未完のまま終わる事は無く、その続きはいつの日にか必ず。
舞台少女として、数多のオーディションを勝ち抜け続け、無敗王者と呼ばれるまでに頂点へと登り詰めた少女。白鷺学園第84期生、月村 有栖。
そんな彼女がトップスタァに輝くまであと一歩。
長きに渡る舞台決闘の末に辿り着いた場所。これが正真正銘、最後のオーディション。
「オーディション最終日、終末のレヴューの開演です。」
有栖は舞台へと上がり、無敗王者としての風格を漂わせながら歩き出す。
―――その有栖と対するは、天性の劇場最強と謳われる帝王。白鷺学園第84期生第70代生徒会長である九条 真姫。
王者と帝王。有栖と真姫。
どちらも歩む足を止める事なく、舞台の中央へと近付きながら顔を見合わせる。
不規則にカツンカツンと軽い靴音が鳴り、2人の距離が5メートルを切った辺りで、足が止まる。
真っ直ぐ前を見据える有栖と、何か言いたげな表情をしている真姫。
今にでも戦闘開始となりそうな雰囲気だが、どちらもとも動こうとする様子はない。長い沈黙が続いている。
先程まで会場に響き渡っていた歓声は無い。唯一聞こえるのは、互いのシンボルを示す大旗の揺れる音のみ。
「私も―――初めてこの学園に来て、舞台に上がった時。君と全く同じ事を考えていたと思う」
その静寂を切り裂いたのは、真姫だった。
「この学園に存在する何もかもが生ぬるい、たかがこの程度で日本最高峰を名乗れるのか……と」
数年前まで、学園の舞台決闘のシステムは腐りきっていた。
例え幾ら才能があろうとも、どんな実力持ち合わせようとも、“学年”が全てであり、最高学年組はあの手この手でその地位を保ち続けていた。
しかし、そのシステムを根本的に破壊したのが、今の『帝王』と呼ばれる人物。
真姫は入学当初から、自らが持ち得る才能を発揮し、たった数ヶ月で学園トップの座を獲得した天才。
誰も彼女に追いつけない。引き離された距離は努力で埋められるほど、短くない。
「だから、私は自分の力で変えた。この学園で繰り広げられる演舞を、努力では到底追いつけない『天性的な才能』を持つ者のみが頂点に届くシステムに」
真姫は右手を前に差し出し、有栖の目を見つめながら強く握り締める。
鋭く、今にも有栖へと突き刺さりそうな眼光に握られた手。その一挙手一投足が、劇場最強としてのカリスマ性を発揮していた。
見るものを惹きつける力、それに加えて圧倒的な才能も兼ね備えているのだ。―――『帝王』と呼ばれるのも頷ける。
「舞台は正しい人間の為にあり、選ばれた人のみが立つことが出来る場所だと。場数を踏んできた君は、そう思わなかったのか?」
異常な『頂点』への執着心。
その執着が間違いだと、有栖は断言する事が出来ない。
舞台に立ち、注目されるのはいつだって勝者だ。負ければ歓声を浴びることなど無く、そのまま闇に消えるも同然。
だから『役者』は、彼女らは『頂点』を目指し続ける。
それがこの学園に赦された、舞台決闘の意味だから。
「―――皆誰もが輝けるチャンスを与えられるシステムは素晴らしいと思うわ。でも、“才ある者のみ”に限られた舞台だと言うのなら、間違ってる」
「………何?」
真剣な表情で有栖はそう言い、ハイヒールの甲高い音を鳴らしながら、一歩ずつ歩き出して真姫へと近付く。
「―――舞台決闘は、才能が全てじゃない。いつだって頂点に輝くのは、諦めない心と信念を持った者。才能が全てで、努力が無駄な行為だなんて、私は絶対に認めない」
舞台決闘のみでの使用が赦される特殊剣に手を掛け、勢い良く抜剣した後、真姫に向かってゆっくりとその剣先を向ける。
「そういう君も、天性の才能でここまで上り詰めて来たのだろう?ならその発言は、矛盾になるのではないか?」
「―――ならないわ。何せ私の持ち得る才能は、努力の積み重ねによって掴み取った叡智の結晶」
有栖は剣先を真姫から遠避け、ハイヒールの踵を地面へと叩き付けて大きな音を響かせる。
希望の光に満ちた目、その目を真姫は知っている。
かつての自分がなりたかった、本当の自分。学年になど囚われず、ただひたすらに勝利を願った若き『帝王』が辿るはずだったもうひとつの道。
そんな道を一直線に駆け抜け、この場に佇む少女は言う。
「―――さあ、私たちの『レヴュー』を始めましょう」
少女歌劇レヴュースタァライトの二次創作となります。
ここまでしか完成していないので、気が向いたら全部作ろうと考えてます。