老エルフ吟遊詩人の語った物語   作:猫屋まろん堂

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ファンタジーですが異世界転生者はいません。
登場人物はその時代に生きとし生けるもの。
人の生き死にの描写があります。
殴る、手足が飛ぶ、奴隷を鞭打つなどの残酷な描写があります。
おふとん中でイチャイチャするような描写も若干あります。
現代では普通に使う表現も、中世をイメージした世界観なのでその当時こんな表現だったか?と思って表現しています。
AIは使わずに書いていますのでかなり遅筆です。
当面週一位の頻度で投稿いたします。
のんびと書き進めていきたいと思いますのでご了承ください。
主人公の一人エルナ・グラウシュミットは城外へ出て赴任地を目指します。
エピソード1で登場したエルナ・グラウシュミットが再び登場。


セシリア・アルデリア赴任地へ向かう

門番の兵士たちに見送られ、城門をくぐった。

その瞬間、目の前に見たこともない世界が一気に広がった。

 

セシリアは思わず目を細め、宝杖をきつく握りしめ、出て来たばかりの後ろを振り返る。

 

頑丈な石造りの壁が高くそびえ立ち、まるで世界を区切る境界のように静かに立っている。

ついさっきまで自分はその内側にいたのだと思うと、不思議な気持ちになった。

 

風が強い。

匂いも多い。

そして何より、空が広かった。

 

城門の前には城内へ入る長い列ができていた。

逆に南へ向かう隊商の幌馬車と商人、護衛の冒険者、そしてセシリアのような旅人。

 

人も獣も荷も、まるで川の流れのように門の内外を行き来している。

 

ぎしぎしと軋む荷車の音。

鞭の乾いた音と、冒険者たちの笑い声。

 

それらの音の隙間を縫うように、

 

馬たちの低い嘶きや、積み荷の鶏や山羊の鳴き声。

 

そのすべてが、街道が上げる埃っぽい土煙に霞む光の中で渦巻いていた。

 

南へと伸びる馬車の轍が長く続く乾いた土の街道。

それを囲むように一面に広がる草原と樹々の緑。

 

「これが、外の世界なのね」と彼女は思った。

 

指先に、わずかな震えが残った。

思わず両手を確かめる。

 

得体に知れない怖さもある。

 

ひとつ大きく息を吸い込む。

 

胸の奥が静かに明るくなっていくのを感じた。

 

セシリアは宝杖の先に煌めく宝玉を見つめ、もう一度だけ城壁を振り返る。

わたくしが今まで守られていた場所は、思っていたよりもずっと小さな世界だったのね。

 

それから前を向く。

 

道は、遥か彼方へと午後の日差しに照らされ長く伸びていた。

 

(神がわたくしの前途を照らして下さるのね。頑張らなくちゃ)

 

世界は、こんなにも――

明るく、騒がしく、そして、生きているのか。

 

決意が胸に満ち、思わず身体が震えた。

胸の奥で大聖堂の鐘が鳴った気がした。

 

セシリアは小さく息を吸い、背負った荷を確かめる。

そして改めて力を籠め宝杖をぐっと握る。

 

それから一歩、街道へと足を踏み出した。

 

最初の目的地"シド"の村を目指して。

 

 

◇      ◇      ◇

 

 

午後の日差しは思ったより暑く、セシリアは歩みを止め空を見上げた。

城壁の近くはまだ風もあり、暑さを柔らかく空に溶かしてくれたけれど……。

 

振り返ればあれほど高かった壁もすでに見えなくなった。

草原に囲まれた街道を歩く彼女は、風がやんだこともあって暑さに息を喘がせ始めていた。

 

(まだ見た事はないけれど、砂漠の暑さってこんな感じかしら?)

 

法衣の内側に、熱がこもる。背に張りついた布が、じわりと汗を吸って重くなる。

はしたないと思いながらも袖口で額の汗を拭う。

 

歩みを止めた事で、身体の内にこもった熱がぶわりと汗を噴き出させた。

 

(こんなことなら、出がけに声をかけていただいた商人様の馬車に便乗させていただけば良かったかな?)

 

などとちょっぴり悔やんだが、心の声がそれを打ち消す。

 

(このくらいで弱音をはいてどうするの?神官の一人として"慈悲と慈愛の御心"を世界へ広めるのでしょう!)

 

ふるふると首を振り、両手で握り拳をつくる。

 

(そうよ。わたくしは見習いとはいえミラクルム教皇国の神官。旅に出たばかりで弱音を吐いてどうするの?)

 

パンパンと両手で頬を鳴らし気合を入れ、肩にリュックを掛け、杖替わりにしている宝杖をえいっとばかり掲げる。

 

街道の先はうっそうとした森になっていて日差しも遮ってくれそうだ。

 

(もう少し頑張ればきっと涼しくなる)

 

セシリアは森を目指し歩みを早めた。

 

 

◇      ◇      ◇

 

 

樹々から伸びる枝葉が日差しを遮る。

足元の土は柔らかく、踏みしめるたびに湿った匂いが立ち上る。

さっきまでまとわりついていた埃の匂いは、少しずつ消えていった。

 

セシリアは少し歩みを緩め深呼吸した。

こころなしか暑さも和らいだおかげで、新緑の匂いが鼻につんと心地よく刺さるのがわかる。

 

(この辺りで少し休もうかしら)

 

そう思いながら周りを見渡し、腰を下ろしてしばらく身体を休める場所を探した。

 

(意外に静かなのね。森の中って……)

 

耳をすませてみたものの鳥や虫の声もなく、弱い風に樹々の葉先が触れ合う音だけが聞こえた。

 

(これくらい静かならばゆっくり休めそう)

 

ふと目についた座り心地の良さそうな古い切り株に腰を降ろす。

ふうっ~と吐き出した吐息がやけに大きく感じられた。

 

 

◇      ◇      ◇

 

 

ふいに背後からザッ、ザッっ、と土を踏みしめる音が聞こえた。

 

はっと振り向くと、すぐ目の前に小柄な旅人の姿があった。

 

焦げ茶の短く縮れた髪に、赤いメッシュが入っている。

澄んだやや黒みがかった瞳が大きい。

口元はへの字に結ばれていたが、笑うときっと可愛らしい顔になるだろう。

腰にはショートソードを佩き、背負ったリュックに丸い木製の盾。

 

(冒険者さん?)

 

彼女はちらりとこちらに視線を向けたが、また前を見て森の中続く街道へ入っていった。

 

【こんな所に神官ひとり。不用心なことだ】

 

「えっ?」

 

(今の……、何っ?彼女の声?)

 

セシリアはかけられた言葉を思い返しながら、森の奥へと去る冒険者を見送った。

ここで休んじゃいけなかったのかしら?

でも、まぁもう少しだけ……。

セシリアは汗を拭い、ふぅ~と大きく息を吐いた。

 

◇      ◇      ◇

 

「聞こえちまったか……」

 

思ったつもりがつい声に出てしまっていたらしい。

 

森の中に歩みを進めながらエルナ・グラウシュミットは悔やんだ。

 

いかんなぁ……、どうも思ったことをそのまま口に出す癖が抜けん。

あの神官の少女もさぞかし変に思っただろうな。

 

気を付けているつもりなのに、ちょっと気を抜いたところで思ったことが出てしまう癖。

 

幼い頃から亡き養父に窘められた癖だが、もう三十路だっていうのに変わらんなぁ……。

 

でも彼女の無邪気な子供っぽい表情を思い浮かべ、

まるっきり警戒心がないあの調子じゃ、この先痛い目に合うんじゃないのか?

 

そう思いながら……、改めて森の音に耳をそばだてた。

 

鳥の声も、虫の声も、聞こえない。

この森……、静かすぎる。

普通の森はもっとざわざわしているのが普通なのに……。

 

エルナはショートソードに右手を添え……、背中の丸い盾を左手で確かめた。




書き上げた続きの最新話迄投稿いたしました。
良かった、悪かったの反応がいただければ幸いです。
AIを」使っていませんので遅筆です。
ご了承ください。
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