感想評価いつもありがとうございます。
とても励みになります。
前話の感想でバルタン星人ダスクがあまりにも南無三言われてて笑ってしまいました。
エースは完封しましたが、一応マックスに登場したダークバルタンより少し下くらいの実力を持っていますので、普通に戦えば普通に強いことだけは言っておきます。ダスク君の名誉のために。
病院の屋上で、2人のウルトラマンが話していた。
「良い名を貰ったな、プラック」
「私には勿体ない名だよ、エース」
ウルトラ族は名前を持っていない者が多い。
若いウルトラ族の中には、そもそも名前という概念自体知らない者もいるほどだ。
かつては初代ウルトラマンもそのうちの1人であり、プラックもまた、ウルトラ兄弟の活躍を聞くまで名前という概念を知らなかった。
名前がないと不便ではないのかと思うかもしれない。
だがウルトラ族が普段会話に用いるテレパシーは、イメージや感覚も共有することができるため、対象そのものを思い浮かべれば、わざわざ名前という情報をつけ加える必要はないのだ。
名前は画像データにつけられたメタ情報のようなもの。
あってもなくても困らない、そんなものなのだ。
ではなぜ時折名前を持っているウルトラマンがいるのか。
それは光の国の人々にも、昔は名前をつける文化があったからに他ならない。
転機は爆発した太陽に代わって建造した人工太陽『プラズマスパーク』の光を浴び、巨人となったことにある。
ここでテレパシー能力を獲得し、26万年の果てしない歳月の中で徐々に名前という文化は淘汰されていったのだ。
初代ウルトラマンが『ウルトラマン』という名前を贈られるまで、光の国の人口180億人のうち、名前持ちは極わずかしかいなかった。
それこそごく一部の古い世代のウルトラ族か、王侯貴族がたまに持っているくらいだ。
そんな状況を地球人は変えた。
地球人は名前という文化を光の国に蘇らせたのだ。
故に地球人から名前を贈られることはとても名誉なことだと、特別視されるようになる。
プラックも当初は名前について深く考えていなかったが、今は素直に良いものだと思っていた。
「ところでプラック、人としての名はあるのか?」
「人としての……?」
「ああ。例えば俺には北斗星司という名がある。ウルトラマンにはハヤタ・シン、セブンにはモロボシ・ダンと言った感じにだな」
「……では
プラック改め酒寄イサムは、その名前の響きを確かめるかのように自身の手のひらを見た。
「ところで何故エースは地球へ?」
「光の国で強大なマイナスエネルギーを感知したんだ。急いでやってきたつもりだったが、まさか倒してしまうとはな」
「私1人の力では勝てなかったとも。数多の地球人達と……もう1人のウルトラウーマンのおかげだ」
その言葉に、エースが目を瞬かせる。
「地球にウルトラウーマンが?」
「ああ、だが彼女はどうやら未来からやって来たようだ」
「未来から……時間遡行は光の国でもまだ未知の分野だ。それは本当なのか?」
「分からない。だが彼女は確かに奴の、ネオグランドタイラントのことを予め知っていたようだった」
「ふむ……名前は?」
「ウルトラカグヤ」
エースの脳裏に、待合席で出会った月星人の少女の姿がよぎる。
だが月星人特有の気配こそあれど、特に光の力は感じられなかった。
果たしてこれをただの偶然と片づけてよいものか。
「……なるようにしかならないか」
時間遡行はデリケートな現象である。下手に関わって何かあれば取り返しがつかない。幸い悪人でもないようだし、無理に詮索する必要はないだろうとエースは判断した。
プラックも頷いて同じ認識を共有する。
何かあれば介入してくることだろう、と。
「しばらくは地球に?」
「いや、すぐに光の国に帰る予定だ。……だがそうだな」
「?」
「地球に残るか、光の国に帰るか、今なら選べるぞプラック」
「!」
「お前が残るなら、俺は帰ろう。お前が帰るなら、俺は残ろう」
「……それは」
宇宙警備隊は多忙だ。地球にウルトラマンを2人も配置してはいられない。
そして本職の宇宙警備隊員であり、幾体もの超獣を狩ったエースが地球に来たのなら、ただの観測員でしかないプラックがこれ以上地球に留まる道理はない。
それに未来から来たカグヤもいる。
プラックよりも強いウルトラマンが2人もいるのに、これ以上地球に留まる意味なんて――
◇
「お2人は、以前にウルトラマンエースと出会ったことがあるのですか?」
「ああ、24年前に月面でな」
「思えばあの時もヤプール絡みでしたね」
GUYS JAPANの本部であるフェニックスネストは、現在バキシムの襲撃により使用不能に陥っているものの、変形してフライトモードになることができる。
その際に展開される主砲は、ヤプールが開いた異次元ゲートを永久に塞ぐメテオール『ティメンショナル・ディゾルバー』のほか、数多の強力なメテオールを発射可能だ。
正に人類の切り札。だからこそ、みすみす壊された責任は非常に重かったのだが。
それはともかく24年前、怪獣を呼び寄せる時空震を放つ謎の構造物を破壊せんとした当時のGUYSは、フェニックスネストの主砲を使うことを決めた。
しかし謎の構造物は海中からはるか彼方へ飛翔し、月面に移動した。それを追いかけたGUYS一行だったが、そこには満月超獣ルナチクスが待ち受けていた。
同時刻、メビウスことヒビノ・ミライはヤプールによって異次元空間に囚われており、すぐに助けに行くことができない状況だった。
つまるところ、メビウスとGUYSの分断を狙った、ヤプールの罠だったのだ。
そんな絶体絶命の状況を救った存在こそ、かのウルトラマンエースだった。
「たしかに今回はエースのお陰で助かった。けど油断すんじゃねぇぞ、怪獣や悪い宇宙人は俺たちが倒すんだって気持ちを忘れんな」
リュウはそう言って思い出話を締めくくったが、隊員たちの顔は晴れなかった。彼ら彼女らは気まずげに目を見合わせた後、1人が意を決した様子で前に出る。
「あの……本当に私たちは必要なんでしょうか? ウルトラマンがいれば、私たちが無理に戦う必要なんて」
「……あ?」
リュウの口からドスの効いた声が漏れ出た。
だが朝日はそう言いたくなる気持ちが分かってしまった。エースとバルタン星人ダスクの戦いはあまりに一方的で、あまりに鮮烈だった。
またダスクの言が正しければ、相手は肉片の数だけ増殖できる。果たして今のGUYSに勝つことができるのだろうか。
「お前らふざけてんじゃ――」
「――総監、いいですか?」
リュウが大きく机を叩いて叫ばんと開いた口を、リョウタが止めた。
赫怒を宿した鋭い瞳と、強い意志を宿した瞳がぶつかり合う。
やがて「やってみろ」と言わんばかりに鼻を鳴らして、リュウは1歩退いた。
「皆聞いてください。確かにエースは強かった。ですが、それで戦うのを止めるのは間違っています。ウルトラマンは、僕たち地球人が肩を並べて戦えるようになるのを待っているのですから」
「戦えるようになるのを」
「待っている?」
リョウタの父であり、現最高総議長であるサコミズ・シンゴは、GUYS設立の立役者の1人である。
かつて科学特捜隊だった彼は亜光速船に乗り、宇宙での任務についていた。
そして冥王星軌道にてゾフィーと邂逅し、80*1からメビウス*2が来るまでの26年間、侵略宇宙人を人知れず迎撃して、地球の平和を守り続けていたことを知る。
ゾフィーは言った。
“人間よ、遂に自力でここまで来たな。やがて君達も我々と肩を並べ、星々の狭間を駆ける時が来るだろう。それまでは我々が、君達の世界の盾となろう”
そう、ウルトラマンはかつて地球でそうあったように、宇宙においても共に戦えることを夢見ていたのだ。
そしてサコミズ・シンゴはその思いに応えるべく――GUYSを組織した。
「確かに僕たちは、ネオグランドタイラントとの戦いでいい所がありませんでした。用意した設置式のリージョン・リストリクターは赤い雨で不発に終わり、それを晴らそうとしたマケット怪獣も途中で時間切れに。極めつけは戦闘機全機撃墜。これ以上ないくらいのボロボロです」
あの戦いにおいて、地球人ができたことはほとんどなかった。
特に戦闘機に乗っていた面子の歯がゆさは凄まじいものがある。
そこにきてエースの一方的な戦いを目にすれば、無力感に苛まれてしまうのも無理はないだろう。
「ですがGUYSは元々、地球人とウルトラマンが肩を並べて戦うことを目標に作られた防衛隊なんです。だからその無力感は、決して悪いものなんかじゃない。悪いのはそこで立ち止まってしまうこと――違いますか、リュウ総監」
黙って聞いていたリュウは、24年前を思い出しながら、神妙な顔で言った。
「……そうだ、その通りだ。ウルトラマンも決して神様なんかじゃねぇ。できない所を支えて、一緒に戦ってやるのが、俺たちGUYSの仕事なんだ」
「ええ、だから僕たちは、努力を辞めちゃいけないんです。今は無力でも、頑張って頑張って頑張って、いつかあの宇宙のどこかで、彼らと一緒に戦う未来にたどり着くために」
リョウタの言葉に、GUYSのメンバーの全員が頷いた。
その顔には覇気が戻っている。
目戸は眩しそうに、それを隅に座って見ていたが、話が纏まったのを見て立ち上がる。
「決意を新たにしたばかりで済まないがお知らせだ。君たちに、新しい仲間ができるよ」
「え?」
「さあ入ってきたまえ――ヤチヨ君」
サラリと流れる銀のツインテール。
澄んだ空のような目。
まるで作り物のような――否、正に作り物の身体。
「月見ヤチヨ、アンドロイドボディにて見参です! よろしくね!」
◇
ネオグランドタイラント戦の疲れがまだ抜け切っていないプラックに代わって、エースはバルタン星人ダスクと戦った。
流石はウルトラ兄弟に数えられた宇宙警備隊員。ただの観測員のプラックとは天と地ほどの差があった。
少なくともプラック1人でダスクに勝つことは逆立ちしてもできないだろう。
恐ろしいのは、ダスクの目的自体はふざけたものだったものの、エースさえいなければ可能性が十分にあったことだ。
流石はバルタン星人。光の国よりも科学力が発達していると言われるだけある。
だからこそプラックはあれからずっと悩み続けていた。
「私はどうしたらいい……」
復興の進むビル街に、プラックは行った。
そこは3週間前にバキシムを倒し、朝日と初めて出会った場所だった。
「光の国に……」
GUYSと一緒に改造ゴモラと戦った郊外の山間に行った。
人が住んでいないためまだ生々しい戦闘痕が残っていたが、観光名所になりつつあった。
「帰る、べきなのか……」
最後にたどり着いたのは、ネオグランドタイラントと戦ったフェニックスネストを展望できるデッキだった。
「……私は、私は……」
「ちょっと君、大丈夫かい?」
うわ言を呟き、ぼんやりとした様子のプラックを見かねた警備員が話しかけてくる。
そのまま名前を聞かれ、「酒寄イサムだ」と素直に答える。
それをすぐ近くで聞いていた少女が顔を上げた。
「酒寄? 酒寄ってもしかして」
「お嬢さん、もしかして知り合い? ダメだよ1人にしちゃ」
「え、あの知り合いっていうか」
「ともかく不審者じゃなくて良かったよ。近頃は物騒だからなぁ」
そう言って離れていく警備員を少女は――綾紬芦花は呆然と見送るしかない。
そして横に立つプラックを見る。
「……えっと、こんにちは?」
「…………ああ、はじめまして」
一応補足
〇ウルトラ族の名前
オリ設定マシマシです。昔はあったけどテレパシーで廃れたことにしました。
とりあえずこれで以下の矛盾は説明できます。
初めて名前を贈られたはずの初代マンより15万歳も年上なケンやベリアルが名前を持っている矛盾
→まだ名づけ文化が残っていた世代のため。
初代マン(2万歳)は名前という文化を知らないくせして、最終話でほぼ同世代のゾフィー(2万5000歳)という名前つきウルトラマンが出てくる矛盾
→ゾフィーの父はケンと同世代。名づけ文化を知っていて子供にもつけた。ケンに育てられたエースとタロウも同じ理由。
なぜか名前のあるユリアンの矛盾
→王侯貴族には名づけ文化が残っている。
USA組など
→M78星雲の中のウルトラの星で名前は廃れているが、彼らが生まれた惑星では文化が残っていた。
ニュージェネ組
→名前の文化が戻り始めた世代。
解消できない矛盾
→ウルトラマンの親友クロード君。幸い公式設定ではない。もし公式なら初代マンに忘れ去られていたということになる。読み手側に分かりやすく名前を表記したが、テレパシーの都合上、初代マンはクロードの名前を知らなかった可能性もある。
→ずっと名前が不明で新マンやら帰りマン呼びだったが突然名前がついたジャック。自分でつけたのかな?
バルタン星人ダスク
→多分この理論で行くとこいつも名前がないのが正解だけどつけちまったもんはしょうがない。
〇帰ろうとするプラック
イロハ「チャート崩壊の音ォ〜!?」
ヤチヨ「もともと壊れてるじゃんね」
〇ウルトラマンと地球人が肩を並べて宇宙で戦う未来
数千年後の『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』にてようやく叶います。
現在はニュージェネの時代に突入し、M78ワールドでは更に数千年の月日が流れ、地球人は宇宙警備隊と肩を並べて宇宙の平和を守っていることでしょう。
これならGUYSの仲間達が他界した遠い未来においても、メビウスがバーニングブレイブになれたわけですね。
どれだけ離れた遠い未来であっても、紡いだ絆が途切れていないことを常に目にできるのですから。
〇綾紬芦花
前話で何故か同行していなかった彼女がエントリーです。
感想評価お待ちしております!