『攻撃できないキャスターで聖杯戦争を勝ち抜く方法』 作:牛☆大権現
京都へ向かう新幹線。
窓の外を、
夜の街が流れていく。
アレクセイは、
座席に深く沈み込んでいた。
疲れていた。
本当に。
戦い。
負傷。
情報量。
そして。
黒幕の存在。
「……眠れんか」
植芝盛平が隣で言う。
「まあ」
アレクセイは苦笑した。
「普通、
眠れないだろ」
「そうかの」
「そうだよ」
その時。
通信術式が開く。
『全員揃ったな』
エルメロイⅡ世。
その声に。
今までより明確な緊張が混じっていた。
『これより、
京都作戦会議を行う』
通信の向こう。
いつもの教室ではない。
時計塔の会議室。
しかも。
人数が増えている。
ライネス。
グレイ。
フラット。
カウレス。
スヴィン。
イヴェット。
さらに。
見慣れない魔術師達。
アレクセイが眉をひそめる。
「誰?」
『応援だ』
Ⅱ世が即答した。
『流石にここから先は、
私の教室だけでは足りん』
フラットが笑う。
『先生が素直に援軍呼ぶとかレアだよね』
『黙れ』
その時。
ライネスが静かに言った。
『本題に入りましょう』
空気が変わる。
全員が真面目になる。
『まず』
『京都が狙われる理由』
地図が展開される。
京都。
市街地。
神社。
寺院。
霊脈。
『日本最大級の神秘集積地だからよ』
一拍。
『冬木とは比較にならない』
画面が切り替わる。
無数の光点。
地脈。
霊脈。
霊地。
結界。
まるで蜘蛛の巣だった。
アレクセイは息を呑む。
「なんだこれ」
『千年以上積み上がった神秘』
グレイが静かに答える。
『神社だけじゃありません』
『寺院』
『陰陽道』
『密教』
『修験道』
『古神道』
『全部が重なっています』
その時。
真澄が小さく唸った。
「最悪だな」
「分かるのか?」
「分かる」
一拍。
「京都で大規模術式やるってことは」
真澄の顔が険しくなる。
「地脈ごと武術化する気だ」
沈黙。
その言葉に。
全員が黙った。
Ⅱ世が続ける。
『私も同意見だ』
『おそらく黒幕の目的は』
『英雄一人の再現ではない』
『武という概念そのものの保存』
『そして運用』
植芝盛平が静かに呟く。
「武の標本化か」
『近い』
Ⅱ世が頷く。
『もっと悪いがな』
その時。
通信へ新しい声が入った。
『なら話は簡単だ』
男。
若い声。
少し乱暴。
アレクセイは聞き覚えがなかった。
『保存する前に壊せばいい』
「誰だ?」
フラットが楽しそうに笑う。
『あー』
『紹介まだだった』
『時計塔の武闘派』
『うちの外部協力者』
その男は笑った。
『初めまして』
『俺は使い魔専門だ』
『でも今回は殴る』
「雑だな」
『そうか?』
その時。
植芝盛平が小さく笑う。
「若いのう」
少しだけ。
空気が軽くなる。
だが。
その直後。
Ⅱ世が低く言った。
『もう一つ』
空気が変わる。
『京都には既に』
『他陣営が集まり始めている』
アレクセイが顔を上げる。
「他陣営?」
『アーチャー』
『ランサー』
『セイバー』
『バーサーカー』
『そして』
一拍。
『アサシン』
沈黙。
『全員が向かっている』
つまり。
次の戦場は違う。
もう。
一陣営との戦いではない。
聖杯戦争そのもの。
全てのサーヴァント。
全てのマスター。
全ての思想。
それらが京都へ集まる。
そして。
Ⅱ世は最後に言った。
『諸君』
『ここから先が本番だ』
新幹線の窓に。
京都の灯りが見え始めていた。