エゴにまみれた危険な悪魔 作:名無しの位階1の虫ケラ六年生
時系列は少し前の話
「うわっなんですかこの講師陣!!」
「超有名な…クセの強い悪魔ばっかり…!!」
「凄いですよね」
ここは悪魔学校バビルス職員室。
666人の学生が在学しているバビルス、当然多くの教員たちが働いている。
そんな教師たちの今注目の激アツネタは、問題児クラス。
魔王の遺物である王の教室を使用し、先日はウォルターパークの騒動で大活躍をしたと聞く
教師たちが眺めているその視線の先には、一枚の紙
問題児クラスの面々に特別に用意された講師陣のリストであった。
「問題児クラスの期待が大きいのはわかるけど正直、厳しすぎですよね〜!!」
「講師陣の選抜はカルエゴ先生ですよね?」
たくさんの教師がいる中で誰も触れなかったことをダリは突いた。
このリストはなんてったって作ったのはカルエゴである。カルエゴは教師にも怖がれている節があった。
そんなカルエゴに軽口を叩けるのはカルエゴがまだ若手時代の頃に教育担当だったダリくらいである。
「無茶な試練で王の教室を取り戻そうとか私情入っちゃってます?」
「まあ、あいつらが苦しむ姿は見ていてなかなか気分がいいです」
ダリの質問にフッとカルエゴは笑った
教師にあるまじき言動だった
「わぁー陰湿うーー」
「しかし、私は奴らを叩きあげるのに適任な講師を用意したまでです。厳粛に。」
カルエゴに長年付き合ってきたダリは表情を見て悟った。
ーこれは相当期待していると
カルエゴにここまでの期待をさせる問題児クラスにダリも当然関心が湧いていくる。問題児クラスは今注目の的である。
「アバドン・デンス…聞かない名前ですね。いや、アバドン家は情報が出回らないから当然ですか。」
「アバドン家かぁどんな特訓をしているんですかねぇ……」
有名な講師陣の中に知らない名が一つ、
アバドン家は魔歴を学校で学んだものはみんな知っている有名な家系である。
最近はブランド品の商売が繁盛しているのでそれに目が行きがちだが、本来のアバドンの稼業は暗殺。
どの家系も家系魔術の情報の開示には抵抗がある。それが顕著なのがアバドンという家系であった。
煙が使える。それがなんか強いらしい。
世間の煙生成という魔術に対しての認識はこの程度である。
アバドンに教えるならアバドン
アバドン家はとにかく情報が周知されるのを嫌がる。少しでも不利になることが我慢ならないのである。
その中でも煙生成は極秘も極秘。
そしてアバドン家の時期後継者であると来たら、外部のどこの馬の骨ともわからない講師をあてがうわけにはいかなかった。
「アバドン……」
カルエゴは1人思案する。
アバドン家に問い合わせたら、寄越された悪魔がアバドン・デンス。
当然カルエゴはその悪魔を知らないし、詳細も教えられなかった。わかったのは名前だけ、男だということ。それだけ
カルエゴはリストを改めて見る。
この采配に間違いはないと思っている。適切なものをそれぞれに当てたと思っている。
ただ、アバドンの名前を見るとなにか悪寒がするのだ。
これが、適切な判断だったのか…いや、アバドンを強化するには適切な判断と言えることは間違いない。
そうではないのだ。そもそも…アバドンを強くしてしまって良いのだろうかー?
カルエゴは教師人生こんなことで悩むとは思っていなかった
「酒もっと飲め飲めー俺の奢りだーーー!!!!」
アバドン・マルスは夜の街に繰り出していた。
ソファーにどかりと座り、マルスは両脇にジャズとアロケルを抱いていた。手には酒、ではなくジュース。テーブルには色とりどりのカットフルーツに豊富なスナック菓子、ジャンクフードが並べられている。シャンパンタワーで謎のコールが起き、酒を一気飲みしているやつも見受けらた。
フロアは熱狂状態であった。
なぜこんなことになっているのか、少し前に遡る
特別授業13日目。今日は特訓がお休みであると知らされたマルスは、夜の街にやってきていた。メイとケイはサバイバル生活の疲労の蓄積から本家の自室で死んだように眠っている。
マルスにとってこれはまたとないチャンスであったのだ。
携帯のトーク画面を開き、住所と店名を確認する。
ライトアップされ輝く看板には、魔界クラブ「ヴァルハラ」と書かれていた。ここは、大人の悪魔が集まる遊び場である。
店の扉を開けて入っていくものは、誰もマルスより年が上のものばかり。本来学生が来るような場所ではなかった。
しかしマルスは臆すことなく、当たり前のようにそこに足を踏み入れた。
中は外観通り、いやそれ以上に輝いて活気があった。
店内は広かった。
クラブミュージックが流れて、ポールダンサーが華麗に踊っている。
客も多く、賑わっている店であることが窺えた
「おおー、やってるやってるバイト」
「お、アバドンきてくれたのか!?」
「モウ誰も来ないと思っテタ……」
マルスは給仕の中に探し求めて来た知り合いを見つける。
クラスメイトのアンドロ・M・ジャズとアロケル・シュナイダーの2人であった。
2人は普段の学生服ではなくボーイの黒と白のユニフォームを身に纏っている。
アバドンは、ジャズが送ってきていたメールと写真をみて、この店にやってきたのである。なにやらフルフル軍曹というジャズたちの担当の講師に連れられて、たくさん騒いで飲んで朝目覚めたら2人には借金ができていたらしい。
つまり、学生2人はまんまと悪い大人に騙されてしまったというわけである。マルスは2人の気持ちもわからないこともなかった。可愛いお姉さんたちと飲む酒(ジュース)は何杯でも飲めるし、時間も財布の紐も忘れさせるものだ。
ちなみに、2人のことを心配して来たのはマルスだけであり、他のクラスメイトたちは完全に無視と決め込んでいる。
「助けて、なんてメールをよこすからなんだと思って来てみたら呆気なかったな」
ただ2人は自分たちが飲み食いした分の借金をバイトという形で現在進行形で返済しているのであった。
マルスからすると、これが特別授業なのか?という疑問が浮かんでくるが、2人が可哀想なので口に出すことはしない。
悪い大人に騙されたとはいえ、2人も雰囲気に呑まれてたくさん飲み食いしたのは事実であるため、お金を肩代わりしてやろうという気持ちをマルスは持たなかった。
「まあ、助けに来たわけではないぞ。ただ遊びに来ただけ」
そう、マルスからすれば2人の顔を拝みにくるのはついでで、ここには遊ぶために来たのである。
「あれ、久しぶりのお客さんがきたねぇ」
ジャズたちと同じ、黒と白のボーイの服を着た男悪魔と目が合う。
なんだかアバドンは懐かしいような嬉しいような気持ちになった。
「久しぶり」
「え、なに知り合い」
「キニナル」
「おー新顔たちの知り合いってことは、まさかクラスメイトか?そっか坊ちゃんもそんな歳かあ」
アバドンは、久しぶりに知り合いに会いに来たのだ。
「この店は、俺がガキのころによく遊びに来て世話になったところだ。まあ、俺はこう見えて貴族だから、年齢が上がるに連れて親の目が厳しくなって、疎遠になっちまったが」
そうこの男、10代前半の頃に俗に言う反抗期に入っていたのである。変な風に捻くれて、大人の階段をちょっぴり登りたい年頃であったのだ。
精通が来たその年に童貞を卒業したこの男は幼少期からかなりイかれていた。幼い頃から頭と下半身が連結していたのだ。小さい頃から既にクソみたいな人格が形成されていたのであるから救えない。
歳上のお姉さんに「チェリーボーイ可愛いー♡」なんて言われた時に微笑んで誤魔化したマルス。マルスは歳上のお姉さんが好きだった。
懐かしく過去を振り返っていると、タイミングよく、マルスの担当だったお姉さんがやってきた。相変わらずの美しさは健在である。
「あれ!?坊ちゃんじゃん!!え、めっちゃ大きくなって…!!」
「ねーちゃんも久しぶりだな」
「私が恋しくなってきたのー?」
「まあ、そんなところだ」
「あっはは、雑ッ!」
感動の再会は呆気ないものであった。
マルスがこの店に通っていたのは10〜14にかけての間であり10歳の頃のマルスは150センチ、現在は190センチで40センチも伸びているのだ。
最初こそはお姉さんは驚く様子を見せたが、やはり4年関わっただけあり、久しぶりでも元々の距離感というものは変わらないらしい。
「で、私の代わりに今までどこで遊んでたのよー」
「貴族御用達のたけーところだな。
治安は良いが、来る客皆高く止まってて客同士で騒いだりもないし、ホステスは可愛いんだけどな、羽が伸ばせない感じのところだ
実はいうとかなり、この店が恋しかったよ…」
マルスは15歳になった途端に親の目が厳しくなり始めた。散財をするのも控えたし、未成年飲酒もたまにしかしなくなった。クラブにはたまに行くだけで夜の街に繰り出す機会も徐々に減りつつあった。
そして今年からは学校にも通い出し、放課後は師団の活動もしている。母親が夕食を家族で囲むことを大事にしているタイプなので、自由な時間はほぼ深夜しかなかった。
「昔からませたガキよねぇ、可愛いらしさがありゃしない」
「はは、それを坊ちゃんに求めるのは間違ってるってもんだ。で、久しぶりのご来店の一杯目なににする?」
「んー…クラスメイトがいる手前、堂々と飲酒するのもなぁ、とりあえず最初は柑橘系のジュース」
「席は?」
「もちろんボックス、そこのスタッフ指名で」
「お姉さーんかなしーー」
「ウチはそういうのやって無いんだけどなー、まあ昔から言っても聞かないし…ほら新顔どもお客さんの相手だ」
「え、俺」
「オレタチが?」
マルスはついでとはいえ、バイト地獄で疲れていそうな2人を心配してきたのであった。少しくらい遊んでもいいだろうと気遣っての行動で2人を指名する。
ソファーにどかりと座って、横を手でトントンと叩いた。
ジャズとアロケルは互いに顔を向け合って、そして緊張したようにそれぞれ隣に座った。
「お、お邪魔します」
「隣、スワル」
ちょこんと座る2人はどことなく気まずそうである。
「好きなの頼んでいいからな」
マルスにメニュー表を渡されドリンクを頼むように進められる2人。やはり、緊張しているのかどことなく動きはぎこちない。
「あー…、アバドン、こういうところ慣れてんのな」
「10代前半に出会ってハマって4年はここに通ったからな。金払えば可愛いねーちゃんと酒飲めるし、ここは客とも盛り上がって騒げる。ここが好きだったよ」
マルスはジャズに聞かれたことに答えながら、当たり前のようにポケットから煙草を取り出して火をつけた。フーッと吐き出された煙はどことなく甘い香りがする。
それを見てジャズは思わず眉間に皺を作った。
「…」
「どうした?」
「……いや、めっちゃ失礼なこと考えてたから気にしないで欲しい」
「それは気にしろと言っているようなものでは?」
「ダナ」
「ッ、いや、アロケルには話したと思うが………」
「俺だけ仲間外れか?寂しいなあ」
「ッその、俺の身内にすっげえクズがいてさ、嫌な目に遭いまくってきたから、なんつうかクズを見分ける嗅覚みたいなもんには自信があってよ……
その、アバドンにそれを感じた…から。その…なんだ……」
ジャズは言ってみたは良いものの、言葉の尻がだんだんと窄んでいく。
そしてマルスは黙ったまま喋らない
ジャズはマルスの顔を直視することができず、下を向く。気まずい沈黙が空気を支配した。
マルスは固まっていたかと思うと、小刻みに震えだした。
「…ッ、く、ははは、ジャズ!」
やばい怒らせたと、ジャズは思った
「ご、ごめ」
黙っていたかと思えば、突然笑い出したマルスにジャズはビクッと肩をはねて慌てて謝るようにマルスの顔を見た。
その表情は純粋に笑っていた
「今更だぞ。あまり笑わせるな、ククッほら、今日はクズの奢りだ。ほら飲め飲め、もっと食え」
マルスの言葉と同時にテーブルにたくさんのドリンクと軽食が運ばれてくる。
「ほら、羽を伸ばせ。ここは天国だぞ?」
「「ッ……!!」」
そして冒頭の今日は俺の奢りだ発言に戻る
「あんれぇーーー?なぁんか騒がしぃと思ったらクソガキいるじゃんヨ」
お祭り騒ぎが未だ収まらない店内に入ってきた1人の大男。
ジャズとアロケルの講師であるフルフル軍曹その人であった。
フルフルというのは、魔界の三つの大英雄の内の家系の一つ。フルフル軍曹はこの講師の仕事を受ける前は北方の戦場で暴れていたのである。
言葉からはヘラヘラしているような印象を受けるが、強い力の持ち主であった。
マルスは目を細め、口を開いた。
「フルフル…俺のクラスメイトをよくも痛めつけてくれたなぁ」
「んーコイツらが無銭飲食したのが悪いヨ、俺金払うなんて言ってないし、騙されたコイツらがいけないヨ」
「はあ…まあ、そうだよなー」
「話わかるネ、クソガキ」
フルフル軍曹とマルスは顔馴染みなのか、お互いに馴れ馴れしい会話をして互いの拳を突き合わせた。
仲が良いのが見受けられる
「アバドン…まさかフルフル軍曹とも、知り合いなのか?」
ジャズが恐る恐る聞く。
マルスはなんてこともないように返す。
「フルフルは、俺よりもここの常連でな。……コイツは自分よりも年下のガキに金をたかるクソだった。俺が何度コイツの勘定分を持ったことか」
「カードゲーム弱いのが悪いネ」
「勝負で買ったからって、10歳のガキに金をたかるやつがあるか」
「普通のガキはこんなとこ来ないヨ、それにオマエはクソガキ」
「まあいい…久しぶりにあったんだ。気分が良いし好きなの飲めよ」
「フーン…じゃあお言葉にアマエテ、1番高い酒頼むヨ」
「ふ、良いんだな?」
「久しぶりだから加減しないヨ」
「それは俺のセリフだ」
「「?」」
「あー…めっちゃ儲かった。やっぱ坊ちゃんの落とす金の量は尋常じゃないな」
お客が帰り、店仕舞いをするスタッフたち
会計伝票を見て儲かったとこぼすのはバイトの身であるジャズたちの上司。それにジャズたちも先程までのお祭り騒ぎを思い出すようにこたえる。
「結構高い酒バンバン注文してたっすよね。シャンパンタワーもあったし…てか事前に予約してたんだな」
「遊ぶ気でキテタ。値段、相当高い」
ジャズとアロケルは上司の持つ伝票を覗き込むように見た
「えっと…10ッお………待て、これ以上はダメだ。住む世界が違う」
「……一生かかってやっと稼げるレベル」
「だよなー坊ちゃん昔から、金の使い方おかしいんだよ。ちなみに酔っ払った客が壊した家具代の請求も入ってるからコレ」
「エェ……」
「いやー本当に稼ぎ時だった、軍曹様々だ」
「あー…アバドンってフルフル軍曹と仲良いっすよね。」
「口悪かったケド、距離近かっタ。仲良い」
「いや、そりゃーお前ら。仲良い通り越してあの2人できてるから。」
「?」
ジャズの肩に寄りかかるように手が回された。横を見ると酒臭いお姉さんがいる。顔は真っ赤に染まり足はフラフラとしている。
「そうよぉ〜!私にィ会いに来たあとか言ってえぇぐんそうめあぇて……そもそお私の方がッ付き合い長いのよお!!私に懐けッてぇのおおぅ……かわいくなぃガキ……どうせぇ今頃ホテルで、やってえええ」
呂律が回っていないお姉さんは完全に出来上がっていた
「お前はつぶれるまで飲む癖やめろ」
「飲まなきゃやってられっかよぉぉ」
「めんどくせー」
上司と背中をバンバンと叩いてくる酔っぱらいの会話に置いてけぼりにされていたジャズ。しかし、だんだんと理解してきたのか、数十秒後には真実に辿り着いたような表情をした。
「………ッ、そういうことかよ。あー理解した俺らダシにされたんだわ。心配して来たとか本当に嘘っぱちじゃねーか…。アロケル、もうこれ以上追及するのは止めよう。知るべきじゃない」
「知識ハいらないのか?」
「絶対いらない」
「ワカッタ」
フルフル軍曹の言葉に一切の真実が無いとすれば、それにクソガキと言われるアバドン・マルスもまた、同じなのである。
アバドン・マルスの言葉に一切の重み無し
彼はクズでも、見た目をよく取り繕われたクズである。
「あ、ヤベ吐きそう」
「待って人の肩で吐かないで待って待って」
ジャズとアロケルのバイト地獄はまだ終わりそうにない
時は戻り、特別授業16日目
「まさか、クリアできるとは思わなかった。
マルス様だけがクリアできると踏んでいた。それが、見事に裏切られた。
お前たちを俺は誇りに思う、」
特訓2週間で得た成果というものをデンスはひしひしと感じ取っていた。
教えれば教えるほどスポンジのごとく吸収するケイ。
戦う才はないが、家系魔術に可能性が広がっているメイ。
どちらも異なる才能であった。デンスは今までの人生で指導という経験は何度かしてきたことがあったが、これほどまでの人材を育てたのは始めての経験だった。
デンスの心は震えていた。歓喜していた。
これならば、弱肉強食のアバドンでも通用するかもしれないと
デンスは己の限界を感じていた。己を弱者だと認識していた
だから、強い弱者を探し求めてきた
見つけた、2人の可能性を
弱者でも強くなれる
面白いものが大好きな悪魔
気に入ったものに対しては、タガが外れる。
それから数週間、
昨日でちょうど初投稿から1ヶ月経ってました。毎日投稿ではないけど、かなり良いペースではないかなと。原作に追いつけるとは大口たたかないけど、できたら良いな
評価とお気に入りしおり…読んでくださっている方に感謝を、モチベ上がります