God, I need help   作:nyasu

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Who's she, sir?

心臓の鼓動がやけに煩い。

まるで、誰かの胸に耳を当てて音を聞いてるようだ。

そんな音のテンポは、だんだん間延びして、そして鳴っているのか鳴っていないのか分からないくらいの感覚になった。

 

これは、あれか、走馬灯と言う奴だろうか。

俺が死んだら世界はなくなるはずだから、ということは走馬灯出来てるから生きてると思う。

まぁ、死ぬ前に助かる方法色々考える的な奴だっけ、なんで死にかけてんだよ。

 

『走馬灯、人生の回顧録、魂の審判。科学的には脳内のガンマ波の増大によるもの、オカルティズム的には魂による極大のストレッサーへのアレルギー反応。主体的な時間による延命でもあるソレ』

「そ、その声は……さっき名前を知ったギャル!イヨではないか!」

『そうだけど、私は虎かよ』

「どういうこと?」

『あっ、これ、学がない系だ』

 

そこはかとなく馬鹿にされた気がする。

俺の目の前には止まったままのニンジャとギャルがいる。

ニンジャって名乗ってたし、多分ニンジャ。

 

「おい、どういうことなのか説明してくれよ。あっ、喋れるんか」

『落ち着いて聴いてください、貴方は死にました』

「えぇ……でも、えっ、今生きてるじゃん」

『死ぬってことは状態の変更であって、今は上書きされるまで完全に死んだって訳じゃないの。パソコンで削除しても場合によっては復元出来るでしょ、それ』

 

そうなんだ。

パソコン詳しくないけどゴミ箱にブチ込まれてるイメージだろうか。

というか、なんで死んだの。

 

『それは、ニンジャリアリティショックのせいよ』

「なんだその意味不明なトンチキな死因は」

『トンチキ?いいえ、ニンジャ固有アビリティによる存在位階の差を利用した情報負荷攻撃よ』

「なんて?」

 

さっきから訳がわからないよ。

もっと分かるように話してよ、イヨさん!

 

『よく聞いてご主人、SAN値チェックみたいなものよ』

「なるほど、分かる言葉にしてくれた」

『正直、それができる時点で相手がマズすぎる』

 

ど、どういうことなんだってばよ。

 

『結界を侵入してきて近付かれるまで気づかなかった。そして、名乗り上げによって分かったけど、奴は忍び刀十人衆の一人、朧で間違いない』

「急に中二だ……」

『日本類似クラスタで知らない者は居ない危険人物よ。そして、アレは宣名も兼ねた先制攻撃、アイサツ。ご主人は挨拶を返せなかったことで、攻撃を返せなかったのよ』

「分かんない、分かんないよ、アイサツって何!おはよーとかそういうことでしょ!」

 

俺は置いてけぼりだ。

情報量で殴ってくるんじゃねぇ。

 

『互いに死を覚悟する状況で隙を晒す挨拶、アイサツとは対等でなければ成立せず、相手が礼儀知らずでないと信頼しないと出来ない行為。故に、挨拶を返せないものは格下であり、礼儀知らずである。それは格下であるというラベリング、シツレイの最上級。スゴイシツレイ認定は、存在差のバフとなりダメージを増大させる』

 

凄い失礼なのは分かったけど、挨拶が攻撃なの?

攻撃っていうか、口撃?レベル差があればあるほどダメージ与えられる攻撃に格下認定でバフを乗せたってこと?

 

『でも、まだ助かる可能性はある。私の言霊は過去を捏造し、現在を歪め、未来を変える』

「そんなことが!」

『だって、ウチらマグった仲だし』

「マグ……えっ!?」

『アハッ、反応童貞すぎ……説明しよう!マグヌス・ヒエロス・ガモス、またの名を大聖婚、それは私達の運命から魂まで共有し同一とするもの』

 

不思議と言葉が響く。

言霊、言葉に力が宿ってるのが肌で分かる。

不思議な響きに身体の芯から熱が帯びる。

 

『故にご主人様への傷害致死は従僕である私に対しての行為とも言える。ならば、死に至る程の苦痛の半分は同一である私の物、だからご主人は九死に一生を得るのである!』

「すごい説明口調で色々言ってくれた!」

『時間がないよ、ご主人!走馬灯が終わったら、時間は戻る。私は肩代わりしたせいで動けなくなるから、ご主人の力で何とかしてね』

 

それはどういうという疑問の言葉が発する前に、周りが動き出す。

ドクンっと胸の内側を強く衝撃が走った時に、元の時間に戻ったと実感した。

そして、耳に聞こえてくる驚きの声。

 

「ヌッ!何故、死んでいない」

「ハァハァ……し、死んでない?馬鹿が一回死んだわ!」

 

効いてないぜと言うには余りにも消耗しているため、それは誤魔化さない。

嘘を本当に変える為の仕込みをしなくてはいけない。

 

「だが、貴様は取るに足らぬ格下にすぎない。あの巫女は……いや、そうか、貴様の死を肩代わりさせたか」

「それはどうかな?」

「何だと」

「お前の攻撃は確かに効いてたし、肩代わりなんかさせてない。俺の能力は敵の攻撃を食らうことで発動する。失礼と言われたから説明するけど」

「問答無用!」

 

目の前に、男がいる。

青いツナギ、青いマスク、その手には二本の刀が抜かれている。

どうして君達は話を聞かないんだ。

ええい、間に合え!

 

「俺は無敵になる!」

「何!?」

 

振り下ろされた刀よりも、俺の言葉の方が早かった。

一か八かだったが、俺の言葉に何かあると思った奴の認識によって、俺の嘘は本当になった。

奴のイメージする無敵の奴なら、難なく刀を止めれるんだろ。

手とかで止めるじゃなくて、そもそも斬れないとか言うイメージだったのか、俺は反応出来ないけど刀は俺を斬り裂けずに刃毀れしていた。

 

「オラァ!」

「フンッ!」

「うわぁ!?」

 

やはり、窮地で逆転する俺は主人公だった。

喰らえ、主人公パンチ!

しかし、よく分からない間に俺の身体は吹っ飛んだ。

視界がグルグル、何をされたかも分からない状態で無敵だから痛くはない。

でも、俺は地面に転がされていた。

 

「素人にも程がある。ならば、一時的なな無敵効果。なるほど、お前達は言語術師か」

「それが分かったところで」

 

青いツナギ忍者の背後から銀色の煌めき、機械のブーツ、それが踵から火を吹き凄い速度で奴を襲う。

ブースターだ、しかもロケット!すごい、ロマンがある!

 

「道具に頼るとは、呪術師の質も落ちたものよ」

「止められた!?」

 

刀が、その蹴りを防いでいた。

片手で持った刀の側面、そこに金属の爪先が食い込むが、くるりと刀が回転すると直進するエネルギーは逸らされ、蹴りが明後日の方向に振り抜かれる。

 

「しまった!なんてね」

「お前のような術師は、この1000年に腐るほどいた、目眩ましは効かん!そこだ!」

「何故、うぐっ!」

 

目の前で、今にも斬られると思っていたギャルが爆発し、辺りを煙が包み込んだ。

よく分からないが本体ではなかったらしい。

目眩まし、だがそれも読んでいたのか、分かった素振りで刀が振るわれイヨのうめき声が聞こえた。

 

煙が晴れる。

そこには倒れるイヨと、俺とイヨを見下ろすニンジャがいた。

 

「ニンジャに対して奇襲は本来成功しない。それを成立させる事で、実力不足であるとデバフ掛けるつもりだったか。瞬間移動とは、俺でなければ成功していただろう」

「煙幕と転移の奇襲を文脈による位置確定で制限された!討論闘争を宣言、ニンジャ・朧!」

「考えたな、受けて立とう。俺のターン、先行は頂く。そも、奇襲に頼らなければならぬ時点で、貴様達は格下である。ここに格付けはなされた、終わりである」

「いいえ!ならば、隠れ潜むべきニンジャが姿を現している。それは本来の実力を出来ない状況ではないか?」

「やるな、だがこうも考えられる。隠れ潜まずとも問題ない実力者とな。なぜならば、俺は忍刀十人衆であるからだ」

 

二人しか分からないやり取りの後に言い合いが始まった。

討論闘争ってワードだけは聞こえたけど、つまりどういうことなんだろうか。

常に置いてけぼりである。

 

「それはどうかしら、実力者だからと言って本物であるとは限らない。朧は1000前から知れ渡った名前、本人が生きてるはずもなく、名乗りによる呪術によって、過去の偉人を模倣し、実力を誤魔化していた。ならば、貴方自身にそれほどの実力はない!」

「本人であることを証明させに来たか。我が秘密を探ろうとは愚かな、だが良いだろう見せてやろう」

 

そう言って、朧は覆面を取っていく。

隠していた顔を、頭部を覆う布を、剥がしたのだ。

 

「なん……だと……」

「我が名はオボロ。忍刀十人衆が一人、妖刀髭切と膝丸の正統継承者、そして!」

 

その覆面の中身は、肉と皮のない髑髏。

骨だけの頭部がそこにはあった。

 

「1000年を生きる不死者である!」

 

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