闇なる鴉はかく語りき   作:とんこつラーメン

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幕間はここまで。

次回からは体育祭編に突入していきます。






こちら『鴉の何でも屋』

 次の日。

 私と被身子の二人は『本業』に勤しんで生活費を稼いでいた。

 

「えーっと…確か、さっき見た千里眼じゃ、この辺りに…」

「あ…あそこです! あの端の方にある土管の中!」

「ほんとだ。ま、あいつらは狭いところが好きだもんな」

「ですね。早く捕まえて、飼い主さんの所に連れて行ってあげましょう」

「だな。そんじゃ、さっさとやるか」

 

 今いるのは裏神野の一角にある公園。

 と言っても、殆どの遊具はぶっ壊れていて、唯一の遊具であるブランコもいつ壊れてもおかしくない劣化ぶりだ。

 何故か昭和のアニメに出てきそうな土管が置いてあるのが目印。

 今は、その土管の中身に用事があるのだが。

 

「どうやって捕まえます?」

「ま、挟み撃ちが妥当だろうな。幸い、飼い主のおっさんからはターゲットの好物は聞いて来てる。それを利用するぞ」

「はーい。けど…意外ですよね。こんなのが好物だなんて」

「世の中は広いからな。趣味嗜好がそれぞれなのは、何も人間だけとは限らないってことだろ」

「そうですね」

 

 私は右側から、被身子は左側から気配を殺して回り込み、そっと中を除く。

 暗くてよく見えにくいが、土管の中で悠々と座っている小さな影が。

 

「みゃ~」

「お…いたいた。ほ~ら…お前の大好きな竹輪だぞ~」

「こっちにもありますよ~」

 

 鳴き声でもう分かったと思うが、私たちが追いかけているのは一匹の猫。

 飼い主から捜索願が出されて、私たちが捕まえるために頑張っているってことだ。

 

「みゃ?」

 

 お? 反応したか?

 果たして、私と被身子…どっちに来るか…。

 多分、被身子の方だな。

 ほら…自分で言うのもあれだけど、私って割と怖い外見してるし。

 

「え?」

 

 おま…ちょ…マジかよ…。

 真っ直ぐにこっちにやって来たんだが?

 

「にゃ」

「お…っと…」

 

 そのまま、私が手に持っていた竹輪を加えて、腕の中にダイブ。

 もうちょっと騒がしい大捕り物になると思ってたんだが…想像以上にあっさりと捕まえられたな…。

 

「あー…被身子? なんか普通に捕まえた…」

「ホントですね。ほわぁ~…さっきは暗くて分からなかったけど、目がクリっとした黒猫ちゃんだぁ~…♡ かぁいぃですねぇ~♡」

「まぁ…な…」

 

 この猫…さっきからずっとこっちを見ながら竹輪食ってるし…。

 その目やめろ…屈服しそうになる…!

 

「ひ…被身子…依頼人に連絡…無事に捕まえたから、今から届けに行くって」

「分かりました」

 

 一刻も早く届けないと…マジで猫が飼いたくなりそうだ…。

 世に猫の動画が蔓延るのも納得だわ…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 猫を飼い主に届けた帰り道。

 私たちは表神野にあるコンビニで小休止をしながら、次の予定の確認を行っていた。

 

「さっきの猫ちゃん、ちゃんと届けられてよかったですね~」

「そうだな。変に私たちが入れないような狭い場所に潜り込まれなくて助かった」

「ある意味、土管も狭い場所ではありますけど、他よりは対処しやすいですしね」

「あぁ。不幸中の幸いだ。で、次の依頼はなんだったか…」

 

 私の質問に、被身子はポケットの中からメモ帳を取り出して答えてくれた。

 

「次はー…お引越しの依頼ですね。なんでも、また新しく『裏』に来た人がいるみたいですよ?」

「マジか。この間も一人来てなかったか?」

「来てましたね。なんか最近…というか、今年になって多くなってきてません? 前は一年に一人いればいい方だったのに…」

「今年に入ってもう五人目だもんな。それだけ世の中がヤバいことになってきてるって証拠かもな」

「嫌ですねぇ…」

「確かにそうだが、ここで呟いてても仕方ないさ。このアイス食べ終えたら、その引っ越しの依頼の所に行くぞ」

「はーい。あら?」

 

 被身子が元気に返事をしたのと同じタイミングで、私のスマホに着信が来た。

 

「もしもしもしもし? こちら『鴉の何でも屋』のクロウでーす。どんなご依頼ですかー?」

『あ! クロウちゃん!? 俺だよ! 俺オレ!』

「…生憎とオレオレ詐欺は間に合ってるんで。そんじゃ」

『わー! 後生だから切らないでー!』

「ったく…一体何の用だよ…ホークス」

 

 新進気鋭の若手ヒーロー。

 現在ナンバー3の公安所属ヒーロー『ホークス』。

 別名『速すぎる男』。

 前に、とある事件を切っ掛けに知り合いになってしまい、半ば強制的に番号交換をさせられ、それからそこそこの間隔で私にこうして電話をしてくる。

 こいつの活動拠点って福岡じゃなかったっけか?

 

『実は今、CM撮影で神野に来ててさー…よかったら、これから食事でもと思って…ね?』

「残念でした。生憎とこっちも只今絶賛仕事の真っ最中なんだわ。普通に被身子も一緒だから。ってことで、食事の約束はまた今度ってことで」

『え? 被身子ちゃんも一緒なの? こっちは別に彼女も一緒でも全然構わないよ? 可愛い女の子二人と一緒に食事が出来るだなんて、男冥利に尽きるってもんだよ』

「そのまま命尽き果ててくれ」

『あはは…相変わらずだなぁ~…。こんなにも積極的にアプローチしてるのに、全く靡く様子がない』

「当たり前だ。私はお前みたいなチャラ男君は好みじゃないんだよ」

『え~? 俺ってそんなにチャラチャラしてるかな~?』

「してる。この私を振り向かせたければ、せめてスーツとネクタイが似合う男になってから出直してこい」

『スーツとネクタイ? もしかして、クロウちゃんの好みってそういう…?』

「さぁな。つーか、まさか…こんな話をするために掛けてきたんじゃあるまいな?」

『いや? 普通に仕事前に愛しのクロウちゃんの声が聴きたかっただけだけど?』

「死ね!!!」

『少なくとも、クロウちゃんを俺のお嫁さんにするまでは死にませーん』

「…前から思ってたが…お前…年上趣味なのか?」

『年上って言っても、たったの一歳差でしょ? より正確に言うと数か月差。そんなの誤差だよ』

「ああ言えばこう言う…」

『それが俺の数多い取り柄の一つだから』

「そこはせめて『数少ない』って言え」

『俺さ…嘘がつけない体質なんだよね』

「嘘つけ」

 

 公安にいる時点で嘘だらけじゃねーか…。

 自分でも自覚してる癖に…。

 

『あ…そろそろマジで撮影始まるや。それじゃクロウちゃん、まったね~。あと、出来れば俺の出演するCMも見てね~』

 

 あ…切やがった。

 どこまでもこっちを振り回しよってからに…はぁ…。

 

「今の…もしかしなくてもホークスさんですか?」

「あぁ…あの鳥野郎だ」

「あの人も懲りないですね~。またクロウちゃんをナンパしてきたんですか?」

「仕事前に私の声が聴きたかったんだと。福岡からわざわざ神野まで来て、CMの撮影をするんだとよ」

「へ~…ナンバー3ともなると、ヒーロー活動以外にも色んなことをしてるんですね~」

「オールマイトも、色んな番組やCMに出まくってたしな…」

 

 一時期は、テレビでオールマイトを見ない日がなかったぐらいだ。

 どのチャンネルにしても、あの暑苦しい顔を見る羽目になってた。

 そんな時はテレビを消して昼寝してたけど。

 

「ホークスの馬鹿が変なタイミングで電話してきたから、休憩が長引いてしまった。急ぐぞ」

「はーい。アイスならもう食べ終えてまーす」

 

 因みに、私もちゃんと食べ終えてる。

 ホークスとの会話に夢中でアイスを溶かすだなんて馬鹿な真似はしない。

 

「じゃ、行くか」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 引っ越しの依頼自体は、文字通りあっと言う間に終わった。

 何故なら、私が覚えた数多い個性の中に、引っ越しに抜群に相性がいいのがあるからだ。

 

「あの依頼主さん、あまりの作業の早さに目が点になってましたね」

「普通は思わないだろうしな。あんな風に荷物を運ぶだなんて」

 

 自慢じゃないが、これに関して言えば、そこらの業者よりも圧倒的に作業を終わらせられる自信がある。

 

「本当にこんな時は便利ですよね~。クロウちゃんが覚えてる『縮小化』の個性」

「まるで、こんな時の為にあるような個性だよな」

 

 縮小化。

 私の爪で傷つけた物体を例外なく小さくする個性。

 有機物、無機物関係なしに発動できるので、想像以上に使い勝手は抜群だ。

 

「お礼にってお菓子とジュースまで貰っちゃいましたね」

「ちょっと得したな。今日の仕事が全部終わったら、これ食べるか」

「さんせ~!」

「んで、次は?」

「え~っと~…次のお仕事はですね~…黒霧さんからですね」

「え? あいつ?」

 

 確かに、プライベートでも付き合いはあるが…まさか、あいつから依頼が来るとは…。

 

「…内容は?」

「バーの排水溝の調子がおかしいので見てほしいってのと、後は床板の補修」

「ふ…普通だ…!」

 

 普通過ぎて、逆に怪しんでしまう…。

 これなら『弔のゲームの相手をしてほしい』って言われた方が、まだすんなりと受け入れられる…。

 

「黒霧さん言ってましたけど、本当に困ってるみたいですよ?」

「はぁ…あいつもアイツで中々の苦労人だしなぁ…」

 

 敵連合唯一の母性(誤字に非ず)だしな。

 あいつがいなかったら、間違いなく弔はコンビニ飯ばっかり食ってただろうし、あのバーもゴミ溜めみたいな場所になってたに違いない。

 私も被身子もプライベートで世話になってるし…。

 

「…行ってやるか」

「ですね。因みに、次ので今日のお仕事は終わりです」

「りょーかい」

 

 ついでだし、仕事終わりに黒霧に何か飲み物を作ってもらおう。

 また何か新作を開発してるかもしれないし。

 

「にしても排水溝か…何か詰まってるのか?」

「ほっとくと、あっと言う間に髪の毛とか詰まっちゃいますもんね~」

 

 うーん…いつの間にか色んな知識と技術が増えていく私たち…。

 これはこれで生活の役に立つのでいいけど。

 

「「ん?」」

 

 プルルルル…プルルルル…。

 本日二回目の着信。

 今度は誰だ?

 

「もしもし? こちら『鴉の何でも屋』~」

『クロウか?』

「あ…相澤さんッ!? なんで私の携帯にッ!?」

 

 完全予想外の相手に、思わず変な声が出てしまった。

 なんで、相澤さんが…?

 

『この前の襲撃事件の際に、塚内さんからお前の携帯の番号やらアドレスやらを教えて貰った』

「あの人は~…!」

 

 個人情報保護法ってのを知らないのか…!

 今度会ったら絶対に文句言ってやる…!

 

『その際に興味深い話を聞いたんだが…お前、何でも屋をやってるんだってな?』

「それも聞いてるんだ…そうだよ。今日もその何でも屋家業を頑張ってたところですよー」

『病み上がりなのに、お前も大変だな』

「生活の為だからな。それに、プロヒーローと教師を兼任してる相澤さんには負けるよ」

『そう言ってくれるのは、お前ぐらいだよ…』

「マジで?」

 

 もっと色んな人が言ってくれそうなもんだが…。

 

『話が逸れたな。それでだな、実は何でも屋としてのクロウに仕事を依頼したいんだ』

「それはー…相澤さん個人の依頼? それとも…」

『雄英高校からの依頼だ。報酬は期待してくれていい』

「マジか…あんなことがあった直後に私を呼ぶって…どうなってんだ…」

『それだけ、あの戦いでお前が得た信頼は大きいということだ。それで、依頼の事なんだが…』

「はいはい。なんでしょうか? 犯罪じゃなければ、基本的に何でもお引き受けしますよ~」

 

 雄英からってのがちょっと嫌な予感がするが…まぁ…クソ面倒なのではないだろう…と希望的観測をしたい今日この頃。

 

『二週間後に開催される『雄英体育祭』で警備をしてくれないか?』

「…………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うことで、見る立場になりますが、クロウと被身子の体育祭参加フラグが立ちました。

そして、体育祭と言うことは、色んな人物とも出会うことになるわけでして…。



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