[一部完結]戦闘不能のD級覚醒者、ダンジョンで198円のバジルを育てる 〜能力は「土いじり」だけ。10センチの土壁で推し(苗)を守る配信が、疲れた世界をそっと癒やしていく〜   作:AI teller

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第8話 初見さんいらっしゃい 100万再生と韓国からの警告

月曜日の朝。通勤電車の中でスマホを開いた。

 

 切り抜き動画の再生数が、100万回を超えていた。

 

 思わず目を見開いた。50万からわずか2日で倍。日曜の夜に海外のSNSで紹介されたのが引き金らしい。

 

 コメント欄には英語、韓国語、中国語が氾濫している。DunCastの自動翻訳機能がなければ、とても追いきれる量ではなかった。とはいえ訳されてても追いたいと思える量じゃないが。

 

 Twitterの通知は3,000件を超え、通知機能をオフにしている。スマートフォンのバイブレーションが鳴り止まない。

 

 指が震える。俺は取材を受けたいわけじゃない。15万人の歓声が欲しいわけでもない。ただ、バジルに水をやりたいだけなのに。

 

 出社して、経費精算のExcelを開いた。

 

 けれど、数字が全く頭に入ってこない。

 

 100万回。D級覚醒者がダンジョンで植物を育てるだけ動画に、それだけの価値があるのか、俺にはわからない。

 頭の中を支配する「1,000,000」という無機質な数字が、セルの「108,000」と混ざり合う。

 

「柏木さん、もしかしてDunCastの『つちのこ先生』って……」

 

 隣の席の田中が、声を潜めて話しかけてきた。

 

「……なんで、知ってるの」

 

「うちの嫁がファンでさ。回ってきた切り抜きを見てあってなって。」

 

「あー……お願い。誰にも、黙っててくれないかな」

 

「もちろん。職場じゃ俺だけの秘密にしとくよ」

 

 田中はいい奴だ。普段から経費精算のフォローをしてくれるし、こういう時の空気の読み方も早い。

 

 けれど、彼のような「普通の人」にまで情報が届いている事実に、背筋が少し寒くなった。

 

 †

 

 水曜日。JDAの澤村さんからメッセージが届いた。

 

『土曜の配信、注意してください。切り抜きの影響で新規視聴者が激増するはずです。管理局にも問い合わせが殺到しています。テレビ局2社、ネットメディア5社。取材依頼はすべてこちらで止めておきますが、いいですね?』

 

『はい、全部断ってください。』

 

『承知しました。柏木さんの許可なく取材は受けません。「庭の平穏を守る」のが僕の使命ですから。』

 

 さらに、澤村さんはこう続けた。

 

『三島さんから伝言です。「動画の拡散は把握している。特に対応は不要。今まで通りに」とのことです。』

 

 今まで通り。安堵と不安の混ざり合った冷たい熱となって足元を伝っていく。

 

100万回再生という濁流の向こう側に、あの静かな6畳半の庭を「今まで通り」置いておけるのだろうか。その距離感が、どうしても掴めなかった。

 

 金曜日の夜。田中から電話がきた。

 

「柏木さん。約束通り、嫁には秘密にしてる。でも、嫁が『つちのこ先生の新しい切り抜き、超癒やされる!』って興奮して隣で見せてくるんだ。……正直、めちゃくちゃ言いたい。俺の同僚自慢したい。」

 

「ごめん」

 

「いや、いいんだ。俺も実はバジ太郎を応援してる。……頑張れよ、庭師」

 

「……ありがとう」

 

 100万人の視線は、まだ怖い。

 けれど、田中のような「知っている誰か」の応援は、不思議と温かかった。

 

 明日は、土曜日だ。

 

 100万人の咆哮が響く世界から離れて、俺は俺の庭へ帰る。

 

 †

 

 土曜日。ゲートをくぐる前に、一度だけ深く、肺が痛くなるほど空気を吸い込んだ。

 

 C-7に入り、いつもの手順で庭を確認する。何人が見ていようと、まずは植物を見る。人間を見る前に、土を見る。それが俺の、唯一の防壁だ。

 

 バジ太郎。

 もう本葉が七節目ななふしを越えた。カケルたちに「おやつ」として上の葉を摘んでいるのに、摘んだ脇から新しい芽が2つに分かれて溢れ出している。198円の苗だった頃の面影はない。今はもう、力強い「株」としてそこにいた。

 

 トマ次郎。

 実は5センチ。先週から如実に成長が加速した。まだ硬い碧色だが、花は三つに増えている。

 

 ミン三郎。

 30センチに高くした壁を越えるのは諦めたらしい。代わりに、壁に沿って横へ横へと領土を広げる「迂回作戦」に出ている。この強かさは、誰に似たんだろうか。

 

 ラベ四郎。

 黄色い葉が落ち、その付け根から柔らかな新芽が2枚、顔を出していた。根付いたんだ。毒舌キノコさんの「魔力引き抜き」のアドバイスが、確かに効いた。

 

 先週作った石のベンチに座る。

 硬くて、冷たい。

 その感触だけが、俺を「100万回再生」という浮ついた数字の世界から、現実へと繋ぎ止めてくれた。

 

 震える指で、配信開始ボタンを押す。

 

「……ダンジョン庭いじり配信を開始します」

 

 画面の隅にあるカウンターを見た。

 数字が、壊れた計器のように跳ね上がっていく。

 

「視聴者数が……えっ」

 

「……500人を超えました。600。まだ増えてます。700。えっと」

 

(Comments)

【初見です1】初見です!切り抜きから!

【初見です2】初見!!

【初見です3】これがつちのこ先生か

【初見です4】初見です。海外の友達に教えてもらいました

【常連A】うわ、人多い

【初見です5】初見です!バジ太郎見に来ました

【初見です6】初見!ダンジョンに庭って本当なんだ

【初見です7】初見!トマト見せて

【毒舌キノコ】……すごい勢いだな

【初見です8】切り抜き100万回の人だ!

【gardenFan_03】コメント速すぎて読めない

【初見です9】初見です

【初見です10】初見!

【GreenThumb】Welcome, everyone. Take a seat. There's room in the garden.

(皆さんようこそ。座ってください。庭には場所がありますよ)

 

「あ、ありがとうございます。みなさんようこそ。えっと、800人を超えました。こんな人数は初めてで。手が震れてます。すみません」

 

(Comments)

【初見です11】かわいいw

【初見です12】緊張してるのいいね

【初見です13】D級ってマジ?戦闘力ないの?

【初見です14】庭いじりで800人集めるD級

【常連B】落ち着いてつちのこ先生!いつも通りで!

【カンナ先輩】深呼吸してください!

 

「はい。深呼吸。すう。はあ。大丈夫です。いつも通りやります」

 

「まず庭の紹介から。初見の方向けに。ここはダンジョン『新宿御苑跡』のセーフエリアC-7。6畳半の空間。数ヶ月前から庭を作ってます。D級覚醒者の俺に戦闘はできないので、代わりに土をいじってます」

 

「住人を紹介します。中央のバジルがバジ太郎。198円。隣のトマトがトマ次郎。248円。奥のミントがミン三郎。158円。手前のラベンダーがラベ四郎。128円。全部近所のスーパーの苗です」

 

(Comments)

【初見です15】名前www

【初見です16】ネーミングセンスwww

【初見です17】全部で700円ちょいの庭

【初見です18】D級のくせにイキってんな

【初見です19】所詮庭いじりだろ。ダンジョン攻略しろよ

【常連A】おい

【毒舌キノコ】黙って見ろ。話はそれからだ

【初見です20】トマトの実は?

【gardenFan_03】荒らしは無視で

 

「トマ次郎の実、見せますね。カメラ寄せます」

 

(Comments)

【gardenFan_03】一気に大きくなったな

【初見です16】すげー!

【初見です19】それがどうした。トマトなんてスーパーで売ってるだろ

【毒舌キノコ】スーパーのトマトはダンジョンの中で育ってない。区別のつかない人間は帰れ

【GreenThumb】This fruit is growing in a space where no plant has ever survived before. (この実は、これまでいかなる植物も生き残れなかった場所で育っています。)

 

「GreenThumbさん、ありがとうございます。初見の方にはわかりにくいかもしれないけど、ダンジョンの土壌は一般植物にとって致命的な環境です。D級ですが、せっかく土壌操作スキルを獲得したのでためしています」

 

(Comments)

【初見です24】なるほど。すごいことなのか

【初見です19】D級が偉そうに

【カンナ先輩】偉そうにしてるんじゃなくて事実を説明してるだけですよ

【常連B】常連ナメんな

【初見です25】古参怖い

【常連A】ここは庭だぞ。暴れたいなら別の配信行きな

【gardenFan_03】ここは「D級の庭」を見に来る場所だよ。ルールはそれだけ

 

「あー、えっと。荒れないでください。初見の方も常連の方も、ここは庭です。喧嘩する場所じゃない。庭で喧嘩したら、植物が悲しむ。バジ太郎が萎れる。……嘘だけど、そういう気持ちです」

 

(Comments)

【 gardenFan_03】バジ太郎を盾にするなw

【初見です19】……なんか、冷めた。悪い意味じゃなくて

【初見です19】すまん

 

「いえいえ、全然大丈夫です。D級のくせにって言われるのは慣れてるから。事実だし」

 

「今日一つ試してみたいことがあって。コメント欄に『常連コーナー』を作れないかなと」

 

(Comments)

【常連A】常連コーナー?

【gardenFan_03】お、いいね

【毒舌キノコ】……居場所ができるのか

 

「配信の設定でタグを付けられるらしくて。常連さんは『 』をつけてコメントしてもらえると、フィルターで読みやすくなるんです。初見の方のコメントも全部見ますけど、人数が多いと追いきれないので」

 

(Comments)

【 常連A】テスト!

【 gardenFan_03】おー、いい感じ

【 毒舌キノコ】……悪くない

【 カンナ先輩】見やすいですね!

【 GreenThumb】  A sprout tag in disguise. Still fitting for this garden.(  芽タグの変形ですね。この庭にやっぱりぴったりです)

【初見です26】古参優遇かよ

【初見です27】別にいいんじゃない?常連大事にするの普通

【初見です28】 つけたら怒られる?

【 常連B】歓迎する。今日から芽だろ

 

「優遇じゃなくて、整理です。庭が広くなると、区画を分けないとごちゃごちゃになる。ミン三郎が教えてくれた。境界がないと全部征服される」

 

(Comments)

【 毒舌キノコ】ミン三郎を教訓に使うな。あいつは暴君だ

【初見です29】ミン三郎って何w

【 常連B】ミントの三男坊。暴走癖がある

【初見です30】この庭面白い

【 初芽です31】じゃあ自分も 失礼します

【 初芽です32】来週も来たら本物の常連ってことで

 

「さて、庭いじりします。今日はラベ四郎の経過報告から。先週、毒舌キノコさんのアドバイスで排水層を作りました。結果、黄色い葉は落ちたけど新しい葉が2枚出てます。根付きました」

 

(Comments)

【 毒舌キノコ】当然だ。排水は基本

【 カンナ先輩】よかった!新しい葉の色も健康的ですね

【初見です30】毒舌キノコって何者?詳しすぎない?

【 gardenFan_03】ここの常連はみんな知識がバグってる

 

「毒舌キノコさんの正体は俺も知らない。でも植物の知識がプロ級なのは確か。いつも助けてもらってます」

 

(Comments)

【 毒舌キノコ】プロ級ではない。プロだ

【 常連A】!!!

【 gardenFan_03】プロ宣言きた

【 常連B】やっぱり!

【初見です31】プロの植物学者がD級の庭配信見てるのw

【 毒舌キノコ】植物が好きだから見ている。それ以上の理由はない。これ以上は聞くな

 

「毒舌キノコさん……ありがとうございます。これ以上は聞きません」

 

「ミン三郎の報告。壁に沿って横に伸び始めてます。迂回を始めたのは賢くて、育成している立場としては誇らしい気持ちもあるのですが、困ります」

 

(Comments)

【初見です32】ミント賢いww

【 毒舌キノコ】ミントの地下茎は障害物を避けて伸びる。コンクリートすら貫通する。舐めるな

【 GreenThumb】You'll need to extend the barrier laterally. A full perimeter wall.

(バリアを横方向に延長する必要があります。全周を囲む壁を作って)

【 カンナ先輩】ミント包囲網ですね

 

「GreenThumbさんの言う通り、全周壁を作ります。ミン三郎、ごめんね。お前は自由にさせると危険だから」

 

 手を土に当てた。壁を延長する。ミン三郎のエリアを囲む。深さ30センチ。周囲をぐるりと。

 

 魔力を流し込むと、土の密度が変わるのがわかる。ぎゅっと締まっていく感覚。最初はスムーズだったけど、半周を過ぎたあたりで、急に手のひらが重くなった。腕の中に鉛を詰められたみたいに、肘から先が動きにくくなる。

 

「ふう……」

 

 息が漏れた。額に汗が滲む。視界の端が少しだけ暗くなる。

 

「……完成。ミン三郎包囲網。これで逃げられないはず」

 

(Comments)

【初見です32】何が起こったのか全くわからない

【 カンナ先輩】顔色が悪いです。大丈夫ですか?

【 毒舌キノコ】魔力を使いすぎだ。休め

 

「大丈夫です。ちょっと肩が重いだけ。D級の魔力量で全周壁はきついんです。でもミン三郎の暴走を許すわけにはいかない。バジ太郎のエリアに侵入されたら終わりだから」

 

「あと逆方向の魔力引き抜きも練習してます。先週初めてやったやつ。ラベ四郎のEM値を下げるのに使った。今週は……少しだけ、マシになりました」

 

 ラベ四郎の根元に手を当てて、ほんの少しだけ魔力を引き抜いてみる。今度は最初から「冷たくなるぞ」と構えていたせいか、指先の痺れが前ほど暴れない。それでも、爪の下から何かを抜き取られているような、ぞわっとした寒気が腕を這い上がってくる。

 

「うわ、やっぱりこれ苦手です。指先が冷たくなる。EM値は……1.01。先週より、引き抜く量を細かく調整できるようになりました」

 

(Comments)

【 GreenThumb】Bidirectional mana flow control. Keep practicing. It will become important.

(双方向の魔力フロー制御。練習を続けてください。重要になります)

【初見です33】何の話? 専門用語多すぎない?

【 毒舌キノコ】D級の土壌操作が進化している。外野は黙って見届けろ

【初見です34】この配信、ガチで技術的な話もあるんだな……

【 常連A】つちのこ先生、指先冷たそうなのは画面越しでもわかるよ。無理しないで

 

「……さて。最後に、バジ太郎の葉の様子を確認して終わりにしましょう。1、2、3……」

 

 すでに頭の中では数え終えている。けれど、意味もなく繰り返さずにはいられなかった。

 800人を超える視聴者の「視線」という熱に、俺の精神はもう限界を迎えつつある。指先の冷たさを土の温もりで誤魔化しながら、一つ、また一つと緑を数えることで、自分を落ち着かせる。

 

(Comments)

【初見です35】え、1枚ずつ数えるの? シュールすぎだろ

【 常連A】毎週恒例。これがなきゃ終われない

【 常連B】はい皆さん、毎週恒例・葉っぱカウントのお時間です

【初見です36】800人が集まってバジルの葉を数えてるの? 宗教かよ

【 常連A】黙って見ろ。ここがバジ太郎教の礼拝タイムだ

【 gardenFan_03】これがこの配信のハイライトなんだ。わかるまで3回アーカイブ見ろ

【初見です19】……なんか、見てるだけで落ち着いてきた。不思議だな

【W7,320(KRW)】

【KR_Research_01】이것은 비정상적인 수치입니다. 공간의 떨림이 전혀 느껴지지 않아.

(これは異常な数値です。空間の震えが全く感じられない)

 

「あ、韓国の方……ありがとうございます。W7,320(ウォン)……ええと、約732円くらいでしょうか。ありがとうございます。……え、空間の震え?あ、らしいですねこの配信」

 

(Comments)

【初見です40】韓国勢からもスパチャきた!

【 gardenFan_03】732円とはセンスがある。

【初見です41】確かに「震えが感じられない」って、この配信、映像に砂嵐が一切ないんだよな

 

「……14枚。全部健康、虫食いなしです。左右に広がる脇芽も立派になりました。EM値は0.98で安定しています。バジ太郎の今の成長速度なら、来週には18枚くらいにはなりそうですね」

 

「今日はカケルが来てないので少し早いですが、ここまでとします。来週も来てくれたら、もう初見じゃないです。常連です。 をつけるかどうかは、お任せします」

 

(Comments)

【初見です35】来週も来る!

【初見です22】通知オンした

【初見です29】面白かった

【初見です19】……悪くなかった

【 常連A】初見19が落ちたwww

【 gardenFan_03】庭の力だな

【 毒舌キノコ】居場所がなくなるかと思ったが、増えたらしい。この庭は不思議だ

【 カンナ先輩】来週もよろしくお願いします!

【 GreenThumb】Eight hundred viewers. But it's still a six-tatami garden. That's the magic. See you next week, everyone.

(800人の視聴者。でもここはまだ6畳の庭。それがこの庭の魔法ですよ。来週また皆さん)

 

「おつかれさまでした」

 

 †

 

 配信を切った。最大同時視聴者数、843人。

 石のベンチに座ったまま、しばらく動けなかった。800人の熱気コメントを捌き切るのは、200人の時とは比べものにならないほど神経を摩耗させた。

 

 庭を見回す。バジ太郎、トマ次郎、ミン三郎、ラベ四郎。そして石のベンチ。

 薄紫の空には、いつものように魔力の粒が静かに光っている。

変わったのは、見ている人の数だけだ。

 

 不安が胸を掠めた、その時だった。

 

「ピ、ピー」

 

 見ると、グラスバードのチビケルが、いつの間にか境界付近まできて鳴いている。

 

「お腹空いたのか?」

 

 俺が苦笑いしながらバジ太郎の葉を一枚転がすと、チビケルは嬉しそうにそれを啄み、カケルは境界内に入って羽を休め始めた。

 

 世界がどれほど騒がしくなっても、この子たちには関係ない。

 

 ただ、この場所が温かくて、美味しい葉っぱがあって、安心して居られる場所だから、ここにいる。

 

 トマ次郎の実を見る。

 

 これが赤くなるまでに、世界はもっと騒がしくなるかもしれない。

 

 けれど、カケルたちがこうして羽を休めてくれる限り、俺はここを「庭」として守り続けたい。

 

 石のベンチの冷たさが、カケルたちの存在で少しだけ和らいだ気がした。

 

 

 †

 

 立ち上がり、ゲートの前まで歩くと、待ち構えていた澤村さんに声をかけられた。

 

「柏木さん、お疲れさまです。800人超え、凄かったですね。……あ、それと三島さんから連絡事項です」

 

「あまり聞きたくないですね」

 

 澤村さんが小さく苦笑した。

 

「海外から、韓国のダンジョン管理局(KDA)から正式なルートで打診があったそうです。何か精密な分析をしたいとかで。三島さんは『心配しなくていい、こちらで対応する』と言っていました」

 

「韓国、そういえばスパチャ今日きてた、」

 

 配信のあのコメントの主は、関係あるのだろうか。

 

「……わかりました。お疲れさまです」

 

 中央線の夜景を見ながら帰路につく。

 ポケットの中には、先週のおばあさんの手紙。お守り代わりに持ってきた。

 

 配信続けることから少し逃げたくなってしまったから。

 

 もう、カケルとチビケルがいるから一人じゃない。

 

 だからトマトが赤くなるまでは、配信を続けると今改めて誓った。




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