個性:AFOでも、ヒーローになれますか   作:遺物

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烈怒頼雄斗紅頼雄斗


作戦

 

 

 

「クソっ!どうする!?世界!」

 

「どっどどどどうするんですか?!世界さん!」

 

クソクソクソクソ!考えろ、考えろ、考えろ。この絶望的な状況を打破する作戦を、何か!

 

「これも教師としての務めだ。じゃあ体験してもらおうか。プロの世界を。」

 

 

~2時間前~

 

試験会場に着いた頃には、既に人だかりが出来ていた。意気込みを聞いているマスコミ。今のうちに合格しそうな受験生を狙っているであろうプロヒーロー。そして、子供の応援に来ている両親。

 

「…クソ。」

 

気分が悪い。恵まれた個性を持って生まれた奴らだ。俺が生きてきた年数分、親の愛に浸されて育ってきた奴らだ。負けてたまるか。そんな思いが再び沸々と湧き上がってくる。

 

 

「おうおうおうこんな所にヴィランさんがいるぜぇ!」

 

出た。典型例だ。怒土雷人(いかづちらいと)。親の愛によって肥大した自我と、度重なるしょうもない成功体験から形成されたお気楽な脳みそを併せ持ち、昔から何かと絡んでくる厄介な奴だ。そのくせに仕返しに個性を奪ったら教師や父さんに泣いて言いつける変に賢いとこがある。

 

「よぉ、怒土。お前のそのバカみたいな頭の中に詰まってる脳みそでも筆記試験は突破出来るんだな。え?」

 

「あぁん!そもそも受ける権利があったことに驚きだぜ?てめぇみてぇなヴィランによぉ!」

 

「公共の場でそんな大きな声で自身の知性の無さをひけらかして皆の油断を誘おうとは、そのニワトリ頭から出てくる私めではとても考えつかない作戦に敬服いたします。」

 

「ニワトリじゃねぇ!烈怒頼雄斗(レッドライオット)の髪型だっつってんだろ!」

 

「その烈怒頼雄斗も紅頼雄斗(クリムゾンライオット)の二番煎じだろう。お前のは煎じ過ぎてもはや別物だろうがニワトリ頭。」

 

「だからニワトリじゃねぇ!まぁ?お前にだけは絶対に負けないからな!覚悟しとけよクソヴィラン!」

 

奴はそう吐き捨てながら肩で風を切って歩いていった。こんなんでペースを乱されるな。俺はベストコンディションで試験を受けなきゃいけない。そして覚悟を決めなくてはならない。人から個性を奪う決意を。

 

今の俺の手札は3つ。

俺の父さん、人無文彦(ひとなしふみひこ)の個性、体調管理は自身や人の体調を操れる。個性因子もその対象。コンディションを作ることは出来るだろう。

 

ヒナちゃんの個性のハートキャッチは相手の心を読める。

 

ヒナちゃんのお父さん、松本豪太(まつもとごうた)さんの個性は操植。ツタや葉っぱを成長させたり、操ることが出来る。

 

イヤいけるか?もし戦闘能力を問われる試験ならば、操植でいい線までいけるだろう。救助能力を求められれば、ハートキャッチで試験官の心を読み、最適な答えを出せばいい。父さんの個性は…まぁ…うん。身体強化は大事だし、強いよな、うん。

 

いけるかもしれない。個性を奪わなくていいかもしれない。そう考えた瞬間。フッと心が軽くなった。そうだよ、なにも無理しないでも、案外簡単に終わるかもしれないじゃないか。

 

その時、周りの視線が俺に向いてることに気づいた。

なんだ?何かしたのか俺は?

周りをよく見ると、地面には服だけが落ちていた。

 

 

「ふぇ…痛い…痛いよぉ…」

 

段々と彼女の顔や手足の先が見えてくる。一瞬意味が分からなかったが、透明化の個性持ちか。ON、OFFを切り替えられるタイプなのか。インビジブルガールとはまた別だな。

 

「すいません。考え事をしていて。お怪我はありませんか。」

 

「あ、すいません。私なんかの為に立ち止まらせてしまって。ぶつかられただけで倒れちゃってすいません。」

 

ムカつくな。謝罪はいいから立ち上がってさっさとどこか行ってくれよ。こっちが悪者みたいで気分が悪い。だがそんな態度を少しでも出したらまずい。ここはひたすら低姿勢に…

 

「いえいえ。僕がぶつかったのが悪いのですから…そうだ。少し手に触れても?」

 

「え?はい、私なんかの手を触らせてすいません。」

 

丁度いい。ウォーミングアップに付き合ってもらおう。個性、体調管理。

 

「あ、すごいです!なんか足が痛いのが治ったし、緊張もほぐれました!」

 

 

「大丈夫ですよ。お互い頑張りましょう。しかし、まさかここで役に立つとは思わなかったな。」

 

これで良し。後は向こうから何もアクションを起こされなければ…

 

 

「あ、あの!名前!なんて!言うん!ですか!」

 

はぁあ?なんで俺の名前なんか興味あるんだ?やっぱりムカつくな。だが変に断って気分を害するのも嫌だしな、

 

人無世界(ひとなしせかい)です。では、これで。」

 

「人無世界君…あ、わ、私は、戸隠忍(とがくれしのぶ)といいます!頑張りましょう!一緒に!」

 

「はーい。バイバーイ。」

 

思わぬアクシデントだが、見事に切り抜けるとは、流石俺といったところだ。

あ、まずい。試験開始時間がもうすぐじゃないか。急がねば。

 

 

 

 

「Good Morning Everyone!!!試験監督のプレゼント・マイクだっぜ――――!Yeahhhhhhh!」

 

なんだこのうるさいのは。プロヒーローなのか?もうちょっと色々調べてくれば良かった。

 

「マイクさん!下がってください。マイクさん!えぇー、ゴホンッ、それではこれより、雄英高校ヒーロー科実技試験の説明に移りたいと思います。」

 

まともそうな人もいるんだな。さぁ、試験の内容を早く教えてくれ。出来るだけ個性関係ない奴よ、来い!

 

「試験の内容は、皆さんには、我々教師陣と、順番で5対1で戦ってもらいます。」

 

終わった。団体行動。個性を使った乱闘。考えうる限り最悪の試験だ。

 

「戦うというと聞こえが悪いですが、説明をお聞きください。我々は、特殊な電波が流れている服を着用しております。そして、皆さんにはこちらの機械を、体のお好きな箇所に着けてください。この機会が我々の服に触れることで、機械のランプが点灯します。そのランプを教師に見せることで、試験合格となります。つまり、鬼ごっこですね。それでは何か質問等ございませんでしたら、こちらの表をご覧になって、試験の準備を始めてください。」

 

俺が呆然としている間にチーム分けの表が表示される。鬼ごっこですねじゃねぇよ。どうしようまずいぞ。だが待て、順番と言っていたよな。せめて教師が疲弊するであろう最後、いや、せめて後半組に…

 

 

試験開始20分後 チーム1 怒土雷人・島々豹助(しまじまひょうすけ)・戸隠忍・人無世界・銛矢射手吉(もりやいてきち)

 

本格的に終わった。20分後に試験開始。怒土がいる。まずい。どうしよう。助けて父さん。

 

 

 

「…ん。…界さん。世界さん!」

 

はっ!危なかった。気を失うところだった。気絶や失神はあまりにむごい現実から脳を守るためにすることもあると聞いたが、本当らしい。

 

「自己紹介ですよ。」

 

「そこの彼も起きたみたいだし、始めるよ。僕の名前は島々豹助。個性は地盤操作だ。よろしくね。」

 

「俺は怒土雷人。そこのクソ野郎と同じチームで超不本意だがよろしく頼む。個性は雷光。めっちゃ速ぇぜ。」

 

「俺は銛矢射手吉っす。個性はソニックアローっす!体から矢とか銛状の物を射出出来るっす。よろしくっす!」

 

「あ、あたしは、戸隠忍です。こ、個性は透明化です。よろしくお願いいたします。」

(はぁ、私なんかが同じチームですいません。)

 

聞こえてんだよ。ヒナちゃんもこんな気持ちなのかな。

俺の番だな。仕方がない。隠していたかったが、怒土がいる以上、嘘をつく意味はない。

 

「俺の名前は人無世界です。個性は…」

 

「?どうしたんですか?世界さん?」

 

「彼、どうしただい?」

 

「俺の…個性は…」

 

言葉が出ない。簡単だろ、言うだけだ。只、一言、大犯罪者と同じ個性だって…

 

「ハッ!てめぇの個性はAFOだろ?!なに今更隠そうとしてんだよ!」

 

「!?」

 

「へっ?」

 

「え?」

 

「怒土…」

 

「ちょっと待ってくれないか怒土君。AFOって、あのAFO?」

 

「個性を奪い、与える、魔王の個性…っすか?」

 

「いいや…いえ!違います!世界さんの個性は、かっ回復系です!私は、彼に怪我を治してもらって…!」

戸隠が、僕を驚いたような表情で見る。気付いたか。

 

「まじかよ!?お前、とうとう人の個性奪っちまったのか!ぎゃははは!」

 

嫌だ。やめろ。その目で見るな。母さんと、同じ目をするな。もういい。こいつら全員の個性を奪って、俺一人で教師を相手取ってやる…

 

 

 

 

約束、だよ。

 

そうだ。だめだ。約束したじゃないか。例え奪うとしても、それは本当にその必要がある時だけだ。

 

「覚悟は、決めたはずなんだけどな。」

 

「あ?何ぶつぶつ言ってやがる?」

 

「俺の名前は人無世界…個性は、AFOです。」

 

さぁ、どんな反応でもしてみろよ。

 

 

「それ、本当かい?」

 

「ソレ、本当っすか?」

 

まぁ。やっぱり、こうなるか。

「すっすごいじゃないですか!」

 

は?

 

「世界さんの個性があれば、たっ例えば私たちの個性を入れ替えて敵のかく乱、複数個性持ちによる混乱、それに、敵の個性の奪取による完全無力化も可能です!」

 

「確かに、僕と銛矢君、怒土君は人無君のカバーに徹しながら、教師に近づいてもらって…そうだ。近づく際に、戸隠さんにも協力してもらえば、もっと確実に合格に近づける。どうだい?戸隠さんさえよければ、の作戦、手伝ってくれないか?」

 

「よっ喜んでお手伝いします!」

 

「それいいっすね!人無君。一旦俺らの個性使えるようにしときませんか?試験開始まででもいいんで、慣らしといてくださいよ。」

 

…なんで

…怖がらないんだ?

 

「おいおい!お前ら、なんでこんな奴を信じられるんだ?こいつはAFOだぜ?人の個性を奪ったんだ!」

 

「彼はAFOではないよ。そして、人の個性を複数扱えるのが人無君の強みだ。僕がその個性だとしても、きっとそうするだろう。使えるものは使わないと、合格はできないよ。そして、僕らが合格するためには、何としても人無君の個性は必要になる。」

 

「そっそうですよ!怒土さんも、協力してくださいね!ね!」

 

なんだよ、それ

その顔で、そんな事言ってくれるのかよ…

 

「ハハッ。ハハハハハ!面白いねあんたら。俺の個性を聞いて、そんな反応をされたのは、あんたらで2回目だよ。いいよ。俺の個性、ふんだんに使ってくれ。」

 

 

 

作戦は出来たが、内容は俺が要だ。ここまで期待されて、裏切るわけにはいかないだろ。絶対に皆…怒土以外の皆で、合格してやる。

 

「チーム1の皆さん、準備は出来てますか?」

 

「はい!」

 

今だけは、俺に期待してくれる人たちの為に

 

――全部使ってやるよ

 

「OK Guys!!!いよいよ開幕だっぜ――――――!雄英高校実技試験!!スタ―――ト!!」

 

 

 

 

 

「Hey ティーチャー?出番だぜ。」

 

「俺の担当は…チーム1だったか?マイク。」

 

「Yeah あいつら、なかなかいい面してたぜ。」

 

「……面白いな。育てがいがありそうだ。」

そう言うと、その男はゆっくりと立ち上がる。

無造作に置かれていた義足を装着し、片目を覆う眼帯を手に取った。

 

「――さあ、始めようか。」




全話で、次回試験編って書いといて、やりませんでしたね。じゃ改めて、


次回――試験編
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