未来のゴブ太、過去に逆行する!   作:ポップ

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【番外編2】なんでオイラ、世界最強のヤバい奴らからロックオンされてるんすか!?

魔国連邦(テンペスト)の訓練場。

いつものようにハクロウのしごきから逃れ、木陰で昼寝を決め込もうとしていた現代のゴブタは、ここ最近、周囲の異常な変化に首を傾げていた。

 

「うひゃあっ!? な、なんすかミリム様! いきなり背中叩かないでほしいっす!」

 

「ワハハハハ! 良い反応なのだゴブタ! やはりお前には、とてつもない才能が眠っているのだな!」

 

無邪気に笑う『破壊の暴君(デストロイ)』ミリム・ナーヴァ。

普段なら「遊び相手になってやるのだ!」と理不尽に振り回されるところだが、今日のミリムは違った。ゴブタの骨格や筋肉の付き方、魔素の流れを、まるで宝物でも見るかのようなキラキラとした目で見つめている。

 

「今の段階からこれほど基礎ができているとは……! いつかウチのミッドレイとも良い勝負ができそうなのだ。お前、これから毎日ワタシが直々に鍛えてやるのだ!」

 

「ええええっ!? ミリム様に鍛えられたら才能が開花する前に命が散るっすよ! ていうか、なんでオイラなんかにそんな期待を!?」

 

ゴブタが涙目で後ずさっていると、今度は背後からドスッ、ドスッと重低音の足音が近づいてきた。

 

「……ほう。こいつが、あのギィが言っていたホブゴブリンか」

 

振り返ると、そこに立っていたのは獣王戦士団を率いる『獅子王(ビーストマスター)』カリオンだった。

カリオンは腕を組み、猛禽類のような鋭い眼光でゴブタの頭の先から足の先までを舐め回すように観察している。

 

「えっと……カリオンさん? な、なんかオイラの顔に付いてるっすか?」

 

「いや、なんでもねえ。ただな、この間ギィ・クリムゾンの野郎と酒を飲んだ時、あいつが妙に嬉しそうに語っててな。『テンペストにいるお調子者のゴブリン、末はお前よりも強くなるかもしれないぜ?』……ってな」

 

「…………はい?」

 

ゴブタの口から、魂の抜けたような声が漏れた。

 

「最強の魔王様が何を冗談言ってやがると思ったが……なるほど、お前からは妙な底知れなさ(※ただの図太さ)を感じるぜ。おいゴブタ! いつか俺とサシで勝負しようぜ! ギィの言葉が本当か、この俺が直々に確かめてやる!」

 

「カリオンさぁぁん!? 買い被りすぎっす! ギィさん絶対人違いしてるっすよ! オイラただの平隊員っすよ!?」

 

魔王二柱から放たれる凄まじい期待のプレッシャーに、ゴブタは胃が縮み上がる思いだった。

しかし、現代のゴブタの受難はこれだけでは終わらない。

 

「おや、こんな所にいらっしゃいましたか。我らが『始まりのゴブリン』殿」

 

「ヒッ……ディアブロさん! なんでそんなにオイラに恭しいんすか! 気持ち悪いっす!」

 

背後の空間が揺らぎ、テンペストが誇る最恐の悪魔、ディアブロが慇懃な態度で現れた。しかも、彼の手には高級そうなトレイが乗せられており、その上にはシュナ特製の最高級お茶菓子が並んでいる。

 

「クフフ……何を仰いますか。あなたはこのテンペストの未来を……おっと、これ以上は私の口からは言えませんが。さあ、こちらのお菓子をどうぞ。あぁ、シオン殿の手料理は完全に排除しておりますのでご安心を」

 

「いや、なんでオイラのトラウマまで完璧に把握してるんすか……」

 

ディアブロだけではない。最近、白、紫、黄の原初の悪魔娘たちまでが、ゴブタとすれ違うたびに「うふふ、未来が楽しみね」「今のうちに恩を売っておこうかしら」と、意味深な笑顔を向けてくるのだ。

完全に外堀を埋められている恐怖に、ゴブタがガタガタと震えていると――。

広場の上空に、突如として眩い魔法陣が展開された。

極寒の冷気を伴って現れたのは、真っ赤な髪の魔王と、白銀の髪の竜種。

ギィ・クリムゾンと、ヴェルザードである。

 

「よう、スライムのところのゴブタ。元気にしてたか?」

 

「ごきげんよう、ゴブタ。お久しぶりですわね」

 

世界最高峰の二大巨頭の登場に、カリオンでさえピリッと姿勢を正す。

しかし、二人の視線はカリオンでもミリムでもなく、真っ直ぐにゴブタへと向けられていた。

 

「ギ、ギィさんにヴェルザードさん! なんでテンペストに!?」

 

「なに、ちょっと暇を持て余してな。おいゴブタ、今から俺の『白氷宮』に来い。ミザリーとレインに新しい厨房を作らせたんだ。お前の料理の腕前、存分に振るって俺たちを楽しませろ」

 

「ええ。弟(ヴェルドラ)も氷漬けにして大人しくさせておりますから、ゆっくりお茶会でもしましょう?」

 

「なんでオイラ、世界最強の魔王の城に料理人としてスカウトされてるんすかぁぁぁっ!?」

 

ゴブタはついに頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 

「オ、オイラ、なんかやらかしたっすか!? 記憶にないところで世界でも救っちゃったんすか!? みんなオイラへの評価がおかしいっすよ!」

 

ゴブタの悲鳴が広場に響き渡る中。

少し離れた執務室の窓から、リムルと『古代ゴブタ』が、その様子をこっそりと見下ろしていた。

 

「……なんか、あいつにめちゃくちゃ悪いことしてる気分になってきたぞ。過去の記憶がない現代のゴブタにとっては、完全にホラー体験だろあれ」

 

リムルが冷や汗を流しながら呟く。

 

「いやー、自業自得とはいえ、オイラも同情するっすね。まさかギィさんたちが、現代のオイラにまであんなに絡みに行くとは思わなかったっす」

 

隻眼の古代ゴブタが、苦笑いしながら肩をすくめる。

 

「まあ、でも悪いことじゃないっすよ。あいつ、褒められると調子に乗って伸びるタイプっすから。ミリム様やカリオンさんに目をつけられたなら、絶対にサボれなくなるっすし。オイラ以上の高みに辿り着くかもしれないっすね!」

 

「お前、裏から見守るって言いながら、完全に現代のお前を修羅場に放り込んで楽しんでるだろ……」

 

「へへっ。それが『影の英雄』の特権っすよ!」

 

下の広場では、ついに全盛期の記憶を取り戻して(?)ニート魂を燃やすラミリスまでもが「ゴブタ! アタシにもケーキ作って!」と乱入し、さらなるカオスが巻き起こっていた。

 

「た、たすけてリムル様ぁぁぁーーっ!!」

 

現代のゴブタの悲痛な叫びは、秋のテンペストの空に虚しく吸い込まれていった。彼が自分の内なる「太古の伝説」に気づく日が来るのかは、また別のお話である。

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