詰め込むという選択肢もありましたが長くなりすぎるのもアレだし…ということでキリのいいとこで切らせてもらいました
次回の()の中は終です(
数日、DK堂でお仕事やらパンやらを焼いていると、ツカサのスマホに連絡がきた。
画面を見てみると、そこに映っていた文字列はヴィクトリア家政のリナさんの名前。
停電の理由とか諸々がわかったのだろうか。
「はいもしもし」
<もしもし? ツカサさま? こちら、ヴィクトリア家政のリナでございます。推測の段階ではございますが、停電の原因が、ある程度解明できましたわ。先も言った通り、推測ではありますが>
「それでも十分な進歩だよ。パエトーンのほうに連絡は?」
<そちらにはライカンさんが連絡しておりますわ。ツカサさまにはわたくしが>
となると今パエトーンの方もビデオ屋で連絡を受けているのだろう。
改めてツカサは電話の声に集中する。
「とりあえず話を聞かせて?」
<もちろんですわ。図面を確認した限りでは、ツインズの電力供給構想は完ぺきでした。大規模停電を回避できるだけの対策がなされてます。そして地下には独立して稼働している発電所もありました。ホロウに吞まれてなお電力が生きていた理由ですわね>
「とりあえず電気代は滞納してなかったのかな。となると、停電はその発電所の故障か何か?」
<論理的に考えるとそうなりますが、この図面だけでは特定には至らないのですよね。幸いにも、資料には停電した時の対応も書かれていました>
「予期はしてたのかな、ツインズ作った人も」
<かもしれませんわね。それで方法なのですが、二棟には独立した〝制御室〟と〝非常用発電室〟があるみたいですわ。そこで原因を突き止めれるほか、やむを得ない場合予備の電力系統に切り替えれば復旧も可能でしょう>
「おけ、じゃあ次の目的地は決まったね」
<えぇ。これから貴方様に制御室と発電室の位置を送信しますわ>
「わかった。いつパエトーンに呼ばれてもいいように、こっちも準備を整えておく」
<承知しましたわ。わたくしたちヴィクトリア家政も、いつでも準備できております。では後ほど>
そう言ってリナからの電話は切れた。
とりあえず予定は埋まったので、あとはこっちも準備を整えるのみだ。
とはいっても精々いつでも動けるように身体をほぐしておくのと、腹に何かを入れておくぐらいだが。
サラさんと一緒に雑談をしつつ、売れ残りのパンを腹に入れていると、パエトーンから連絡がきた。
どうやら仕事の時間みたいだ。
◇◇◇
ビデオ屋からイアスを受け取ってそのまま一人と一匹でバレエ・ツインズに向かう。
「ンナ、ンナ」とイアスが言葉を発してるのはとっても可愛い。
よっこいしょと頭に乗せるとイアスはご機嫌だ。
気分はインデックスたんである。もしくはシャナたん。
現場に向かうと既にヴィクトリア家政の面々がスタンバイしていた。
ツカサはイアスをまたよっこいせと下して現場に着いたことをパエトーンたちに連絡する。
そして数分後、イアスに憑依、もとい同期したアキラが口を開いた。
<「よし」>
「早速なのですがプロキシさま、棟内の電力を復旧するには、いくつかの手順を踏む必要がございます。まずが制御室に向かい、停電の原因を突き止めましょう。それが故障であれ何であれ、復旧が困難な場合は、予備に切り替えるのです。次に、制御室に残り操作を行う側と、発電室に向かい予備のエーテル発電機を起動させる側の、二手に分かれます」
「ふむふむ」
ツカサが頷いているとリナが歩いてきてツカサの隣にやってくる。
「制御室の操作には複雑な手順が必要ですわ。この中で適任者がいるのなら、ライカンさんですわね。一方の発電室は、発電機と原料の運搬が主になりそうですわね」
「力仕事でしたら、カリンもお役に立てますっ」
「…頭が疲れるか、身体が疲れるか、ってこと? …どっちも嫌なんだけど」
「マイペースだねエレンは」
「ツカサはどっちに行くの?」
「俺は発電室側かな。操作の仕方わからないし…いやいけんことなさそうだけど勝手に操作するのはダメだし。パワー系なら力になれるからね」
「じゃーあたしもそっち。それにカリンちゃんと一緒なら作法がどうとか言われないもんね」
「ん、んっ。エレン?」
じろりとライカンがエレンを嗜める。
当のエレンはどこ吹く風である。
いつものことなのだろう。
「それでは、ライカンとわたくしで制御室チームですわね。戦力のバランスを考えると、妥当な分配ですわ」
「えぇ。ではみなさん、出発いたしましょう」
◇
とは言ったものの、発電室組はまだ待機。
先に制御室組をパエトーンは案内するようなので、こちらは道中の敵などを始末していく。
また、意外にも発電室は結構距離はそんなに遠くなかった。
普通に徒歩数分レベルの場所にあったのは幸いだ。
「うげ。でもエーテル燃料っていうの? それ見当たらなくない?」
「そうですね…。カリンが見渡した感じ、このお部屋にはなさそうです…」
「よし。パエトーンが合流してすぐ作業できるように俺が辺りを探してくる。エレンとカリンはパエトーンがいつ戻ってきてもいいように、最初のところで待っててくれ」
エレンとカリンにそう言うとツカサはディケイドのままその辺の通路とか近くの部屋を見て回る。
探してみると案外早く見つかった。
ミルク缶みたいなのを二個重ねた感じのやつ。
三ヶ所にあったのもをしんどい思いしながら両手に二つ、最後に一つと発電室のほうへ運んでいく。
生身だったら腰を痛めていただろう、何せディケイドの状態でもおっも、ってなったくらいだ。
とりあえず発電室の方へ運んでおく。
これで合流したらすぐに作業が始められるだろう。
ディケイドがエレンたちのところに戻ると、そこにはすでにイアスの姿があった。
<「ツカサ、準備は終わってる感じなのかな」>
「ああ。あとはうまい具合に再起動するだけだ。行こう、みんな」
そんなわけで今度はパエトーンinイアスと一緒に道を走る。
道中処理したはずのエーテリアスがまた湧いたのでつつがなく処理していく。
「はー。学校の宿題みたいに湧くじゃん。あれってさ、片づけてもまた明日には増えるんだよねぇ…」
<「ローンと電気代もだ…」>
「世知辛い話題やめてくれる…?」
聞いてるこっちもしんどいのである。
他人事じゃないだけになおさら
そんなわけで発電室に到着。
エーテルの燃料はすでに発見して運搬済みなので、あとは再起動をかけるだけだ。
<「やったねお兄ちゃん。それじゃあライカンさんたちに連絡しよ」>
そんな声がイアスから聞こえる。
リンのほうだ、そのあとでイアスが通信を繋げ、ライカンの声が聞こえてくる。
<お待ち申し上げておりました。発電室の方はつつがなく進行しておりますでしょうか?>
<「あぁ。色々あったけれど、最終的には片付いた」>
<御意にございます。こちらで復旧状態を確認したしますので、スイッチを押していただけますか?>
ライカンの声に従い、近くにいたツカサがそのスイッチを押した。
あとは確認待ちだ、ライカンの連絡を待つ。
しばらく待っていると、部屋の明かりがつき始めた。
復旧はうまい具合にできたのだろうか。
<プロキシ様、電力が復旧しつつあります。それと、B 棟の制御室に影響がないように、A 棟の電源は独立させました>
「さっすがライカンさん。それじゃあ合流してアトリウムへ向かおうぜ」
レインが無事なくらいはそこでわかればいいのだけれど。
◇
そんなわけでライカンとリナと合流した一行は前回の侵入の時閉じられた部屋の前に来ていた。
手際よくライカンが操作すると、ゆっくりと扉が開き始める。
ここまでで大分時間を喰ってしまった。
「ガイドさまとツカサさまのお力添えのおかげですわね」
<「どういたしまして」>
「大したことはしてないさ」
道なりに進み、階段を登っていく。
登った先に、何かが落ちていたことにイアスInパエトーンが気付いた。
<「ん? 何か落ちているな」>
目を凝らす。
「…レインのリュックじゃんか」
薄い黄色と赤色のグラデーション? っぽいカラーのリュックが無造作に置かれていた。
間違いなく手掛かりの一つではある。
「中身も調べてみよう」
<「あぁ」>
ライカンらに目配せをして、いつでも動けるように周囲の警戒を頼んだ。
もしかしたら爆弾可なんかを仕掛けて一網打尽にする、とかこれは囮で奇襲を仕掛けてくる、とかいろいろ不測の事態は想像できる。
ガサゴソとイアスがちいちゃい手でリュックの中から取り出したのは、レコーダーのようなもの。
何やら自動再生がステンバイされていたのかはわからないが、あと二秒ほどでゼロになりそうなところでとっさにイアスがぶん投げた。
爆発するか…? と思いきやそのレコーダーからやけにムーディーな音楽が流れ始めた。
「…なんだ、録音か」
はふぅ、とツカサが安堵の息をつく。
ぽんぽんとイアスの頭をなでつつ、ツカサがレコーダーの方へ歩いていき、膝をついて拾い上げる。
とはいえなんで自動再生か何かを…?
「───ツカサさま!!」
リナさんの声が聞こえたのと、背後に気配を感じたのは同時だった。
抜かった…、今は変身してない。
「そのまま屈んでて!!」
そう叫んだのはエレンだ。
彼女はカリンと同時にとびかかり、ツカサの背後に現れたエーテリアスに同時に攻撃する…が、エーテリアスは華麗に後方一回転で回避。
そのままバレエを踊るような気軽さで地面を動く。
誘う踊りのつもりだろうか。
<「あいつ、どこから!」>
「隠れてろ、パエトーン! 変身!」
<KAMENRIDE DECADE>
イアスにそう飛ばしながらツカサはディケイドへと変身を敢行する。
そのままライカンの隣に並んだ。
「ダンスのお誘い、とお見受けしました。私共でよろしければ、お相手を務めさせていただきます」
「まぁ紳士」
ツッコミつつライドブッカーをソードモードにしてその刀身を撫でる。
それではダンスタイムとしゃれこもう。
◇
エーテリアスダンサー…ここではマリオネットと名付けようか…は本当に踊りながらこちらに攻撃を加えてくる。
回るように蹴っ飛ばしてきたり、だからといって離れるとこれまた回転しながら射撃とかを全方位に放ってくる。
遠近両用してくるバレリーナとか意味が分からんだろ。
攻撃をエレンが防ぎながら、最初に仕掛けたのはカリンの丸ノコチェーンソー。
そして遠距離からリナがドリシラとアナステラと呼ばれてるミニボンプを用いて雷をたたき込んでいく。
さらに隙間を縫うようにライカンが接近するのを、ディケイドが援護。
<ATTACKRIDE BLAST>
強化された弾丸がライドブッカーガンモードから放たれて、マリオネットの動きを阻害する。
動きが止まった隙を逃さず、ライカンの蹴りがマリオネットに炸裂し吹き飛ばした。
だがマリオネットはそのまま回転し威力を殺すと、また舞うように身構えた。
「気難しいお客様だ」
ライカンが呟く。
おまけにまだ元気と見える。
マリオネットの動きを回避しながら、ライカンは思考した。
(音楽が鳴ってから出現したのは、もしや…)
<「おい、怪物! こっちだ!」>
そう声が聞こえた。
視線を向けるとそこには先ほどのレコーダーをもったイアスがマリオネットに呼びかけた。
そしてそのまま下へ向かってそのレコーダーを放り投げた。
ぶん、と弧を描いて落下した先にはホロウの裂け目が。
マリオネットはそれを追いかけるように飛び降りて、そのままレコーダーと一緒に裂け目へと消えていった。
<「ふー。裂け目があって助かった。音楽に引き寄せられてた…」>
「えぇ。…どなたかがけしかけてきた、としか…」
<「レインが…?」>
「ないだろうな。なら空メールを使って助けを求めるはずがない」
パエトーンの呟きにディケイドが返答する。
空メールを使って助けを求めてくる、ということは文字を打つ暇もない、ということでもある。
そんな矢先であった。
どこかから放たれたミサイルがイアスに向かって襲い掛かってきた。
ここにきて明らかに人の手の悪意とも呼べる攻撃だ。
<「まずいっ!」>
イアスの速度では避けられない、それでもどうにか直撃は避けようとどうにかその場から離れようとした刹那、割り込んできたエレンが当たる角度のミサイルをハサミで断ち切った。
そのまま仁王立ちのように身構えると、深呼吸を一つ。
そして───〝狩り遊ぶ〟ように駆けだした。
そんな駆け抜けるエレンに向かって追いミサイルが来るが、エレンは気にする様子もなくぶった切っていき、ミサイルを撃った連中を視界にとらえると一気に接近していく。
「エレン!! 全員倒しては!!」
ライカンの言葉と連中の叫び声が聞こえたのは同時だった。
多分みんな一網打尽にされてしまったのだろう。
是非もなし。
駆け付けてみると壁に寄りかかってるエレンと先ほどミサイルをぶっ放してきたであろう連中が四、五人ほど伸びていた。
<「僕たち以外にも誰かが? っと…さっきは助かったよ」>
パエトーンが頭を掻きながらエレンに短い謝辞の言葉を巡る。
ディケイドも変身を解除しながらエレンのほうへ歩み寄り
「おつかれ。エレン。…エレン?」
「…んにゅ…」
そのままエレンは力を失ったようにツカサの方へと倒れ込んできた。
すかさず彼女を支える、怪我をしたのか? と思いきや耳を澄ますと寝息が聞こえる。
エネルギー切れか何かだろうか。
「ご心配なく。眠っているだけですわ」
「いやいきなりはビビるって」
さすがに怪我を疑った。
けどまぁ眠ってるだけならばよかった。
さて、というような感じで今なお気絶したままのホロウレイダー達を見やる。
結構深く攻撃が入ったのか、しばらくは目を覚ますことはなさそうだ。
「一度、彼らを連れ出しましょう」
「だね。〝お話〟も聞けるかもしれないし」
ライカンの言葉にツカサは同意する。
レインの行方不明の件は、なかなかに面倒くさそうな事態に発展しそうだ。
◇
「おかえりなさい、怪我はないかしら」
DK堂に入ると店番をしていたサラが出迎えてくれた。
「怪我はないよ。サラさんこそお店に何もなかった?」
「数人常連の人が来て物を買ってったくらいよ。そっちは進展あったかしら」
「それがきな臭くなってきてさ。俺とパエトーン…そんで家政の人たちしかいないはずだと思ったら、誰も身に覚えのない連中が紛れ込んでた」
「…身に覚えのない?」
ツカサは売り物に陳列されてるドリンクを適当に一本手に取ると封を開けて口に含みつつ
「あぁ。どこに雇われた連中かはわかんないが…。とりあえず家政の人たちと合流したら、改めて事情を説明しないといけない。俺とパエトーンも、人探しくらいの事情しか言ってないからね」
「仕方ないわね。ところで売り物のやつ飲んでいいの?」
「俺の店のだから問題ない」
ぐいーっと飲み干してゴミ箱の中に空き缶を入れる。
そんな彼にサラも苦笑いであった。
ふぅ、と一息つくとスヤァしたエレンを思い出す。
サメのシリオンみらいだからやはりエネルギーの消費が激しいのだろうか。
…多分レインの探索が終わったら普通に紹介する予定ではあるし、アメくらい店に用意しようかな、などと考える。
味ランダム五本入りで百ディニーとかでどうだろう。
◇
「あらあら。お客様ったら。まだご自分の立場を理解していらっしゃらないのかしら」
パエトーンことアキラと一緒に再度バレエツインズにやってくると、何やらリナがにっこり笑顔で兵隊の一人を威圧していた。
威圧というか尋問か。
「ま、ままてっ! 話せばわかる…!! だからっ!!」
「そうですわね。あなた様が〝話して〟くれれば、ぜぇんぶわかりますわ」
「わ、わわかった!! 言う! 全部言うから!! だから、俺のそばに近寄るなああーーーッ」
今どこぞのギャングのボスいなかった?
そんな何回も死ぬかもしれないような尋問だったの?
「うふふ。ようやく心を決めてくださいましたのね。リナもうれしゅうございます。もう少し早く決めてくだされば、お互いにつらい思いをしなくて済みましたのに」
こわ。
そんな感じでにっこりだったリナがこちらに気づくと、圧のあるにっこりから柔和な笑みへと切り替えて
「まぁ調査員さま。通りすがりさま。来ていただけたのですね。こちらの方はお気になさらず。こっそりと帰ろうとなさったので、丁重にお引止めしただけですわ」
「そ、そうなんだ」
アキラが苦笑いで返した。
合法な手段ですか?
いや、ヴィクトリア家政のことだ、合法なのだろう。
「兵士様。反乱軍のメンバーである以上、治安局に引き渡された末の末路はご存じのはず。あなた方がバレエ・ツインズに入れ込んでいる理由を明確にご説明していただければ、私共としても寛大な対応をご検討いたします」
せやせや。
ライカンさんの言う通りや。
心の中でツカサは小物ムーヴを決める。
やがて兵士は腹を決めたのか
「わ、わかった。…う、うちの部隊のスポンサーから連絡があって…。ツインズのB棟屋上で、そいつの代わりにあることをやれって…」
「あること、じゃあわからんな。もっと具体的に言ってくれないかな」
「お、俺はただの下っ端なんだ! 詳しいことは何も知らない!!」
ツカサに凄まれると兵士は必死の形相(見えないけど)でそう言ってくる。
「俺たちは、周辺の警備を任されただけなんだよ。ツインズに侵入したやつを見つけ次第、B棟に近づいてくる奴らを遠ざけろって」
「停電は君たちの仕業だったのか」
アキラが問うた。
「そ、そうだ。最初は肝試しかなんかだろうと思ってたら、尋常じゃない速さで電気を復旧させやがった。それで隊長が言ったんだ、あれはただものじゃない、小娘を助けるために来た連中に違いないから、あの妙なエーテリアスをぶつけてやれって…」
「おいお前、今小娘って言ったな? …その子に何をした、無事なんだろうな? 返答次第では治安局以上の末路をお前が待ってるぞ?」
ツカサにしては珍しくドスの効いた声で兵士に凄んだ。
兵士は体を震わせながら
「あ、あのこむ…お嬢さんなら隊長とB棟にいる! 当分は命の心配はない!!」
「当分だぁ? じゃあ用が済んだら殺すってぇか? なぁ」
がし、と頭を鷲塚む。
ライカンはふむ、と顎に手をやって
「先ほどの発言…貴方様方の部隊が、レイン様を誘拐した事実を認めた、と受け止めてよろしいですね? リナ、引き続き詳細を。それと、プロキシ様、ツカサ様、少々お時間をいただいても」
「あぁ。こっちも話さないとならないことがあるからな、いいよな、パエトーン」
「もちろんだ」
◇
「結論から言ってしまうと、レインは凄腕のハッカーなんだ。知ったのは俺も最近だが」
尋問をあのままリナに任せると、外に出たライカンとアキラ、ツカサの三人はツインズ近くのモニュメント付近に集まっていた。
面倒な前置きは省き、ツカサはさっさと結論を言う。
アキラは苦い顔をして
「本当はレインの秘密を守ってやりたかったけど、そうも言ってられない状況になってしまったみたいだ。だから、治安局が絡んでくるなら、僕たちも困るって感じでね」
「なるほど。彼女がハッカーなのでしたら、誘拐もその能力に目を付けたゆえの行動である可能性が高そうですね。あそこの屋上は、何かを発信するにはうってつけですから」
「反乱軍とやらがまだ残っているのなら、まだ任務は終わってない可能性が高い、面倒なことや想定外なことが起きる前に、レインを助けたい」
ツカサの言葉にライカンは頷きつつ
「ヴィクトリア家政としてもそのつもりでございます。お二人とも、私は来る救出のために準備をいたします。後ほどご連絡をしますので、しばしお待ちを」
話にケリがついたところで、いったんその場は解散となる。
ついでにアキラと一緒にエレンの様子も気になったのでお見舞いに二人で向かうことになった。
アキラも棒付きキャンディを持ってきていたみたいだ、しばらくエレンは飴には困らないだろう。
二人はカリンの近くのベンチでスヤァしてるエレンのもとへ向かうと、それにカリンが気が付いて立ち上がった。
「プロキシ様、通りすがり様っ、来てくださったのですね」
「エレンが心配でね」
「カリンはケガとかない?」
「はい、私は大丈夫です。エレンさんも、体力を回復するために寝てるだけなんです。すぐに目を覚ますと思いますよ」
そう言って尻尾に負担をかけない姿勢でスヤスヤしているエレンへと視線を向ける。
普通に可愛い部類に入る彼女が寝ているだけでもかなり絵になる。
様になるね。
「エレンさんはとってもお強いんです。けど戦いに集中するあまり心身を消耗してしまうので…」
「なるほど。それで普段は省エネなわけだ。飴はエネルギーの補給代わりと」
「それもあるかもしれませんが、エレンさんは元々キャンディが好きなんだと思います」
とりあえずエレンのベンチの近くにアキラとツカサの持ってきたキャンディを置く。
するとたまたまなのか目覚めが近かったのかはわからないが、ぱちくりとエレンが目覚めた。
「───くあぁぁぁぁ…」
欠伸をして背伸びする。
「おはようエレン」
「ん。…おはよ」
寝ぼけまなこながらもエレンはきっかりツカサを視界に入れて返事をした。
「体調はどうだい?」
「だいじょーぶ。さっきはなんか眠かっただけだから」
アキラの言葉に目を軽くこすりながら言い返すと、近くに置いてあるキャンディに気が付いた。
「? カリンちゃんが買ってきてくれたの?」
「いえ、それはプロキシ様と通りすがり様がエレンさんのために持って来てくれたんです」
「あの時は助けてくれてありがとう」
アキラはそう言ってほほ笑んだ。
エレンはちょっぴり照れくさそうに
「別に。あれは止めないと面倒だなって思ったからやっただけ。礼なんていいよ。でもアメはもらうね。好きな味も入ってるし…センスいいね。はも」
そう言ってアメを咥えるエレン。
「にしても、こんな面倒な仕事だなんてボス言ってなかった。終わったらボスに残業代請求してやろ」
「悪いけどもう少し面倒なことになりそうだよ、エレン」
「?」
そう言ってツカサはレインのことをそのまま伝えた。
「友達が捕まってるんだ。確かに面倒なことになりそうだね。でもま、乗り掛かった舟だし、きっちりは仕事はしてあげる。ツカサのお店にも案内してよ」
「わかったよ。それじゃあ改めてよろしく、エレン、カリン」
「んー」
「はい、カリンも精一杯お手伝いしますねっ」
「さて、俺たちもいったん戻るか?」
「あぁ。こっちも準備をしておこう。早くレインを助けないと」
そう言ってエレンたちに手を振ってその場を離れ、二人は六分儀街に戻っていく。
星空の光が見守るように彼らを照らしていたのだった。