『絶頂の守護者(ガーディアン) ―「イクイクの実」という最悪を授かった転生者は、不退転の努力で神域の覇道を行く―』 作:微糖コーヒー
1. オレンジの町の静寂
「……静かすぎるな」
オレンジの町の港に小舟を寄せたアルスは、独りごちた。
潮風に乗って漂ってくるのは、火薬の匂いと、どこか不自然に明るいサーカスの音楽。
町民の姿はなく、家々は固く扉を閉ざしている。
「おいルフィ、勝手に走り出すな。……ゾロ、お前はまだ寝てろと言っただろ」
「……フン、これくらいの傷、歩けば治る」
腹部に包帯を巻いたゾロが、無理やり立ち上がる。アルスの『神経整体』のおかげで、本来なら動けないはずの重傷が、すでに「酷い筋肉痛」程度の感覚にまで和らいでいた。
「ししし! 冒険の匂いがするぞ! 行こうぜ!」
ルフィが鼻を鳴らし、町の中心部へと突き進む。
そこで一行を待っていたのは、無惨に荒らされた広場と、不気味な赤鼻を光らせる一人の男だった。
「ハ~ハハハ! この俺を待っていたのか、野郎共! 派手に死ぬ準備はできてるか!?」
バギー海賊団船長、"道化のバギー"。
彼は屋根の上に陣取り、周囲には大砲を構えた部下たちが取り囲んでいる。
その中には、縛り上げられた少女──ナミの姿もあった。
「助けて! 私はこいつらの仲間じゃないわ、泥棒よ!」
ナミが叫ぶ。ルフィは首を傾げ、ゾロは刀の柄に手をかける。
アルスだけは、冷徹な視線でバギーの「身体」を観察していた。
(バラバラの実の能力者か……。パーツを切り離せるということは、神経系も断続的に繋ぎ直されているということか。面白いな)
2. 絶望のサーカス
「おい、バギーとか言ったか。その子を放せ。それと、この町から出ていけ」
アルスが一歩前に出る。
バギーは顔を真っ赤にして(元からだが)激昂した。
「あぁん!? 誰に口を利いてるんだ、この小僧! 俺はかつて『海賊王』の船で……いや、それはいい! 派手にこいつをぶっ放せ!」
バギーの合図で、巨大な特製マギー玉が大砲から放たれる。
轟音と共に炎が渦巻き、民家が一軒、跡形もなく吹き飛んだ。
「ひゃははは! 見ろ、これが俺の派手な力だ!」
高笑いするバギー。しかし、煙の中から現れたルフィは、膨らんだ体で砲弾を跳ね返していた。
「効かねェぞ、ゴムだからな!」
「な、なんだと!? ならば……これならどうだ!」
バギーの体がバラバラになり、空中からゾロを強襲する。
背後からの不意打ち。だが、それを防いだのはゾロの剣ではなく、アルスの「視線」だった。
「──無駄だと言っている。『感覚過敏(センス・ボム)』」
「……っ!? ぎ、ぎゃああああっ!?」
空中に浮いていたバギーの手足が、突如として激しくのたうち回り、地面に墜落した。
バギーは自分の体を抱え込み、広場の石畳の上で転げ回る。
「あ、熱い……!? いや、なんだこれ、指先が……耳の後ろが……っ! あ、あひ、あははははッ!!」
バギーは笑いながら泣き、泣きながら絶頂していた。
アルスは彼の各パーツを繋ぐ「神経の接合部」に、ピンポイントで過剰な快楽パルスを送り込んだのだ。
「バラバラになれるということは、各部位の感覚が独立して脳にフィードバックされるということ。……つまり、普通の人間より『数倍』、俺の能力の感度が良いということだ」
「や、やめろ……派手に、派手に気持ち良すぎる……っ! 俺のプライドが、バラバラになっちまう……!!」
かつての海賊王の船員という輝かしい(自称)経歴を持つ男が、部下たちの前で、よだれを垂らしながら身をよじらせている。
部下たちはその無様な姿に戦慄し、次々と武器を落として逃げ出した。
「アルス……お前の戦い方って、いつ見てもエグいわね……」
解放されたナミが、引きつった笑いで呟く。
「……掃除だよ。ゴミは、ゴミらしく処理しないとな」
アルスはバギーの頭部(パーツ)をひょいと持ち上げると、その至近距離で「最悪の微笑み」を浮かべた。
「バギー。お前の部下たちが盗んだ宝、すべて返してもらうぞ。……拒否すれば、お前の脳内の報酬系を完全に焼き切って、一生『自分の鼻を触るだけで絶頂する体』に変えてやってもいいんだが?」
「ひ、ヒィィッ! 全部返す! 全部持ってけ、この悪魔!!」
3. 深夜の治療と「性欲処理」の代行
一件落着し、ナミが暫定的な航海士として加わったその夜。
一味は町外れの空き家で休息を取っていた。
「……おい、アルス。さっきからナミの様子がおかしいんだが」
ゾロが、部屋の隅で顔を赤くして震えているナミを顎で差した。
彼女は、戦いの中でアルスの能力が漏れ出した「余波(バックラッシュ)」をわずかに浴びていたのだ。
一般人である彼女にとって、アルスの漏れ出た覇気と能力の残滓は、精神的な昂ぶりを抑えられなくなる副作用を持っていた。
「……ナミ、こっちに来い。ケアが必要だ」
「な、なによ……。私は大丈夫よ、ただ少し、体が熱いだけで……っ」
強がるナミだったが、その瞳は潤み、呼吸は荒い。
アルスは無言で彼女の手首を掴み、奥の部屋へと連れて行った。
「おい、ゾロ。覗こうなんて思うなよ。……これは『医療行為』だ」
「……ケッ、興味ねえよ」
部屋の中。アルスはナミをベッドに座らせ、背後に回った。
能力を極限まで精密に制御し、彼女の過剰に昂った神経を「鎮静」させる作業に入る。
「……あ、ん……アルス、何してるの……」
「余分な熱(ストレス)を逃がしているだけだ。……少し、変な感覚がするかもしれないが、すぐに楽になる」
アルスの指がナミのうなじを優しく撫でる。
イクイクの実の能力。それを「攻撃」ではなく「解放」に使う。
溜まったストレス、恐怖、性的な昂ぶり。それらを一気に、だが優しく「抜く」。
ナミの体から力が抜け、彼女は心地よい気怠さ(ポスト・オーガズム・リラックス)の中に沈んでいった。
「……ふぅ。……最低ね、あなた。こんなことまでできるなんて」
「……生きていくための知恵だよ。寝ろ、ナミ。明日は忙しくなる」
ナミの額にかいた汗を拭い、アルスは部屋を出た。
廊下では、ルフィが腹を空かせて寝言を言っている。
アルスの役割は、ただ戦うことではない。
この危ういバランスの海賊団を、精神的にも、肉体的にも「維持」すること。
たとえその手段が、どれほど淫らで、どれほど残酷なものであったとしても。
「……さあ、次はシロップ村か。……あそこの『クズ』も、存分に可愛がってやるとしよう」
闇夜の中、アルスの瞳だけが、獲物を狙う猛獣のように冷たく光っていた。
次回予告
嘘つき少年の村。
執事の仮面を被った暗殺者を待つ、絶頂の処刑