これからも頑張って欲しいと思い書かせてもらいました!
もし読んでいて面白いと思ってくれたら嬉しいです!
一人の少女は男性へ向けて何かを振り下ろしていた。
それは鋭く研がれている短剣であり、1人の男性へ深々と刺し、命を奪っていた。
その時、男性が被っていたらしい王冠が少女の前に転げ落ち、少女の姿を写し出す。
王冠から映った少女の姿は、返り血を浴びていたが、全然気にしてなく、目は虚ろで目の前の殺した男性へじっと見ていた。
……新しい1日が始まる。
そんな新しい1日が始まったのに関わらず、街中の人々は騒がしくしている。
何故そこまで騒がしいのかは、人々が見ている看板に張ってある紙が原因だ。
その紙の内容は……
『隣国の王、暗殺される。王だけでなく、何人かの衛兵も殺されていた。』
という内容であった。
その衝撃的過ぎる内容に人々は、「まさか王様が暗殺されるなんて……」「世の中物騒になったなぁ……」と怖がっていた。
そんな怖がっている彼らを路地裏で見つめる茶色いフードを被った2人がいた。
2人は怖がる住人の様子を見ながら、話し始める。
「今回の任務よくやった『名無し』、お陰で隣国は今はパニックで、何時でも攻め込める状況となった。」
声色から男性だと分かる1人が、もう1人の背が低い子にそう話した。
「……あたいは言われた事を守っただけだ」
と返した。
声色は少女の声だった。
その少女たった一人で、王様とその衛兵数名を暗殺したのだ。
「で、あたいをここまで呼んだのは他に頼みたい事があるんだろ?」
少女は何か他にも頼み事があるのだろうと察し、聞き返す。
その予想は当たり、男性は懐から1枚の紙を取り出し、少女へ渡してきた。
それを受けとると、男性は次の依頼を話し始める。
「次はその娘を暗殺して欲しいと頼まれた。どうやらその娘が居ることで、他の国とのやり取りに問題が発生するとある国王が言っている」
依頼内容を聞いた『名無し』は渡された紙を良く確認する。
紙に書かれているのは、そのターゲットの名前と詳細、描かれている似顔絵である。
その娘の特徴は金髪のツインテールで、詳細には魔族で黒い羽を生えたサキュパスの娘と書かれており、名前は……
「安喰ヨハネ」と書かれていた。
『名無し』は依頼された任務を達成するために早速、安喰ヨハネの住んでいるお城へと向かう。
道中はとても大変で、深い森の中を迷いそうになったり、断崖絶壁の中を進んでいき、目的のお城へと辿り着く。
目的のお城は岩肌の上に禍々しく建ち、まるで魔王の城かと思う程大きかった。
今回のターゲットは少々骨が折れそうだなと『名無し』は思い、お城にいる人達にバレないように潜入する。
地下から進んだり、天井裏に進んだりしていく中、誰かの話し声が聞こえてくる。
それは家族と話すように楽しく会話していた。
そんな楽しく会話している彼らに、『名無し』は何故か胸が苦しく感じていた。
何故、あたいはこんなに苦しいのか?
羨ましいのか?
このあたいが?
と『名無し』の頭の中ではそう思い浮かんでいた。
考えても苦しくなるので、『名無し』は急いで安喰ヨハネがいる玉座へ向かっていく。
このまま天井裏を進んでいき、目的の玉座へと辿り着く。
そこには、深々と玉座へと座っているヨハネがいた。
しかもたった一人だ。
こんな絶好のタイミングは見逃したくない
そう思った『名無し』は懐からあの王を暗殺した時の短剣を取り出し、このまま上から仕掛けようと決心する。
『名無し』は狙いを定め、思いっきり飛び出し、短剣を強く握り締める。
どうやらヨハネはこちらの様子には気付いてなく、奇襲しやすかった。
(貰ったッッ!!)
『名無し』はそう確信した。
……だが、
「随分可愛い子が来たね~」
とヨハネはそう呟いたのだ!
「!?」
そう驚いた瞬間、『名無し』の身体は地面へと叩きつけられた。
身体には鞭で巻き付けられていて、鞭はまるで生きているようにうねうねと動いていた。
「よし、捕まえたから皆出てきて~」
とヨハネが軽く言うと、玉座に入る扉からお城の人達が入ってくる。
彼らはやはり魔物で、狼男やゾンビ、中身の無い鎧など、様々な種族が玉座へ集まる。
どうやら特に侵入していた事を把握し、油断した振りをしてから捕まえたのだ。
鞭の持ち主であるヨハネはフフンと鼻を鳴らし、ドヤ顔をしていた。
そんなヨハネに『名無し』は屈辱を感じ、口を強く噛み締めていたが、悔しがっても、もう捕まってしまったから『名無し』は抵抗するのを止め、処分されるように促す。
「さぁ、捕まえたならさっさとあたいを処分しろよ……!」
『名無し』はそう強気で言うが、ヨハネは悪そうな顔をしながら、
「いいや、他にやって貰いたいのあるからそれからだな」
と話し、『名無し』へと手を伸ばした。
(殺される前にいたぶるんだな……あたいの最後はこれかよ……)
と『名無し』は絶望し、目をそっと閉じた。
……だがそんな予想とは違った。
「な、なななななっ///」
ただいま『名無し』はヨハネによって可愛らしい服装を着せ替えられていた。
ピンクのフリルの付いたワンピース、コウモリの髪飾りと色々と着飾り、可愛らしい姿へと変化していた。
そんな『名無し』の姿にふぅー!とヨハネ達が黄色い声を上げて、とても喜んでおり、魔女の人達は魔法で今の『名無し』の姿を記録するためにキャンバスへ写していた。
「お前らやめろよ!!殺るならさっさと殺れよ!!」
『名無し』は顔を赤らめて恥ずかしがり、殺るなら殺れと促した。
しかし、ヨハネは意外な答えを返す。
「いや?殺らないよ?」
……は?
いや、あんたを殺そうとしたあたいを殺らない?
どう言うことだ?
そんな意外な答えに『名無し』は驚く。
ヨハネの仲間達も同じ考えで、誰も疑問に思っていなかった。
「むしろ、君、ヨハネ達と一緒に来る?きっと考えすぎる事だけど、なんか君はとても寂しそうなのを感じたから」
続けてヨハネは話す。
それは『名無し』から感じ取り、言葉へと変えて話した事だが、それは『名無し』にとって図星に近い答えで、今『名無し』の心は強く揺さぶられ始める。
寂しいだと……
あたいは寂しくなんてない!!
あたいは信じていた家族に売られて、ここまで人を殺めながら生きてきた!!
売られた時に決心したんだ……
……もう誰も信じないのを!!
「黙れッッッッ!!」
先程顔を赤くして恥ずかしがっていたとは違い、強く憎しでいるように強張っている『名無し』の様子にヨハネ達は驚いてしまう。
周りの空気が重くなっても『名無し』は溜め込んだ感情を表へと吐き出す。
「もう誰も信じないッ!!家族さえ裏切られて、捨てられ、あたいが傷付くなら家族なんかいらないッ!!」
「あたいは1人で生きていく方が楽なんだッ!!一緒に暮らそうみたいな言葉聞きたくなかったッ!!」
『名無し』はそう強く言い切ると、着せ替えられたままの状態でお城から飛び出した。
そんな『名無し』の後ろ姿をヨハネ達は唖然と見つめていた。
『名無し』は懸命に走る。
例え泥が跳ねて、今着ているワンピースに付いても、転んで少し破れても走り続ける。
それは迎え入れてくれる光から必死に逃げるように。
かなり走ったのか、折角着ていた可愛らしいワンピースはボロボロで汚くなっていた。
足はもう走り過ぎで、少しふらついてしまう。
そんな疲労困憊の『名無し』の前に、依頼した黒いフードの男性が現れた。
彼は戻ってくる『名無し』を待っていたらしい。
「随分とお洒落な姿になったな?で?殺られたのか?」
男性は無事依頼を達成出来たか聞いてくる。
『名無し』は言いにくそうになったが、それでも報告する。
「……出来なかった」
「……そうか」
達成出来なかった事を話すと、急に男性の雰囲気が冷たくなり、『名無し』へと近づいてくる。
男性は『名無し』の前へ立つと……
ガッ!!
自慢の拳を『名無し』の左頬へ叩き込んだ。
それは鈍い音が鳴り、『名無し』は倒れてしまう。そして、左頬は腫れ始めていた。
男性は倒れた『名無し』へ向かって、怒号を浴びせる。
「もう失敗するなとあの頃にも言っただろうッ!!そんなんだから親にも売られたんだろッ!!この役立たずッ!!」
「今回の失敗は大きいから、罰としてこのまま殴られろッ!!」
とこのまま倒れている『名無し』へ続けて殴ろうとする。
『名無し』はギュッと目を瞑っていた。
初めての任務の失敗にもこうして殴られていたので、怖くて動けなかった。
例え逃げたしても、どう生きればいいか分からない不安感があり、逃げることも出来なかった。
なので、こうして『名無し』は人を殺めながら生活していたのだ。
次の男性の拳が当たる瞬間、何処からか鞭が伸び、拳を縛り上げて止める。
急に現れた鞭に男性と『名無し』は驚く。
だが、その鞭を『名無し』は何処からか見たことがあった。
それはヨハネが使っていた、まるで生きているように動いている鞭であった。
「な……なんだこの鞭!?」
と男性は絡み付いた鞭を振りほどこうとしたが、しっかりと絡み付いており、振りほどくことが出来ない。
「お兄さん、女の子に暴力を奮ったらダメだよ〜」
と茂みからヨハネが出てくる。
口調は軽そうだが、その目はかなり力強く男性へと睨み付け、怒っているのが伝わってくる。
「おっと逃げようとしても無駄だぜ?」
「例え空に逃げようもしても私たちもいるわよ」
ヨハネが出てきたのと同時に、男性の逃げ場を塞ぐように仲間達も現れる。
急に現れた魔物達に男性は尻餅をついて恐れながら話す。
「な……なんでお前ら達がここにいる!?こんな汚いガキの為か!?」
男性は『名無し』の事を汚いガキと言うと、1人の狼男が地面へ強く踏みつけて割る。
「……喰い殺されたいか?」
それはお城にいた時の陽気に笑っていた姿とは違い、魔物らしく敵意を剥き出しにした恐ろしい姿になっていた。
その狼男だけでなく、他の仲間達も男性へ向けて同じように敵意を剥き出していた。
しかし、ヨハネが「マッチャ、やめて」と呼び止める。
呼び止められた狼男、マッチャはヨハネの方へ顔を向けると、ヨハネは真剣な顔をしており、
「ヨハネに任せて欲しい」
そう言い、男性へと歩み寄る。
「その子を渡して欲しいけどいいお兄さん?」
ヨハネは『名無し』を渡すように促す。
それに対し男性は、
「ハッ!大切な稼ぎ道具を渡してたまるかっての!」
鼻で笑い、ヨハネのお願いを取り消される。
自身の立場が分かってないのに、良くそんな強気にいられるなぁとヨハネはそう思っていた。
「おまえ達魔物は俺たち人間の邪魔もんなのだよ!失せろッ!!」
それはヨハネの地雷を踏んでしまった。
ヨハネの仲間達は、あ…アイツ死んだな…とこれから起こることを察する。
邪魔もんと言われた瞬間、ヨハネは鞭をすぐに取り出し、男性を絡め取る。
その早業に男性は気付くことが出来なかった。
ヨハネはそのまま縛り上げた後、引っ張り上げ、男性の頭を地面へと強く叩きつける。
ゴキッという音が頭から鳴り、男性はそのまま動かなくなる。
すごい痛々しい音だったので後から確認したが、まだ息があり、気絶していた。
だが大怪我なのは変わり無く、この後の生活に支障が来すのは目に見えていた。
そんな投げ飛ばしたヨハネの姿に『名無し』はとても恐ろしく見えて、(もしかしてあたいもやられる…!?)と震えてしまった。
だがヨハネは、男性を投げ飛ばせたのが満足した顔をしており、仲間達も同じようにスッキリしたような顔していた。
『名無し』へ向き合うと、ビクッと驚かれたが、いつもの軽く、優しそうな口調で話し始める。
「ほら、迎えに来たよ。一緒に帰ろう?」
「……なんであたいにそこまでしてくれるんだ?」
そんなふとした疑問を『名無し』は話す。
その問いにヨハネはう~んと何処から話すか考え、答え出す。
「……これはヨハネの夢で達成出来るか分からないんなんだけど、誰もが仲良く出来る世界を創りたいんだ」
「確かに魔物は人を襲う恐ろしい存在という偏見はあると思うけど、そんな恐ろしい存在でも無い事を伝えたいんだ」
語り出すヨハネの目は少し思い更けているようで、過去に何かあったのかと思ってしまう。
そんな風に話すヨハネの姿に『名無し』は自然と話へ入っていた。
「だけど、人間の中でも辛い状況になってる人もいることは後から気付いた」
「君みたいな幼い子どもみたいな力が無い立場の存在、王族や領主などの上からの重圧で潰されているような人達を見て、もう一度考え方を改めた」
「ここでヨハネは誰もが平等に生活出来る世界を創りたいと考え直したんだ」
それは大きな野望であり、達成するのが困難な夢であった。
聞いていた『名無し』は一瞬無理だろうと思ったが、夢を語り出したヨハネの目は絶対に叶えるという力強さがあり、何故かそんな世界を創れると感じてしまった。
初めて『名無し』は信じてみたいと思ってしまった。
「……だから、一緒に来て欲しいんだ」
そうヨハネは手を伸ばしてくれる。
そんな暖かい光を当てられた『名無し』の目にはポロポロと涙が零れ、一緒に行きたいと強く願ってしまった。
涙を止めようと目を擦るが全然止まらず、逆に沢山涙が溢れていき、『名無し』は泣き声も上げてしまう。
そんな泣き出した『名無し』をヨハネは強く抱きしめ、仲間達は2人を温かく見守っていた。
……数日後、ある噂が流れていた。
魔物達と暮らすある少女の事。
魔物という恐ろしい存在と暮らすのは不可能だと世の中はそう思っている。
だが、実際は今も仲良く暮らしていた。
名前が無い少女は新しい名前を貰い、『リアン』と呼ばれ、お城へ暮らしていた。
繋がりを持つという願いを込めて、『リアン』に決めたらしい。
こうして『リアン』はヨハネ達と一緒に生きていく。