ポスアポ世界のTS便利屋お姉さんはほどほどに落ち着きたい   作:便利屋アルちゃん

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2 お姉さん流ほどほどコミュニティ形成術

 私が転生したのは、世界が終わった後の荒野だった。

 草木は枯れ果て、星は死に絶えた。

 けれども人々は力強く今を生きており、人以外の存在もまぁなんだかんだ跋扈しているのが今の世界だ。

 

 生まれ変わった私の最初の記憶は、荒野を腹をすかせながら歩いているところだった。

 どこぞの世紀末救世主のように、寂れた村で行き倒れたところを偶然すくわれたのだ。

 それ以前の記憶はない。

 最初からこの体は、今の合法ロリ巨乳ボディだったのだ。

 そして前世の記憶を取り戻す以前の”私”がいたかどうかは、はっきり言って怪しい。

 何せこの体、まったく年を取らないのである。

 

 新人類と呼ばれる存在が、各地で誕生している世の中だ。

 中には私のように、年を取らない新人類もいる。

 人の形をしていない新人類も、そこそこ。

 荒野に腹をすかせて歩く直前に生まれていたとしてもなんらおかしくないのが、今の世界だった。

 

 んで、私を拾ってくれた集落は、善い人たちの集まりだった。

 何せ新人類である私を、何の差別もなく受け入れてくれるのだから。

 現状、新人類が発生してからもう結構な時間が経っているため、そういうコミュニティも少なくはないが、差別意識だって消えてはいない。

 単純に私の運が良かっただけと言えるだろう。

 とはいえ、こんな世紀末でヒャッハーな世界でそれだとこのコミュニティは生きていくのにも苦労するはずだ。

 案の定、私が拾われてすぐにヒャッハー共……この世界だとボーガーと呼ばれる連中の襲撃にあった。

 これを撃退したのが、この世界における私の初陣。

 

 村人たちは感謝してくれた。

 私が残って用心棒をしてくれるなら、住む場所だって提供してくれるという。

 更に私の異能”ステータス”は優秀で、戦闘以外でも様々なところで活躍することができた。

 それから、しばらく。

 私はゆっくりと街を守りながら、便利屋お姉さんとしてこの世界に溶け込んでいったのである。

 

 人々は強い。

 私が街にいなくたって、彼らは根気強くこの世界を生きていく。

 とはいえ、この世界が厳しい。

 中には、どうしても見送らなければ行けない命もあった。

 救えない魂もあった。

 それらを乗り越えたり、受け入れたり。

 まぁ色々な経験をしていくうちに、コミュニティにも変化が起きる。

 

 人が増え始めたのだ。

 私という、便利で美人でつよつよなお姉さんがいたからだろう。

 中には私の体を狙ってやってくる連中までいる。

 元男性としての意識こそあるものの、もう長く便利屋お姉さんをやっているせいか、そういう手合のあしらい方にも慣れてしまった。

 メス落ちの予定は金輪際ないけれど、一人称は完全に”私”で固定である。

 何にしても、コミュニティが大きくなるということはそれだけいろんな人がやってくるということ。

 中には私のことを”救世主”だなんて呼ぶ人も現れる始末。

 

 しかしそれはいけない。

 私はほどほどに落ち着きたいのだ。

 決して目立って、終末世界に覇を唱えたいわけではない。

 むしろその逆。

 変に有名になるよりも、一つのコミュニティで顔が利くくらいの立ち位置にいたかった。

 

 とはいえ、困っている人間を見過ごすのも寝覚めが悪い。

 折角こんな善良なコミュニティに拾って貰ったんだ。

 その恩は、正しい形で返したいのである。

 であればどうすればいいか。

 私は、ちょうどいい方法を一つ考えた。

 結果、それは今のところうまく行っている……のではないだろうか。

 多分。

 

 

 ◯

 

 

 ムカデをショットガンでバンバンした後、私たちはまず助けた男のワーカーを取りに戻った。

 この世界で、新人類以外の人間が外でミュータントと戦おうと思ったらワーカーの存在は必須といっても過言ではない。

 旧時代の遺物や、各地で精算されるオンボロパーツを組み合わせて作ったすっとこロボ。

 それがワーカーである。

 分類としてはモビルスーツというよりスコタコに近い性能をしていた。

 終末世界にはそういうのが必要なんだよ、という神のご意思を感じるね。

 

「うわ、また派手に壊したなぁ」

「いやぁ……ムカデ相手に籠城戦してましたんで。むしろよく保ったといいますか……」

「そりゃそうだ。でなけりゃ救援要請しても私が間に合わないよ、君。まぁ頑張ったねと言っておこう」

 

 そしてワーカーが壊れた場所にたどり着くと、それはもう見るも無惨に色々ひしゃげていた。

 デカい岩と岩の隙間に挟まって、巨大なムカデがうまく攻撃できないように工夫している。

 おかげでどう考えても壊れてはいるけど、原型自体は保っているから修復は可能かもしれない。

 

「”ステータス”」

 

 軽くざっと全体をステータスで確認してみると、実際修復すればなんとかなりそうだ。

 とはいえ――

 

「……直さなきゃ行けない箇所が多すぎる!」

「っすよねぇ」

 

 私のステータス画面に移ったワーカーは、そのボディのあらゆる部分が真っ赤になっていた。

 これは修繕に必要な情報にステータス画面の表示を絞ったもので、ここがなおればまたワーカーが動きますよということが表示されている。

 完全に壊れていれば全体が灰色になって【LOST】とか表示されるので、一応こいつはコアとなる部分が生きていて修復が可能というわけ。

 

「解ってると思うけど、私の修理は時間がかかるよ。そろそろシオリがムカデ引っ張ってこっちに来ると思うから、今日は一日野営だかんね。設営はアンタがやること」

「そりゃ俺はそれくらいしかできないっすもんね……わかってるっすよ……」

 

 それから、バギーにムカデを引っ掛けたシオリが少し遅れてやってきた。

 私はバギーの後部座席から機材を色々取り出して、作業を開始する。

 その間にもシオリが料理の準備をしたり、テントの設営が進んだりと、向こうの方も色々動きがあるが、今は眼の前のワーカーに集中だ。

 

「さーて、どこから直していけばいいんですかねぇっと……”ステータス”」

 

 私がステータスを起動すると、ワーカーの壊れている部分がすべてステータス画面に表示された。

 それら一つ一つを確かめて、まずは普通に直せる部分をささっと直していく。

 ぶっちゃけこの世界に転生した当初はほぼ独学で、機械のことなんてさっぱりわからなかったけれど、長くやってればある程度のことは解ってくるもんだ。

 少なくとも、このワーカーを作ったエンジニア連中の会話についていけないってことはなくなった。

 とはいえ、完璧というわけではない。

 というか、私は機械の直し方を()()()()()()()()()()()のだ。

 

「んー……これどうなってるんだ?」

「ふ、不安なこと言わないでほしいんすけど!」

「いや大丈夫大丈夫。――”ステータス”」

 

 聞こえていたらしい男の声に、適当に返しつつ。

 私は()()()()()()()()()()にステータスを起動した。

 すると、そこには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が記されている。

 これが私のステータスのすごいところ。

 

 言うなれば、私のステータスには辞書機能がついているのだ。

 ステータスを起動する際に、ある程度欲しい情報を脳裏に思い浮かべて起動すると、それに関する情報が手に入る。

 目で見ることが起動条件になってはいるものの、視界に収めてしまえばほとんどの情報を引き抜くことができるのだ。

 物理的に他者へ干渉する能力は有していないが、私の異能は非常にチートといえる代物だろう。

 

 それから、トンテンカントンテンカンと、一日ほどかけてワーカーを修理した。

 私の修理速度は、教科書を見ながらやっているようなものだから非常に遅い。

 その分、普通のエンジニアなら直せないもの直せてしまえるから、まぁ一長一短ってところかな。

 途中、小型ミュータントが襲撃を仕掛けてきたけど、ムカデの死骸にビビッて逃げたりするアクシデントもありつつ。

 私たちは無事、帰路へつくのだった。

 

「いやぁ、治ってよかったね。君」

「えーと、あー、その、はい。すげーよかったっす」

「なんか歯切れが悪いよぉ? ところでぇ――」

 

 んで、帰る前に私はあることを男に囁きかける。

 意地の悪い笑みを浮かべつつ、ぽんぽんと肩を叩きながら――

 

 

「お代はこんくらいね」

「うおっ……」

 

 

 お代を請求した。

 いや、別にそんな大層なことではないし、当然と言えば当然なことなんだけど。 

 その代金は、かなり高額だ。

 あのムカデを倒せる人間なんてあの街には私しかいないし、あそこでワーカーを直せるのだって私だけ。

 ぶっちゃけ、高額ではあるけど命を失うよりはマシだろう。

 

「……ツケでお願いします」

「毎度ありー」

 

 ――そう、これこそが私のほどほどコミュニティ形成術。

 きっちり貰うものは貰う。

 ツケは許すけど、取り立ては絶対にするのだ。

 こうすることで、私が別に慈善事業で人助けをしているわけではないと周囲にアピールする。

 すると、私のことを救世主と呼ぶ声はいつの間にかなくなっていた。

 まぁそれでも、一部の連中からは私がただものじゃないって評価を受けてはいるけれど。

 一応、私が暮らす街をあんまり大きくしすぎないことには、一役買っているのだった。




地に足つけてる感じが逆に好感が持てるという評価もあります。
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