力源が異常なのよ』
『都市活動そのものを、
擬似的な魔力循環へ変えてる』
『人の営みを燃料にしてるの』
アレクセイの背筋が寒くなる。
「じゃあ……」
『そうだ』
Ⅱ世が即答する。
『ヴィクトールは最初から、
聖杯戦争を“都市実験”として利用していた』
ヴィクトールが笑った。
冷たい笑み。
「その通りだ」
一拍。
「神秘は衰退する」
「隠すからだ」
「秘匿するからだ」
「ならば現代社会へ接続すればいい」
赤黒い光が強まる。
「戦争こそ、
最も効率的な人類統合システムだ」
沈黙。
その瞬間。
ルーデルが低く呟いた。
「……違うな」
爆撃機が降下する。
超低空。
「戦争は」
一拍。
「人間を壊す」
その時だった。
植芝盛平が、
静かに前へ出た。
「アレクセイ」
「……ああ」
白い稽古帯を握る。
呼吸。
腰。
足裏。
最初に教わったこと。
力むな。
押し返すな。
流れを見ろ。
その瞬間。
アレクセイは初めて理解した。
ヴィクトールは。
戦争を“制御”しようとしている。
だから。
壊れる。
植芝が静かに構える。
「真名、解放」
空気が止まった。
『武産合気・天地因果返し』
瞬間。
都市全域の殺意が、
反転した。
赤黒い魔力流。
戦争の用途霊。
恐怖。
怒り。
殺意。
それら全てが。
ヴィクトール自身へ流れ始める。
『なっ――!?』
ヴィクトールの顔が歪む。
「馬鹿な!」
「何故だ!」
植芝の声は静かだった。
「武とは」
一拍。
「本来、人を生かすものじゃ」
その瞬間。
アレクセイが走った。
通信塔中心。
赤黒い演算核へ。
火星護符。
水星護符。
太陽護符。
全部展開。
でも。
最後に踏み込んだのは、
魔術じゃなかった。
合気道の歩法。
無駄のない重心移動。
植芝が、
小さく笑う。
「よい」
アレクセイが叫ぶ。
「帰れッ!!」
拳が、
都市核へ突き刺さった。
次の瞬間。
赤黒い演算核に、
巨大な亀裂が走った。