英雄のいない世界で   作:天叢雲剣スサノヲ

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 今回は特彼の武器を新調することと、ヘスティア様がヘファイストス様に武器を作ってほしいと願うお話です。

 オリジナル展開を早く出したいので頑張っていきます。


剣を求めて

 ホームを出てすぐに思い出した。

 

 (…あれ、俺支払してなくね??)

 

 さっと顔から血の気が引いた。

 

 「……とりあえず謝罪と支払いに行かないと……。」

 

 やらかしたことから逃げるのはダメだ。行こう。

 

 

 とぼとぼと豊穣の女主人に向かって歩く。

 

 

 

 「気まずい……。」

 

 だが、ここで行かないという選択肢はない。

 

 意を決して扉をくぐる。

 

 「あの、すみません。」

 

 「申し訳ありません、お客様。当店はまだ準備中です。時間を改めてお越しになっていただけないでしょうか。」

 

 「まだミャー達のお店はやってニャいのニャ!」

 

 店内でテーブルにクロスをかけていたエルフの店員とキャットピープルの店員がすぐに対応しに来た。

 

 (リューさんとアーニャさん、だよね)

 

 なんだろう、なぜか緊張してきた。

 

 「すみません、自分は客ではなくて。シル・フローヴァさんと女将さんはいらっしゃいますか?」

 

 「ああぁ!!あん時の食い逃げニャ!シルに貢がせるだけ貢がせといて役に立たなくニャったらポイしていった、あんときのクソまっくろ黒助ニャ!!」

 

 「あなたは黙っていてください。」

 

 「ぶにゃ!!」

 

 「失礼しました。すぐにシルとミア母さんを呼んできます。」

 

 「あ、はい。」

 

 い、今の一撃……見えなかった…。さすがレベル4。今の俺では知覚できなかった。

 

 (だが、何れは超えないといけない壁だ。ベルクラネルがそうだったように。)

 

 「ハヤテさん!?」

 

 階段を急ぎで降りる音がしたと思ったらすぐにシルさんが来た。

 

 「一昨日は申し訳ありませんでした。お金も払わずに、あんな…。」

 

 「…いえ、私は大丈夫ですから。こうして戻ってきてもらえて、私はうれしいです。」

 

 「これ、払えなかった分と飛び出してしまった迷惑料です。」

 

 「はい、確かに受け取りました。……その、大丈夫ですか?」

 

 「…ええ。進むべき道が決まりましたから。もう、迷いません。」

 

 そうだ、道は定まった。俺はもう迷わない。

 

 シルさんは、どこかほほえましいような、なにか悲しそうな顔をしていた。

 

 「そうだ、今日はダンジョンに行かないんですか?」

 

 「ええ、少し装備を見直そうかと。今の装備では足りないものがあったので。」

 

 「坊主が来てるって?」

 

 ぬぅ、っと奥から出てきたのは女将さん、ミアさんだ。…威圧感がすごい。

 

 無意識に背筋が伸びた。

 

 「ああ、なるほど。金を払いに来たのかい。感心じゃないか。」

 

 「はい。申し訳ありませんでした。」

 

 「シル、あんたは引っ込んでな。仕事ほっぽり出してきたんだろ?」

 

 「あ、はい。わかりました。」

 

 彼女が去っていく傍ら、ミアさんは豪傑な笑みを浮かべて俺の胸をその大きな指でどついた。

 

 曰く、「このまま帰ってこなければこっちからケジメをつけに行ってやった」とか、「あと一日遅れてたら、久しぶりにアタシの獲物が轟き叫ぶところだった」とか。

 

 ……あと数日遅れてたら俺、死んでたのか……。

 

 「シルには改めて礼を言っときな。ウチの連中はアタシも含めて血の気が多いヤツ等だから、アレが説得していたかったら、アンタ今頃は湖に沈んでるよ。」

 

 「……。」

 

 うん、笑えない。

 

 「シルは飛び出したアンタを追っかけて行ったみたいだけど、結局合わなかったんだろう?塞ぎ込んで帰って来たシルを見て、ほれ、あのエルフのリューが真剣持って出ていきそうになってね。止めるのに一苦労したもんさ。」

 

 ……、そういえばリューさん。シルさんのことすっごい大事にしてるんだもんな……。

 

 (というか、シルさん俺なんかを追いかけてきてくれたのか……、申し訳ないな。)

 

 後日、改めて謝罪しないとな。

 

 「……坊主。」

 

 「はい?」

 

 「冒険者なんてカッコつけるだけ無駄な職業さ。最初の内は生きることだけに必死になってればいい。背伸びしたって碌なことは起きないんだからね。」

 

 ミアさんは豪快な笑みを浮かべながら。

 

 「最後まで2本の足で立ってたヤツが一番なのさ。みじめだろうが何だろうがね。そうすりゃ、帰って来たソイツにアタシが盛大に酒を振る舞ってやる。ほら、勝ち組だろ?」

 

 「ミアさん……。」

 

 「情けない面してんじゃないよ。そら、店の準備の邪魔だ。行った行った。」

 

 くるっと回され、背中を押された。

 

 「…ありがとうございます。」

 

 俺はバベルへと歩き出した。

 

 あの人が母と慕われる理由がよく分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、バベルまで来て、ヘファイストスファミリアのテナントに入ってみた。

 

 さすがというべきか、品数が尋常じゃない。

 

 「……とりあえず、剣のところに行くか。」

 

 正直目利きなんてしたこともないし、良し悪しもよくわからない。が、きっと何かしら出会いがある、かもしれないと足を運んだ。

 

 

 

 

 「うーん、これがいいってものがないなぁ。」

 

 なぜかどれもしっくりこなかった。片手直剣は俺には少し重かった。かと言ってナイフだとリーチが足りない。八方塞がりだ。

 

 こういう時は店の人に聞くに限る。

 

 「すみません、片手で扱えて、ナイフよりもリーチ長め、直剣よりは短めのモノってありますか?」

 

 「はい、其れでしたら、こちらへどうぞ。」

 

 連れられて行った先は、ダガー系統のモノと言えばいいのか短めのものが多い場所だ。

 

 「こちらはどうでしょうか。」

 

 そう言って差し出されたのは使っているナイフよりも刃渡りが大きい、大体40Cくらいのは渡りを持つ剣だ。

 

 「少し持ってみても?」

 

 「どうぞ。」

 

 受け取り、軽く振ってみる。今使っているナイフよりは重いものの、動きに支障はない。取り回しも問題なし。

 

 「……これ、いくらでしょうか。」

 

 「はい、5,000ヴァリスになります。」

 

 「買います。」

 

 即決した。

 

 

 

 その後、防具も見たが、さすがに予算が足りなかったのであきらめた。まぁ、武器を新調したので良しとしよう。

 

 

 「ヘスティア様、戻りました。」

 

 「おお、お帰り。いいものには出会えたかい?」

 

 「ええ。これですね。」

 

 ヘスティア様に勝ってきた剣を見せる。

 

 「ふむ、少し小さめなんだね。」

 

 「ええ、取り回しの良さと重さがこのあたりがちょうどよかったので。」

 

 「そっかそっか。まぁ、君が納得できたならそれでいいと思うぜ!」

 

 グーサインしながら笑ってくれるヘスティア様。

 

 「あ、では夕食はどうしましょうか。」

 

 「それなんだけど、ハヤテ君。僕は何日か留守にするよ。構わないかい?」

 

 「ええ、問題ないです。バイトですか?」

 

 「いや、行く気はなかったんだけど友人が開くパーティーに顔を出そうかと思ってね。」

 

 「承知しました。行ってらっしゃい。」

 

 ヘスティア様はクローゼットから服を選び、荷物を持って出かけて行った。

 

 

 

 「さて、俺は…ダンジョンに行くか。」

 

 とりあえず、実戦でこの剣を試してみたい。

 

 お金をホームの中に隠し、装備に着替えてもう一度外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ!!」

 

 剣を準手で振り下ろす。以前よりもリーチがある其れは容易くゴブリンを両断した。

 

 「すぅ、はぁ。しかし、なるほどね。これがスキルってやつか。」

 

 あれから探索を始めたが、少し歩くたびにモンスターにぶち当たっていた。というか、入ってまだ10分もたっていないはずなのに、魔石がかなりたまった。それに、単体のモンスターと当たらなくなった。

 

 「これが、遭遇率の補正か。まぁ、経験値的にはうれしいけども。」

 

 ビキリ、と壁から音がする。それも、複数。

 

 「言ってる傍からこれか。まぁいいさ。」

 

 魔石を急いで回収し、構える。丁度、コボルトが3匹生まれたところだった。

 

 「行くぞ!!」

 

 敵の体制が整う前に突っ込んで、手近の一匹の首を斬る。二体はまとまって突っ込んできたので、片方に剣を突き立てる。残った方から攻撃を受けはしたが、それはそれで耐久が上がるからありがたい。

 

 「お疲れさん。」

 

 最後の一匹の脳天に思いっきり剣を振り下ろした。

 

 

 今日は剣を試したくて来ただけだったが、思いのほか遭遇することが多かったので魔石がかなりたまった。

 

 「帰るか。」

 

 剣の扱いは問題なし。魔石も集まった。これ以上は居る意味はない。そう判断して引き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お、あそこにいるのはド貧乏ファミリア代表のタケミカヅチ君じゃないか!おーい!フヒヒ。」

 

 「あ、あの年がら年中幸の薄そうなシケた顔はタケミカヅチさんじゃないですか!おーい!フヒヒ。」

 

 「このクソ神どもがぁ…!?」

 

 未知という存在に餓え、娯楽を求めて降りてきた神々。かっこよく言えばこんな感じだろうが、やってることは職務放棄である。

 

 「よっすー。」

 

 「おお、お久。何百年ぶりだっけ?」

 

 「4日ぶりだな。」

 

 「あー、そんなあってなかったかぁ。お前もずいぶん変わったなぁ。」

 

 「なんだこいつ会話が通じてねぇ。」

 

 さて、仕事から逃げ出してきた者たち、もとい神々が向かう先にあったのは一際異彩を放つ、というかもはや奇怪の領域に入っているであろうガネーシャファミリアの本拠地『アイアムガネーシャ』である。

 

 それは、名前がすべてというか名前通りである。そう、ガネーシャだ。巨大なガネーシャの形をしたホームだ。

 

 入り口は胡坐をかいた股間の中心である。……なぜそうなった。

 

 ちなみに、団員たちからは不評である。

 

 ガネーシャの股間に群がる人々はすべて神である。ガネーシャ主催の神の宴に参加する来賓だ。

 

 簡単に言えば単に神々が顔を合わせて駄弁りながら飲んだり食べたりする催しである。

 

 『本日はよく集まってくれた皆の者!!オレがガネーシャである!今回の宴もこれだけの同郷者に出席していただきガネーシャ超感激!!愛しているぞお前たち!さて積もる話はあるが、どうか皆のファミリアには協力をお願いしたく――――』

 

 外見からは想像がつかない、落ち着いた内装の会場。設けられたステージの上では、像の仮面をかぶった男、ガネーシャ本人がバカデカい肉声で宴の挨拶をしていた。

 

 が、お約束とばかりに聞き流し参加者たちは各々談笑している。

 

 会場内には人であふれている。「神の宴」の招待状は、開催するファミリアが動員できる範囲内なので、ファミリアによってまちまちだ。

 

 ガネーシャファミリアはオラリオ屈指の派閥なので、これだけ多くの神々が招待されている。

 

 ヘスティアもその一人だ。

 

 「む、給仕君、踏み台を持ってきてくれ!」

 

 「は、はい。」

 

 彼女はウェイターを使い、多種多様な料理と格闘していた。……といか、タッパーに詰めていた。

 

 それを何とも言えない目で見つめるウェイター。哀れである。

 

 「あれ、ロリ巨乳まで来てるじゃん。」

 

 「ていうか生きてたのか。」

 

 「いや、あいつ北の商店街でバイト頑張ってるぞ。この前客に頭撫でられてた。」

 

 「さ・す・が・ロリ神。」

 

 当然、そんなことをしてたら目立つ。…ハヤテもこの場面に出くわしたら何も言えないだろう。

 

 「なにやってんのよ、あんた……。」

 

 「むぐ?むっ!」

 

 脱力したような声がヘスティアのそばから投げられる。

 

 振り向くと、瞳に移る紅い髪と深紅のドレス。線が細くありながら鋭角的な顔立ちは美しく意志の強さを表しているよう。

 

 そしてそんな美貌の中でも目を引くのが、顔半分を覆っている黒い眼帯。

 

 「ヘファイストス!」

 

 「ええ、久しぶりヘスティア。元気そうで何よりよ…。もっとマシな姿を見せてくれたら私はもっと嬉しかったんだけど。」

 

 溜息をつきながら天井を見上げるヘファイストス。

 

 「いやぁよかった。やっぱり来たんだね。ここにきて正解だったよ。」

 

 「なにヨ、言っとくけどもうお金は一ヴァリスも貸さないからね。」

 

 「し、失敬な!」

 

 逆にヘファイストスは友好的ではない眼付を作って辛辣な物言いをする。

 

 が、しかたない。なぜならハヤテと会う前は彼女はヘファイストスに厄介になっていた。一言でいえば、ニートしていたのだ。

 

 というか、今のファミリアのホームである教会も、バイトもヘファイストスの紹介である。……駄女神と言わざるを得ない…。

 

 「ボクがそんなことをする神に見えるかい!そりゃあヘファイストスには何度も手を貸してもらったけど、おかげで今は何とかやっていけてる。今のボクが親友の懐を食い漁る真似なんかするもんか!」

 

 「たった今、普通にただ飯を食い漁っていたじゃない…。」

 

 「うぐっ……。いやこれはどうせ残るんだし…粗末に捨てるくらいなら僕が有効活用してあげようかなー、なんて。」

 

 「ほーほー、立派じゃないそのケチ臭い精神。わたしゃあ、あんたのそんな姿に涙が止まらないわよ。」

 

 「ぐぬぅ……!」

 

 ハンと鼻を鳴らすヘファイストス。……ヘスティアの自業自得である。

 

 「フフ……相変わらず仲がいいのね。」

 

 「え、フレイヤ?」

 

 ヘスティアの視界に現れた女神は、容姿の優れた神々の中でも群を抜いている。

 

 美の概念がそのまま人の形をかたどったかのようである。

 

 フレイヤ。美に魅入られた神である。

 

 「な、なんで君が此処に……。」

 

 「ああ、すぐそこで会ったのよ。久しぶりーって話していたら、じゃあ一緒に回りましょうかって流れに。」

 

 「か、軽いよ、ヘファイストス……。」

 

 「あら、お邪魔だったかしら?ヘスティア。」

 

 「そんなことはないけど……。」

 

 微笑を浮かべる美神が問いかける。

 

 「ボクはきみのこと苦手なんだ……。」

 

 「うふふ。貴女のそういうところ、私は好きよ?」

 

 神々の中でも群を抜いてみ目麗しいもの谷の一人。

 

 基本的に映り気な神々が、理屈を抜いて夢中になる。下界の者が見ればその瞬間から虜になるだろう。

 

 だが、美の神は食えない性格をしている。程度はあれどあまりかかわりたくない相手ではあった。

 

 

 「おーい!ファーイたーん!フレイヤ―!ドチビー!」

 

 「……もっとも、君なんかよりずっと大っ嫌いな奴が、ボクにはいるんだけどね!」

 

 「あら、それは穏やかじゃないわね。」

 

 品よく微笑むフレイヤから視線を切って回転すると大きく手を振りながら歩み寄ってくる女神がいた。

 

 朱色の神と朱色の瞳。細身の黒いドレスを着こなしている。

 

 ……フレイヤの所為でインパクトが薄れた気がするが、やはり顔立ちは整っている。

 

 「あ、ロキ。」

 

 「何しに来たんだよ、君は……。」

 

 「なんや、理由がなきゃ来ちゃあかんのか?『今日は宴じゃー!』ってノリやろ?むしろ理由を探す方が無粋っちゅうもんや。はぁ、マジで空気読めてへんよ、このドチビ。」

 

 「……!!!」

 

 「凄い顔になってるわよ、ヘスティア。」

 

 会うたび会うたびこんな感じである二人。

 

 「本当に久しぶりね、ロキ。ヘスティアやフレイヤにも会えたし、今日は珍しいこと続きだわ。」

 

 「あー確かに久しぶりやなぁ。……ま、久しくない顔もここにはおるんやけど。」

 

 糸目になりやすい瞳を薄く開いて、フレイヤへと視線を向けた。

 

 「なに、貴方たちどっかであっていたの?」

 

 「先日にちょっと会ったのよ。といっても、会話らしい会話はしていないのだけれど。」

 

 「よう言うわ。話しかけんなオーラ全開にしとった癖に。」

 

 「ふーん。あ、ロキ、貴方のファミリアの名声よく聞くわよ。うまくやってるみたいじゃない。」

 

 「いやぁ、大成功してるファイたんにそんなこと言われるなんて、うちも出世したなぁー。……でもま、確かに今の子たちはちょっとうちの自慢なんや。」

 

 照れくさそうに構成員に触れるロキには彼らへ向かう情がとって見えた。

 

 「ねぇ、ロキ。君のファミリアに所属しているヴァレン何某についてなんだけど。」

 

 「あ、剣姫ね。私もちょっと聞きたいわ。」

 

 「うぅん?ドチビがうちに願い事なんて、明日は溶岩の雨でも降るんとちゃうか?」

 

 「……聞くよ。その噂の剣姫は付き合っているような男や伴侶はいるのかい?」

 

 「あほ、アイズは家のお気に入りや。読みには絶対駄さんし、うちイガイがあの子にちょっかい出したらそいつは八つ裂きにする。」

 

 「あ、そう。」

 

 正直、相手がいる方がよかったのだが、よくよく思えば、ハヤテは別にアイズ・ヴァレンシュタインに懸想しているわけではないのだ。……まぁ、前世作品を見ていてカワイイと思うことは多々あったが。

 

 「というか、今更だけどロキがドレスなんて言うのも珍しいわね。」

 

 「フヒヒ、それはあれやファイたん。どっかのドチビがあわただしく、パーティに行く準備をしてるって小耳にはさんでなぁ。」

 

 ちらりとヘスティアに流し目を送ってからロキは腰を折り、背の低い彼女の顔にぐっと自分のものを寄せる。

 

 「ドレスも着れない貧乏神をぉ、笑おうと思ったんやぁ。」

 

 (うぜぇえええええええええええええええええええええ!!)

 

 会うたび会うたび喧嘩をする二人。理由は一目見ればわかる。彼女にないものをヘスティアが持っているから。だ。

 

 「ふんっっ!!こいつは滑稽だ!ボクを笑うために自分の無乳を周りに見せつけるなんて、ロキっ、君は笑いの才能があるね!!」

 

 「んなっ!?」

 

 「ああ、ゴメンゴメン、笑いじゃなくて穴を掘る才能だったね!……墓穴っていう穴のさぁ!!」

 

 今度はロキが赤面する番である。今のロキのドレスはある程度の露出がある。

 

 平原が、そこには存在していた……。

 

 「大体その母性ゼロの胸でどれだけ男を失望させてきたんだよッ!絶壁なだけに絶望とか馬鹿なじゃないの!?あっ、ボク今美味いこと言ったねぇ!!」

 

 「全然うまくないわボケェえええええ!!」

 

 始まった取っ組み合い。これまたいつものことである。

 

 腕のリーチ的にヘスティアでは応戦ができず空を切っていた。

 

 「あ、始まった。」

 

 「ロリ巨乳とロキ無乳か……。」

 

 「ロリ巨乳が勝つに10,000ヴァリス。」

 

 「無乳が最後の最後でうっかりを発動させるにエリクサー十個。」

 

 「打ちひしがれたロキたんを俺が全力で慰めるに星のかけら全部。」

 

 「賭けになってねぇじゃねえか……。」

 

 見ものだとばかりに騒ぎ出す神々。

 

 熾烈な争い、というか子供の喧嘩は終わりを告げることになる。

 

 そう、ヘスティアの立派な二子山が揺れるのだ。

 

 「……ふ、ふん。きょ、今日は、今位にしといてやるわ……。」

 

 (((((((めっちゃ動揺してる……。))))))

 

 試合に勝って勝負に負けた……。まさにそんな戦いであった。

 

 「今度現れるときは、そんな貧相なものをボクの視界に入れるんじゃないぞ!この負け犬めっ!!」

 

 「うっさいわアホォー!!覚えとけよぉおおおおおおおお!!」

 

 ついには泣いて会場を出て行った。

 

 「本当に丸くなったわ、ロキ……。」

 

 「いや丸くなったっていうか……小物臭しかしないんだけど……。」

 

 正直天界にいたころとはもはや別人のレベルである。

 

 「ロキは子供たちが大好きみたいね。だからあんなふうに変わったのかもしれない。」

 

 「……甚だ遺憾だけど、まぁ子供たちが好ましいってことには賛成するよ。」

 

 「へぇ、前まで『ファミリアに入ってくれなくて子供たちは目がなーい』なんて言ってたくせに。貴女のファミリアに入ったハヤテっていう子のおかげかしら。」

 

 「ふふん、まぁね。ボクにはもったいないくらいにいい子だよ。」

 

 まぁ、今は少し危なっかしくもあるが……。

 

 「確か、黒目黒髪のヒューマンだっけ。珍しいわよね。ファミリアができたってあんたが報告しに来たときは驚いたなぁ。」

 

 その言葉を聞いてフレイヤが一瞬動きを止めた。

 

 持っていたグラスをテーブルにおいて髪を翻す。

 

 「じゃあ、私も失礼させてもらうわ。」

 

 「え、もう?フレイヤ、貴方用事があったんじゃないの?」

 

 「聞きたいことは聞けたからもういいの。」

 

 「……貴女、ここに来てから誰にも聞くようなまねしてなかったじゃない。」

 

 パーティの初めから行動を共にしていたヘファイストスは怪訝そうな顔をする。

 

 「……それに、ここに居る男はみんな食べ飽きちゃったもの。」

 

 「「「「「サーセン」」」」」

 

 

 すさまじいことを言い残して彼女は去っていった。

 

 「…やっぱりフレイヤも美の神だ……だらいないよっ。」

 

 「いやまぁ、フレイヤたちが愛や情欲を司らなきゃ誰が務めるんだって話にもなるけどね……。」

 

 「それでも彼女はファミリアを持つ身だろう、自覚が足りなすぎるっ。もしかしたら敵対するかもしれない神とだなんて…子供たちに愛想を尽かされるよ!!」

 

 「フレイヤが微笑めば、それだけで構成員は補充できそうだけど……。」

 

 正直、フレイヤファミリアが愛想をつかすところが想像できない。女神狂い……もとい、崇拝している彼らが愛想をつかすことがあるのだろうか……。

 

 「で、あんたはどうするの?私はもう少し皆の顔を見に回ろうかと思うけど、帰る?」

 

 びくりとヘスティアは肩を揺らす。

 

 「もし残るんだったら、どう?久しぶりに飲みにでも行かない?」

 

 「う、うーん、えーっと……。」

 

 急にしどろもどろになったヘスティアにヘファイストスは首をかしげる。

 

 「そのぉ、ヘファイストスに頼みたいことがあるんだけど……。」

 

 「……。」

 

 すっと紅い瞳が細まる。

 

 先ほどまでの雰囲気から一変して厳しさにあふれた空気を纏いだした。

 

 金は貸さないといった時と同じ姿勢だ。

 

 「この期に及んで、また頼み事ですって?あんた、さっき自分が口にしたことをよーく思い出してごらんなさい?」

 

 「え、えと、なんだっけ?」

 

 「私の懐は食い漁らないって、そう言ってなかったかしら?」

 

 あぁ、言ってたとヘスティアは空笑いした。

 

 前言を撤回したくなる衝動が襲い掛かってくるが、ぐっと顎に力を入れて耐える。

 

 ハヤテの顔を浮かべる。今、どこか危うくも感じる彼の顔を。

 

 ここで立ち止まるわけにはいかなかった。

 

 「……一応聞いておいてあげるわ。な・に・を・私に頼みたいですって?」

 

 目の前で仁王立ちするのは紅目紅髪の神ヘファイストス。

 

 彼女のファミリアは冒険差hの収入で唯一運営がされていない。

 

 迷宮都市の中でダンジョンで生計を立てない、しかし冒険者ならば誰もが知る大ファミリア。

 

 ブランド、と言っていい。

 

 多くの人材を抱え育成し、百の品に勝る一品を生み出すことで有名な業界大手のファミリア。

 

 オラリオ以外の都市からも、というか世界から引く手あまたの「鍛冶師」のファミリア。

 

 それがヘファイストスファミリアである。

 

 ヘスティアは、彼のヘファイストスファミリア永久現役社長に向かって大きな声で望みを放った。

 

 「ハヤテ君に…、僕のファミリアの子に、武器を作ってほしいんだ!!」

 

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