ファンタジーですが異世界転生者はいません。
登場人物はその時代に生きとし生けるもの。
人の生き死にの描写があります。
殴る、手足が飛ぶ、奴隷を鞭打つなどの残酷な描写があります。
おふとん中でイチャイチャするような描写も若干あります。
現代では普通に使う表現も、中世をイメージした世界観なのでその当時こんな表現だったか?と思って表現しています。
AIは使わずに書いていますのでかなり遅筆です。
当面週一位の頻度で投稿いたします。
のんびと書き進めていきたいと思いますのでご了承ください。
もう一人のセシリア・アルデリア主人公の旅立ちです。
アルデリア教皇国の朝は、鐘の音から始まる。
白亜の都の中心にそびえ立つ大聖堂。
その尖塔から第一打が、夜の名残を払い落とすように響き、
まだ冷たい石造りの街路を震わせる。
音は放射状の都市に広がり、隅々へと滲み渡り、
そして青い空へと抜けてゆく。
賑やかな市場のざわめきも、荷馬車の嘶きも、目を覚ましてはいない。
今はまだ、祈りの時間。
高窓から差し込む朝の光が、大聖堂の白い石床に細い帯を落としている。
法衣の衣擦れだけが柔らかく重なり、左右に広がる廊下から姿を現す神官達。
朝の祈りが始まるのだ。
その列のなかに、一人の見習い神官がいた。
セシリア・アルデリア。
今日、十七の誕生日を迎える。
そして――正式な神官となる日。
「神官になったら……たくさん、お役に立たないと……」
小さく息を整える。
心の中で、そっと拳を握った。
――そのとき。
周囲の神官たちの視線が、自分へ向けられている気がした。
慌てて頭を垂れ、法衣の袖を揃える。
ステンドグラスに朝日が砕け、祭壇を七色に染め上げる。
その光の中を――白が進む。
静まり返った聖堂に、ただ足音だけが響く。
沈黙を破る声が響いた。
「――ミラクレア・アルデリア・イシス御成り」
純白の法衣。
高く掲げられた法冠。
教皇が、祭壇へと歩みを進めていた。
深く下げた視界の端に、祭壇へと進む影だけが映る。
顔を上げることは許されない。
影が止まる。
柔らかく、しかし凛とした声が、大聖堂の隅々まで届いた。
「おはよう我が教義の僕(しもべ)たち。表を上げよ」
逆光の中に煌めく慈悲と慈愛の象徴。
あぁ、なんて神々しい輝き。
そこに立っていたのは、ミラクレア・アルデリア・イシス。
「祈りましょう」
低く、穏やかな祈りの声が聖堂に満ちていく。
一つひとつは小さな声。
けれど重なり合い、やがて大きな流れとなって、セシリアの身体を包み込んだ。
ひとりではない。
そう告げられているようだった。
自分も唱和する。
祈りは波となり、大聖堂を満たす。
やがて窓から外へと流れ出し、街路を、家々を、静かに満たしていく。
厳かで身が奮い立つような至福の時間が過ぎてゆく。
祈りが終わった。
大聖堂に静寂が訪れる。
「セシリア・アルデリア」
反射的に「はい」と返事をしてしまいそうになる。
ここは訓練場ではない、と慌てて唇を噛む。
溶けてしまいそうな笑顔で教皇が続ける。
「こちらへ」
声に導かれるように祭壇へと進む。
教えられた通り教皇の右側に回り傅(かしず)く。
白い法衣の裾が、石床に静かに広がる。
冷たさが、膝越しに伝わる。
女教皇――
ミラクレア・アルデリア・イシスが、ゆるやかに手を差し伸べる。
「私の目を見て……」
柔らかな声。
顔を上げると、吸い込まれそうな青い瞳に、自分の姿が映っていた。
逆光の中、差し伸べられた白い手。
指先が、額に触れる。
ひやりとするかと思った。
だが――違った。
春先の水のような、やさしい温もり。
ゆっくりと、指先が動く。
何かを“刻む”のではない。
なぞる。
描く。
祈りを、置いていくように。
淡い光が、指の軌跡を追って浮かび上がる。
複雑で、それでいて調和の取れた文様。
「汝に癒やしを」
最後の一画が結ばれた瞬間。
胸の奥で、何かが静かにほどけた。
「汝に清浄を」
視界が澄む。
空気が、澄む。
世界が、ほんのわずかに鮮明になる。
(これが聖魔法……)
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
(わたしも……誰かを救えるんだ)
教皇は、ほんのわずかに微笑んだ。
近くに控えていた大司教イグナスが、
小さく切った指を差し出す。
「祈りなさい」
セシが戸惑いながら唱える。
「神の慈悲を汝に……"治癒"」
ほとんど見えないような光が切れた指を覆う。
光が消え……、血は止まり、
傷が、ゆっくりと消える。
ざわめきは起きない。
ただ――
温かな安堵の空気が、大聖堂に満ちていく。
儀式は恙なく終わった。
参列していた神官たちが、静かに列を崩し去ってゆく。
その中で、大司教イグナスが歩み寄った。
若いながら威厳のある穏やかな眼差しが、セシリアを見下ろす。
「よく務めましたね」
深く頭を下げる。
「セシリア・アルデリア。これよりあなたは正式な神官です」
その声は祝福であり、同時に責任の重みでもあった。
「まずはあなたを保護してくれた孤児院へ。神官の姿、見せてあげなさい」
大聖堂に引き取られるまで過ごした場所に行ける。
院長にご挨拶できる。
喜びに胸が高鳴る。
「そして」
わずかに声が低くなる。
「次になすべきは、南の王国サナウス。彼の地に慈悲と慈愛を届けなさい」
「はい」
意気込みで声がつい高くなる。
胸が高鳴る。
――役に立てる。
「魔力が満ち、祈りが深まれば――」
視線が、一瞬だけ祭壇の奥へと向いた。
「さらなる祈りの場が、お前に与えられるであろう」
さらなる祈りの場が何を意味するのかは、まだわからない。
だが選ばれた者だけが足を踏み入れる場所があると、訓練時代に聞いたことがある。
大聖堂の――奥。
教えの先へと続く、もう一つの聖域。
気概に身体が震えた。
「励みなさい、セシリア。餞(はなむけ)にこの宝杖(ほうじょう)を与えます」
「はい」
杖の先端の宝玉が淡く光る。
それを取り巻く冷たい金属の感触。
ずっしりとした重みが……、与えられた使命の大きさを表しているようだった。
とりあえず書き上げた最新話迄投稿いたしました。
良かった、悪かったの反応がいただければ幸いです。
AIを」使っていませんので遅筆です。
ご了承ください。