ようこそ百合至上主義のハーレムへ 作:ド級のスランプ、ドスランプス
(二週間……ここまで長い時間一人で過ごすのはなんだか久しぶりですね)
夏休み中の豪華客船でのクルーズ……というよりは何かしら試験でもやるのだろうと優里さんは言っていたが、そこへの参加が許されなかった私、坂柳有栖は端的に言えば暇を持て余していた。
いっそ特別課題でも出してくれれば暇潰しにもなっただろうし、もしかしたらクラスポイントという形にもなったかもしれない。つくづく私には損しかない二週間である。
残っているのは一人。身体が不自由な私にとっては正直それだけでも厳しいものがある。簡単な外出程度が出来ないわけでは無いが、買い物に行けば荷物を少ししか持てないし、家事をしようにも片手が塞がっては動きにくい。
(改めて、真澄さんも優里さんも、よく付き合ってくれていたものですね……)
真澄さんはまあ、最初に弱みを握ったというのもあるだろう。私がマトモな生活を送ろうと思えば誰かしらの手助けは必要不可欠だったことだし、そこに後悔は無い。というより、弱みを見せる方が悪いとすら思う。
(しかし優里さんは……一体なんなのでしょう)
本人曰く、『美少女と仲良くならない選択肢なんてある?』とのことでしたが。実際まあ……なんというか、性欲を隠さない人ではある。よく真澄さんの胸を揉んでいますし。ただカラっと明るい性格だから不快感が少ないだけで……あれで男子だったら許されてないでしょう、法律的にも。
(或いは、本当の天才というのはあのようなものなのでしょうか? 英雄色を好む、なんて言いますし)
白い部屋の男の子を見かけて以来熱中していたチェス。当然自信はありました。並び立つ者などそれこそあの白い部屋の少年だけだろうというぐらいに。
(……全く、優里さんは酷い人です。あの男の子……綾小路君に勝つのは私の数少ない目標だったというのに、それがどうでもよくなるぐらいの衝撃を与えてくるなんて)
別にその目標が無くなったわけではありません。人工の天才が本物の天才には敵わないのだということを証明してやろうとは今でも思っています。
(ですが、果たしてそれは本当に私の役目なのか)
チェスの先攻勝率はおおよそ四割。後攻の勝率と引き分けがそれぞれおおよそ三割ずつ。後手であれば引き分けを目標にすべきというプロも居る程です。
(それでも、私は優里さんに勝てていない)
後攻になっても涼しい顔で指し続ける。無論百戦して百敗するというわけでは無いのですが……なんというか、ペースを握るのが異様に上手なんですよね。呼吸を乱すのが上手いというか。……いや、これは決してふざけた玩具を付けるルールのせいなどでは無い……はずです。多分。きっと。
(別に初めての感覚だからといってそれに思考が支配されたりはしませんとも。ええ)
というか彼女はどこであんなものを仕入れてきているのか。そう意識をしてしまえば自然と彼女からの贈り物にも意識が向いてしまって。
(……これ、どういう基準で選ばれているのでしょうか? 新品であると言っていたからには優里さんも使ったことはない……いえ、同じ物を二つ買っている可能性もありますね)
『これオススメだから有栖ちゃんにも買っといたよ!』実に彼女が言いそうなセリフです。そういうのはコンビニの新商品とかそういう物ぐらいにして欲しいのですが。元々こういうので遊ぶのは真澄さんの役割だったはずなのに。
(……おや? そういえばいつから私にも……その、そういうことをし始めたのでしたっけ? 最初は……確か私がしつこくチェスの誘いをしたからで……)
『罰ゲームとして負けたら真澄ちゃんと同じ目に遭ってもらうからね』と言われた時はまだチェスの勝率もそこまで悪くなかったはずで……結局負けて酷い目には遭ったのですけれど。
(……まさか、敗因はこれなのでしょうか?)
優里さんは時々負けてこの手の玩具を付けることになっても平然と……いえ、平然とはしていませんね。結構艶っぽい声を出しますし。……そういうことではなく。抵抗は見せないのです。恥ずかしがる様子も。……いくら同性しか居ない空間とはいえ躊躇いもなく下着を脱ぎますし、彼女の羞恥心はどうなっているのでしょう。同性愛者ということも考えるとまさかむしろ見られたい性癖が……?
思考が余計な方へ行きました。とにかくこの恥じらいというものが思考に躊躇を産んでいるのでは? 元よりリスクの高い策を好む性質の私です。臆する心があれば負けもこむでしょう。
ならば私の勝利に必要なのはこの玩具達への耐性……なんて考えてしまうぐらいには、私は孤独を持て余していたのでしょう。この時はその思考に何の違和感も感じていませんでしたが。
ぱかっと優里さんから貰った箱を開けてみれば──
(これは……水着? にしては小さすぎませんか!? 何も隠せそうにないのですが……! 何でこんなものを一番上に……?)
いけません。平常心平常心。きっと優里さんなりの悪戯でしょう。恐らく元は普通のビキニスタイルの水着。多分布地を切って小さくでもしたのでしょう。嫌なドッキリです。これは今度真澄さんに着せて写真でも撮るとしましょう。
とりあえず布切れはどかしてその下にあるものを……多くないですか優里さん。日替わりで使えそうなほど入れる必要はありませんよね? 使い捨てでも無いのですし。
(これは……この前付けながらチェスをさせられたやつですね……自分でもあんなところほとんど触ったことが無いのに、癖になったらどうしてくれ……コホン! ま、まぁ? 慣れる為にも使ってみるべきかもしれませんね?)
とりあえずすぐに取れる場所に置いておきましょう。別に今使うつもりはありませんとも。 ……いえ、刺激を受けながら何かをすることに慣れるためにはむしろ今こそ付けるべき……? 試しに付けながら勉学にでも励んでみましょうか……?
……ええ。優里さんは悪魔です。なんですかアレ。せめて操作方法ぐらいどこかに書くべきでしょう!? 最悪電源ボタンはすぐに押せるようになっていなくては駄目でしょう!? どうして電源ボタンとリズムを変えるボタンが上下に並んでいるんですか。全然止まってくれなくて泣きそうになりましたとも。一人の時に試しておいて良かったですね。ええ。せめてそう思わなきゃやってられません。
他は……おや、メモ書き? 優里さんの字ですね。なんか無駄に字が綺麗なのにも腹が立ってきました。書道でもやってたんですかね。
『有栖ちゃんへ。私特選の玩具です。天才の有栖ちゃんならきっと私の説明なんて要らないよね? 世間一般でも全然使われてるし、今時だと中学生とかでも使うし。まあ有栖ちゃんの体型は中学生ぐらいだけど(笑)』
帰ってきたら泣かす。メモを千切りながら私はケツイしました。とはいえ優里さんの得意なあの複雑怪奇なカードゲームでは流石に勝ち目が無いでしょう。なんで『発動した効果を受けない』耐性を持っているのに『エンドフェイズに全てのモンスターを破壊する』で破壊されるんですか? それだって発動した効果じゃないですか。真澄さんと優里さん曰く『そういうものだと思って諦めた方が良い』だそうですが。
ええ。中学生の使う玩具なんて余裕ですとも。この坂柳有栖を見くびらないでもらいたいものです。この学校のテストで満点を叩き出してるのは伊達じゃないことを思い知らせてやりますとも。
──これは……この部分は以前使われた玩具に似ていますね。ということはこの部分の機能は同じということでしょうか。となるとここは持ち手……いえ、それなら上下が逆ですね。となると……え? まさか、この部分は……体内に?
いやいや……え? だって15cmぐらいありますよ? おへそぐらいまで届くことになりません? というかゴツくないですか? 太さとかおかしいですよね? 指何本分です?
こんなもの使えるわけありません。しまっておいて……かえ、す……?
『中学生にも使える物使えなかったの? 有栖ちゃん。まあ、お勉強だけの天才ってことかぁ』
この私を馬鹿にしましたね優里さん! いいでしょう。自分の決断に殉じられる度胸を持ち合わせていることを証明してみせましょうじゃありませんか! この程度、誰でもでき……潤滑剤は多めにつけておきましょうか……
いやいやいや。優里さん絶対に嘘ついてますよね? そりゃあ私の体格は小柄な方ではありますけど、別に一般的な中学生に然程劣りはしませんよ? こんなもの滑るだけで入りは──
「あ……ひぁ!?」
あ、なんかヌルりと──
絶対に騙されました。あんなものを世間一般で使ってるはずがありません。帰ってきたら問いただしてやらなくては。何が悲しくてこんな掃除をしなくてはならないのですか。優里さんにも使ってやりますとも。もっと大きなサイズのもありましたし。『買った本人なら余裕ですよね?』理論武装も完璧です。
──でもまぁ、今のうちにもうちょっとだけ試してみてもいいですよね? 絶対に誰にも見られないわけですし……正しい使い方が分からないままなのも癪ですし……
ミラジェイドのエンドフェイズ時効果でサイコエンドパニッシャーは破壊出来ます。チェーンブロックを作った時に適用される効果かどうかで違うらしいですね。ミラジェイドはチェーンブロックを作ってエンドフェイズ時に適用するから『発動した効果を受けない』をすり抜ける…
…分かるか!