艦隊これくしょん 残響のアイ   作:SAMICO

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第3話 白い流れ者と脳筋提督

 浜松鎮守府には、いくつかの警報がある。

 

 深海棲艦の接近を知らせるもの。

 空襲の可能性を知らせるもの。

 艤装事故を知らせるもの。

 そして、訓練場で各務原結有が救助用モーターボートの方を見た時に、暁が個人的に発するもの。

 

「結有さん、そっちはだめ!」

 

「まだ何もしてない」

 

「目がしてたわ!」

 

 昼の訓練場に、暁の声が響いた。

 

 結有は岸壁の端で、海を見ていた。

 その横には、両腕を組んだ暁が立っている。さらに少し離れた場所に、神通と最上がいた。

 

 昨日と同じ未確認霊子反応。

 

 艦娘反応と深海反応が混ざっている。

 測定器の故障ではない。複数系統の観測装置が、同じ異常を拾っていた。

 

 海は穏やかだった。

 春の遠州灘はきらきらと光り、遠目には戦争など知らない顔をしている。

 

 だが、結有の胸の奥は熱かった。

 

 昨日、波間に見えた白い少女。

 あれは見間違いではない。

 

 結有には、そういう確信があった。

 

「各務原候補生」

 

 神通が振り向いた。

 

「はい」

 

「今回は、こちらの指示があるまで待機です」

 

「はい」

 

「救助艇に近づかない」

 

「はい」

 

「走らない」

 

「はい」

 

「飛ばない」

 

「はい」

 

 暁が隣でうなずいた。

 

「大事ね」

 

「なんで飛ぶ前提で注意されてるんだろう」

 

「昨日飛んだからよ」

 

「それはそう」

 

 結有は素直に納得した。

 

 神通は管制塔からの通信を受けている。

 最上は海面を見ながら、軽く首を傾げた。

 

「反応、近いね。深海棲艦ならもう姿が見えてもいい距離だけど」

 

「潜っている可能性は?」

 

 神通が問う。

 

「ある。でも潜水艦っぽい反応じゃない。もっとこう……漂ってる感じ」

 

「漂ってる?」

 

「うん。自分から進んでるというより、潮に流されてる」

 

 暁が眉をひそめる。

 

「遭難者?」

 

「普通の遭難者なら、深海反応は出ません」

 

 神通の声は静かだった。

 

 その時、管制塔から声が入った。

 

『浜松沖、三番ブイ南東二百。目視確認。人影あり』

 

 場の空気が締まった。

 

『繰り返す。人影あり。小柄。白髪。海面に浮遊、または立位。詳細不明』

 

 結有は一歩前に出た。

 

 暁が即座に袖を掴む。

 

「待機!」

 

「まだ走ってない」

 

「走る前の筋肉だった!」

 

「筋肉で判断するのやめてほしい」

 

「じゃあ判断されない動きをして!」

 

 神通は短く指示を出した。

 

「最上さん、援護位置へ。暁さんは各務原候補生の護衛。私は接近します」

 

「了解」

 

 最上が海面へ出る。

 神通も艤装を展開し、静かに波の上へ進んだ。

 

 艦娘が海に立つ姿は、何度見ても不思議だった。

 人間の形をしている。だが、海は彼女たちを沈めない。艤装の重みを背負い、砲を構え、少女たちは水面を走る。

 

 結有の胸が少しざわつく。

 

 母も、こうして海に立っていた。

 

 時雨も。

 

 その背中を、結有は幼い頃から何度も見てきた。

 優しくて、少し寂しそうで、それでも戦う時には絶対に前を向いていた背中。

 

 結有は拳を握った。

 

 海の向こうに、白い点が見える。

 

 少女だった。

 

 波の上に、立っているようにも、浮いているようにも見えた。

 白髪は濡れていて、顔の横に張りついている。肌は青白い。黒い目は、空も海も映さないように深かった。

 

 服は、服と呼んでいいのかわからない。

 黒い外套のようなもの。布に見えるが、ところどころ深海棲艦の装甲片にも似ている。裾からは白い脚がのぞいていた。

 

 少女は、逃げなかった。

 

 近づく神通を、ただ見ていた。

 

「こちら浜松鎮守府所属、軽巡神通です」

 

 神通の声が海上に響く。

 

「あなたは何者ですか。所属と氏名を答えてください」

 

 少女は答えない。

 

 神通は砲を下げたまま、距離を保った。

 

「負傷しているなら保護します。敵対の意思があるなら、こちらは対応せざるを得ません」

 

 少女の黒い目が、ゆっくり動いた。

 

 神通ではなく、その後方。

 岸壁にいる結有を見た。

 

 結有の背中に、ぞくりとしたものが走る。

 

 怖いのとは違う。

 懐かしいのとも違う。

 でも、知らないはずなのに、どこかで知っているような感覚。

 

 少女の唇が、わずかに動いた。

 

「……うるさい」

 

 神通が目を細めた。

 

「聞こえました。会話は可能ですね」

 

 少女は黙る。

 

 最上が横合いから声をかけた。

 

「ねえ、君。名前は?」

 

 少しの沈黙。

 

「……アイ」

 

 それだけだった。

 

 暁が岸壁でつぶやく。

 

「アイ……」

 

 結有も、その名を口の中で繰り返した。

 

 アイ。

 

 短い名前。

 それとも、名前ですらないのかもしれない。

 

 神通はさらに問う。

 

「アイさん。あなたは艦娘ですか」

 

「知らない」

 

「深海棲艦ですか」

 

「知らない」

 

「どこから来ましたか」

 

「海」

 

 最上が苦笑した。

 

「それはまあ、見ればわかるかな」

 

 神通は表情を変えない。

 

「あなたの反応は、艦娘と深海棲艦の両方に似ています。こちらとしては、あなたを危険対象として扱わざるを得ません」

 

 アイは神通を見た。

 

 そして、言った。

 

「勝てない」

 

 神通の周囲の空気が、ほんの少しだけ変わった。

 

「誰が、ですか」

 

「あなたたち」

 

「何に」

 

 アイは沖の方を見た。

 

「来る」

 

 その瞬間、管制塔の警報が鳴った。

 

『深海反応、複数! 三番ブイ南東、さらに外縁! 小型三、中型一!』

 

 暁が顔を上げた。

 

「敵!?」

 

 最上が砲を構える。

 

「タイミング悪いなあ」

 

 神通は即座に判断した。

 

「最上さん、敵影を抑えてください。暁さん、各務原候補生の護衛を維持。私はアイさんを確保します」

 

 アイは動かなかった。

 

 ただ、沖を見ている。

 

 黒い水柱が上がった。

 

 深海棲艦が姿を現す。

 小型の駆逐級が三。さらにその後方に、軽巡級と思われる個体が一。海面を裂き、白い骨のような装甲をきしませながら接近してくる。

 

 最上が先制射撃した。

 

 砲弾が海を渡り、先頭の駆逐級を吹き飛ばす。

 

 神通がアイの側へ寄る。

 

「こちらへ」

 

 アイは首を横に振った。

 

「邪魔」

 

「危険です」

 

「そっちが」

 

 神通の眉がわずかに動いた。

 

 次の瞬間、軽巡級の砲口が光った。

 狙いは神通ではない。

 

 岸壁。

 

 結有たちがいる場所。

 

 暁が叫んだ。

 

「結有さん!」

 

 砲弾が飛ぶ。

 

 艦娘の砲弾より粗い。だが、重い。

 防御結界が展開されるより、わずかに早い。

 

 結有の体が動いた。

 

 暁が掴んだ袖を振りほどく。

 

「結有さん!?」

 

「ごめん!」

 

 結有は走った。

 

 岸壁の端へ。

 ボートではない。今回はボートではない。

 だから神通さんとの約束は半分守っている。

 

 たぶん。

 

 結有は足に霊子を集めた。

 地面を蹴る。

 

 跳ぶ。

 

 暁の悲鳴が聞こえる。

 

「飛ばないって言ったでしょおおお!」

 

 結有は空中で身をひねり、砲弾へ向けて脚を振り抜いた。

 

 普通なら死ぬ。

 当然だ。人間が砲弾を蹴るなど、冗談にもならない。

 

 だが、結有の足先に集まった霊子が、砲弾の表面を叩いた。

 

 衝撃。

 

 全身が軋む。

 靴底が焼ける。

 足首から膝にかけて、鈍い痛みが抜ける。

 

 それでも砲弾の軌道は逸れた。

 

 岸壁から外れ、海面に着弾する。

 巨大な水柱が上がり、結有はその風圧で後方へ吹き飛ばされた。

 

「っ、あ」

 

 落ちる。

 

 今度は海ではなく、岸壁の上だ。

 受け身を取ろうとしたが、距離が足りない。

 

 その体を、誰かが受け止めた。

 

 白い腕。

 

 黒い外套。

 

 青白い肌。

 

 アイだった。

 

 いつの間に岸壁まで来たのか、誰にも見えなかった。

 

 結有はアイの腕の中で瞬きした。

 

「……速いね」

 

 アイは無表情で言った。

 

「重い」

 

「ごめん」

 

「脳筋」

 

「初対面で?」

 

 アイは結有を地面に落とした。

 

「いたっ」

 

「生きてる」

 

「うん。ありがとう」

 

 アイは少しだけ首を傾げた。

 

 感謝されることに慣れていないようだった。

 

 暁が駆け寄ってきた。

 

「結有さん! 大丈夫!? どこか痛い!? というか痛くないわけないわよね!? なんで砲弾を蹴るの!?」

 

「当たったら危なかったから」

 

「蹴っても危ないの!」

 

 暁は半泣きだった。

 

 その横で、アイがぼそりと言った。

 

「うるさい」

 

「誰がうるさいのよ!」

 

「赤いの」

 

「暁よ! 一人前のレディの名前くらい覚えなさい!」

 

「赤いレディ」

 

「略さないで!」

 

 結有は痛む足を押さえながら、なぜか少し笑ってしまった。

 

 戦闘中なのに。

 

 アイは無表情で、暁は怒っていて、海では神通と最上が敵を抑えている。状況はまったく笑えない。

 

 それでも、何かが少しだけ噛み合った気がした。

 

 神通の声が通信に乗る。

 

『各務原候補生、状況は』

 

「生きてます!」

 

『アイさんは』

 

「隣にいます!」

 

『拘束できますか』

 

 結有はアイを見た。

 

 白い少女は、沖を見ている。

 敵を恐れてはいない。

 むしろ、敵の方が彼女を見て動揺しているように見えた。

 

 深海棲艦の砲口が揺れている。

 

 アイが一歩前に出た。

 

 海から、低い声のようなものが響いた。

 

 戻レ。

 

 人間の声ではない。

 通信でもない。

 それでも、その場にいた全員が聞いた。

 

 戻レ。

 戻レ。

 戻レ。

 

 暁が顔をこわばらせる。

 

「何、今の……」

 

 アイは表情を変えなかった。

 

 だが、結有にはわかった。

 

 アイの指先が、ほんの少し震えていた。

 

「アイ」

 

 結有が呼ぶ。

 

 アイは振り向かない。

 

「戻るの?」

 

「知らない」

 

「行きたい?」

 

「知らない」

 

「じゃあ、今はここにいれば」

 

 アイの黒い目が結有を見た。

 

「ここ?」

 

「うん。浜松鎮守府」

 

「敵かもしれない」

 

「かもしれないね」

 

「撃つかもしれない」

 

「神通さんは必要なら撃つと思う」

 

 暁が横で慌てた。

 

「結有さん、そこは否定するところじゃ」

 

「でも、何もしないうちに撃つ人じゃない」

 

 結有は立ち上がった。足が痛む。

 たぶん、あとで神通に怒られる。いや、確実に怒られる。

 

 でも今は、前を見る。

 

「僕は各務原結有。提督候補生」

 

「脳筋」

 

「まだそれ言う?」

 

「砲弾を蹴った」

 

「君も僕を受け止めた」

 

「落ちてきたから」

 

「じゃあ、お互い様」

 

「意味不明」

 

 アイは無表情のまま言った。

 

 その時、沖の軽巡級が再び砲を構えた。

 今度の狙いは、アイ。

 

 神通が動くより早く、アイが右手を上げた。

 

 空間が軋む。

 

 彼女の背後に、艤装の輪郭が浮かび上がった。

 それは駆逐艦のものにも、軽巡のものにも、深海棲艦の装甲にも見えた。形が定まらない。白と黒が混ざり、砲身が生え、消え、また生える。

 

 暁が息を呑む。

 

「艤装……?」

 

 アイは小さく言った。

 

「邪魔」

 

 砲撃。

 

 白黒の光が海を裂いた。

 

 軽巡級深海棲艦の砲塔が吹き飛ぶ。

 続けて神通の砲撃が胴を抜き、最上の追撃が敵を沈黙させた。

 

 残った小型艦は反転した。

 

 逃げる。

 

 深海棲艦が、逃げた。

 

 最上が追撃姿勢を取ったが、神通が止めた。

 

「深追いしないでください。こちらは未確認対象の確保を優先します」

 

「了解」

 

 海上に静けさが戻る。

 

 黒い泡が散っていく。

 風が吹き、アイの白髪を揺らした。

 

 神通が岸壁へ戻ってきた。

 

 その目は、アイを見ている。

 警戒している。

 当然だった。

 

 アイは深海棲艦に呼ばれた。

 艤装を出した。

 深海棲艦を撃った。

 そして、その反応は艦娘と深海の両方に似ている。

 

 危険ではない、とは誰にも言えない。

 

「アイさん」

 

 神通が言った。

 

「あなたを浜松鎮守府で保護します。ただし、当面は監視下です。武装の使用は許可制。逃走した場合、敵対行動と見なします」

 

 アイは無表情で聞いていた。

 

「拒否したら」

 

「拘束します」

 

「できる?」

 

 神通の目が細くなる。

 

「必要なら」

 

 空気が張りつめた。

 

 暁が小さく結有の袖を掴む。

 結有は一歩前に出た。

 

「アイ」

 

 白い少女が見る。

 

「とりあえず、ご飯食べる?」

 

 神通が、わずかに目を閉じた。

 

 暁が叫んだ。

 

「今その流れ!?」

 

 最上が海上で吹き出した。

 

 アイは結有を見たまま、しばらく黙っていた。

 

「ご飯」

 

「うん。食堂あるよ。味噌汁もある」

 

「味噌汁」

 

「あと焼き魚」

 

「魚」

 

「深海棲艦じゃない魚」

 

「……食べたの?」

 

「前に一回だけ」

 

「脳筋」

 

「それ関係ある?」

 

 アイは少し考えた。

 

「ある」

 

 結有は笑った。

 

 神通は深く息を吐いた。

 

「各務原候補生」

 

「はい」

 

「あなたには、あとで追加の反省文があります」

 

「何枚ですか」

 

「十枚」

 

「昨日より減った」

 

「今の発言で十五枚です」

 

「はい」

 

 暁が腕を組んだ。

 

「当然ね。砲弾を蹴った分と、勝手に飛んだ分と、危ないことをした分よ」

 

「三つとも同じじゃない?」

 

「違うわ。全部別々に危ないの」

 

 アイは暁を見た。

 

「赤いレディ、うるさい」

 

「暁!」

 

「暁、うるさい」

 

「名前だけ覚えて悪口に使わないで!」

 

 結有はまた笑ってしまった。

 

 神通の視線が向く。

 

 結有は咳払いした。

 

「すみません」

 

 神通はアイに向き直る。

 

「アイさん。来てください。こちらで検査を行います」

 

「痛い?」

 

「必要以上のことはしません」

 

「嘘なら」

 

「嘘ではありません」

 

 アイは神通を見た。

 その目は、黒く深い。

 

 やがて、アイは小さくうなずいた。

 

「行く」

 

 そして結有を見た。

 

「脳筋がいるなら」

 

 暁が目を丸くした。

 

「それ、信頼してるの?」

 

「監視」

 

 アイは即答した。

 

「脳筋は放っておくと死ぬ」

 

「初対面で完全に理解されてるわね」

 

「否定しづらい」

 

 結有は痛む足を引きずりながら言った。

 

 神通がすぐに気づく。

 

「歩けますか」

 

「歩けます」

 

「医務室へ」

 

「食堂は」

 

「医務室へ」

 

「はい」

 

 アイが横に並んだ。

 

 白い流れ者。

 深海棲艦でもあり、艦娘でもあるかもしれない少女。

 海から来て、深海に呼ばれ、それでも今は浜松鎮守府へ向かって歩いている。

 

 結有は、ふと尋ねた。

 

「アイって、名前?」

 

「知らない」

 

「じゃあ、そう呼んでいい?」

 

「好きにすれば」

 

「わかった。アイ」

 

 アイは返事をしなかった。

 

 けれど、離れもしなかった。

 

 暁が二人の後ろからついてくる。

 

「結有さん、医務室が終わったら反省文よ」

 

「はい」

 

「あと、アイには服が必要ね。その格好、寒そうだもの」

 

「寒くない」

 

「寒くなくてもだめよ。鎮守府には鎮守府の身だしなみがあるの。一人前のレディとして、私が教えてあげるわ」

 

「赤いのが?」

 

「暁!」

 

「暁が?」

 

「そう!」

 

「不安」

 

「なんですって!」

 

 最上が後ろで笑っている。

 神通は前を歩きながら、通信で本部への報告を始めていた。

 

 その声には、緊張が残っている。

 

 当然だ。

 

 アイの存在は、ただの漂着者では済まない。

 艦娘本部が知れば、必ず動く。

 深海棲艦が彼女を呼んだ以上、敵もまた動くだろう。

 

 結有にも、それくらいはわかった。

 

 それでも。

 

 隣を歩く白い少女は、兵器にも怪物にも見えなかった。

 

 無愛想で、口が悪くて、人を脳筋呼ばわりする。

 けれど、落ちてきた結有を受け止めた。

 戻れという声に、すぐには従わなかった。

 

 だから結有は思った。

 

 この子は、たぶん大丈夫だ。

 

 根拠はない。

 

 神通に言えば、また反省文が増えるだろう。

 暁に言えば、もっとちゃんと考えなさいと怒られるだろう。

 

 でも、結有の直感はそう言っていた。

 

 医務室へ向かう廊下で、アイがぽつりと言った。

 

「ここ、うるさい」

 

「鎮守府だからね」

 

「人が多い」

 

「慣れるよ」

 

「慣れなかったら」

 

「その時は、その時考えよう」

 

「脳筋」

 

「便利に使ってない?」

 

「事実」

 

 結有は笑った。

 

 アイは笑わなかった。

 

 けれど、その黒い目は、ほんの少しだけ海から離れていた。

 

 浜松鎮守府は、その日、白い流れ者を迎え入れた。

 

 記録上は、未確認霊子反応個体アイの一時保護。

 警戒区分は最高に近く、監視対象。

 艦娘本部への報告は即時。

 

 だが、食堂の一部では、その日のうちに別の呼び名が広まり始めた。

 

 白い流れ者と脳筋提督。

 

 本人たちがそれを知るのは、もう少し後のことである。

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