Fate/stay night 『BA√』   作:悠問追

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5『鬼と金棒』

 

 沈みゆく夕焼け。茜色の日差しを受けながら、ゆっくりと歩いて行く俺たち。そこだけ切り取れば、青春の1ページとでも呼べるんだろうが……、

 

「酷い目に遭った────」

 

 ……俺たちアビドス一向────否、覆面水着団とやらは、銀行を襲った帰り道である。いやホント、酷い目に遭った。

 ヤケに乗り気のアビドスの面々。巻き込まれる形で銀行に引き摺り込まれる俺と阿慈谷。ノリにノッて楽しくなってきたらしいシロコが、金銭まで要求し始めた時はどうしようかと思った。

「……お金、貰わなくて良かったの?」

「そういうワケにいくか。金銭が目的じゃないだろう。……というかシロコ、明らかに防犯カメラの範囲も把握してるみたいな動きだったけど、本当に初犯なんだろうな?」

「ん。間違いなく初めて」

 信用ならん……いやまあ、これ以上生徒を疑うのも良くないし。それに、

「……まあ。目的の品は手に入ったし良しとするか」

 銃を突きつけられ、怯えた様子の銀行員から受け取った書類の束。そこにはアビドスやその他の場所から受け取った金銭が何処に使われているのか、何処に流されたかの記録が書かれている。

 ザッと目を通した感じ、とても『良い使い方』とは言い難かった。特にブラックマーケットに流れている記録が多い。

「私たちから搾ったお金を、こんなことに使ってるなんてホント許せない! やっぱり、金銭も請求して良かったんじゃないの、先生!?」

 横から俺の手元を覗き込みながら、怒り心頭と言った様子で地団駄を踏むセリカ。

 確かにセリカの言葉には頷ける。生徒が汗水流して稼いだ金を、こんな事に使うのは許し難いコトだ。

 けど、

「それじゃあダメだよ、セリカ」

「……なんでよ」

「万一、本当に金を奪い取ったとして。多額の金銭が手元に舞い込んだとして、だ。これからお金が必要になった時、どうしても銀行()強盗()が頭にチラつくようになっちまう」

 

 それは決して正しいコトじゃない。間違ってると思う。

 

「何より、セリカはお金を稼ぐ大変さを知ってるだろ?」

「それは、そうだけど────、」

 

 ……そして、何より。

 

「……何より、俺はセリカに……いや。セリカたちには、そういう大人になって欲しくないよ」

 

 生徒には間違った道を進んで欲しくない。そんな道を選んで欲しくない。

 平和に……それでいて健やかに過ごしてほしいからこそ。そんな手段は、選んで欲しくなかった。

「……わかった。ごめんなさい」

「ん。わかってくれれば良いんだ」

 こうして素直に俺の話を受け入れてくれるのはセリカの良いところだし。こういうところを伸ばしていってほしいとも思う。

「……にしても。この書類を公表すれば、それなりの痛手を与えられるとは思うけど……余計にわからなくなっちまったな」

「……どうかしましたか?」

 何気なく漏れた俺のぼやきに、阿慈谷が首を傾げながら問いを投げかける。

 ……手に持った書類をパラパラと捲って、口の中で浮かんだ言葉を転がして。言葉をまとめるだけの間を設けてから、

「……いや、な。アビドスから受け取ったお金を何に使ってるかってのはよくわかった。でも、だからこそ謎だと思うんだよ」

「何がですか……?」

「何でアビドスをわざわざ襲うのか、ってさ」

 ブラックマーケットから、カタカタヘルメット団へ武装や戦車が流れた記録は特に見受けられなかった。他に彼女たちにあんな資源を投入できるのは、カイザーくらいのモンだと思って良いだろう。

 ……アビドスの廃校を目論む、他の学校の支援って線もあるけれど。それは正直考えたくない。

 まあ、けど。だとすれば、

 

「……金銭を搾るのが目的なら、その金の元であるアビドスには長いコト残ってくれてた方がカイザーから見てもメリットが大きいはずだ。カイザーがアビドスを襲う理由にはならない」

 

 あまりにもやってることがあべこべすぎる。目的に行動が伴っていない。

「だから他に何か、目的があるんじゃないか────って」

「……ふむ。なるほどねぇ〜」

 俺の言葉を咀嚼し終えたらしいホシノが一度だけ頷きを返して。揶揄うような笑みを浮かべると、

「良い推理。でも先生? だいぶキヴォトスに思考が染まってきたねぇ〜?」

「ゔ……それは、確かに。まあだから、前に進んだようで……またモヤの中に紛れてる感じがするな、ってさ」

 三歩進んで二歩下がる。そんな曖昧な感覚が、胸の中を結局満たしていて。まだ姿すらも知らない『カイザー』が、何処か遠くで俺のことをせせら笑っている気がするのだ。

 ……、…………にしても、

「……関係ない話なんだけどさ」

「うん? どうかした?」

「……いつまでホシノたちは覆面を被ってるんだ? もう外しても良いだろ」

 

 ◇◆◇

 

「……しまった」

 窓の外から差し込む朝日。鳥が囀る声に引きずられる形で目を覚ます。

 本当は帰ってきたらすぐ、尾刃に例のカイザーの書類を写真でも良いから送ろう、と思っていたんだけど。思っていた以上に疲れてたみたいで、気づいたら寝ちまってたらしい。

 ゆっくりと回転を再開する思考。未だにほんの少し重たさを覚える身体をゆっくり起こし、大きく呼吸を繰り返す。

 うん、正常。今日も大して変わりはなく、だ。

 自身の身体の調子を確かめつつ、朝の日課────とりあえず筋トレだけ終わらせて。水分補給をしているところで、ノックもなしに教室の扉が開いた。

「おい、衛宮。オマエに客が来てるけど」

「……客?」

 早く出ろ、と言いたげに顎をクイっとしゃくる慎二。

 ……誰かを呼んだ覚えなんてないし、アビドスの生徒以外この辺じゃ知り合いなんていない。いったい誰なんだろーか。

 教室を出て、廊下を歩いていき。乗降口に辿り着くと、俺の客人らしいその子は居た。

 

「キミは────」

「おはよう、先生」

 

 白と黒のモノトーンの髪。何かのロゴがデカデカと描かれたパーカーを着た少女。

 

「確か、便利屋の」

「そう。……あ、そっか。名前知らないよね。私は便利屋68の、鬼方(おにがた) カヨコ」

 鬼方と名乗ったその子は緩く掌を振ると、柔い笑みを向けてきた。

 よかった。俺の記憶に間違いはないらしい。

「……なんだって便利屋のキミがアビドスに来てるんだ……って言いたそうな顔、してるね」

「え、いやそこまでは。けど驚いてるのは事実だよ」

 最初に会った時は敵同士。それ以外に俺と鬼方に面識はなかったはずだ。勿論、鬼方が俺の元を訪れること自体に、不満の類は無いけれど。

「ちょっと先生に話があってさ」

「話? ……わかった。じゃあ、場所を変えよう」

 わざわざこうして訪ねてくるということは、込み入った話かもしれないし。この子がアビドスに居るのをセリカ辺りが見ればまた喧嘩になっちまうだろーし……昨日の怒り様なんかを見るに。

 

 鬼方を連れてアビドス高等学校の校門を潜り、手近な公園へ向かう。

 

 自販機で冷たいお茶とコーヒーを買って。備え付けのベンチへと、二人揃って腰を下ろした。

「お茶とコーヒー、どっちが良い?」

「え? ああ……じゃあコーヒーで。ありがと、先生」

 プルタブが開く音。それから缶に口をつけ、吞み下す音が辺りに響く。缶が彼女の膝の上へと戻っていき、鬼方は再び口を開いた。

「話、っていうのはさ。……先生、私と取り引きしない?」

「……取り引き?」

「そう。アビドスにも、先生にも、実りのある話になると思うよ」

 ほんの少し予想外な単語が飛び出したモンだから、思わず面食らっちまった。

 ……にしても、随分と大人びた雰囲気を纏った子だ。アヤネやホシノとはまた違う。便利屋と名乗っているだけあって、この子は俺が思っている以上の修羅場を潜り抜けてきているのかもしれない。

 俺に向ける言葉と視線に迷いはなく。真っ直ぐに、俺のことを見つめている。

「わかった。話を聞こう」

「ふふ。そう来なくっちゃ」

 まあ、元々断るなんて選択肢はない。アビドスが関わってきている上に、鬼方もひとりの生徒なワケだし。鬼方自身がそれをわかっていて、俺に話を持ってきているのかどうかはわからないけれど。

 

「先生には、私たち────便利屋68を守って欲しいの。見返りは、アビドスを襲うように指示したヤツ……カイザーの情報」

「────、────」

 

 何となく予想はしていた。それでも、鬼方の口から『カイザー』の名前が出てきたことに驚きがある。

 思わず、ほんの少し黙り込む。面食らった様子の俺を、鬼方は覗き込むように見つめて、

「どう? 受けてくれる?」

「……わかった。その取り引き、受けよう」

 願ってもない。鬼方の言う通り、俺たちにとっても実りがある話だ。カイザーの手がかりや情報は少しでも多く欲しい。

 けれど、

「でも便利屋(キミたち)を守るってくらいなら、別に取り引きなんかしなくても良かったんだぞ?」

「……え?」

「お願い、で良い。見返りは要らないよ」

 今度は鬼方の方が面食らう番だった。俺の顔を真っ直ぐに見つめたまま、目を丸くして。数度の瞬きをするだけの沈黙がある。……何かおかしいコト言っただろーか、俺。

「……、……わかっ、た。じゃあ何か『次』があれば。その時はそうさせてもらうね」

「ああ、そうしてくれ」

「ん、ん。なんか調子狂うな……まあ、今回は取り引き。ちゃんと先生にも見返りは渡すから」

 誤魔化すような咳払いと、コーヒーをひと口飲み下す間。俺もお茶のボトルの封を開けて、ひと口飲んだ所で、

 

「……まず、さっき言った通り。私たちの雇い主はカイザーPMC理事。最初に受けた依頼は、ヘルメット団の団員の身柄の確保と、一枚のカードの回収だった」

「カード、っていうとあの真っ黒のカード、か?」

「真っ黒? ……私が回収したのは銀色のヤツだったよ。表裏に誰かのヘイローが描かれてるヤツ」

 

 情報の相違。けど、何と無くの補完はできる。

 

「……なるほど、じゃあ俺が見たのは『使用前』で、鬼方が見たのは『使用後』って認識で良さそうだな。……あのカード、俺が見た感じだと────キミたち、()()()()()()()()()()()ようなシロモノだと思ってて」

「……やっぱり、そんなに危ないモノだったんだね。中身を引っこ抜く……神秘、もしくは意識を取り込むモノ、ってところかな。そう考えるとカードにヘイローが描かれてたのは納得かも。……で、私の目から見て、PMC理事はそのカードにだいぶ固執しているように見えた」

 

 ……生徒の中身を引っこ抜き、それでいて保管するカード。それをそのカイザー理事が大事にしている辺り、よくない使い方をしているコトは想像に容易い。思わず奥歯を強く噛み締めた。

 

「……話を続けるね。ヘルメット団の団員と、そのカードの受け渡しの時。続け様に、私たちはアイツから依頼を受けた。それが────アビドス高等学校の生徒の拉致」

「────、────」

「多額の報酬……それから、戦力はPMC理事が確保するって話でね。断る方が角が立ちそうだったから、私たちは依頼を受ける事にした。……明け渡したそのヘルメット団の子がどうなったかは私は知らない。ごめん」

「……いや、良い。そこまで探ると、かえって鬼方たちが危ないだろう」

「そうだね、ありがとう。それで────、」

 

 ポケットの中から端末を取り出し、暫く操作する鬼方。その後で俺に向けられた画面に表示されていたのは、ひとつの音声データだった。

 

「……これが、その時の録音データ。明らかに怪しいと思ってたから、録音しておいたんだ。聞き直したけど私たちの声も、PMC理事の声もしっかり入ってる」

 

 言いながら、鬼方の指が再生ボタンに触れる。スピーカーから数秒のノイズが聞こえた後で。かつ、かつ、と。ひとつの甲高い足音が聞こえてきた。

 

『……それ、そんなに大事なものなの?』

『キミたちに関係が?』

『いや、無いけど。単純に気になっただけ』

『そうか。過度な好奇心は猫をも殺す。故人はよく言ったものだよ』

『────して。キミたち便利屋に続けて依頼したいことがあるんだが、良いかな?』

『ええ、どうぞ? 内容は何かしら』

『アビドス高等学校……その生徒をひとり拉致してきて欲しい。加えて、残りの生徒の戦意も叩き折れれば尚良し、といったところかな』

『金なら今回の三倍を今すぐに出そう。それから戦力は私の方で工面する。他に何か不安因子はあるかな?』

 

 ……この録音データに乗っている男の声が、カイザーPMC理事。初めて触れたその像に、胸の内側から怒りが湧き上がってくる感覚がある。

 コイツが、この声の持ち主が────度々アビドスを襲わせているヤツ。

 

 そして、シロコたちを苦しめているヤツ。

 

 その声音から、何と無く生徒を下に見ていることが感じ取れた。

 金さえ積めば生徒たちは自分の思い通りになる。そんな意志が、透けて見えている気がした。

 

「……今思えば、『ソレ』なんて言い方せず────『そのカード』って明確に指した方が良かったかな。証拠としては弱いかも」

「いや、十分だよ。この音声データだけで、アイツを殴りに行く理由にはなる」

「そっか……なら、良かった」

 おべっかでも何でもない。正直な話、昨日俺たちが足で稼いだどの情報よりも。

 ここまでのモノがあれば、もう疑う理由は何も無い。完全にカイザーコーポレーションは黒、という扱いで良いだろう。

「後は先生も知っての通り。PMC理事が用意した戦力は、あの様子がおかしいヘルメット団────目の前で粒子になって消える、っていう異様な光景から、私たちは撤退して……その正体を教えてもらえない不信感から依頼を降りた。カイザーコーポレーションはよくわからないけど危険な技術を所有している……次は私たちの番かもしれないし」

「ああ、それで正解だと思う。そこで正直に打ち明けない辺り、繰り返しアビドスに戦いに行かされてるヘルメット団の子たちのことも、便利屋の面々のことも『駒』としか見てないんだろう」

「……そうだね。まあそのせいで、こうして先生を頼ることになっちゃったんだけど」

 それで守ってくれ、か。思い通りに行かなかった便利屋を、どういった形であれ潰しにくるコトは想像に難くない。現に、何度もアビドスを襲ってるんだし。

 

 ……再び、ほんの少しの沈黙がある。

 

 何気なく横目に鬼方へと視線を向ければ。彼女の視線は、両手で柔く握った缶コーヒーに向けられていた。

 何かに思い悩んでいる、というワケではなく。ここまで拾った情報を、自分の中で繋ぎ合わせているような、真剣な顔つき。

 

「────ねえ。先生の話を聞いてて、思ったんだけど」

「うん? どうかしたか?」

「例のカード。私たちの意識や神秘を取り込むだけじゃなくて、()()も出来る……って見方は、出来ないかな」

 

 鬼方の口から放たれた言葉。頭の中で全てが繋がっていくような……内側から迫り上がった結論が、喉の奥に張り付くような嫌な感覚があった。

 

 粒子となって消えていくヘルメット団の団員たち。それにも関わらず、何度も俺たちの目の前に現れる────変わらぬ特徴や癖を持った彼女たち。

 それから、目の前で行われたカードへの吸収。金を搾り取っているはずのアビドスを繰り返し襲う理由と、生徒を拉致してくるように、という便利屋にされた依頼────。

 

「……、……そう考えると、全部繋がる」

「そうでしょ? カイザーが何を考えているかはわからないけど……繰り返し使える、ものを言わない生徒(兵隊)。しかも自分の意のままに、ある程度操れると考えたら。それでも私たちを頼る辺り、アイツはまだ『戦力が足らない』と考えている────」

 

 ────カイザーの目的は金じゃない。アビドスの生徒が持つ、膨大な神秘。

 

 ホシノやシロコたちは、俺の目から見てもヘルメット団の子達に比べて、持っている神秘が桁違いに見える。それが狙いだとしたら、

 

「……胸糞悪い話だな、本当に」

 

 生徒たちの事を。子供たちの事を。本当に、道具としか思っていないのだろう。

 どうしようもなく腹が立つ。煮えくり返るような怒りが、視界をゆらゆらと揺らしている。その感情を落ち着けるために、長く────長く息を吐いた。

「……その録音データ、俺の端末にも送っておいてくれ」

「うん、それは勿論。今回の取り引きで、一番先生に渡しておかないと……って、思ってたから」

 連絡先を交換するために、シッテムの箱を取り出そうと。上着のポケットに指をかけた、その瞬間。

 

「今の────」

 

 何処か遠くから聞こえて来た銃声。そして、

 

「……戦車まで来てる。ちょっと、ヤバいかも」

 

 腹の底に響くような重たい砲撃音。咄嗟に視線を向けた方向からは、黒い煙が立ち上っているのが見える。

 

「カイザーか?」

「わかんない。でも行かないと────社長たちが危ない」

 

───√ ̄ ̄Interlude 14

 

 ────手に入った情報。確かに前に進んでいると言う感覚。

 

 借金返済に苦しめられていたアビドスの現状を、先生は確かに良いものにしてくれた。私とシロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃんの事を思って動いてくれていることは十分すぎるくらいに伝わっていた。

 

 ……私たちのお金の行先。ブラックマーケットに流れているという情報は、確かに世間から見れば特ダネではある。これが公表されれば、こぞって世界は『カイザー』を叩くだろう。

 

 でもそれじゃダメなんだ。結局、『カイザーローン』が切り捨てられるだけで終わり。カイザー自身は何の痛みも感じない。苦しみを覚えない。その為に組織という形態を、子会社という形式を取っていることを、私はよぅく知っている。

 

 ……ブラックマーケットからヘルメット団に武器や戦車の類が流れた形跡はなくて。ということは、多分()()()()()()なのだろう。他に彼女たちにあんな武装を渡せるやつは、カイザー以外に思い当たらない。

 

  それに、トリニティからの支援だって先生ほど期待できないし信じられない。だって今更、アビドスに力を貸すことにメリットなんて無いと思うから。

 

 前に進んだって変わらない。前に進んだって錯覚の中にあるだけ。結局私たちの目の前には、絶望という二文字が、目の前に横たわって行く手を阻んでいる。

 

 ────それでもきっと先生は諦めない。私たちの明るい未来を信じて突き進むと思う。

 

 ……でも、

 

『だから他に何か、目的があるんじゃないか────って』

 

 あの時先生が放った言葉。あの時先生が放った違和感。

 

 それを聞いて、私の中では繋がってしまった。

 

 目の前で行われた非現実的な現象。カードの中に取り込まれる、ヘルメット団のリーダーの子……あの子が持っていた神秘。

 

 黒から銀に変わっていくカード。

 

 そして、二度にわたって私たちの目の前に現れた、決して正気とは思えない、操り人形のような彼女たち。

 

 どういう原理かはわからない。けど、きっと────カイザーは私たち生徒の神秘を所有物にして、兵器として運用する技術を持っている。

 

 だから。カイザーの目的は、お金じゃなくて……私たちのうちの誰か。

 

 ────それでもきっと先生は諦めない。私たちの明日を願って戦ってくれると思う。でもそれと同じくらいに、カイザーもきっと諦めない。

 

 想像してしまった。カイザーが使役するあのヘルメット団の子達には……使用制限があるのか。はたまた、一生使い続けることができるのか。

 私たちの身体はひとつしかない。弾薬にも、資源にも限りがある。

 

 いつか耐えられなくなる日が来るのでは無いか……と。私は思ってしまったのだ。

 

 永遠に続くかもしれない戦いの中に、後輩たちを置くくらいなら。

 

「……おじさん()ひとりの犠牲で済むなら、ね」

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