多分おもんないと思うけど興味があればどぞ。
「ワタル、この試合……どっちが勝つと思う?」
四天王シバは隣に座っている同じく四天王であるワタルへと問いかける。
「……この場に彼女が出てきてしまった以上、彼女……レッドの方だとは思う、が」
「対するあちら側も中々に底が知れない……ねェ。イッヒッヒッ」
「そうね……この場にいる全員、そしてリーグにまで上り詰めた数多のトレーナーを手持ち数匹と卓越した読み技術一つで完封してきた彼もかなりの手練れよ」
ワタルの言葉に続いて各々の意見を言うゴースト・氷タイプのエキスパートであるキクコとカンナ。
「ただ、彼女にそれが通用するかは別問題……ということだ。さて、どうする挑戦者……?」
―――カントー地方チャンピオンリーグ決勝戦。
その時、その場所にチャンピオンとして彼女……レッドが立っていたのはただの気紛れ、偶然の産物に過ぎなかった。
「貴殿が〝原点にして頂点〟様ですかな?www」
対面に立つのは不敵な笑みを浮かべている細身の男。
独特な抑揚と口調で話す彼に彼女は少しだけ眉を顰めながら十数秒の逡巡の後に答えを出す。
「……その呼び方、すきじゃない……から」
久しぶりに見知らぬ人の前で声を出したからか声が少し震えていた、というのは御愛嬌である。
「ふむ、ではどうお呼びすれば良いですかな?www」
またも数十秒間悩み、それにより導き出された答えは───バトルをする。
即ち、無言のままボールを構える、であった。
「ぺゃっwww本来、あるべきトレーナーの姿と言いますかな?www極めて分かりやすいコミュニケーションですなwww」
謎のリアクションとともに彼もまた、ボールを構える。
彼女、そして彼の思考が瞬く間に目の前のバトルへと切り替わる。
「───
「───ピカチュウ」
「山田、敢えての地震ですなwww」
「アイアンテール、でんこうせっか」
たった二言、極めて短い指示を飛ばす。
それだけでアイアンテールを地面に叩きつけ、最高距離まで跳ね上がり、さらにそこから空中に向けて連続で加速しフィールド全体に放たれた攻撃を躱し切るピカチュウ。
その一連の行動を見て、彼はレッド自身のポテンシャルとピカチュウ自身の練度の高さ、そしてその信頼の深さに思わず内心で賞賛を零す。
「ここは着地を狙って地震ですなwww───」
「ピカチュウ、戻って。リザードン」
相手が攻撃の指示を出した後に交代する。
言わば、完全なる後出しジャンケン。
だが然し、それがそう簡単に実践できる技術ではないことは彼や四天王、そしてその他のジムリーダー達や一般トレーナーを含め、半数以上が理解できていた。
相手の出す指示の予測と先読み、そしてその指示を受けたポケモンが、その技を使い始め、それ自体に何秒のタイムラグが発生するのかを正確に読んでいなければ間に合わない、交代先をミスってしまう等でマトモに成立すらしない技法である。
「なるほど、サイクル戦の定義をぶち壊してきましたなwwwこれは普通にヤバコイルwww」
「ここいらで一度、伝家の宝刀……論理の極致をお見せするとしますかなwwwヤーマンダ、流星群ですぞwww」
「エアスラッシュ、大文字」
エアスラッシュで削り取り、ギリギリまで引き付けてから放つ大文字で、下がりつつボーマンダごと焼き払うという見事なまでの荒業を成立させる。
だが然し、対面する彼もまた優秀なトレーナーであった。
「当然交代ですなwww
「リザ戻してカビゴン」
既に放った大文字は隆起するストーンエッジに受け止められ霧散する。
然し、カビゴンが正々堂々、正面から受け止める。
「一致アクアテールに打ち替えて削りますぞwww」
「カビゴン、のしかかり」
振られる尻尾をダメージを受けながらも掴み取り、そのままのしかかるようにしてギャラドスに攻撃を加えるカビゴン。
だが先に顔を歪めたのはカビゴンの方であった。
(硬くて重い……いやそれもあるけど何より……)
「ゴツゴツメット持ち……カビゴン交代───」
「ふ、ここは迷わず地震ですなwww」
レッドのボールを取り出す手が僅かに止まる。
交代の際の思考時間のタイムリミットは数秒程度しかなく、それを過ぎると遅延行為と見做されてしまう。
(
時間にして僅かコンマ数秒程度の逡巡。
「───ピカチュウ、行ってきて」
「…は?」
「アイアンテール、かみなり」
叩きつけられたアイアンテールを軸にバチバチと地面スレスレを伝って電気が猛スピードで蛇のように走る、上空に雷雲が轟き、刹那───ギャラドスが四倍の弱点とする電圧の塊が上空より、ギャラドスへと叩きつけられた。
「……ぎ、ギャラドス、戦闘不能!!!チャレンジャーは代わりのポケモンを出してください!」
───フィールドに審判の声が響き渡る。
当然ながら大地を揺れ動かす者が居なくなったことで、安全となった地面には警戒を全く解いていないレッドのピカチュウが居て、その奥には堂々とした佇まいの
「……」
「…………」
「…………?」
レッドは全く次のポケモンを出さない彼に首を傾げる。
数十秒待っても動かない、喋り出さない、そんな彼の様子を見て───『嗚呼、彼
相対している本人達ではない、個人の主観……思い込みというものが介在する他者の目線では、彼女と彼には、それだけの隔絶した差が確かに、そこにあったのだから。
だからこそ、僅かな静寂の間が瞬く間に広がってゆく……そして、それを打ち崩したのはその憐憫の念を現在進行系で向けられている、彼であった。
「……あの短期間の
「……!?!?」
一歩間違えば口説き文句とも取れるストレートな褒め言葉の連発に頬を赤く染め、思わず彼から目線を逸らしてしまうレッド。
今まではそういった褒め言葉のようなものとは殆ど無縁であり、どちらかと言うと畏れや絶望などといった負の感情を向けられることの方が多かったレッドにとっては予想外の展開であった。
一瞬で、張り詰めていた静寂とその空気感が和らぐ。
だが、自らが緩めたその空気を締め直したのもまた、彼であった───
「ですが───我も負けるわけにはいきませんなwwwなにせ、論者である歴で言えば貴殿よりも我の方が圧倒的に長いのですからなwww才媛であり、美しい論理を魅せる、それは認めます、ですが───それでは、我自身が役割を持てていないんですなwww」
「征でよ、ヤケモンの王───」
構えられたボールが宙に投げられる───
そこから現れたるはヤケモン達の王であり、論者にとっての〝姉〟である一匹のポケモンであった。
「───