「これはアイツがムカつくって話よ!名門貴族である私の家に住み着いたスラム街出身の寄生虫以下のカス執事に私が迷惑する話でもあるわ!」
「お嬢様!虫さんトコトコレースの開幕ですね!」
「アンタがぶっちぎりの優勝よ!さあ巣に帰りなさい!二度と顔を見せないでちょうだい!」
「でも寄生虫と住んだこともないくせに勝手に比較して『以下』と言ってしまう辺り人間は傲慢ですよね」
「大罪をコンプリートしてこそ人間なのよ!人は愚かであるべき!はい復唱!」
「お嬢様は愚かです!」
「アンタは底辺!」
「それなら、お嬢様は高さ割る2ですね」
「私と掛けて三角形の面積を共同で求めさせないでよ!!!!」
「足したら長さを求められますね」
「スラム街出身は知識を見せるな!『あー』と『うー』以外喋らないで!貴族命令!」
「うあw」
「もう何も喋らないで!!!」

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桜の花が見れる季節はあと100回も起きないわ、残念ながら人生ってそういうものなのよね!

 

 わたしには苦手なモノが二つある、朝から出される脂っこい食事と、

 

「なに(がん)つけてるんですかお嬢様、ガキはもう寝る時間ですよ?」

 

新しくやってきた教育係(認めていないので実質不審者)のこの男。

 

「朝9時よ!!!!!」

 

「やっと時計が読めるようになられたのですね……」

 

 私は人差し指で時計には届かないので時計が付いている柱をドンドンと(つつ)きながら不審者を否定する、存在ごと消してやりたい。

 しかも時計が読めなかった時期はとっくに過ぎてるのに、それを残念がる意味が分からないわ。煽り?煽りなの??それとも過小評価の(たぐい)?コイツは私をなんだと思ってるの??そもそも貴方は雇われているのよね?なんで無言で時計の位置をもっと高くしてるの?下げなさいよ。

 

 ストレスに耐えかねた私はお父様の所に小走りで向かい、このどうしようもないストレスの根源の除去をお願いする。

 

「パパあいつクビにしてよ!というか生首にして!」

 

「パパ様!あの娘をクビにしてください!!」

 

 お父様が居る書斎の扉を勢いよく開けてそう言い放つと、何故か私より前に出て私より熱量が高い不審者が頭を下げて頼み出した。

 

 娘のクビって何よ!?なんで私と並列で廊下を走ってるのかな?と不思議に思ってたけどさ!最後にせめて抜かないで!!

 

「お前にパパと言われる筋合いはない」

 

 お父様が書類から目を上げずに冷たく告げる。そうよ、そうそう。

 

「ご主人様!!実の娘に言っていい言葉ではないと存じます!!!!直ちに撤回してください!だから我儘クソお嬢様になってしまわれたのですよ!?」

 

 (つら)の皮が地層になってるの???

 

「って誰がクソお嬢様よ!!!アンタのことを言ってるのよ!?間抜け!私に言ってるわけないでしょ!ばーか!」

 

「黙れお嬢様」

 

「お嬢様付けとけば何枕詞(まくらことば)にしていいと思ってる!?」

 

 私が胸倉を掴みかかろうとすると寸前で避けて、手元を叩き落としてくる。しかもカウンターで寸止めで顔を叩こうとして私が『うっ』と目を瞑ったら直前で手を止められてるせいで最近は目を瞑るのが怖くなってきたじゃない……!

 

「二人とも落ち着きなさい。ブラウももう少し言葉遣いどうにかならないか」

 

 お父様がようやく書類を置いて、こちらを見渡すように威厳ある名門貴族の長らしい雰囲気で不審者を注意した。

 貴族らしい姿を見た私はカウンターをカウンターしてやろうと思ってファイティングポーズを取ってる手が恥ずかしくなったので、その手を降ろして不審者と距離を取った。名門貴族らしく私は背筋を整えてお父様に向き直す。

 

「あっ、手元から裏帳簿が……!」

 

 不審者が明らかに自分から(ふところ)に手を入れて何かを落とす、裏?え?

 

「……」

 

 それを見た途端お父様は檻に入れられた猛獣のように目を逸らし、書類を慌てて見出した、逆に。

 

「お父様が強請(ゆす)られてる!!!!!」

 

「正義は必ず勝ちます」

 

「アンタは悪よ!!!」

 

「パパ様、このガキ…ツォランお嬢様の口答え…言葉遣いも注意されてはいかがだこの野郎」

 

 本音を建前で隠すどころか最後には全面に押し出ている不審者の発言を聞いて、お父様は私と不審者を見比べてどっちを援護するか迷ってる様子。

 

「お父様が困ってるじゃない!!やめて!というかお父様もそこは娘一択じゃないの!?何で迷うの!?もうグレてやるから!!!皆死ね!!」

 

「ではお嬢様が更生するまでの間しばらくお休みをいただきます、(ちまた)で流行ってる劇も観たかったので」

 

「げ、劇って『サンサーラ』?私も行きたい!!!」

 

「もう少しグレてろよガキ、残念ながら…私はお嬢様への通訳しながら子守りはしたくないので…何一つ力になれません……」

 

「遠回しに私の公用語を否定しないで!!クソ執事!連れて行きなさいよ!連れてけ連れてけ!少しは誠意とか優しさは無いの!?給料泥棒!路頭で死になさい!クビ!!!」

 

「この部外者まだ自分が娘だと思ってますよご主人様!」

 

「おと、おと?お父様!言ってやってよ!」

 

「……」

 

「つ、使えねええ!!お父様使えないじゃない!!!!私、もう自力で権力を掴んでみせるわ!!!!アンタを絶対絶対絶対クビにして路頭に迷わせてやるんだから!!泣いて許しを請いても遅いわよ!!年中その路上にだけ生ゴミを捨ててやる!」

 

「その通りですお嬢様、親の権力は自分のモノでは無いんです。それに私は気付いて欲しかったんですよ……」

 

「じゃあ成長したから劇連れてって」

 

「は?子守りダルっ…」

 

「やっぱアンタ嫌い!!!!絶対グレて悪役令嬢になってやるわ!!!」

 

 私は不審者が劇に行くのを追いかけて金と権力に物を言わせて見てやったわ!ふふん、私の勝ち。

 




「なんだかんだ楽しかったわね、あそこがわっーとなって人がばぁーと出てきて」
「お嬢様、寝てたなら寝てたと素直に言いましょうね…?」
「起きてたわよ!? 隣で拍手したり泣いてたりしてたわよね!?」

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