神代から弾かれたアマゾネス女王は、間桐桜を攫って聖杯戦争を壊す 作:あかちゅきぼちゃん
夜は、まだ終わっていなかった。
冬木の街は静かに見える。
街灯は変わらず道を照らし、遠くでは車の音が薄く流れている。誰かの家には明かりがあり、誰かは眠り、誰かは明日のことを考えている。
その下で、戦争だけが進んでいた。
誰にも見えない場所で。
誰にも知られない形で。
王が、最後の戦場へ向かおうとしていた。
◇
「なあ……本当に行くのかよ」
ウェイバーの声は、夜風に少し震えていた。
寒さのせいではない。
目の前の男が、止まる気など欠片もない顔をしていたからだ。
ライダーは、いつも通り大きかった。
ただ立っているだけで、夜の道が狭く見える。肩にかかる外套も、太い腕も、豪快な笑みも、何一つ変わらない。
けれど、ウェイバーには分かった。
今夜のライダーは、いつものように騒がしいだけではない。
何かを決めている。
その背中が、妙に静かだった。
「無論だ」
ライダーは振り返りもせずに答えた。
「無論って……相手、あの金ぴかだぞ」
「だから行くのだ」
「だからの意味が分かんないんだよ!」
ウェイバーは叫んだ。
叫んでも、止められないことは分かっている。
分かっているから、余計に腹が立つ。
ライダーは笑った。
「王を語った後に背を向ければ、酒が不味くなる」
「そんな理由で死にに行くなよ!」
「死にに行くのではない。勝ちに行く」
言葉は単純だった。
単純すぎるほどに。
けれど、その声には揺らぎがなかった。
ウェイバーは拳を握る。
「勝てるのかよ」
ライダーはようやく振り返った。
その目には、恐怖がなかった。
勝算だけを見ている目でもない。
ただ、戦場へ向かう王の目だった。
「勝てるかではない」
ライダーは言った。
「勝つために戦う。それだけだ」
ウェイバーは唇を噛んだ。
言い返したかった。
そんなものは無茶だと言いたかった。
でも、言えなかった。
聖杯問答の夜。
あの男は王だった。
言葉だけではなく、背に軍勢を従え、王として立っていた。
その背中を見た。
見てしまった。
だから、もう分かっている。
この男は止まらない。
「小僧」
大きな手が、ウェイバーの頭に乱暴に置かれた。
「王の背を見るなら、最後まで見ろ」
「……っ」
ウェイバーは何か言おうとして、言えなかった。
ライダーは笑う。
いつものように、豪快に。
けれど、その笑い声は、夜に少しだけ遠く響いた。
◇
古い事務所跡では、逃げ道の話が続いていた。
切嗣から届いた情報は、まだ不確かだった。
冬木外へ出る経路。
受け入れ先の候補。
時計塔本流から距離を置いた、古い家系。
五大元素とは違う特殊な適性を扱った記録。
そのどれもが、桜にとっては遠すぎる言葉だった。
知らない場所。
知らない人。
知らない未来。
今いる部屋さえ、安心できる場所ではないのに。
そこからさらに遠くへ行く。
桜は、毛布の端を握った。
「遠くへ行ったら」
小さな声だった。
「戻れなくなりませんか」
ヒッポリュテは桜を見る。
ペンテシレイアも、窓辺から視線を向けた。
雁夜は壁際に座ったまま、何かを言いかけて止めた。
桜は続ける。
「ここから離れたら……お姉ちゃんにも、会えなくなりますか」
凛のことだ。
その名前は出さない。
出したら、もっと寂しくなるから。
ヒッポリュテはすぐには答えなかった。
簡単に「会える」とは言えない。
この戦争がどう終わるか分からない。
遠坂がどう動くかも分からない。
冬木に何が残るかも分からない。
だから、言えることだけを言う。
「戻る道を作るために行く」
「道……」
桜が小さく繰り返す。
ペンテシレイアが短く言った。
「道がなければ作る」
あまりにも当然のような声だった。
桜は少しだけ目を丸くする。
ヒッポリュテは思わず苦笑しそうになった。
ペンテシレイアらしい。
壁があれば壊す。
道がなければ作る。
その単純さは、時に乱暴で、時に救いだった。
「そうだな」
ヒッポリュテは言う。
「道がないなら作ればいい」
桜は、すぐには頷けなかった。
けれど、その言葉を捨てもしなかった。
小さな胸の中に、そっとしまい込むように黙る。
通信機の向こうで、切嗣が言った。
『受け入れ先はまだ確定していない。だが、逃走経路は先に作る』
「桜をまた誰かに渡すだけなら、私は認めない」
ヒッポリュテの声は冷たかった。
『渡すんじゃない。隠す』
「言葉を変えただけに聞こえる」
『だから、桜本人に選ばせる』
ヒッポリュテは少し黙った。
切嗣の声は相変わらず淡々としている。
だが、以前より言葉を選んでいる。
それが善意なのか、計算なのかは分からない。
おそらく両方だろう。
切嗣はそういう男だ。
「候補を絞ったら伝えろ」
『そうする』
「それと」
『何?』
「監視を増やすなら、先に言え」
通信の向こうで、わずかに沈黙があった。
『気づいていたのか』
「気づかないと思うな」
『分かった。必要最低限にする』
「必要かどうかもこちらで決める」
『君は本当に扱いにくい』
「お互い様だ」
通信が切れる。
ペンテシレイアが窓の外を見たまま言う。
「信用できない」
「できないな」
ヒッポリュテは即答した。
桜が少し不安そうに顔を上げる。
ヒッポリュテは続けた。
「だが、使えるものは使う」
「姉上らしくない」
「そうか?」
「昔なら、気に入らないものは斬っていた」
ヒッポリュテは一瞬黙った。
それが、この身体の本来のヒッポリュテのことなのか。
それとも、ペンテシレイアが見てきた姉のことなのか。
どちらにせよ、今の自分はそのままではいられない。
「桜を連れている」
ヒッポリュテは言った。
「使えるものを選ばなければ、守れない」
ペンテシレイアは、何も言わなかった。
◇
少し時間が経った後、ペンテシレイアはヒッポリュテに近づいた。
桜は毛布に包まっている。
雁夜は浅く目を閉じている。
だから、声を落とした。
「姉上」
「なんだ」
「桜を逃がした後、姉上はどうする」
ヒッポリュテは答えられなかった。
その問いは、避けていたものだった。
桜を冬木外へ出す。
ペンテシレイアがついていく。
桜が力をつけて、いつか戻る道を作る。
そこまでは考えた。
では、自分は。
聖杯戦争を放っておけるのか。
臓硯を放っておけるのか。
冬木に起こるかもしれない災厄を、見過ごせるのか。
そもそも、自分の存在はそこまで保つのか。
神代から弾かれ、現代に落ちたこの身体は、どこまでこの時代にいられるのか。
分からないことばかりだった。
「分からない」
正直に答える。
ペンテシレイアの目が鋭くなる。
「またそれか」
「ああ」
「姉上は、いつも肝心なところで分からないと言う」
「分からないものを、分かったとは言えない」
「それでまた消えたらどうする」
その声には、怒りよりも恐怖があった。
ヒッポリュテは、胸の奥が痛むのを感じた。
ペンテシレイアは、まだ恐れている。
手を握っていたのに消えたあの夜を。
任せると言われても、また置いていかれるのではないかと。
ヒッポリュテは言う。
「分からないから、今決められることを決める」
「それで足りるのか」
「足りない」
ペンテシレイアが黙る。
「それでも、決めるしかない」
ヒッポリュテはペンテシレイアを見る。
「桜を逃がす。お前は桜と行く。これは決める」
「姉上は」
「私は、できる限り戻る」
「できる限り、では足りない」
「そうだな」
「姉上」
ペンテシレイアの声がわずかに震えた。
「私は、また待つのか」
ヒッポリュテは、すぐには答えられなかった。
答えれば嘘になる気がした。
絶対に戻ると言いたい。
でも、この戦争の終わりを知っている。
完全に同じとは限らない。
それでも、破滅の気配は近い。
だから、軽い約束はできなかった。
その沈黙を、ペンテシレイアはどう受け取ったのか。
彼女は顔を逸らした。
「……桜は私が連れていく」
「ああ」
「だが、姉上も戻れ」
「戻る」
今度は、そう言った。
絶対ではない。
でも、願いではなく意思として。
ペンテシレイアはしばらくこちらを見ていた。
やがて、小さく頷いた。
◇
雁夜は、二人の会話を聞いていた。
目を閉じていたが、眠ってはいなかった。
桜を逃がす。
ペンテシレイアがついていく。
ヒッポリュテは残るかもしれない。
では、自分は。
雁夜は自分の手を見る。
震えている。
痩せた手。
血管が浮き、指先の感覚も時折怪しい。
虫が中にいる。
臓硯の影が、身体の奥に残っている。
こんな身体で、桜と一緒に逃げられるのか。
逃げた先で、桜を危険にしないと言えるのか。
「俺は……」
声が漏れた。
桜が顔を上げる。
「雁夜おじさん?」
雁夜は笑おうとした。
できなかった。
「俺は、一緒に行かない方がいいのかもしれない」
桜の目が揺れた。
「どうして」
「俺が近くにいると、臓硯に見つかりやすくなるかもしれない。あいつは俺を使える。俺の身体は、もう……」
「そんなこと」
桜は言いかけて、止まった。
言えなかった。
雁夜が苦しんでいるのは、桜にも分かる。
無理に大丈夫と言えば、それも違う気がした。
雁夜は震える手を握る。
「大丈夫。逃げる道を作るくらいは、まだできる」
ヒッポリュテが目を細める。
「一人で動くな」
「分かってる」
雁夜は答えた。
だが、その声は危うかった。
分かっている。
けれど、何かをする気でいる。
自分が桜と一緒に未来へ行けないなら。
せめて、桜が行くための道になる。
そんな危うい決意が見えた。
ペンテシレイアが低く言う。
「勝手に死ぬな」
雁夜は少し驚いた顔をした。
「死ねば桜が泣く」
それだけ言って、ペンテシレイアは視線を逸らす。
雁夜は目を伏せた。
「……そうだな」
その声は、少しだけ柔らかかった。
◇
アインツベルンの拠点では、セイバーと切嗣の間に沈黙があった。
聖杯問答の後。
セイバーは、ずっと問いを抱えている。
ライダーの言葉。
ヒッポリュテの言葉。
願いで救いたいものが、本当に救われるのか。
王の道を否定するとは、何を否定することなのか。
だが、切嗣は違う。
彼の視線はすでに次の戦いへ向いている。
勝つための手順。
切るべき札。
捨てるもの。
守るもの。
その計算の中に、王の悩みは入っていない。
「あなたは」
セイバーが口を開いた。
切嗣は振り返らない。
「聖杯に何を願うのですか」
切嗣の手が一瞬だけ止まった。
それから、また動く。
「戦争を終わらせる」
「それは願いですか」
「目的だ」
「そのために、何を捨てるのですか」
切嗣は答えなかった。
沈黙。
セイバーは、その背中を見る。
この男は、剣を振るわない。
だが、確かに戦っている。
そして、切る。
必要なら、何でも。
セイバーは続ける。
「願いで救いたいものが、本当に救われるのか。そう問われました」
「君はまだ、あの問答に囚われているのか」
「囚われているのではありません。考えています」
「戦場で考えすぎれば死ぬ」
「考えずに勝って、何が残るのです」
切嗣はようやく振り返った。
その目は冷たい。
だが、わずかに疲れているようにも見えた。
「残すために勝つんだ」
「では、あなたは何を残すのですか」
切嗣は答えなかった。
今度の沈黙は、少し長かった。
◇
夜の別の場所で、王と王が向かい合っていた。
黄金の光。
雷の残滓。
戦車の轍。
空気そのものを裂くような異質な圧。
ウェイバーは、息をするのも忘れそうになっていた。
ライダーは笑っていた。
楽しそうに。
恐ろしいほどに、堂々と。
アーチャーは、その笑みを退屈そうに受け止めている。
けれど、その瞳にはわずかな興味があった。
王が王へ挑む。
それだけの場だった。
「行くぞ、坊主」
ライダーが言った。
ウェイバーは声が出ない。
ただ、頷いた。
戦車が駆ける。
夜が裂ける。
黄金の輝きが降る。
それは戦いだった。
だが、ウェイバーには、ただの殺し合いには見えなかった。
ライダーは逃げていない。
退いていない。
王として、前へ進んでいる。
たとえ相手が、届かないほどの王だとしても。
それでも、前へ。
やがて。
世界が歪んだ。
王の軍勢の熱が、別の何かに裂かれる。
見たことのない剣。
剣でありながら、剣ではないもの。
空間そのものが悲鳴を上げるような気配。
ウェイバーには理解できなかった。
理解できないまま、身体が震えた。
ライダーは、それでも笑っていた。
最後まで。
王の背は、前を向いていた。
◇
古い事務所跡で、ヒッポリュテがふと顔を上げた。
話の途中だった。
桜の逃走経路。
臓硯の監視。
切嗣からの追加連絡。
それらを考えていた時、遠くで巨大な火が消えたような感覚があった。
音はない。
光も見えない。
けれど、分かった。
夜のどこかで、大きな王の気配が燃え尽きた。
ペンテシレイアも気づいたのか、ヒッポリュテを見る。
「姉上?」
ヒッポリュテは少しだけ目を閉じた。
聖杯問答の夜。
豪快に笑い、杯を掲げた王。
臣下と共にある王。
願わぬなら、なおさら己の欲を見失うな。
その声が蘇る。
「王が一つ、落ちた」
桜には意味が分からなかった。
けれど、ヒッポリュテの顔を見て、それが大きなことなのだと分かった。
「宴にいた王か」
ペンテシレイアが問う。
「ああ」
ヒッポリュテは答えた。
その声は静かだった。
悲しみとも違う。
敬意に近いものがあった。
通信機が短く鳴る。
切嗣だった。
『ライダーが脱落した』
「マスターは」
『生きている』
ヒッポリュテは目を伏せた。
ライダーは、最後にマスターを残した。
王の背を見せ、そして残した。
それが救いかどうかは分からない。
だが、あの少年は生きている。
その事実だけで、少しだけ息がしやすくなった。
『これで戦争はさらに終盤へ近づく』
「分かっている」
『桜を出すなら急いだ方がいい』
「ああ」
通信が切れる。
桜が小さく聞いた。
「その人も、逃げなかったんですか」
ヒッポリュテは桜を見る。
「逃げなかった」
「逃げない方が、強いんですか」
その問いには、まだ怯えが混じっていた。
桜は逃げる。
冬木から離れる。
それが弱いことなのではないかと、まだどこかで思っている。
ヒッポリュテは首を横に振った。
「違う」
桜が顔を上げる。
「逃げないことが強さの時もある」
ライダーの背が浮かぶ。
最後まで前へ進んだ王の背。
「逃げることが強さの時もある」
桜の手が、毛布を握る。
「その人は、逃げないことを選んだ。お前は、逃げることを選ぶ」
「どっちも……強いんですか」
「選んだならな」
桜は黙った。
その言葉を、何度も心の中で確かめているようだった。
◇
地下では、虫が動いていた。
間桐臓硯は、冬木の地図を眺める。
駅。
港。
郊外へ抜ける道路。
古い霊脈の抜け道。
魔術師が使いそうな裏道。
一般人に紛れられる場所。
そのすべてへ、細い虫の糸が伸びていく。
「逃げるなら、道を選ぶ」
臓硯は呟く。
「道を選べば、癖が出る」
捕まえる必要は、まだない。
今すぐ力ずくで奪えば、器を傷つける。
それに、桜の周囲には厄介な者がいる。
バーサーカー。
神代の匂いを持つ女。
間桐から外れた雁夜。
ならば、まずは道を見る。
どこへ逃げるか。
誰を頼るか。
どこで足を止めるか。
逃げ道を見れば、その者の考えが見える。
「さて」
臓硯の口元が歪む。
「どの道を選ぶかのう」
虫たちが、静かに冬木の夜へ散っていった。
◇
ヒッポリュテは決めた。
「明日までに出る」
その言葉に、全員が反応した。
ペンテシレイアが言う。
「早いな」
「遅いくらいだ」
ヒッポリュテは答える。
「ライダーが落ちた。戦争は加速する。臓硯も動く。ここに留まる理由がない」
雁夜がゆっくり立ち上がろうとする。
「俺が道を探す」
「一人で動くな」
「一人じゃない」
雁夜は、苦しそうに笑った。
「臓硯が俺を追うなら、それを逆に使う」
ヒッポリュテの目が冷える。
「自分を餌にする気か」
「他に使い道があるなら教えてくれよ」
桜が立ち上がりかける。
「雁夜おじさん」
雁夜は桜を見た。
その顔は優しかった。
痛いほどに。
「大丈夫だよ。まだ何も決めてない」
「嘘です」
桜の声は震えていた。
「今、少し嘘をつきました」
雁夜は言葉を失った。
ペンテシレイアが雁夜を睨む。
「勝手に決めるな」
雁夜は、苦笑しようとして失敗した。
「……悪い」
ヒッポリュテは低く言う。
「桜を逃がすために、誰かが勝手に死ぬなら意味がない」
「でも」
「でも、ではない」
桜が何度も言われてきた言葉を、今度は雁夜へ向ける。
「逃げる道は作る。だが、死に道は作らせない」
雁夜は黙った。
完全に納得してはいない。
それでも、今は引いた。
ヒッポリュテは桜へ向き直る。
「逃げるぞ、桜」
桜は息を呑む。
怖い。
知らない場所へ行く。
この街から離れる。
姉とも、父とも、これまで知っていたすべてとも離れる。
それでも。
逃げるだけで終わりたくない。
その言葉を、自分で言った。
だから、桜は頷いた。
「はい」
ヒッポリュテは続ける。
「逃げて、生きて、戻るために」
ペンテシレイアが桜の隣に立つ。
「道がなければ作る」
雁夜が小さく笑った。
今度は、少しだけ本当に笑えていた。
◇
夜のどこかで、少年は一人になっていた。
王の背は、もうない。
豪快な笑い声もない。
乱暴に頭を撫でる手もない。
ただ、夜風だけがある。
ウェイバーは立ち尽くしていた。
泣いているのか、自分でも分からなかった。
涙は出ている。
でも、胸の奥にあるものは、悲しみだけではなかった。
王の背を、最後まで見た。
それだけが、はっきりと残っている。
同じ夜空の下。
ヒッポリュテは、窓のない部屋で静かに目を伏せた。
願わぬなら、なおさら己の欲を見失うな。
その言葉は、まだ消えない。
王は一つ消えた。
けれど、その背が見せたものは、消えていない。
ヒッポリュテは桜を見る。
ペンテシレイアを見る。
雁夜を見る。
そして、自分の空っぽの手を握った。
逃げる。
それは敗北ではない。
今は、生きて戻るための道だ。