『攻撃できないキャスターで聖杯戦争を勝ち抜く方法』   作:牛☆大権現

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古都の守り手

 京都駅。

 

 夜。

 

 人混み。

 

 観光客。

 

 学生。

 

 サラリーマン。

 

 誰も知らない。

 

 この街が、

次の戦場になることを。

 

 アレクセイは駅舎を見上げた。

 

「……普通だな」

 

「だから厄介なんじゃ」

 

 植芝盛平が答える。

 

「人がおる」

 

「生活がある」

 

「守るものが多い」

 

 一拍。

 

「戦場にしてはならん」

 

 その言葉に。

 

 アレクセイは頷いた。

 

 今回。

 

 東京とは違う。

 

 最初から避難などできない。

 

 京都は生きている。

 

 人が多すぎる。

 

 その時。

 

 真澄が立ち止まった。

 

「……来る」

 

 アレクセイは身構える。

 

 だが。

 

 敵意はない。

 

 むしろ。

 

 懐かしい空気。

 

「遅かったな」

 

 聞き覚えのある声。

 

 振り返る。

 

 そこにいたのは。

 

 神代静馬。

 

 そして。

 

 黒田鉄山。

 

 さらに。

 

 もう一人。

 

 小柄な老女。

 

 薙刀を背負っている。

 

 園部秀雄。

 

「ランサー」

 

 アレクセイが呟く。

 

 園部は静かに笑った。

 

「久しぶりですな」

 

「いや数日ぶりだろ」

 

「武の世界では長いのです」

 

 妙に納得してしまった。

 

 その時。

 

 静馬が真顔で言う。

 

「笑い事じゃない」

 

 一拍。

 

「京都の結界が削られてる」

 

 空気が変わる。

 

「どこが?」

 

 真澄が即座に問う。

 

 静馬は地図を取り出した。

 

 赤い印。

 

 五箇所。

 

「伏見」

 

「鞍馬」

 

「比叡」

 

「嵐山」

 

「東山」

 

 アレクセイは眉をひそめる。

 

「共通点は?」

 

「全部霊脈だ」

 

 即答。

 

「京都を支える主要ノード」

 

 Ⅱ世の声が通信に割り込む。

 

『正確には六つだ』

 

「六つ?」

 

『一つは既に消えている』

 

 沈黙。

 

『西山だ』

 

 アレクセイの背筋が冷える。

 

 既に。

 

 始まっている。

 

 その時。

 

 別の通信が割り込んだ。

 

『やっほー』

 

 明るい声。

 

 フラットだった。

 

『今ね』

 

『アーチャー陣営と合流した』

 

「え?」

 

『クララさん超怖い』

 

『あとボブ・マンデンさん超面白い』

 

 通信の向こうで。

 

 乾いた笑い声が聞こえる。

 

『ハッハッハ!』

 

『日本は狭いな!』

 

 ボブ・マンデン。

 

 アーチャー。

 

 彼も京都入りしていた。

 

『情報共有する』

 

 今度はクララの声。

 

 いつも通り冷静だ。

 

『既に複数の使い魔が消えている』

 

『こちらの狙撃観測も妨害された』

 

『敵は結界だけでなく』

 

 一拍。

 

『観測者そのものを狩り始めている』

 

 沈黙。

 

 それはつまり。

 

 敵も焦っている。

 

 その時だった。

 

 駅前の大型モニターが。

 

 突然。

 

 砂嵐に変わった。

 

 全員が顔を上げる。

 

 一般人は気付かない。

 

 だが。

 

 魔術師達には分かった。

 

 魔力反応。

 

 大規模。

 

 しかも。

 

 意図的。

 

『……まずい』

 

 Ⅱ世が呟く。

 

 次の瞬間。

 

 画面に文字が映る。

 

 一般人には見えない。

 

 魔術師だけが認識できる術式。

 

 そこには。

 

 一行だけ。

 

 書かれていた。

 

---

 

 『ようこそ、京都へ』

 

---

 

 沈黙。

 

 誰も喋らない。

 

 その下。

 

 さらに文字が続く。

 

---

 

 『次は英雄を観測しない』

 

 『英雄を量産する』

 

---

 

 アレクセイの背筋が凍る。

 

 だが。

 

 本当に恐ろしかったのは。

 

 最後の一文だった。

 

---

 

 『最初の実験体は、既に完成している』

 

---

 

 画面が消える。

 

 静寂。

 

 風だけが吹く。

 

 その時。

 

 植芝盛平が、

ゆっくり目を閉じた。

 

「……間に合わんかったか」

 

 老人の声は。

 

 今までで一番重かった。

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