銀河の歴史がまた1ページ?描かれたくない男の歴史 作:カズkaz
「銀河の歴史がまた1ページ」
この重厚な、それでいて人を惹き付けてやまない名言と共に多くの読者、視聴者を虜にしてきた日本SF作品の名作『銀河英雄伝説』
オレもその魅力、いや魔力に引き寄せられて長年の愛読者となっていた作品だ。
旧版OVAは勿論、新作版も欠かさず視聴していたし、原作の小説は擦りきれるまで、それこそ死ぬ瞬間まで繰り返し読み込んでいた。
好きな作品を今際の際まで読む、そんな幸せの内に天寿を全うした筈の令和の時代の日本人男性(享年87、孫もいたぞ!)が、何故いまその名作の舞台となった時代、それも宇宙空間にいるのだろうか?
うん?これは夢か?それとも死んだ後だからオレが無意識に望んでいた天国とやらか?
いや、銀英伝の世界とか地獄だろう。1度の会戦で何十万人と人が死んでる、とんでも世界なんだぞ!?
そもそもオレは作品自体は好きだったけれど、戦いや戦争とは無縁の平々凡々な一般人だったのに、なぜに軍服を着て艦橋らしき場所に立っているのだろうか。
「艦長、どうされましたか?」
「っえ!?あ、いや、なんでもない。作戦の確認をしていたところだ。」
「そうでしたか。失礼しました。今回こそは、あのイゼルローン要塞を陥落させねばなりませんからね。司令部も力の入れようがすごいですし。何かありましたら、お申し付けください。」
「あ、ああ。ありがとう。」
そう答えるとオットー副長は下の段の副長席へ戻っていく。恐らく、オレがしばらくぼぅっとしていたので艦橋詰めの士官の誰かが副長を呼んだんだろう。
って、なぜオレは始めてあったはずの人物を副長と、オットー・クレアム大尉だと分かったんだ?それで言えば、オレ自身の名だって意識すると自然と『ヘイイチロウ・トウゴウ』少佐だと分かる。日本で生きていたオレはそんな名前では無かったはずなのに。
そう、今は宇宙暦794年11月25日、銀河英雄伝説の外伝で描かれた第6次イゼルローン要塞攻防戦の最中だ。オレは、トウゴウ少佐は巡洋艦ミカサⅩⅡ号の艦長として第8艦隊に所属して、この戦いに参加している。同盟軍は間もなくイゼルローン要塞の前面にまで展開し、攻撃を開始しようとしているところ。オレの所属する第8艦隊も司令部直卒のもとで進軍している。
記憶が確かなら、このまま12月1日にはイゼルローン要塞付近での戦闘が開始され、ホランド少将のミサイル攻撃や、ラインハルトの攻撃とヤン提案の並行追撃、ローゼンリッターのリューネブルクとシェーンコップの戦いなど色々な出来事が起こることになる。
「その最中に、よりによってなんでオレが巻き込まれることになるんだ!?」
これはあくまで作品として楽しんでいた『銀河英雄伝説』の時代になぜだか転生してしまった一般人男性(というよりお爺ちゃん)の、命を懸けた生き残りの話である。
・・・『銀河の歴史がまた1ページ』
「いや、それ言わなくていいから!オレを歴史の中に巻き込まないでくれ!!?」
・・・主人公は果たして生き残れるのだろうか。