───異能戦史 第7巻 11P
2052年1月25日 天守島異能力学校 地下訓練場
「……………今日は軽くする。みんなの疲労が大きい。レクリエーションとして必殺技を考える」
牡丹はそう告げた。生徒たちから歓声が上がった。この十日でかなり厳しくしたせいか、生徒たちの動きには疲労が見えていた。
「うっしゃー」
「よかった、マジで最近やばかったからな」
ある生徒が牡丹に言う。
「先生は必殺技あるんですか?」
「……………ある。マネキン」
『人体模造品ヲ準備中』
床が開く。数秒後、人型のマネキンがせり上がってきた。それは訓練用のマネキンで人体とほぼ同じ強度をしている。牡丹はマネキンの前まで歩く。距離5メートル。右手を伸ばす。数秒。何も起きない。
「……?」
神藤が首を傾げる。牡丹はマネキンへ近づく。そして、拳で頭部を砕いた。
ばきり。
内部が露出する。
「うわっ」
誰かが声を上げた。頭部の内部は真っ黒だった。脳に相当する部分が完全に炭化している。表面に損傷はない。内部だけが焼けていた。
「……………必殺、脳を炭化」
「先生」
「……………なに」
「それ名前じゃなくて説明ですよね」
「……………うん、名前はわかりやすい方がいい」
神藤が頭を抱えた。
「いや、必殺技ってもっとこう……あるじゃないですか」
「……………?」
「どでかい火がでたり」
「大地が砕けたりするじゃん」
「こう雲が割けたり」
生徒たちが口々に言う。牡丹は少し考えた。
「……………でも、これは必殺だよ。避けられたことはない」
「でしょうねえ」
「……………うん、必要な相手以外殺さない、人質を取った相手によく使った」
「待ってください」
神藤が手を挙げた。
「……………なに」
「その使い方を普通みたいに言わないでください」
「……………普通じゃない?」
「普通じゃないです」
即答だった。立川も頷く。
「人質取った犯人を遠距離から脳だけ炭化させるのを普通とは言わないんですよ」
「……………でも便利」
「便利なのは分かります」
「……………人質は助かる」
「それも分かります」
「……………壁越しでも使える」
「聞きたくなかった情報が増えた」
生徒たちがざわつく。
「え、壁越し?」
「防げなくない?」
「というか先生、それ何キロまで届くんですか」
牡丹は少し考えた。
「……………3キロが最大」
「……」
「……」
「……」
誰も反応しない。神藤がゆっくり聞く。
「先生」
「……………なに」
「聞き間違いじゃなければ3キロって言いました?」
「……………うん」
立川が頭を抱えた。
「いや待って」
「なんだ」
「そもそも見えるんです3キロ先」
牡丹は首を傾げる。
「……………うん、やったことあるのが」
「よし、この話はやめましょう。派手なのないですか?」
「……………ある。昔、同僚が作ってくれたやつ」
「一応聞きますがどんなのですか」
「……………相手の足元の地面を爆発させて足だけもぐ」
「……」
「……」
「……」
神藤が聞く。
「先生」
「……………なに」
「それ必殺技ですか」
「……………違う、捕獲技」
「捕獲技!?」
立川が叫んだ。
「足吹っ飛んでません?」
「……………吹っ飛ぶ」
「捕獲じゃないじゃん!」
「……………でも逃げられない」
「そりゃそうだよ!」
生徒たちが一斉に突っ込む。牡丹は少し考えた。
「……………戦争だと便利」
「また戦争基準だ」
神藤が額を押さえる。
「もっとこう、ロマンあるやつですよ」
「ロマン」
「例えば巨大な火球とか」
「ドラゴンとか」
「雷とか」
「剣圧で山切るとか」
生徒たちが口々に言う。牡丹は真面目に考え込んだ。
「……………桐山との勝負で防壁を壊したやつの大きい版」
桐山が固まる。ほんの十日と少し前のあの戦いですらない蹂躙は脳裏に焼き付いていた。
「あれが巨大化すんのか。どのくらいだ」
「……………拳くらい。人が消し飛んだ」
「先生」
「……………なに」
「今なんて言いました」
「……………拳くらい」
「その後です」
「……………人が消滅した」
神藤が両手で顔を覆った。
「さらっと言うなぁ……」
立川も青い顔になる。
「待て待て待て、拳サイズですよね」
「……………うん」
「拳サイズで人が消えるんですか」
「……………うん、範囲を制御した、本当はもっと広い」
「理屈が分からない」
牡丹は少し考えた。
「……………熱をいっぱい入れた」
「雑!!」
訓練場にツッコミが響く。桐山が額を押さえた。
「先生」
「……………なに」
「それ使ったのいつだ」
「……………戦争」
「やっぱりか」
誰かが呟く。第三次世界大戦。この教師が二十歳にもなっていない頃に参加していた地獄。生徒たちは改めて思う。この教師は本来は世界大戦を生き残った怪物だった。
「ちなみに」
神藤が恐る恐る聞く、どうせ「敵を消し飛ばす」あたりだろうと予測をつけて。
「その技、名前は」
「……………
神藤が固まる。以外にも必殺技らしい名前が牡丹の口から出た。
「………………え?」
立川も固まる。桐山も固まる。数秒の沈黙。
「先生」
「……………なに」
「今の名前ですか?」
「……………うん」
神藤が目を瞬かせる。
「カッコいいのあるじゃないですか」
「……………似たのは
「先生」
「……………なに」
「まだあるんですか」
「……………ある」
牡丹は頷く、そして理解する。神話好きの同僚が名前をつけてくれた技が生徒が求めているらしいことを。
「結構ある」
「なんで今まで出さなかったんですか」
「……………使わないから」
神藤が頭を抱えた。すかさず立川が割り込む。
「いやいやいや、そっちを先に言ってくださいよ」
「……………?」
「脳を炭化とか言われた後に急に神話みたいな名前出されても困るんですよ」
「……………そう?」
「そうです」
即答だった。桐山が聞く。何かの参考になるかもしれないからだ。
「
「……………太陽光を吸収して回復する。周りが暗くなるから。同僚が名前を付けた」
「何でもありだな、この教師」
「……………みんなは今どんなもの考えてる?」
「「言えるか!!」」
生徒たちは、牡丹の理不尽ともいえる必殺技の後に続いて発表できるようなものを持っていなかった。神藤は持っていたノートに大きなバツを書いた。
「……………でも、多少荒くてもとどめをさせる技は持っていたほうがいい。弱い相手にリソースを割かなくて済むから」
「まあ言いたいことは分かる」
「桐山!?」
「乱戦で相手の頭数を減らすのは必要だからな」
「まあそうでしょうけど」
七條が肯定する。暗殺者に止めを刺し損ねて自爆させられた苦い思い出が蘇る。
「……………あと、反復練習に役に立つ。武術の型と同じ」
「型?」
神藤が首を傾げる。
「……………うん。同じ動きを何度も繰り返すと、考えなくても出る」
「それは分かりますけど」
「……………戦闘中は考える時間がない」
牡丹はマネキンの中だけ炭化した頭部を指差した。
「……………だから、脳を炭化は便利」
「結局そこに戻るんですね」
「……………うん、でも派手なモノも必要。味方の士気を上げられる」
「戦争の話ですか?」
「……………ううん、演習用」
牡丹は淡々と答えた。
「……………強い技を見せると安心する」
「安心?」
「……………あの人がいるなら勝てる、って思う」
「確かに先生が仲間にいたら安心しますけど」
神藤が頷く。地下訓練場の全員が頷いた。少なくともこの場で、牡丹と本気で戦いたい人間はいない。
「……………だから魅せる用の技と、相手を殺す技の二つは欲しい。別に武器をつかってもいい。例えば神藤なら認識をずらして真横から頭を撃つとか」
「待ってください」
神藤が即座に手を挙げる。さすがに急に物騒な発言が出たからだ。
「……………なに」
「なんで初手が暗殺なんですか」
「……………成功率が高い」
「そういう話じゃないんですよ」
「……………でも、七條と結婚するなら暗殺者対策はしないとって七條は言ってた」
神藤が固まる。
「それ本人が言ったんですか」
「……………うん」
「葵ぃ!?」
教室の端で七條が視線を逸らした。
「いや、ほら」
「言ったんだ」
「言いましたけど」
七條は咳払いした。
「悠馬、うちの親族を甘く見ない方がいいです」
「婚約者に言う言葉じゃないんですよ」
「事実です」
即答だった。
「少なくとも結婚式までは気を抜かないで」
「結婚式まで!?」
「その後も」
「その後も!?」
神藤が頭を抱える。立川が遠い目をした。
「もうそれ結婚じゃなくて護衛任務だろ」
「まあ近いけど」
七條が認めた。
「認めるなよ」
神藤のツッコミに訓練場が笑いに包まれる。牡丹は首を傾げた。
「……………だから認識操作と銃は相性がいい」
「先生、話を戻さないでください」
「……………?」
「なんで不思議そうなんですか」
牡丹は少し考えた。
「……………神藤の異能は強い」
「ありがとうございます」
「……………だから殺すのも得意」
「ありがとうございますじゃなかった」
牡丹は気にせず続けた。
「……………例えば相手の認識を一秒ずらす、その一秒で引き金を引く」
「だからなんで銃なんですか」
「……………成功率が高い」
またその答えだった。生徒たちが一斉に額を押さえる。すると桐山が手を挙げた。
「あー先生」
「……………なに」
「魅せる技と殺す技が必要って言ってたが」
「……………うん」
「じゃあ先生の魅せる技はなんだ」
牡丹が少し考える。数秒。十秒。二十秒。
「……………」
「まさか無いのか」
「……………ある」
「あるのか」
牡丹は頷いた。
「……………|世界よ空隙に帰れ《オー・コスメ エス・ト・カオス・エパネルテ》」
「どんな技だ」
「……………全部壊す」
「説明が雑です」
「……………全部壊れるから」
「そういう話じゃないんですよ」
立川も続く。
「どのくらい壊れるんですか」
「……………広い」
「広いじゃ分かんねえよ」
桐山が嫌な予感を覚えながら聞く。
「先生」
「……………なに」
「使ったことあるのか」
「……………ある」
「いつだ」
「……………戦争」
「やっぱりか」
誰かが呟いた。牡丹は少し考える。
「……………一回」
「一回ですか」
「……………一回しか使ってない」
「その言い方も怖いんですよ」
神藤が額を押さえる。
「ちなみに被害は」
「……………大きい」
「具体的に」
牡丹は少し悩んだ。これはたしか嵐山に口止めをされている。
「……………怒られるから言わない」
「絶対ヤバいやつじゃん!」
「……………私のはもういい、レポートにするから必殺技考えて」
牡丹はそう言ってホワイトボードに大きく「必殺技」と書いた。生徒たちは顔を見合わせる。
「いや」
神藤が言う。
「先生の話の後にやれって無理じゃないですか」
「……………?」
「こっちは今、世界を壊したかもしれない教師の話を聞いた直後なんですよ」
立川が付け加える。
「しかも怒られるから言えないレベル」
「……………うん」
「認めるな」
即座に突っ込まれた。牡丹は不思議そうに首を傾げる。
「……………でも考えるのは大事」
「まあ、それはそうですけど」
「……………神藤」
「なんですか」
「……………発表」
「最初!?」
神藤が叫ぶ。牡丹は頷いた。
「……………新聞部だから」
「理由になってない」
「……………文章書くの上手い」
「新聞は立川しか書いてない」
周囲から笑いが起こる。神藤は頭を掻いた。
「まいったな、えーっと……」
少し考える。
「認識をずらして」
「……………うん」
「相手の死角から攻撃する感じですかね」
「……………暗殺」
「違います」
即答だった。
「なんでそうなるんですか」
「……………成功率が高い」
「先生、その理論禁止」
立川が手を挙げる。
「俺もあるぞ」
「……………うん」
「名前は」
少し考える。
「
「結構かっこいいな」
桐山が頷く。
「効果は」
「二キロ先の悪口を聞く」
「必殺技じゃねえ!」
訓練場が爆笑した。立川は真顔だった。
「精神攻撃だぞ」
「どこがだ」
「教師の悪口聞いたら結構へこむ」
「お前がへこむだけじゃねえか」
牡丹が少し考える。
「……………便利」
「先生は肯定しないでください」
神藤が突っ込む。桐山が手を挙げた。
「俺はもう決まってる」
「……………うん」
桐山は立ち上がる。
「
「おおー」
男子たちが盛り上がる。
「それっぽい!」
「主人公感ある!」
「効果は?」
桐山は胸を張った。
「全力で殴る」
数秒の沈黙。
「先生」
「……………なに」
「これ名前だけですよね」
「……………うん」
牡丹は頷いた。
「桐山らしい」
「褒められてるのか?」
七條がため息をついた。
「結局みんな名前だけじゃない」
「……………いい」
牡丹は静かに言う。
「最初はそれで」
「そうなんですか」
「……………うん」
牡丹はホワイトボードを見た。そこには、
脳を炭化
千里耳
破軍天衝
が並んでいる。
あまりにも統一感がない。しかし牡丹は満足そうだった。
「……………名前があると技になる」
「そんなものですか」
神藤が聞く。
牡丹は少しだけ考えた。
「……………戦争の時」
訓練場が静かになる。
「……………名前を付けると怖くなくなる」
「……」
「……………自分で使う時も」
「……」
「……………使われる時も」
生徒たちは黙った。普段の牡丹なら言わない言葉だった。
「だから」
牡丹はホワイトボードを指差す。
「……………好きな名前を付けるといい」
数秒後、神藤が苦笑した。
「じゃあ真面目に考えますか」
「……………うん」
地下訓練場には、先ほどまでの笑い声とは少し違う、穏やかな空気が流れていた。
「|世界よ空隙に帰れ《オー・コスメ エス・ト・カオス・エパネルテ》は何だ」
「……………黒井は知らないの?」
「ああ、その情報はない」
「……………私の異能を制御しないで放つ。メキシコ終焉戦で一回」
「そうか、ならいい」
黒井はクラスメイトのほうに歩いて行った。
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────────
佐渡島に牡丹はいた。海風が牡丹の周りだけ止んでいる。牡丹は目の前の花にむけて喋り出した。
「……………あしえ、黒井には私の技教えてないのなんで」
『万が一、情報を抜かれたらどうする』
「……………別に真似できない」
『そういう問題ではない』
花が抗議をするように揺れる。
『一応、黒井灰は牡丹が最高位の異能者だと知られないように、精神構造をいじってはいる。だが、おまえの技を知られたら”花火”だとバレるだろう』
「……………むう」
『今のお前は高位異能者で、幼少から軍属だった。これが設定だ』
「……………分かってる」
『牡丹の基本戦術を使えなくて、非合理性を感じているのは理解している。だが、我慢しろ』
「……………うん」
『世界には"花火"を探している阿呆な連中がまだいる』
少しだけ声が低くなる。
『最高位の異能者を敵に回したい馬鹿もいる。利用したい間抜けもいる。殺したい命知らずもいる』
「……………無理」
『それはそうだが、無用な出血は避けるべきだ』
「……………うん」
『お前は大丈夫でも、周囲はそうじゃない』
牡丹は少し考えた。そして小さく頷く。
「……………分かった」
『牡丹が使っていいのは、「エネルギーの付与」だけだ、「現象・物質・運動の励起」は使うな。「エネルギーの付与」だけでも十二分にお前は強い』
「……………うん」
『いいか「励起」は使うなよ。たとえ生徒が死ぬことになっても』
「……………やだ」
『だろうな。そんな簡単に言うことを聞くなら、俺や嵐山が苦労していない。だから困るんだ』
「……………?」
『お前は毎回そうだ。一人助けるために百人助ける手段を使う』
「……………助かるならいい」
『良くない。死ぬはずだったものが生きていたら。人は疑う、そして”花火”が生きていることを知る』
「……………帰る」
『そうか』
青白く発光する花が萎れ、朽ちた。
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────────
一方そのころ、2-Bでは生徒たちは牡丹の正体について考察をしていた。立川は黒板の前に立っている。
「で、今わかってることはこれ」
・年齢 21歳 9歳から戦場にいた 14歳から去年末まで、家事手伝い
・身長 143.3 cm
・体重 200 kg オーバー(猪原の証言)
・異能 エネルギー干渉型
・視力 日中でも星が見える
・高位異能者 (白橋校長の証言)
白橋校長から牡丹の正体を隠すように雇われた立川、神藤、七條が発案した、自習の時間を使ってそれらしい答えを出す会もとい「菅原先生の正体を考える会」が始まった。
⦅で白橋校長はなんて言ってたの⦆
⦅うーん、口止めされた内容に少しかすってもいいから、みんなが探らないようにしてほしいって⦆
⦅うまくいくのかこれ⦆
⦅やるしかないわよ⦆
神藤が口を開く。
「体重こんなにあったの?」
「ああ、猪原曰く、倍はあったそうだ、あいつの体重が110kgだから、まあそのあたりだろ。あとこれもある」
桐原が立ち上がり、黒板に付け足す。
・異能について 原子単位の制御が可能
「マジ?」
「ああ、本人が言ってた」
七條が端末から顔を上げる。
「うーん、白橋校長の発言をまとめたら、かなり高位の異能者で、年齢が原因で戦った功績が消去されたってことくらいしか分からないわ」
神藤が反応した。
「功績が消去された?」
「うん」
七條が端末を操作する。
「校長の話をそのまま繋げるとそうなる」
「そんなことある?」
「あるわね。9歳よ、そりゃあ外聞が悪いでしょう。しかもあんな、脳を炭化する技まで編み出させたんだから」
「「「あっ」」」
「あれ、解決した」
立川の声が漏れる。神藤が続ける。
「確かに、あまりに先生がぶっ飛んでいて実感なかったけど、9歳を戦場に送ったのはまずい」
七條も頷く。
「国際問題よ」
「もうなってるだろ」
桐山が即答した。
「だから消えたんだろ、その辺の記録」
「つまりまとめると、戦場跡地にいた先生を軍が拾って、たまたま高位異能者だったので、戦場で戦わせた。それが知られるとまずいから、情報を消したってことでいいのかな」
「いいんじゃない」
「ええ、あっていますよ、皆さん内密にね」
白橋が教室の後ろから声をかけた。
「……」
「……」
「……」
神藤がゆっくり振り返る。白橋校長がいた。にこにこしていた。
「校長、いつからそこに」
「五分ほど前から」
全員が顔を見合わせる。
「結構前だな」
「結構前ね」
「結構前だな」
白橋は頷いた。
「ええ」
「止めなかったんですか」
「概ね正解でしたので」
教室がざわつく。
「正解なんですか」
「大筋では」
「マジか」
立川が慌てて黒板を見る。
・戦場跡地で保護
・高位異能者
・戦場投入
・情報抹消
「ほぼ合ってる?」
「ほぼ合っています」
神藤が頭を抱えた。
「そんな雑な経歴ある?」
白橋は少し考えた。
「本来ならありません。ただ、第三次世界大戦でしたので」
「あー」
「なるほど、納得した」
妙な説得力があった。七條が手を挙げる。
「じゃあ質問」
「どうぞ」
「先生の異能」
「はい」
「原子単位の制御が可能なんですか」
白橋が固まった。
「誰がそんなことを」
「本人」
白橋は天井を見上げた。
「菅原先生ですね、そうですか」
深いため息。
「ちなみに本当ですか」
神藤が聞く。白橋は少し考えた。
「否定はしません」
教室が静まり返った。
「待ってください、否定しないって、本当なんですか」
白橋は笑顔のまま答えた。
「その話題は校長権限で終了です」
「絶対本当じゃん!」
教室中から悲鳴が上がった。白橋は黒板を見た。
「皆さん」
「はい」
「一つだけ忠告しておきます」
全員が真面目になる。
「このことは喋らないほうがいいです」
「知ってます」
「知ってる」
「それは知ってる」
全員が即答した。白橋は満足そうに頷いた。
「それなら大丈夫ですね」
「何も大丈夫じゃないんですよ」
神藤のツッコミが教室に響いた。