文芸部を追放された俺、廃墟ゲーセンで都市伝説クエストを攻略する 〜追い出された天才絵師と、学校怪異を解いていく〜   作:オカノヒカル

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■第9話「傍観者と引きこもりは同じコインの裏表」

 

 翌日の夕方。

 

 コンビニが入っている10階建てのマンションの西側に、小さな公園がある。俺たちはそこで張り込みを開始した。

 

 配置はこうだ。初狩はベンチに座り、スケッチブックを広げてマンションの方を向きながら風景デッサンをする。絵を描いている学生が建物を眺めていても不自然ではない。

 

 俺は少し離れた東屋のベンチで、マンションに背を向けてスマホを監視する。ジョンパトリックが夕空の写真を投稿した瞬間に、初狩に合図を送るためだ。

 

 昨夜、フライトレーダーのアプリで確認した。写真に映り込んでいたP-3Cの航路と、このマンションの位置関係は一致する。あとは、ジョンパトリックが写真を撮る瞬間——ベランダに姿を見せる瞬間を捉えればいい。

 

「悪いな。せっかくPCで描けるようになったのに、アナログに戻させて」

「いいんですよ。わたしが張り込みしてみたいって言ったんですから。それに、風景デッサンも嫌いじゃないですし」

 

 初狩は楽しそうだった。鉛筆を走らせながら、時折マンションの上層階に視線を投げている。

 

 夕方の空が茜色に染まり始めた頃、俺のスマホに通知が来た。

 ジョンパトリックが新しい写真を投稿した。いつもの夕空。飛行機雲はないが、茜色のグラデーションが広がる空の写真だ。

 

「初狩、アップされたぞ」

 

 小声で伝える。初狩はスケッチブックから顔を上げ、マンションの上層階を素早く見渡した。

 

「——上から5番目、右から2番目のベランダ」

 

 即答だった。その情報をマンションの裏側の通路側から見れば、特定は簡単だ。つまり6階の1号室から数えて左から7番目。607号室か。

 

「よくやった」

 

 俺ははしゃぎすぎないように静かにそう伝えた。だが初狩は困ったようにうつむく。

 

「……ただ、わたしの見間違いかもしれませんけど」

「何かあったか?」

「ベランダに出てきた人、男性には見えませんでした」

 

 一瞬、思考が止まる。だが、すぐに整理がつく。ジョンパトリックが男とは限らない。SNS上の人格と実際の姿が一致しないことなんて、いくらでもある。

 

「どちらでも構わない。知りたいのは都市伝説の真相だ」

「そうですね」

 

 時計を見ると、もうすぐ17時だった。初日で部屋の特定ができた。上出来だ。

 

「今日はここまでにしよう。明日、ゲーセンで作戦会議だ」

「了解です」

 

 初狩がスケッチブックを閉じながら、ふいに呟いた。

 

「なんか……刑事みたいですね、わたしたち」

「地味な作業だろ」

「地味だからこそ、リアルで面白いんですよ」

 

 その横顔には、いつもの皮肉がなかった。

 

 

**

 

 

 翌日、ゲーセンREXでの作戦会議。

 

 俺と初狩は、テーブル型アーケードゲームの筐体を挟んで向かい合っている。

 

「あれから607号室の住人について調べた」

「名前、わかったんですか?」

「マンションの部屋の前まで行った。表札に"桐山"。そして桐山ねむ——実はこの名前に覚えがあった」

 

 俺はメモ帳に、その名前を書いた。

 

「覚え?」

「職員室前のガラス棚だ。コンクールの賞状が並んでいるだろ。そこに桐山ねむの名前があった。パソコン甲子園プログラミング部門の準グランプリだ」

「よく、そんなところの名前を覚えてましたね」

「まあ……そこそこ記憶力はいいんだよ」

 

 本当はオボロの助けを借りて探し当てたのだが。

 

「ついでに校内の掲示物を確認したら、2年前に在籍していた記録があった。今は学校に来ていないらしい」

「2年前から不登校で、プログラミングの腕がある。それにジョンパトリックのSNS、引きこもりを擁護する投稿ばかりでしたよね。……あれは他人事じゃなくて、自分のことだったんだ」

「ああ。桐山ねむが"ジョンパトリック"で、"絶死の呪い"の発信源だ」

 

 初狩が少し考え込んでから言った。

 

「それで、これからどうするんですか? 直接押しかけます?」

「いや、リスクが高い。引きこもりの部屋に突撃したら、最悪逆上される。DMを送って、対話に持ち込む」

「名前と住所を知っている、と?」

「"ねむ"と呼ぶだけで、相手は無視できなくなる」

 

 初狩がニヤリと笑った。

 

「脅しですね」

「交渉だ」

 

 俺たちは短く視線を交わし、それからDMの文面を詰めた。

 長すぎれば読まれない。だが、軽すぎても無視される。必要なのは、相手が「自分のことだ」と即座に理解し、しかも反応せずにはいられないだけの温度だった。

 

 俺はスマホの画面に指を置き、最後に一度だけ読み返す。

 

『ジョンパトリックへ。

 

frame_problemの発信源が、学校近くのマンション上階にあることまでは掴んだ。

夕空の写真も見た。君が何を証明したいのか、少しだけわかる。

 

桐山ねむ。

このまま続けるなら、次は対話では済まなくなるかもしれない。

 

だから今のうちに話したい。

逃げるなら追う。応じるなら、君のやりやすい形でいい。』

 

「……送るぞ」

「はい」

 

 送信ボタンを押す。

 画面の中で、メッセージが静かに送られていった。

 

 それから数秒。

 返事なんて、すぐには来ないかもしれない。既読すらつかない可能性もある。そう思っていたのに――

 

 ピコン。

 

 あまりにも早く通知音が鳴って、思わず初狩と顔を見合わせた。

 

『なるほどね。そこまで調べた時点で、もう十分脅しだと思うけど。

でも、君たちがただ通報したいだけじゃないことも伝わった。

 

話したいなら応じるよ。

こちらとしても、そこまで辿り着いた観測結果には少し興味がある。

 

下のURLから入って。

明朝までなら付き合ってあげる。    ジョンパトリック』

 

 文面の最後に、簡素なチャットルームのURLが貼られている。

 

「……はやっ」

 

 思わず声が漏れた。

 

「待っていたみたいですね」

「あるいは、ずっと画面の前にいたか、だな」

 

 初狩はノートPCを覗き込みながら、わずかに眉を寄せた。

 

「“観測結果には少し興味がある”ですか。感じ悪いですね」

「向こうからすれば、俺たちも十分感じ悪いだろ」

 

 俺はすぐにREXのPCへメール内容を転送した。初狩もねむには言いたいことがあるようだからな。

 彼女はカウンターの方へと戻りいつもの場所に座る。

 

 URLを開くと、簡素なログイン画面が立ち上がった。

 

 初狩がカウンターの向こうから、静かに息をつく。

 

「本当に入るんですか?」

「ここまで来て引く理由はないだろ」

「それはそうなんですけど。なんというか……いよいよ、って感じがします」

「いよいよだな」

 

 短く答えながら、俺はキーボードに手を置いた。

 指先が、少しだけ汗ばんでいる。

 

 画面の向こうには、都市伝説をばら撒いた張本人がいる。

 安田を壊したかもしれない人間。

 そして、“選べない”という呪いを、理屈として人に押しつけている誰か。

 

 初狩が俺の横に立つ。いつもより少し近い距離だった。

 

「ニックネームはどうします?」

「本名は避ける。ファーストネームを崩すくらいでいい」

「わかりました」

 

 俺はログイン欄に、自分の名前をもじった文字列を打ち込む。

 その隣で、初狩も静かにキーを叩いた。

 

 準備は整った。

 

「……入室するぞ」

「はい」

 

 

 

 俺たちは、都市伝説の犯人が待つチャットルームへ入った。

 

**

 

 チャットルームに【nemu】の名前が表示される。

 

 俺たちはファーストネームをもじってニックネームの登録をする。

 

 最初のメッセージが届いた。

 

【nemu】:

『随分強引な手口だね。住所を特定してまで話したいなんて、最近の高校生は積極的だ。』

 

【xai】:

『話を聞きたかっただけだ。ねむが"絶死の呪い"を作った理由を。』

 

【nemu】:

『そういう脅し文句、君みたいな"観測者"が言うと安っぽく見えるけどね。それとも、自分が"主人公"のつもり?』

 

 観測者——その言葉に、一瞬だけ心臓が跳ねた。DMの文面にそんなことは書いていない。俺のSNSを調べたのか。

 

【xai】:

『少なくとも、逃げ隠れするよりはマシだと思うよ。ねむは自分の手で"物語"を始めたんだろ?』

 

【nemu】:

『物語ね。大層な言い方だ。で、君は何が知りたい? 動機? 目的? なぜ桂明の生徒を標的にしたか?』

 

【xai】:

『全部。でもまず一つ。なぜ"選択肢"だったんだ? センセーショナルにバズらせたいなら、もっと直接的な恐怖を使うだろ。』

 

 ここで時雨が割り込む。

 

【SIG_UI】:

『死に直結するような怖い話のほうが、都市伝説としては流行りますよね。でも、あえて"選択肢"を選んだ。そこに意図があるはずです。』

 

【nemu】:

『おや? 一人じゃなかったのか。まあいい。答えてやるよ。きっかけはSNSだ。僕が引きこもりだってのはプロフにも書いてある。ある日、議論をふっかけてきた奴がいてね。"真人間なら引きこもりになんかならない"と豪語していたんだ。』

 

【xai】:

『だから無関係な桂明の生徒に実験を? 真人間でも追い詰められれば動けなくなると証明したかったと?』

 

【nemu】:

『実際に証明されているじゃないか。みんな追い込まれて選べなくなっていく。普通の高校生でも、無限の選択肢を突きつけられれば動けなくなる。それがフレーム問題の本質だ。』

 

【xai】:

『でも——本当にそれだけか? 実験で証明したかっただけか?』

 

【nemu】:

『他に何があるっていうんだ。』

 

【xai】:

『ねむは、独りが寂しかったんじゃないのか。だから、仲間に引きずり込んだ』

 

 数分間、応答がなくなった。

 

 受付カウンターにいる初狩と目が合う。彼女は小さくうなずいて——再びキーボードに向かった。

 

【SIG_UI】:

『ねえ、だったらどうしてネット上では選択できるの? 何かを発言することも、誰かと議論することも選択の結果でしょう? ネットで叩かれるリスクは考えなかったの?』

 

 しばらくの沈黙。そして返答。

 

【nemu】:

『法律にさえ気をつければ、ネットで叩かれようがどうでもいい。リアルとは違う。』

 

【SIG_UI】:

『でも、ねむさんは撮った写真をアップした結果、住所と氏名を特定されましたよ。もしわたしたちが恨みを持つような人間だったら、あなたは今頃もっと危険な状況にいたかもしれない。ネットのリスクも、ゼロじゃなかったということです。』

 

【nemu】:

『……それは僕のミスだ。認めるよ。だが、だからといって都市伝説をやめる理由にはならない。まだ完全に理論が証明されたわけじゃない。被害者にはどんどん増えていってもらわないとね。』

 

 「増やす」——その言葉に、安田の空席が脳裏をよぎる。

 

【xai】:

『やっぱり、実験なんてただの口実だったんだろ? ねむは単純に寂しかったんだ。孤独を癒やせないからネット上で人と関わる。そして自分と同じような引きこもりを作り出そうとした。』

 

【nemu】:

『否定はしないよ。人間は孤独では生きていけない。引きこもりの僕でさえ他者を求める。だからこそ、他人も同じ場所に引きずり込むしかない。』

 

【xai】:

『だったらネット上でなく、直接人と関わるべきだ。』

 

 ——自分で言っておいて、薄っぺらい言葉だと思った。

 

【nemu】:

『欺瞞だね。君はそういうきれい事を言う人間だったのかい? 僕にはわかるよ。君だって人と深く関わるのが怖いんだろう? "観測者"なんて気取って、安全な場所から眺めているだけ。傍観者のくせに正義面するなよ。』

 

 指が止まった。

 

 キーボードの上で、俺の手が動かなくなっている。

 

 ——図星だ。

 

 ねむの言葉は、一文字も間違っていなかった。俺は観測者を名乗って、安全圏から世界を眺めているだけの人間だ。安田が壊れていくのを見ていた。初狩のいじめを最初は見て見ぬふりをしようとした。誰かのために動いたのは、全部きっかけがあったからで——自分から選んだわけじゃない。

 

 そんな人間が、引きこもりに「外に出ろ」と説教する。

 笑えない冗談だ。

 

【nemu】:

『黙ったね。図星か。君も僕と同じだよ。世界が怖いから、関わらないことを選んでいる。違うのは、君はまだ外を歩けるってだけだ。本質は同じ。傍観者と引きこもりは、同じコインの裏表だよ。』

 

 初狩がいつの間にか俺の横に立っていた。画面を覗き込み——俺の顔を見て、何かを察したように一度だけ目を伏せた。

 

 それから、静かにカウンターに戻って、タイピングを始めた。

 

【SIG_UI】:

『ねむさんの言い分はわかりました。それなら、一つ聞かせてください。あなたにとって、外の世界は何ですか?』

 

【nemu】:

『昔、目の前で人が倒れたことがある。僕は何もできなかった。選べなかった。それからだよ、外の世界が全部こっちを睨んでるように見えるようになったのは。』

 

【nemu】:

『蛇に睨まれた蛙って知ってる? 食べられるかもしれないとわかっていても動けない。僕も同じなんだ。外の世界のすべてが蛇に見える。だから絶対に外には出られない。無理なんだよ。』

 

 その言葉を読んだとき、怒りでも軽蔑でもない、もっと重い感情が胸に沈んだ。

 ねむは嘘をついていない。本当に怖いのだ。論理で武装しているのは、恐怖を隠すためだ。

 

 俺は深呼吸して、キーボードに向かった。

 

【xai】:

『わかった。じゃあ、一つだけ見せたいものがある。』

 

 俺はチャットに、ミッションメールの全文を貼り付けた。

 

────────────────────────────

>件名:クエストNo.0002『絶死の呪い』

>本文:【ミッション】無限の選択肢を潰せ。

>百目に見られた者は、必ず選択を迫られる。

>選ばぬ者は、すべての可能性を抱え込む。

>抱えきれなくなったとき、選択肢は刃となるだろう。

>もちろん、選ばなければ死は訪れない。

>しかし、それは思考を蝕む呪いとなるだろう。

────────────────────────────

 

【xai】:

『匿名のミッションメールが届いた。俺たちはこれに従って動いている。送信者は不明。でも、前回これに従って動いたら、一人救えた。』

 

【nemu】:

『は? なんだよこれ。ふざけてんのか。全部、僕のことじゃないか!』

 

【SIG_UI】:

『そうなんです。よく考えてみたら、潰すべき"無限の選択肢"って、都市伝説そのものじゃなかった。"絶死の呪い"にかかっているのは——ねむさん自身です。』

 

【xai】:

『ねむ。呪いを解くべきはキミだ。俺たちは全力でキミの呪いを解く。それがミッションのクリア条件だ。だから——賭けをしないか。もし俺たちのおかげで、ねむが玄関のドアから外に出ることができたら、都市伝説をやめてくれ。出られなかったら、俺たちは都市伝説のばら撒きに協力する。実験データを集める手足になってやる。期限は1週間だ。』

 

【nemu】:

『……無理だよ。君たちの言葉に説得されるような僕じゃない。そんなことで変われるなら、とっくの昔に変わっている。』

 

【xai】:

『ねむが無理だというのなら、賭けにはなるね。俺たちは”無理じゃない”方にベットする』

 

【nemu】:

『僕自身が無理だと言っているんだよ。結果は君たちの負けになるんじゃないか?』

 

 

【xai】:

『それはわからないよ。一週間以内にねむに外の世界を見せる』

 

【nemu】:

『ああ。もし玄関の外に一歩でも出られたら僕の負けだ。けど、そんなことにはならないと思うけどね。ネットでの会話ならいくらでも歓迎するよ。』

 

【xai】:

『じゃあ、またな。』

 

 

 俺たちはチャットルームから退室した。

 

 ゲーセンの薄暗い店内に、静寂が戻る。

 古い筐体の電子音だけが、ぼんやりと鳴り続けている。

 

「緊張しましたね」

 

 初狩が苦笑する。

 

「……ああ」

 

 それだけしか言えなかった。

 

 ねむに言われた言葉が、まだ頭の中で反響している。

 「傍観者のくせに正義面するなよ」「君も僕と同じだよ」——全部、正しかった。俺には何も言い返せなかった。

 

 初狩はしばらく俺の顔を見つめていたが、何も聞かなかった。

 

 代わりに、こう言った。

 

「ねむさんを、外に出す方法。……考えましょう」

 

 その声は、いつもより少しだけ、優しかった。

 

**

 

 ——その夜。607号室。

 

 桐山ねむは、そっと背中を壁につけて、深く息をついた。

 

 手のひらが汗でべたべたしている。心臓の鼓動が、耳の奥でノイズみたいに跳ねている。

 

 スマホの画面には、さっきのチャットログが残っていた。論理で返したつもりだった。冷静に、いつものように。でも、どこかで何度も言葉が詰まった。

 

 ——「独りが寂しかったんじゃないのか」

 ——「傍観者と引きこもりは、同じコインの裏表だよ」

 

 あの言葉は、相手に向けたものだった。でも、自分にも返ってきている気がする。

 

 SNSなら、僕は強い。どんな議論でも、皮肉や理屈で返して、相手の矛先をかわすことができる。リアルで舐められるよりは、ネットの中で論争してる方が、まだマシだ。

 

 でも——今日のチャットは、思ったよりしんどかった。

 

 あの二人は、僕を論破しようとしていたわけじゃない。

 もっと厄介な何かを、突きつけてきた。

 

 ねむは窓際まで歩いて、カーテンをほんの少しだけ開いた。

 マンションの明かりが、ガラスにぼんやり映っている。外の世界。一歩出たら、何が起こるかわからない場所。

 

 ——だったら、何も選ばない方がずっと安全だ。

 

 そうやって自分を守ってきた。ずっと。

 

 なのに今日、誰かと繋がってしまったせいで、「このままで本当にいいのか」という妙なノイズが頭の中に残っている。

 

 机に戻ろうとして、ふと足が止まった。

 

 玄関のドアが見える。いつもと同じ、鍵のかかったドア。

 

 あの二人は、一週間でこのドアを開けさせると言った。馬鹿げている。ボクが開けられるわけがない。

 

 なのに——気づけば、玄関まで歩いていた。

 

 ドアノブに手を伸ばす。指先が金属に触れた瞬間、心臓が喉まで跳ね上がった。全身が総毛立ち、足が勝手に後ずさる。

 

 ——無理だ。やっぱり、無理だ。

 

 ねむは自分の部屋に逃げ戻り、椅子に座り直した。手のひらが汗でびしょ濡れになっている。

 

 今日も、何も変わらなかった。

 

 それでも——ドアノブの冷たさが、指先にまだ残っていた。

 

 

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