牡丹は花火になりたい   作:ズンドロ

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ただのコンクリートと思ってはいけません。驚くべきことにこのコンクリートの塊は数十人もの命が入っている。彼らは生きている、何も感じず、なにも動けず。ですが非常にゆっくりとした速度で思考している。この所業を行ったのはなんとあの葭江躯です。この貴重な品に皆さまはいくらの値段をつけますか?
────ある闇オークション会場での音声記録


これで補修の第一弾終了

2052年1月27日 ニューフクオカの廃ビル

 

 牡丹、神藤、立川、桐山、七條、星宮、珠命が円になり紙コップを合わせていた。

 

「……………補修終了。乾杯」

「「「乾杯」」」

「で、なんで俺を殺しかけた奴がいるんだ?」

「殺す必要はないですよ?」

 

 桐山が珠命を指さす。珠命は意味が分からないという様に首を傾げる。

 

「……………しゅめいは勘違いされがちだけど、殺す必要がないなら殺さない」

「ええ、執行対象ではありませんので」

「そういう意味じゃねえ」

 

 コップの中のジュースを飲み干した桐山は頭を抱える。

 

「聞いてはいるんだが、自己紹介やってもらっていいか?」

 

 珠命は小さくうなずいた。そしてお辞儀をして桐山と向かい合った。

 

「異能自衛隊、特別異能尉補佐をしています。黒井珠命と申します。第三次世界大戦では、特定異能戦略実行部隊に所属していました。また明日から天守島異能力学校で家庭科の教鞭をとらせていただきます」

「今なんて言った?家庭科の先生になる?明日?」

「はい。特定異能戦略実行部隊に所属していた時には、洗濯、食事、処刑、掃除、他部隊との交渉、宿舎の補修などの雑務を一任されていたでご安心ください」

「今なんか変なの混ざったな」

 

 桐山が即座に返す。珠命は少し考えこんだ。

 

「ええと……………変なのですか?変なの……………ああ、処刑ですね。家庭科では教えませんよ」

「そこじゃねえ」

「諦めたほうがいいですよ☆その人☆礼儀作法をカンペキに仕込まれたバケモノですから☆」

 

 星宮がそう言った。桐山が星宮に食って掛かる。

 

「まてや、人をいきなり殺しに行く礼儀は無いぞ」

 

 桐山が足踏みをした。珠命は頭を傾け数秒考えこむ。

 

「確かに親族や師範たちからは教えられていませんね。ですが職務規範として、挨拶をして罪状を告げる。言い訳を聞きその後執行する。これらの手順は必ず守っています。昨日は牡丹の教え子のテストでしたので、挨拶はしませんでしたが」

「テストで人を半殺しにするわけねぇだろ」

「……………しゅめいは殺すのと痛いだけで済む。この違いが理解できないから仕方ない」

 

 桐山は牡丹のその答えを聞くと頭を抱えた。珠命はそれを見て不思議そうにしている。

 

「殺すと痛めつける、どちらも加害です。昨日の件は戦闘力を測るために行いましたので多少のケガは発生すると考えられます。しかし死なないようにしてありますよ」

「そうか、じゃあ俺にどんな加害をしたのか覚えてんのか」

「はい。肝臓、脾臓、右肺破裂。大腸穿孔。脊椎破砕。そのほかに多数の内出血です」

「普通は死ぬんだよ」

 

 桐山は机を叩く、上に載っていた皿が、カチャンと音を立てた。珠命が目を瞬かせる。

 

「治療ができる葭江隊長や星宮さんもいましたが?」

 

 牡丹と星宮以外の全員が沈黙する。

 

「……………しゅめい」

「シュメイさん☆理解できないです☆フツウ☆」

 

 星宮が額を押さえた。珠命は小さく首を傾げる。

 

「理解できないとは?」

「治せるからって☆他人に危害を加えません☆」

「そうなのですか?」

 

 珠命は本気で不思議そうだった。冗談でも皮肉でもない。本当に分からないのだ。桐山は頭を抱えた。

 

「あー先生と同類か」

「牡丹と同類ですか。心外ですよ」

「……………私はしゅめいより社会を理解してる」

 

 牡丹が否定をする。珠命は数秒黙る。

 

「牡丹より法律を遵守していますし、教養もあると自負しています」

「そういうわけじゃねえんだよ。人をいきなり殴るなという話だ。教養以前の事だろ」

「はい。理解しています。ですが牡丹の教え子が気になったので攻撃をしました。弱かったら手足を折るくらいで止めましたよ」

「止めてねぇんだよ。なんで折る前提なんだ」

 

 桐山は休んだというのに疲れた顔をしている。

 

「戦闘力の確認です。葭江隊長も同じ方法でした」

「葭江躯を基準にするな」

「そうなのですか。勉強になります」

 

 星宮が桐山のコップにジュースを注ぐ。七條もポータブル電源に繋がれた電子レンジからピザを取り出す。

 

「まあまあ☆終わったことですし☆水に流して☆この人悪意はありませんし☆害はありますけど☆」

「そうね。明日から家庭科の先生になるから、放課後に話をしたらいいんじゃないかしら。今は補修が終わったことを祝いましょう」

 

 七條が切り分けたピザを紙皿に乗せる。桐山は納得はしていなかったが矛を収めた。

 

「…………………………解ったよ。俺が言うのもなんだが、いかれてんなここにいるメンツ」

「そうですね☆じゃあ☆改めまして☆カンパイ」

「「「乾杯」」」

 

神藤は牡丹に近づく。牡丹はフライドポテトを7本まとめて食べていた。

 

「菅原先生。昨日なんで俺らやらなかったんですか」

「……………精神が持たない。傷ついた子供みて、ショックを受ける。一昨日のあれでかなり不安定だったから」

 

 神藤は少し黙った。薬の売人から記憶を読みとって、不安定になったのは確かだ。檻の中の子供。麻薬を打たれてひきつけを起こした顔。今日も夢に見た。

 

「そんなに酷かったんですか、俺」

「……………うん」

 

 星宮がチキンを両手に持ちながら二人の間に入り込む。

 

「3回☆夜中起きましたよね☆」

「えっ、なんでそれを」

「見てました☆アオイちゃんも☆」

 

 そして手に持ったチキンを二人の口に入れる。牡丹が骨ごと咀嚼した。

 

「……………売人から記憶を読み取った。あれで実は十分な仕事」

 

 牡丹はそう言ってコーラを飲む。神藤は少し眉をひそめた。

 

「でも、俺は結局記憶探っただけで、後は先生が全部」

「……………まだ神藤は子供。私は大人。あれで十分」

 

 立川も神藤に近づく。桐山はサンドイッチをやけ食いしているようだ。

 

「いやでも、神藤くんが記憶探ってなかったら自衛隊の人たち来なかったでしょ」

「はい。情報がなければ動けませんでした。お手柄ですよ」

 

 珠命がそう言うと、神藤は少し居心地悪そうに頭を掻いた。記憶を読み場所を突き止めた、それだけだ。実際に突入して敵を倒したのは牡丹だ。立川と桐山は少女を助け出した。星宮と七條は囮して活躍したし脱出の時も他人も運んだ。じゃあ自分は?

 

「……………この補修のメンバー以外にも留年の人はいた。でも将来、この補修が活きる人だけ選んだ」

「どういうことですか」

「……………記憶を見て、怒れた?」

 

 牡丹がそう質問すると、生徒たちはすぐさま答えた。

 

「……はい」

「うん。怒りますよ、ネタにもならない」

「はい」

「当たり前だろ」

 

 牡丹はそれを聞くと安心したようにいった。

 

「……………私は怒れない。あしえも星宮もしゅめいも。………いやあしえは怒るか」

 

 一瞬、誰も言葉を返せなかった。星宮はチキンをかじる手を止める。珠命は静かにコップを持ったまま。桐山が眉をひそめた。

 

「いや、どういうことだよ。ガキが檻に入れられて殺されてるんだぞ」

「……………私は子供でも大人でもそういうものだと思うだけ」

 

 牡丹がそう告げる。珠命がコップをテーブルに置く。

 

「私の場合はいわゆる負の感情が存在しません。故に怒りが理解できても共感はできません。葭江隊長は怒ります、見たことがあります。けれど、動く必要がないなら動きません」

「私はもう慣れちゃいました☆わかる☆ってカンジです☆」

 

 星宮がチキンをかじる。神藤がかろうじて口を開く。

 

「星宮さんやっぱり治ってなかったんじゃ」

「いいえ☆ただの経験則です☆アタマもココロも元気です☆価値観は壊れました☆」

 

 桐山は米神を揉む。ウーロン茶を飲み干す。

 

「星宮も経験者か。その女は負の感情がない?葭江躯も必要がないなら動かない?どういうことだ」

「……………そのままの意味。しゅめいは正の感情もどこか変。私たちは見過ぎた、だから慣れた。強すぎる悪意を、身に余る善意も」

「だから先生たちは見せたんですか。間違った答えを、悪意を。怒れるままでいるために」

 

 神藤がポツリと呟く。牡丹がその頭をなでようとして手が届かない。

 

「……………うん。私たちは怒れないから、最後には人に寄り添えない。この先の先導していくみんなには寄り添える強い人になって欲しいから。今回は補修って名目でやったけど、いつかこじつけてやることにしてた」

 

 立川が紙コップを見つめる。

 

「それって」

 

 言葉を探すように口を開く。

 

「先生たちは、自分たちみたいになるなって言ってるんですか」

「……………そう。少なくとも私は」

 

 その言葉に星宮が苦笑する。そしてチキンの骨をゴミ箱に投げ入れた。

 

「私は多少の摩耗は必要だと思っています☆けど私たち位オワってる人には☆なって欲しくないです☆」

「私も異能尉補佐をやらせていただいてますが。運が良かったからです」

 

 珠命が口を開いた。

 

「負の感情が存在しないと言えば聞こえがいいですが、それはいわゆるストッパーもないことを指し示しています」

「たとえばどんなことですか」

 

 立川が興味深そうに聞いた。珠命は少し考えて答えた。

 

「私は幼いころウサギを飼っていました。ある日ウサギの味が気になって、食い殺しました。ウサギを失うという恐怖も、親に叱られるかもという不安も存在しないからです」

 

 桐山が口を開きかけ閉じる。立川が笑い事じゃないなという表情をする。神藤が言葉を探す。

 

「それは……………えっと」

「祖父は私を反省するまでそこに居ろとウサギ小屋に閉じ込めました。私は反省が理解できなかったので五日ほどウサギ小屋にいて餓死しかけました。私は死すら負の感情を抱けません。そして親戚がみんな泣いていました。当時の私には理解できないことでした。

 

 誰もすぐには言葉を返せなかった。桐山ですら黙っている。珠命はその沈黙の理由もよく分かっていないらしい。牡丹が何かを思い出したようだ。

 

「……………しゅめいが、あしえの部隊に入ったころ、遠距離走の訓練をした。辛くなったらやめていい軽い訓練。だけどしゅめいは足が折れても走ってた。辛くないからって」

「そうか、辛いという感情もねえのか。だから危害をためらいなく加えらえるし、自分が壊れても動き続ける。周りは苦労してんな」

「はい。親戚から教養を学び、師範たちからは様々な所作に含まれる意味を教わりました。だから私はここにいれます」

 

 珠命はそう言って、まるで天気の話でもするようにコップの水を一口飲んだ。その姿を見て、桐山は深くため息を吐く。

 

「大体は納得いった。人間の真似っ子ってわけか」

 

 珠命は少し考えて、微笑んだ。

 

「そうですね。私は、嬉しいと感じますし、楽しいと感じます。ですが、怒りを感じるべき時に怒りを感じられません。哀しいと感じるべき時に哀しいと感じられません」

 

 珠命はそう言って、静かにコップを置く。立川は少し考えてから声を出した。

 

「そうか。珠命さんは感情の発達における不快がないのか」

「あー、そういうことか」

「どういうことだ神藤、立川」

 

 桐山がそう聞くと、立川はホワイトボードを引きずってきた。

 

「ええと、ブリッジズという子供の感情発達を調べた人の学説なんだけど。まず赤ちゃんが生まれてすぐの感情は「興奮」しかないんだ。それが「快」と「不快」に分かれるんだ。そして成長するにつれて分化して、どんどん複雑になっていくんだけど、「不快」はまずどんなものに分化すると思う?」

「「怒り」「嫌悪」「恐怖」の三つね」

 

 立川がホワイトボードに書き込む。七條がそう答えた。神藤はホワイトボードに書かれた文字を見る。

 

「正解。本当はもっと複雑なんだけどな。まあ大体はあってる。感情を見てみると生まれたばかりの子供は、こうすごく単純な感情をしている。「不快」という大本がないからそれから分化するものもないんだろ」

「うん。昔、本で見たものを簡略化して言ってるから、調べるきっかけ程度に思ってくれればいいよ」

「俺も中学の頃、精神と異能の関係を調べてた時の記憶から引っ張り出してきたモノだし」

 

 神藤と立川がそう告げると珠命は目を閉じた。

 

「お二人の説明はおおまかですが正解です。主治医にもそう言われました。そしてこう教えられました『あなたは規則を守りなさい。教養を学んでそれを指針にしなさい。それらは誰もが持っているけどあなたは持っていない羅針盤の代わりになるから』と。あと『あなたは恐れられるでしょう、遠ざけられるでしょう。それを不思議に思わないで、誰もが持っているモノを持っていないと仲間外れになりやすいからね』、『あなたは「怖い」がないからいつの間にか「危ない」の中にいることになる。だから強くなりなさい』とも言われました」

「いい先生だな」

「はい、4年前に定年を迎えて引退をなされましたが時折、手紙を送っています」

 

 桐山が頭を掻いた。そしてひび割れた床を見つめる。

 

「よく、第三次世界大戦で壊れなかったな……………いや、壊れることすらねぇのか」

「はい。そこでだけ羨ましいと言われました。これはおそらく良くないことでしょうね」

 

 珠命はどこか遠くを見る。きっと何処か遠く、十年前の戦地に。

 

「それでも共感できずとも、いわゆる「不快なもの」に対する知識は増えています。日常では友人も何人かいます。ごく普通の一般人です。時たま、師範達の代行をしています。ただの一般人の珠命として受け入れられています」

「戦場や処刑じゃどうなんだ」

「ドレスの死神、気品のある狂犬など言われています。女性に対するあだ名ではないと思いますが」

「……………間違ってはない」

「うーん☆助けてもらったから言いにくいんですけど☆まあ狂犬は間違っていないと思います☆私も執行について行ったことがありますけど☆その時は────」

 

────

────────

 豪奢だが品がある空間は血と絶望に染まっていた。ほんの数分前までは首輪をつけられた幼子が命乞いをしながら死んでいく様を笑っていた、自身を強者だと疑っていなかった者たちが震えていた。着物を纏った女が幼子を抱いて子守唄をうたっている。ただそれを見ていた。

 

「ねんねんころりよ~……………おや、寝ましたね。子供の寝顔はどれも可愛いものです。皆さま、逃げたさなかったことに感謝を申し上げます。では執行します。異論がある方はいらっしゃいますか。聞き入れることはいたしませんが」

 

 そして、スーツを着た男が立ち上がる。そのズボンは大きく濡れている。

 

「わ、私は経済官僚連の高井だ。異能自衛隊に資金を与えてやる。だからな、わかるだろ」

「おや、高井さん。先月の予算会議以来ですね。あなたの助言で自衛隊の宿舎を改築することができました。ありがとうございます。はい。その言葉の意図は理解しています」

「そうかなら」

 

どちゅ

 

 男が直径15 cmの円柱になった。ざわめきが起きる。怒号が上がる。

 

どちゅ

 

 何人かの男女が球体に圧縮された。

 

「これはいけませんね、せっかく寝たこの子が起きてしまいます。次いらっしゃいますか?」

 

 恰幅のいい高齢の男が泡を食って女に近づいた。

 

「私を殺せばどうなるのかわかっているのか。これは命令ださっさ」

 

 男の首が体にめり込んだ。

 

どちゅ

 

 女は首を傾げた。子供の目にタオルをかける。

 

「天竜源県知事。たしかに貴方は戦後の復興に尽力されて、自衛隊の指揮を任されたことがありますが、私に命令できるのは葭江特別異能尉と嵐山異能幕僚長だけです。次の方どうぞ」

 

 がたがたと震える女性が前に出る。数十年の月日が過ぎたようにやつれている。

 

「私は今日はじめてきた、だか」

 

 胴体が針の様になった。

 

どちゅ

 

「嘘はついてはいけませんよ、新田社長。昨年、表示偽造で行政処分を受けたばかりではありませんか。今日は最低でも5回以上来られている方々しかいないと確認済みです。次の方はどのような異論ですか?」

 

 静まり返る部屋の中で女の腕の中にいる幼子の寝息だけが聞こえている。

 

「いらっしゃらないようですので、執行しますね」

 

どちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅ

どちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅ

 

 鮮血に染まったカーペットを女が歩く。そして、その部屋に白い軍服に赤い仮面をつけた人が20人ほど入ってきた

 

「黒井補佐官。あとは私たちが行います。その子供はお願いします」

「ええ、近くのドラックストアはどこでしたっけ。この子のモノを買いたくて」

「ここから出て3km先の所にあります。今日はポイントが3倍でした」

 

 仮面の男がそう告げると、女は今日初めて驚いた。

 

「そうなのですか……………あら、今日はポイントカードもってきたかしら」

「たしか、ポイントは後付けできるはずですが」

「なら大丈夫ですね」

 

 女が立ち去っていく、仮面の付けた者たちはヒトの残骸を袋に入れ台車に乗せ始めている。全員慣れた手つきだ。女が階段を昇っていく。そのあとを少女がついていく。その顔は少し後悔の念が浮かんでいる。

 

(たしか冷蔵庫にピザの生地があったはずですが、やはり王道のマルゲリータにしましょうか、子供も苦手ではないでしょうし、葭江隊長は文句を言うでしょうけど子供優先ということで。あんな顔してトマト、ナス、ピーマンが苦手なのは少し可愛いですが)

 

「星宮さん。この子の治療を。かすり傷ですが」

「はい☆……………はあ☆ついてこなきゃよかったです☆

「治療は遅かれ早かれやらせましたが?」

「あ☆そうですね☆はい☆」

 

────────

────

 

「────こんな☆感じでした☆ちなみにこの件はフツーに公表はされています☆」

「……………なぜかニュースにはなってない」

「いや、ニュースにならねぇ方がおかしいだろ」

 

 桐山が思わず口をはさむ。その顔はどこか疲れた顔をしている。その手は紙コップを握りつぶしている。

 

「うーん☆なんででしょうね☆」

「かなりの数の有力者がいました。もちろんマスメディアの関係者も。自分たちの恥部を出したくなかったのでしょうね」

 

 神藤が問いを投げる。あまりに当然の疑問を。

 

「じゃあ俺たちが知らなかっただけで、こういう処刑って結構あるんですか」

「ありません。基本は一人、二人だけですね」

「あるじゃないですか」

 

 神藤が頭を抱えた。珠命は何か変なことでも言ったのかと疑問の表情を浮かべている。

 

「……………その話はあとで」

 

 牡丹が手を叩いた。

 

「……………みんなそろそろ帰る準備」

「「「はい」」」

 

 かくして、補修が終わった。

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