私の個性…か。
最初から全部話す…必要はないか。
実際に塚内さんにも全部話してないしな。
「私の個性…話すのはいいけど、その前に一つだけ確認」
「なんだ?」
「相澤さんさ…大体の見当がついてるんじゃない? なんか、それっぽいことを言ってたじゃん」
「一応な」
「言って貰っていい? 答え合わせしてやるよ」
「いいだろう」
ベッドの近くにある椅子にドカッと座りながら、相澤さんは溜息交じりに答えた。
「クロウの個性は…『他人の個性を覚える個性』…なんじゃないか?」
「…正解。お見事」
今思い返してみれば、割とヒントっぽいことは言ってたし、この人なら簡単に答えに辿り着けて当然か。
「他人の個性を覚える…!? そんな個性が!?」
「あるんだなぁ~…これが」
自分でも、この個性は相当なチートだと思う。
勿論、使い手次第ってのはあるけど。
「より詳しく説明すると、とある条件を満たすことで私は他者の個性を自動的に習得することが出来る。その際、必要な耐性や体内の機能なども自動的に組み替えられる」
「凄いな…で、その条件と言うのは?」
「一つは『他者の個性を目撃すること』。二つ目は『他者の個性を自分の体で受けること』。このどっちかの条件を満たすだけでいい。と言っても、流石に異形系の個性とかは無理だけど」
「『見る』か『受ける』か…ね。ん? ちょっと待て。それじゃあ、お前…」
「そ。もう既に私は相澤さんの『抹消』も使えるようになってるよ。さっきの軽い手合わせの時、何回か私に抹消を使ってたでしょ」
「確かにそうだが…『抹消』が効いてなかったのか?」
「いや? ちゃんと効果はあったよ。ただ、一時的に『抹消』を解除した瞬間、その『抹消』が自動習得された。一瞬でも時間があれば覚えるには十分だしな」
「とんでもないな…」
「まぁね。使えるようになったからと言っても、それで終わるわけじゃないけど。ちゃんと練習は必要になる」
「当然だな。習得した個性の発動にリスクなどはないのか?」
「ないね。仮にあるとすれば、その元々の個性に備わっているリスクぐらいかな」
「成る程…ちゃんとデメリットも同時に得るってことか」
「その通り。けど、それらはちゃんと分かる。個性習得時に、その個性の名前と長所、短所も同時に脳内に入ってくるから」
未だにその感覚だけは微妙に慣れない。
なんせ、脳内に強制的に知識がねじ込まれるわけだから。
最初の頃は何度も頭痛とかして大変だった。
「では…私の『個性』も、その個性で覚えたのか…。けど、一体どこで…? 少なくとも、クロウ君と会ったのは今日が初めてだし…」
「いや。普通に街中で覚えたけど」
「街中でっ!?」
「あぁ。オールマイトってさ、頻繁に街中でヴィラン退治してるだろ」
「ヒーローだからね。ってことは…その時に?」
「そ。今からー…三年ぐらい前になるのかな。私がマックで食事をしてたら、目の前の通りでオールマイトが暴れてるヴィランをぶっ飛ばしている光景を偶然にも目撃してさ。あの時は単に『わー凄いなー』ぐらいの感じで眺めてたんだけど…」
「ドラマチックも何もない…本当に偶然だったんだね…」
「ビックリしたよ。家に帰ってのんびりしてたら、急に知らない超パワーな個性を覚えてたんだから。必死に記憶を辿って、該当するのがオールマイトしかいないって思った瞬間、その個性の名前と特徴が全部脳内に流れ込んできた。今思えば、生まれて初めてだったな。他人の個性を覚えて罪悪感が出たのは」
ホント…とんでもない個性を覚えてしまったと、マジで頭を抱えたもんだ。
どう考えても私には似合わない個性なんだから。
「まさか…私の行動がそんなことになっていたのは…面目ない…」
「いや、別にアンタは悪くないから。これに関してはマジのマジで偶然だったんだ」
「はは…そう言ってくれるだけでも有難いよ…」
瘦せた状態でのオールマイトが落ち込むと、なんか逆に怖いな…。
お化け屋敷とかに出てきたら、そこらの女子は悲鳴を上げて逃げ出すんじゃなかろうか。
「しかし…そうなると、君はどんな立場になるんだ?」
「多分だけど、私は『二人目の初代』って形になるんだと思う。これさ…私もいずれは誰かに継承していかないといけないんだよな…。私の得た知識や経験とか、安易に渡していいのか…?」
「うーん…私は全然いいとは思うけどね」
他人事のように言ってくれちゃって。
私の人生なんて、約9割が黒歴史みたいなもんだぞ。
「ちょっと待ちな」
「リカバリーガール?」
今度はおばあちゃんかよ。
いきなりどうした?
「じゃあ、アンタは私の個性も覚えたってことなのかい?」
「まぁ…一応」
「そうかい…ま、アンタなら別に構わないか」
「いや…あんな小恥ずかしい個性、絶対に使わないからな?」
何が悲しくて、怪我人に口付けをして傷を癒さにゃいけんのだ。
私はそんなキャラじゃないだろう。
そもそも、医療の知識とは全く無いし。
「使う、使わないはアンタの自由。けどまぁ…アンタなら間違った使い方はしないだろうさ」
「そうかよ」
このばーさんも、どうして私のことを信用出来るかね。
雄英の教師ってのは、どいつもこいつもこんなんなのか?
「生徒たちの個性を使えたのも、それをお前が覚えたからか。けど、どうやって見た? あの時、あいつらはあの場にいなかっただろう」
「前に覚えた『千里眼』の個性を使った」
「千里眼?」
「うん。どこぞの物好きのバカが、千里眼の個性で私のことを覗いててさ。それで覚えた」
「…そいつはどうした?」
なんか…急に相澤さんが怖くなった?
ちょっと背筋がゾッとしたぞ。
「千里眼を覚えた直後に、逆に覗き返して住所とかを特定して、塚内さんに相談した」
「その覗き犯なら、クロウから通報を受けたその日の内に逮捕したよ。個性を悪用した質の悪い変態でね。今までは千里眼という個性の性質上、その犯行が明るみになることはなかったんだが…」
「クロウ君が千里眼を覚えたことで犯行が判明したということか」
「そういうことです。あの時…女性警官たちが異様に気合が入ってたな…こっちが怖くなるぐらいに…」
そりゃそうだろうな。
なんせ、相手は完全な女の敵だ。
あの時、色んな女性警官の人たちに心配されまくたっけ。
「お前…つくづくヴィランに不向きな性格してるな…」
「さよか」
別に私個人はヒーローにもヴィランにもなる気はねぇよ。
興味も無いしな。
「しかし…お前の『覚える個性』と『千里眼』…これ以上無い程に相性がいい組み合わせじゃないか?」
「それは私も自覚してる。だからと言って、変に悪用する気はないけど」
「「「それは分かってる」」」
三人揃って言うなし。
マジでなんなんだ…この男どもは…。
「一応言っておくと、私の個性にもちゃんとした固有名詞がある」
「何て名前なんだ?」
「『ラーニング』…それが私の個性の名前だ」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「クロウの個性については分かった。だが、他にも色々と聞きたいことがある」
「あいつらの事か」
「そうだ。勿論、話せる範囲で構わない」
「了解」
どうせ、話してもいいって先生には言われてるし、暫くはベッドの上から動けないし。
少しでも先生への嫌がらせをしてから帰ろう。
「あ。あの顔とかに手が一杯ついてた奴が『死柄木弔』で、あの黒い靄っぽいのが『黒霧』な」
「こっちが聞く前に話すな。調子が狂う」
「別にいいだろ。と言うか、あいつら普通に堂々と互いの事を名前で呼び合ってたし。秘匿もクソもないだろ」
「…そういや、そうだったな」
こういう時は普通、本名を隠してコードネーム的なので呼び合うもんだ。なのに、まるでいつもの調子で会話をして…お前らは一体何がしたいんだって話よ。
「あいつらの個性も話そうか?」
「いいのか?」
「構わねぇよ。どうせすぐにバレるだろうし」
それぐらい、あいつらの個性は分かりやすい。
特に死柄木のは。
「弔の個性は『崩壊』。五本の指で触れたものを例外なく全て崩壊させる個性。だから、普段は個性を封じる特殊な手袋をして生活してる。今日はしてなかったけど」
「相手の防御を無視できる個性か…五本の指と言う条件があるにしても、凶悪な個性であることには違いないか…」
普通はそう思うよな。
けど、だからこそ弱点も多いんだよ。
弔が私に変に突っかかってこないのは、その辺をちゃんと理解しているから。
「んで、黒霧の個性は…言うまでもないか」
「あのワームホールのような個性か」
「あぁ。敵連合唯一無二の移動手段。強力だけど…攻撃能力は低い」
「それでも厄介な個性には違いない。いつでも、どこでも侵入可能なんだからな。はぁ…頭が痛くなる…」
なら、後でばぁさんから頭痛薬でも貰っとけば?
「そして…お前とオールマイトが戦ってた、脳無とか言う異形の奴か。アレはなんだ? 明らかに普通じゃなかったぞ?」
「実際に戦った私から見ても、あいつからは人間らしい意志を微塵も感じなかった。まるで人形を殴っているような…そんな感じがしたよ」
「人形…ね。その感想は間違ってないよ」
これはー…言ってもいいか。
多分、私が脳無の事を話すのだって想定の範囲内だろうし。
「あいつは人工的に生み出された『改人』だからな」
「改人…だと…!?」
「そうさ。その作り方とかまでは流石に知らないけど、相当に胸糞悪い方法で製造してるのは間違いない。個性まで付与してるからな」
「『個性』を『付与』…!」
オールマイトが過剰な反応をした…。
やっぱ、気になるか…。
「どうやら、脳無の製造者のマッドサイエンティストのジジイが、科学的に個性を付与する技術を構築中なんだと。あれはその実験体の側面もある」
「そんなことが出来るのか?」
「理論的には可能らしい。前に話を聞いた時は、専門用語ばかりで頭がパンクしそうになったけど」
どうして科学者連中ってのは、素人にも分かりやすく説明しようという努力を怠るのかね…。
少しはこっちの気持になれっつーの。
「因みに、そのジジイの名前は分からない。私には『ドクター』とか名乗らなかったし」
「ドクター…か。それだけじゃ特定のしようがないな」
「顔も平々凡々って感じのジーさんだった。ありゃ、少しでも街中に紛れたら絶対に分からないな。そんな風に自分の顔を整形した可能性もあるけど」
変な所で用意周到なんだよな…あのジジイは。
マジで食えない性格してるよ。
「そう言えば、あいつはお前の『弟』とか言っていたが…あれはどういう意味だ?」
「え? 弟!?」
あー…それも聞いちゃうかー。
出来ればスルーして欲しかったなー。
「はぁ…相澤さん」
「なんだ?」
「ずっと前…私たちが初めて会った時、私が『昔の記憶がない』って言ったの…覚えてる?」
「あぁ…それがどうかしたのか?」
「あれね。後遺症なんだ。人体改造手術の」
「「「はぁっ!?」」」
男連中が揃って驚いた。
そりゃそっか。
塚内さんにも初めて話すしな。
「今から十年以上前…幼かった私は、金の為にドクターが裏で密かに募集していた実験の被検体に立候補した…らしい」
「らしい…と言うのは、覚えてないからか」
「うん。どうやら、記憶を失う前の私は、律義にもそれまでの自分に関することを全て日記に残してたみたいでね。手術後にそれを読んで全てを知ったんだ」
お陰で、実に素敵な過去を知ることが出来たけど。
「そこで…さっきの『親に捨てられた』というのと繋がってくるのかい…」
「そゆこと」
おばあちゃんまで悲痛な顔をしないでくれよ。
こっちの方が居た堪れなくなってくる。
「私はさ…二人いる脳無のプロトタイプの一人なんだ」
「二人…? もう一人は?」
「黒霧。あいつも私と同じ脳無のプロトタイプさ」
つまり、私と黒霧は兄妹みたいなもんってことか。
製造されたのは向こうが先らしいし。
「私が主に肉体面の改造を、黒霧は個性面の改造を施されたって聞いてる」
「クロウ君の、あの異常なパワーは…その改造のせいなのか…」
「その通り。逆に黒霧の方は個性の方に特化しすぎてるから、身体面じゃ割と弱い。下手したら、さっきの子たちにも圧倒されるかもしれない」
「そんなになのか?」
「そんなになのです。特に相澤さんは、完全に黒霧にメタれるでしょ。『抹消』で個性を封じれば、後はもう黒霧はボコボコにされるだけだし」
「それはいいことを聞いた。もし次に奴と対峙することがあれば、俺が相手をしてやろう」
あーあ…可哀そうに。
私が建てたフラグとはいえ、黒霧のフルボッコイベントが来るかもしれない。
当の本人は、自分と相澤さんとの相性の悪さを自覚してないっぽいけど。
「一応、身体能力面じゃ脳無よりも私の方が上らしいんだけど…」
「普通に苦戦してたな」
「体格が違いすぎたんだよ。オールマイトと戦うことを前提にしてるから、無駄にでかくなってるし」
同じ体格ならもうちょっと上手く立ち回れた…と思う。
今更言っても詮無きことだけど。
「そもそも、今回の襲撃だって本当は脳無を連れていく必要はなかったんだ。だって、脳無じゃ絶対にオールマイトには勝てないし」
「そう言われると…少し照れるね…」
いい歳したオッサンが照れるなし。
普通にキモイわ。
「これは私とドクターの共通見解なんだけど、どれだけオールマイトと同格のパワーを与えても、オールマイトにはこれまでの戦いの経験や知識がある。その差だけは何があっても絶対に埋めることはできない。だから、脳無をオールマイトにぶつけるって行為自体が最初か無駄だったんだよ。死柄木達は、そんなことに微塵も気付かず、脳無さえいれば万事全て上手くいくって信じて疑ってなかったみたいだけど。そもそも、今回の本当の目的は『雄英に侵入する』…その一点だけなんだ」
「そうか…そういうことか。『その気になれば、自分たちはいつでもどこでも、お前たちに襲撃を仕掛けられる』…そう思わせることが目的だったのか」
「普通ならば、単に警戒意識を上げるだけになると思われるが、実際には常に緊張状態に陥らせることで精神的疲弊を誘発させる…厄介だな…」
相澤さんと塚内さんが私の言いたいことを言ってくれた。
お陰で楽出来たわ。
「あと…もう一つある。それは『疑心暗鬼』にさせること」
「疑心暗鬼?」
「ここの教師たちの事だから、いずれはその結論に行き着くとは思うから、今のうちに言ってしまうけど…」
「『内通者』の可能性…か?」
「…気付いてたんだ」
「信じたくはなかったがな」
そりゃそうだろうな。
誰だって信じたくはないさ。
自分たちの中に裏切り者がいるかも…だなんて。
私が言っていいセリフじゃないか。
「今回の襲撃に関する話を聞いた時、うちのボスが言ってたんだ。『自分には友達がたくさんいる』ってさ」
「それは…明らかに誘導しているね」
「塚内さんの言う通り。間違いなく、私に雄英側の内通者の可能性を示唆させ、それを私の口から言わせるための発言だと思う」
「身内を疑うのは心苦しいが…」
「気持ちは分るよ。けど、これはいずれハッキリとさせないといけない問題だと思う。って、私が何言ってんだって感じか」
「いや…そうでもないさ。お前がハッキリと言ってくれたから、こっちもちゃんと考えることが出来る」
とことんまで私を責めないんだな…相澤さんは。
本当に…顔と性格が合ってない人だよ。
「その内通者が誰なのかまでは私には分からない。けど、それを絞り込むことは出来ると思う」
「その根拠は?」
「まず教師は有り得ないと思う。こと学校と言う場では教師という立場は余りにも目立ちすぎる。少しでも不審な動きを見せればすぐにバレるだろう。それがこの雄英ならば猶更だ。だって、ここにはプロのヒーローがいるんだ。生半可なことじゃ絶対に誤魔化せないだろ」
「確かにな。となると…」
「内通者は生徒の可能性が高い。生徒ならば数が多いから簡単に紛れ込めるし、いきなり一人ぐらい消えてもすぐには分からない。変な場所で見つかっても言い訳がし易いしな」
こんな話は、相澤さん達じゃなくて私のような人間がする方が聞き易いだろう。
本人たちだって、大事な生徒を疑うような真似はしたくはないだろうし。
「その生徒が洗脳されているか、もしくは脅されているかは分からないけどね。その可能性だけは頭の片隅にでも入れておいた方がいいと思う」
「…そうだな。覚えておこう。…すまんなクロウ。嫌な話をさせた」
「いや…寧ろ、謝るのはこっちの方なんだけど…。胸糞悪いことを言ってしまって…」
「気にするな。お前が言ったように、いずれはその可能性に行き着くんだ。それが早いか遅いかの違いだけだ」
「…そっか」
はぁ…なんか急に気が重くなった…。
やっぱ、こんな話は進んでするもんじゃないな…。
「ところであの時、俺を戦う振りをしたのも、奴らを誤魔化すためだったんだろ」
「急だな。…何故バレたし」
「俺を舐めるな。攻撃する振りだけして、俺に当てる気が全く無いのなんてすぐに分かった」
「流石はプロ。ああでもしないとあの二人が五月蠅いと思ったし、自然な流れで脳無をぶちのめす理由が欲しかった。今回、脳無は不必要な存在だった。侵入後に暴れたのだって死柄木達の独断に近かったしな。だから、本当は軽く倒してから、オールマイトが来る前に奴を持ち帰るつもりだったんだけど…」
「予想以上に苦戦した上に、結果としてオールマイトと共闘する羽目になったと」
「結果だけ言えばそうなる。それだけは完全に想定外。というか、一体誰が想像する? 天下のナンバー1ヒーローと即席のタッグを組むだなんて」
この展開が予想できた奴は、相当に頭がぶっ飛んでる奴に違いないな。
「私はよかったと思うけどね。こう言っちゃなんだが、凄く戦い易かったよ。あんな風に誰かと組んで…とか、本当に久し振りだったからね」
そういや、オールマイトって昔は『あの人』がサイドキックをしてたんだっけ。
今はヒーロー事務所をしてるらしいが…。
「今の話で思い出しだが、その脳無とやらは見つかったのかい?」
「いや…それがまだなんだ。相当数の警官を動員してるんだが…未だ発見には至っていない」
そりゃそうだ。
だって、ぶっ飛ばした直後に先生が個性で回収してたからな。
「私とクロウ君の全力の一撃だったからな…」
「そのまま大気圏までぶっ飛んで燃え尽きてたりしてな」
「有り得そうだから怖いな…」
割とマジで、あそこで先生が回収してなかったら脳無は大気圏で消し炭になってたかもな。
それぐらいの勢いで飛んで行ってたし。
「はいはい。話はそれぐらいにしておきな。一応、その子は怪我人なんだよ」
「一応て」
なんて微妙な判定…。
「私…ちゃんと今日中に帰れるのかな…」
「それはアンタ次第だよ。体力はあるみたいだから、後でもう一回私の個性を使っておこうか。そうすりゃ、今日中に帰れるかもね」
「またあれをするのか…」
同性とはいえ、地味に嫌なんだが…。
なんて言ったら、また怒られそうだから言わない。
「なんか長話してたら少し疲れた…寝る」
「そうしな。今はとにかく、休むことが大事だよ」
休むことが大事…か。
なんて真理を突く言葉。
感動しちゃうね。
「それじゃあな…クロウ。よく休めよ」
「言われなくても」
「お大事に。こっちも仕事に戻るよ」
相澤さんと塚内さんが保健室から出て行ってから、オールマイトがこっそりと私に呟いた。
「なぁ…クロウ君。私はね…思うんだ。今回…ヴィラン達は馬鹿なことをしたってね」
「………」
一応…私はもうお眠りモードに入ってるんですが…?
そんなことなど気にせずに話し続けてるし。
「意図したことじゃないとはいえ、生徒達も身を挺して戦った。こんなにも早く実戦を経験し、生き残り、大人の世界を…恐怖を知った一年生は今までいなかった。あの子たちはきっと…私たちの想像以上に強くなる…そう確信しているんだ」
「…そうか」
その言葉を最後に、私は眠りに落ちた。
起きたのは、それから二時間後の事だった。