────ゲオルギウスの墳墓の創世文
2051年 12月29日 東京都
天守島異能力学校に通う生徒の一人である
(もう13時、次の授業は、異能戦闘か。
そんなことを考えて歩いていると、神藤が途方に暮れていた存在と衝突する。
ドンッ
「おっと、すみませんぶつかって、って子供?」
「……あ、職員室ってどこですか」
「あ、新入生の子かな、最初は迷うよね、この学校、俺も一か月くらいは迷ったし、そうだこの後暇だし送るよ」
「……ありがとうございます」
神藤は小学生から中学生に見えるスーツを着た
「どこからきたの、見慣れないけど一人で?」
「……新船橋から、今日きました、一人です」
「そうなんだ、遠かったでしょ。ここは厳しいけど、飯がうまいよ、後で食べな」
「……そうですか、おばあ様と食べるので機会はないと思います」
「へぇ、おばあちゃんと暮らしているんだ」
「はい、89歳なんですけどしっかりしてます」
(へぇ祖母と一緒にか、
「おっと、ここが職員室だよ」
「…ありがとう、名前はなんていいますか」
「神藤だよ、縁があったらよろしくね」
「…私は菅原牡丹といいます…そういえばあなたも異能を」
「あー、うん、持っているけど内緒、…っていねぇ」
そうして、自販機からコーヒーを買い、神藤は少し早歩きで
「やぁ神藤、小さい子と衝突したらしいじゃないか、相手の子も気の毒だねこんなデカブツとぶつかるなんて、でその子になにをしたの」
「うっせぇチビ、なにもしてねぇわ、職員室に送っただけだわ。つーかあいもかわらず、猿山みてーなクラスだな」
神藤は隣の席に座る地獄耳の友人、立川
「で、立花、俺がいない間クラスは」
「あいたた、いきなりデコピンとは酷いじゃないか、クラスの事ね、はいこれ」
すると立川は神藤にタブレットを見せながら説明を始める。
「まず大きな変化と言えば、
「最後のは俺が
「え、そうなの、その件詳しく聞きたいんだけれど、…ダメ?ダメか。うん、そう、それなんだよ、この学校の情報のセキュリティはある程度生徒たちが情報戦の訓練のためにって穴があるんだけど、新しい先生の情報はなにもでてこなかった。たぶん、データベースに登録自体されていない、紙ベースで保存されている」
「今時紙ベース?護衛艦の設計図すらデータ化されてるのにか?データに登録されるのが遅れてるかもしれないぞ」
「それはない、前の先生も登録はすんであった、ここ軍事施設だからね、一様。そんなデータに登録されていない人を入れるわけはない、だから元異能部隊の人、かなりの確率で特別異能部隊だと思う」
立川は話終えると、タブレットの電源を落とし、そして、机に広げてあったノートになにやら書き始めた。神藤はコーヒーを飲みながら今の会話を思い返す。
「そういや、異能部隊と特別異能部隊って何が違ぇんだ」
「うーん、同じ系統の異能者だけで構成された部隊が異能部隊。一人の異能者に最大限実力を発揮してもらうのが特別異能部隊。つまり、特別異能部隊は異能者が一人居れば良くて、それ以外は非異能者だけでもいいんだ。この内容は君がいない間に授業でやったことだよ。そうそう一教科、500円でデータあげるよ」
「ほらよ6000円だ、データ寄越せ」
神藤は6000円を立川に渡し、自分が居なかった時の授業の内容を確認しようとすると、突然前の扉が開いた。すると、このクラスの副担任である、
(
「えー、静かに、静かに!新しい異能戦闘訓練の先生が来た。自己紹介をお願いできますか?」
静まり返った教室で、
『
と書き、困惑する生徒たちを見て。
「……菅原牡丹、これから異能戦闘訓練を教える。あとこのクラスの担任をすることになった、今までは家事手伝いをしていた。右端の人から自己紹介、名前と異能を言って」
そして、何かをやり切ったような顔をして、教室の端にある椅子に座った。
なんとも言えない、気まずい静寂の中で、頭を抱えながら沈黙を破るのは吉川である。
「あー…谷口から自己紹介頼む」
前の扉に最も近い生徒が立ち上がり自己紹介を始めたが、牡丹を除く全員が細部は異なるが同じ言葉を胸に抱いていた。
(((誰か、何か説明をしてくれ)))
自己紹介が粛々と進み、神藤の番が来る。
「神藤 悠馬です。異能は精神干渉系です。異能戦闘訓練の先生だったんですね」
「…さっきはどうも」
牡丹は会釈。皆は神藤を助けを求めるように見るが
⦅言っておくが俺は職員室に案内しただけで何も知らん⦆
神藤が
その後、何事もなく生徒たちの自己紹介が終わり。
「授業のあと、終業式があるので菅原先生、生徒たちを第Ⅰ体育館に連れてきてください」
吉川が牡丹にそう伝えて逃げるように去っていった。数秒後、教室が沸き立つ。
「逃げるなァァ」「おぉー怖ィイ 副担任のくせに説明しないってもしかしてアナタは無能の人?」「新しい先生小さくてかわいくない?」「連れてきてくださいじゃねーんだよぉ」「今日、体育着もってきてねーよ」「…あいつらに知らせるか」
そんなクラスメイト達が思い思い叫ぶ中で、神藤は隣に席にいる立川に話しかけようとして驚いた。すぐそこには、ほんの数瞬前までは教室の隅に座っていた牡丹が目の前にいるではないか。
「す、菅原先生、俺に何か用でもあるんですか」
(ずっと見ていたはずなのに見えなかった。俺の瞬きする間に移動したのか?)
「…授業で使う訓練場と第Ⅰ体育館の場所と、終業式の時間を教えて」
「え?異能戦闘訓練で使うのは第Ⅱ訓練場がメイン。第Ⅰ体育館は授業が終わったら案内する、終業式は15時から16時までだ」
思わず素がでてしまった神藤をよそに牡丹はこの場にいるものには色付きの風のようにしか見えない俊敏な動作で教壇に立った。そのまま腕を前に掲げ手を打ち鳴らす。すると音響兵器めいた大音量が発生。生徒たちは沈黙を強要される。
「……第Ⅱ訓練場に集合、19人全員ちゃんと来ること。七條何か言いたいことでもあるの?」
「菅原先生、戦闘訓練はA組と合同でやります。だから来るのは39人だと思います。あと耳がすごく痛いです」
「…それはごめん。あとA組?にも訓練があると伝えて」
「分かりました、八谷さん行くよ」
「葵ちゃん?私も行くの」
(((何か違う気がするけど、ナイス七條)))
死屍累々の生徒たちの中で、かろうじて無事な生徒の一人だった七條
2051年 12月29日 東京都 天守島 天守島異能力学校 第Ⅱ訓練場
牡丹は訓練場で、生徒たちを待ちながら職員室で知ったことを思い出していた。
(天守島異能力学校には三種類の生徒がいる。一つは異能力持ちの不良、この学校を監獄代わりに社会から押し付けられた生徒たち、桐山グループ?がトップ。次に異能力が暴発した時に百人以上死人がでるとされている生徒、七條とか。最後に異能力自衛隊の入隊希望の生徒、これが大部分を占めている、神藤もこれに入るらしい。生徒たちが来た、そろそろ始めるか)
着替えを終えた生徒たちが訓練場に入るのを見て授業を始めようとした牡丹に、異を唱える生徒がいた、身長は牡丹より50cmは大きく筋肉質、坊主頭でこれぞ不良といった風貌をした生徒、桐山グループのナンバー2
「ちょっと待てよ、聞いたぞテメェ軍属じゃねえのか」
「……うん、一般人」
(公的には軍属じゃないって嵐山さんが言ってたし)
「オイオイオイ、じゃあなんだ。こんな一般人のガキが戦闘訓練教えられますってか?俺らを舐めてんのか?」
猪原は片手で牡丹の胸ぐらをつかみ、持ち上げようとしたが、その顔に緊張が走る。
(重い!少なくとも
ピシッ
そんな鞭のような小さい音が鳴り。猪原は白目をむいて気絶した。
2-A、
「僕、見ちゃったんですよ。猪原が菅原先生を殴ろうとしたときに、先生が猪原の顎に攻撃をしたんですよ。先生の右腕と猪原の顎がブレたんで間違いないです。加速70倍くらいで見てたのに見切れませんでした。だから訓練サボろうと考えてたんですけど、やめました。この先生なら僕の事教えられるかもって」
牡丹は軽く猪原を持ち上げ訓練場脇のベンチに寝かせた。この場にいる桐山グループで最強の猪原が赤子の手をひねるようにやられたからだろうか、桐山グループの生徒と思われる生徒たちは敵対的な雰囲気を纏わせながらも、何もできずにいた。牡丹は猪原を指さし。
「……桐山グループ?の人たちこの子保健室に連れて行って。ほかの生徒たちはとりあえず私と組手をしよう」
「菅原先生なぜ組手なのですか?銃火器は使用しないのですか?」
「…強い異能者は携行可能な火器は無意味。だから己の異能力と肉体で戦うしかない、だから徒手空拳が弱ければすぐ死ぬ。だけど今回は実力を図るために組手をする。七條は理解できた?」
「はい、理解できました。あのー先生は異能者同士の戦闘をしたことがあるのですか」
「……ないとは言わないけど、具体的には言えない。じゃあ始める」
「わかりました、では胸を借ります!!」
猪原を持ち上げ訓練場から出ていく桐山グループの生徒たちを尻目に七條は紅い雷光を纏って牡丹に突撃し、ジャブを三連発を放つ。半身をずらすことで回避。前腕を掴まれ地面に叩き付けられる寸前、七條の全身がほどけ牡丹の頭上に三つの紅い球体が発生。その球体から分裂した3人の七條が現れ攻撃を加えるが、避けられ、捌かれ、反撃に背手を食らう。七條の猛攻を凌ぎながら、牡丹は唖然としている生徒たちに走り出す。
「……なにをボーッとしている。来ないなら私から行く」
「え、ゲフッ」
「あっ、立川が一発でやられた」
そして、牡丹は立川に
(あと21人、思ったより強いな)
(((この人本当に民間人?強すぎない(だろ))))
互いが互いの強さを認め、生徒たちが異能を展開する。牡丹は一つ結びにした髪をほどき。
「……これで二学期?の戦闘訓練を終える。終業式に遅れないようにね」
「「は…はい」」
土にまみれた生徒たちに授業の終了を告げ、牡丹は訓練場を後にした。
「あんだけやって、息一つ切れないのかよ」「打ち込まれた鳩尾が痛い」「攻撃全部避けられたわ」
ぞろぞろと訓練場から生徒たちが出ていく中、神藤、立川と八谷は荒ぶる七條を落ち着かせようとしている。
「落ち着いて七條さん。この前、戦闘訓練の先生が弱いって愚痴ってたし、良いことじゃん」
「負けたからって騒ぐなよ、葵」
「悔しい悔しい悔しい悔しい。立川くん、それはわたしがギリギリ勝てるくらいの強さであってほしいって意味。悠馬、騒いでない」
「面倒な要求。クライアントに欲しくないわ」
「あなたになんて頼まない」
「葵ちゃん、終業式に遅れちゃうよ。生徒会長のあいさつがあるんだよ」
七條の動きがピタッと止まり、さっきまで騒いでいたとは思えない表情を浮かべ。
「さあ、行くわよ。生徒会長が遅れたとなっては大惨事じゃない」
「あいかわらず、切り替えはえー」
「長引くよりいいじゃない」
「これが葵ちゃんのメンタルコントロールでもあるしね」
そうして四人の生徒は急ぎ足で校舎に向かった。
「あっ、その前に土を落とすよ」
「ありがとな、八谷」
その身についた土を落として。
人物紹介
菅原 牡丹 (21 女)
本作品の主人公。天守島異能力学校2-B担任。肉体の比重が6くらいある。この授業で自分の異能を使わなかったのは失敗だったなと思っている。学校に行ったのは選挙以外では初めて。貯金が日本円で10桁ある。
神藤 悠馬 (17 男)
精神干渉系の異能者。天守島異能力学校2-B。新聞部。かなり貧乏の家の生まれ。一方的に突っかかってくる七條を嫌っていたがいろいろあって七條と婚約した。花婿修行のために2週間ほど天守島を離れていた。立川の親友
立川 一 (16 男)
二キロメートルまで、聴覚を飛ばすことができる異能者。天守島異能力学校2-B。新聞部部長。学校内で起こったことを異能で知り新聞にしている。重要な情報は学校と取引をして、有料で売っている。貯金はいつもゼロ。神藤の親友
七條 葵 (17 女)
紅い電気のようなものとなり、また操ることができる異能者。天守島異能力学校2-B。天守島異能力学校生徒会会長。超金持ちの名家生まれ。超負けず嫌いで、自分より成績がいい神藤のことが嫌いだったが、今は好き。八谷の親友。
八谷 涼音 (17 女)
モノを清潔にすることができる異能者。天守島異能力学校2-B。天守島異能力学校生徒会会計。素手の戦闘なら生徒の中で一番強い。一般家庭出身。貯金は6桁前半。七條の親友。
吉川 猛 (26 男)
モノに簡単な命令をすることができる異能者。天守島異能力学校2-B副担任。昼に新しい担任が外部から来ると知らされた人。貯金は一週間前に元嫁に持ち逃げされて4桁しかない。
猪原 竜輝 (17 男)
強力な振動を発生させることができる異能者。天守島異能力学校2-A。桐山グループ所属。桐山、八谷、牡丹以外に負けたことがない。
常喜 韋駄天 (16 男)
呼吸を止めている間自らの時間を2倍から1000倍まで加速させることができる異能者。天守島異能力学校2-A。陸上部所属。唯一牡丹の猪原への攻撃を確認できた人物。