​『絶頂の守護者(ガーディアン) ―「イクイクの実」という最悪を授かった転生者は、不退転の努力で神域の覇道を行く―』   作:微糖コーヒー

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第4話:百計の残響と、壊される仮面

 

 

 1. 平穏な坂道の影

 

 「シロップ村、か。長閑なところだな」

 

 カヤの屋敷へと続く緩やかな坂道を歩きながら、アルスは呟いた。

 

 横ではルフィが「ウソップ海賊団」を自称する少年相手にケラケラと笑い、ゾロは相変わらず不機嫌そうに刀を抱えている。

 

 だが、アルスの「見聞色」は、この穏やかな空気の裏側に潜む「腐敗臭」を敏感に感じ取っていた。

 

 屋敷の門前に立つ、黒いスーツの男。

 

 執事、クラハドール。

 

 その丁寧な物腰、眼鏡を直す独特の手つき、そして──何よりも隠しきれない、獲物を狙う冷徹な神経の昂ぶり。

 

 (……あれが「百計のクロ」か。三年間も牙を隠して、他人の慈悲に寄生する……。虫唾が走るな)

 

 アルスは、自分の指先を無意識に動かした。

 

 神経を弄る準備は、すでに整っている。

 

 2. 仮面の剥離

 

 物語は急速に加速する。

 

 海岸での密談を盗み聞き、ウソップの嘘が「真実」へと変わる夜。

 

 クロ一味の襲撃が始まった。

 

 「いいか、野郎共。計画通りに屋敷を襲え。カヤを殺し、遺産を奪う。……邪魔をする者はすべて消せ」

 

 クロが十徳ナイフの爪を光らせ、冷酷に命じる。

 

 だが、その影から一人の青年が歩み出た。

 

 「計画、ね。……お前のその汚い『百計』、俺が今ここで、生理的に書き換えてやろうか?」

 

 アルスだ。

 

 彼はルフィやゾロが雑兵を引き受けている隙に、単独でクロの前に立った。

 

 「……誰だ。部外者は死ね」

 

 クロが超高速移動術「抜き足」で姿を消す。

 

 常人には捉えられない速度。だが、アルスの「見聞色」は、クロの体内で激しく脈打つ「殺意のパルス」を正確にトラッキングしていた。

 

 「速いな。だが、お前の『脳』は止まったままだぞ」

 

 アルスは空を見上げ、独り言のように呟いた。

 

 「──『共鳴絶頂(レゾナンス・バースト)』」

 

 「──っ!? ぐ、あああああッ!!」

 

 突如として、何もない空間からクロが弾け飛ぶように現れ、地面を転がった。

 

 彼の全身の毛穴から冷や汗が吹き出し、四肢が不自然なほど激しく硬直している。

 

 「な、なんだ……!? 指先が動かん……いや、背骨に雷が落ちたような……っ! あ、あひ、あ、あああッ!!」

 

 クロは眼鏡を飛ばし、鼻水を垂らしながら、自らの喉を掻きむしった。

 

 アルスが仕掛けたのは、クロの「抜き足」による過度な集中状態を逆手に取った、感覚のオーバーロードだ。

 

 研ぎ澄まされた神経に対し、致死量の一歩手前の快感を直接叩き込む。

 

 それは鋭い刃で脳を愛撫されるような、逃げ場のない暴力。

 

 「三年間、お前に優しくしてくれた令嬢を殺そうとしたその指先だ。……まずは、二度と武器が握れないように『快感の記憶』を焼き付けてやろう」

 

 「やめ……やめてくれ……っ! 誇りが……俺の……あ、あああああッ!!」

 

 東の海で恐れられた知略家が、部下たちの前で失禁し、胎児のように丸まって震えている。

 

 アルスはその頭を、冷徹に踏みつけた。

 

 「お前のようなクズには、死は救済だ。……だから、死なせない。お前はこれから一生、誰かに殺意を抱くたびに、この屈辱的な絶頂がフラッシュバックする体に変わるんだ」

 

 3. 船内の「処理」と「絆」

 

 カヤから「ゴーイング・メリー号」を譲り受け、ウソップを仲間に加えた一行。

 

 新しい船での最初の夜。

 

 「……ふぅ。これで少しは広くなったわね」

 

 ナミがサロンのソファで、どっと疲れを吐き出す。

 

 だが、彼女の顔はどこか赤い。シロップ村での激闘中、アルスの能力の余波を再び浴びてしまったのだ。

 

 それだけではない。船内にはもう一人、精神的に限界を迎えている者がいた。

 

 「……アルス。……俺の、この震えも止まるのか」

 

 ウソップだ。

 

 初めての命懸けの戦い。恐怖と興奮が入り混じり、アドレナリンが過剰に分泌されたままで、彼の自律神経はパンク寸前だった。

 

 「……まとめて面倒を見てやる。ナミ、ウソップ。こっちへ来い」

 

 アルスは二人を医務室(兼、彼の整体室)へと呼び込んだ。

 

 「ウソップ、お前はこっちだ。……恐怖を『安心』に書き換えてやる」

 

 アルスの指先がウソップのこめかみに触れる。

 

 微弱なパルス。イクイクの実の能力による、強制的なリラクゼーション。

 

 ウソップの目から涙が溢れ出し、緊張が溶けていく。

 

 「……あ、ああ……。なんだこれ……すげぇ、落ち着く……」

 

 ウソップが眠りに落ちるのを見届け、アルスはナミに向き直った。

 

 彼女はすでに、潤んだ瞳でアルスを見つめている。

 

 「……ナミ。お前はもう、慣れただろ」

 

 「……誰のせいだと思ってるのよ。……さっさと、楽にして」

 

 アルスはナミの腰を引き寄せ、彼女の神経節に直接アプローチした。

 

 これは性欲の処理ではない。船員としてのパフォーマンスを維持するための、アルス流の「メンテナンス」だ。

 

 ナミの短い悲鳴が、医務室の静寂を揺らす。

 

 その後、彼女の体は完全に弛緩し、アルスの胸に顔を埋めたまま、静かな寝息を立て始めた。

 

 「……やれやれ。俺は海賊団の副船長なんだか、ベビーシッターなんだか……」

 

 アルスは独りごち、二人に毛布をかけた。

 

 甲板からは、ルフィの笑い声と、ゾロが刀を振るう音が聞こえてくる。

 

 光の中を行く者と、その闇を掃除し、影で支える者。

 

 ゴーイング・メリー号は、次の目的地、洋上のレストラン「バラティエ」へと舵を切る。

 

 「……次はサンジか。……あいつの『騎士道』、俺の能力でどう変わるか楽しみだ」

 

 アルスの口角が、わずかに吊り上がった。

 

 

 





 【次回予告:洋上のレストラン、バラティエ。騎士道の料理人を襲う、史上最大の誘惑】
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