『攻撃できないキャスターで聖杯戦争を勝ち抜く方法』   作:牛☆大権現

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型の果て

 瓦礫の街。

 

 静かな雨。

 

 その中を。

 

 二つの影が歩いてくる。

 

 黒田鉄山。

 

 そして。

 

 神代静馬。

 

 アレクセイは、

思わず息を呑んだ。

 

 セイバー。

 

 まだ本格的に戦っていないのに。

 

 空気が違う。

 

 静か。

 

 なのに。

 

 近づくだけで、

皮膚が粟立つ。

 

 黒田鉄山は、

ゆっくり街を見渡した。

 

 壊れた建物。

 

 焦げ跡。

 

 血。

 

 避難民。

 

 そして。

 

 植芝盛平。

 

 老人同士。

 

 だが。

 

 その間に流れる空気は、

まるで抜刀寸前だった。

 

「……酷い有様ですね」

 

 黒田が静かに言う。

 

 植芝は小さく頷いた。

 

「戦場になってしもうた」

 

「ええ」

 

 一拍。

 

「武を、兵器へ落とし込んだ結果です」

 

 その時。

 

 神代静馬が、

アレクセイを見た。

 

「生きてたか」

 

「お前もな」

 

 静馬は鼻で笑う。

 

「死ぬほど甘い戦い方だったぞ」

 

「うるせぇ」

 

「だが」

 

 一拍。

 

「嫌いじゃない」

 

 その言葉に。

 

 アレクセイは少しだけ目を見開く。

 

 前と違う。

 

 静馬の空気が。

 

 以前みたいな、

“勝つことしか見えてない人間”じゃない。

 

 その時。

 

 通信術式が開く。

 

『……セイバーか』

 

 エルメロイⅡ世。

 

 その声に、

わずかな緊張が混ざる。

 

『直接会うのは初めてだな』

 

 黒田鉄山が、

静かに頭を下げた。

 

「ロード・エルメロイⅡ世」

 

「お噂は」

 

『やめてくれ』

 

『ろくな噂じゃない』

 

 即答だった。

 

 フラットが吹き出す。

 

『先生それ自覚あるんだ』

 

『うるさい』

 

 その時。

 

 黒田鉄山が、

通信越しに静かに言った。

 

「……ロード」

 

『何だ』

 

「今回の戦争」

 

 一拍。

 

「武が観測されているのでしょう」

 

 沈黙。

 

 Ⅱ世は否定しなかった。

 

『どこまで気づいている』

 

 黒田は、

崩れた通信塔を見上げる。

 

「“型”です」

 

 アレクセイが眉をひそめる。

 

「型?」

 

 黒田は静かに続けた。

 

「技術とは、型です」

 

「型とは」

 

 一拍。

 

「人が積み重ねた、生存の記録だ」

 

 雨が降る。

 

 静かな声だけが響く。

 

「どう動けば死ぬか」

 

「どう動けば生きるか」

 

「どう動けば、人を守れるか」

 

「それを後世へ残す」

 

「それが型」

 

 植芝盛平が、

静かに頷いた。

 

「うむ」

 

 黒田は続ける。

 

「だが今回の聖杯は」

 

 一拍。

 

「型を“管理”しようとしている」

 

 アレクセイの背筋が寒くなる。

 

 Ⅱ世が低く言った。

 

『……やはりそこへ辿り着くか』

 

「先生?」

 

『アレクセイ』

 

 通信越し。

 

 Ⅱ世の声が重い。

 

『聖杯とは、本来“記録装置”だ』

 

 一拍。

 

『英霊召喚も、

本質的には“人類史の保存”に近い』

 

 フラットが珍しく黙っている。

 

『だが今回は違う』

 

 Ⅱ世が続けた。

 

『今回の亜種聖杯戦争は』

 

『武の記録だけを異常に偏重している』

 

『戦闘理論』

 

『殺人技術』

 

『生還理論』

 

『教育体系』

 

『対軍思想』

 

『対人思想』

 

『それらを、

サーヴァント同士の衝突で抽出している』

 

 神代静馬が、

静かに呟いた。

 

「……武を、再現するためか」

 

『おそらくな』

 

 Ⅱ世が答える。

 

『ヴィクトールは途中段階だ』

 

『都市を戦場化し、

戦争をシステム化した』

 

『だが黒幕はもっと先を見ている』

 

 一拍。

 

『“人類管理用の武”だ』

 

 空気が冷えた。

 

 その時。

 

 植芝盛平が、

初めて明確な怒気を滲ませた。

 

「戯けが」

 

 低い声。

 

 なのに。

 

 その場の全員が、

一瞬息を止めた。

 

「武とは」

 

 一拍。

 

「人を縛るためのものではない」

 

 その時だった。

 

 真澄が、

ふと顔を上げる。

 

「……来る」

 

 次の瞬間。

 

 周囲の結界が、

静かに揺れた。

 

 アレクセイは反射的に身構える。

 

 だが。

 

 空間転移ではない。

 

 空気の継ぎ目が、

ずれるような感覚。

 

 まるで。

 

 “最初からそこにいたもの”が、

境界の向こうから滲み出てきたみたいに。

 

 黒田鉄山が目を細める。

 

「教会ですか」

 

 雨の中。

 

 路地裏の暗がりから。

 

 白い法衣の男が、

静かに歩いてくる。

 

 足音は小さい。

 

 殺気も薄い。

 

 なのに。

 

 全員が本能で理解した。

 

 危険だ。

 

 男は、

崩れた都市を見渡した。

 

 通信塔。

 

 瓦礫。

 

 英霊。

 

 そして。

 

 植芝盛平。

 

「……派手にやったな」

 

 低い声。

 

 感情は薄い。

 

 だが。

 

 怒っていない訳ではない。

 

『代行者』

 

 エルメロイⅡ世が低く呟く。

 

『何故お前が来る』

 

 男は小さく肩を竦めた。

 

「最初から日本にはいた」

 

 一拍。

 

「教会側監視拠点だ」

 

 フラットが小声で呟く。

 

『うわ、そっちか』

 

『そりゃそうだよな』

 

 代行者は続ける。

 

「都市規模神秘汚染」

 

「英霊級反応複数」

 

「軍事級結界」

 

「通信汚染戦」

 

「十分、確認案件だ」

 

 沈黙。

 

 その時。

 

 男の視線が、

植芝盛平へ向いた。

 

 空気が変わる。

 

 代行者。

 

 キャスター。

 

 互いに沈黙。

 

 長い。

 

 その後。

 

 男が小さく目を細めた。

 

「……変わった霊基だな」

 

 植芝は笑った。

 

「ただの老人じゃ」

 

「そんな訳がない」

 

 即答だった。

 

 一拍。

 

「貴方、“救済寄り”だ」

 

 その瞬間。

 

 黒田鉄山が、

静かに前へ出る。

 

「それ以上は」

 

「こちらも警戒する」

 

 代行者の目が細まる。

 

「セイバーか」

 

「ええ」

 

「速いな」

 

「お互い様です」

 

 静かな会話。

 

 なのに。

 

 アレクセイは背筋が寒かった。

 

(今この人達、

普通に殺し合える距離だ)

 

 その時。

 

 神代静馬が、

ゆっくり口を開く。

 

「で」

 

「アンタ何しに来た」

 

 代行者は即答した。

 

「確認だ」

 

「何を」

 

「お前達が」

 

 一拍。

 

「まだ“人間側”かどうか」

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