ほぼっていうか100%リハビリ作みたいなものですが、実はこれ前話投稿から2週間経たない内に書き始めてます。どうなってるんですか?(錯乱)
ミエル、ナギサ、セイアがただただ駄弁るだけの話です。使いたいネタの間に挟むネタがなかった...
「・・・ん、これは・・・ウバか?味がはっきりしていてこの香りは間違いない。」
ティーパーティーのホスト専用テラスにて、ミエルは嚥下した紅茶の味わいを反芻しながら、静かに口を開く。
「はい。口に合うと良いのですが。」
それに対するは2人。トリニティの首脳部、ティーパーティーのホストを務める桐藤ナギサと百合園セイア。俗に言う首脳部だけでのティータイムに偶々野暮用でここを訪れていたミエルが混じる形となった。因みにミカはナギサの業務妨害罪により自室でロールケーキ100本の刑に処されているために不在だ。
「久し振りに飲んだが、これもこれで悪くない。最近はティータイムの時もずっと玉露だったから、一段と味が鮮明に感じられる。」
「ぎょ、玉露ですか・・・」
久方ぶりの紅茶の芳しい香りと複雑で繊細な味わいに、ふっと緩く口を歪めるミエル。それに対し、ティータイムに用いる茶がまさかの緑茶抹茶の類というトリニティ生にあるまじき生態を知ったナギサの顔が困惑に染まる。
「別に構わないだろう?ティータイムに玉露を飲んではいけないという決まりは無いのだから。」
確かにティータイムには紅茶という文化が常識レベルで染み付いているが、別にティータイムに紅茶以外の飲み物を口にしてはいけないなどという法律は存在しない。少なくともトリニティには。
「百鬼夜行の生徒とてそう毎日も飲む物でもないが・・・君の場合は筋金入りだね。」
ティータイムに緑茶というチョイスにやや引いている節のあるナギサに対し、セイアはかなり寛容な反応を見せる。確かに例を見ないレベルで稀有な緑茶派なミエルだが、重度の紅茶狂いであるナギサも大概である。
「そもそも、ティータイムの意義は午後この時間帯におけるリラクゼーションとフラットなコミニュケーションであって紅茶を嗜む時間ではない。紅茶あくまでもそのお供でしかない。」
「そ、それはそうですが・・・」
「というかナギサ。君、いつになったらティーポットから煎れた紅茶以外の飲み物を飲めるようになるんだ?はっきり言って一般生徒に喧嘩を売っているぞ、その紅茶舌は。」
「こ、紅茶舌・・・!?」
ミエル独自に抱える諜報チームからはナギサが先生を招いてのティータイムにおいて、昆布を湯に浸しただけの物を出し、あろう事か適当を言って先生を騙そうとしたという情報が入ったのは記憶に新しい。
ナギサの紅茶好きはよく知っている事とはいえ、流石にその時ばかりはナギサの正気を疑った。・・・ロールケーキをぶち込まれたくないので黙っておくが。
「ミカが良く君の事を愚痴ってきてね。やれ市販品は受け付けないだの、なんでも紅茶に混ぜようとするだの・・・代理とは言えティーパーティーホストとしての自覚はあるんだろうね?」
「そう言わないでやってくれ。今のナギサは自分の領分以外にも病み上がりの私に代わってホストとしての仕事も取り仕切っているんだ。過度に疲労すると人は誰しもがおかしくなるものさ。」
「セイアさん、それは今の私がおかしくなっていると?」
「少なくとも人格の変質はエデン条約の前後周りからかな。自覚が無いなら深く考えない方が良いけどね。」
「え・・・?」
紅茶の話から段々とナギサの心労の話に切り替わる雑談をセイアとの二人で繰り広げる。完全に話の当人が置いてきぼりになっているが、これもまた取り留めのないティータイムの醍醐味。
「安心しろ、元よりここは謀略の坩堝。話し合いの場で付き人から銃を向けられた所で私は気にも留めないさ。」
「・・・だからと言って茶会の場に堂々と銃器を出すのはまた違うんじゃないのかい?」
エデン条約前後における自らの人格の歪みをしれっと暴露され凍り付くナギサを余所に、セイアは突っ込みを投げつつその視線をテーブルへと向ける。
直径90cmほどの高級丸テーブルの上に置かれたこれまた高級なティーポットやアフタヌーンティースタンド。しかし、セイアの指摘通りミエルのティーカップの傍に置かれているのは菓子類の取り皿ではなく全長50cmはあろう巨大で武骨なリボルバー。
「・・・やや不気味だったので敢えてスルーしていましたが。ミエルさん、何故ティータイムの場にこのような物を?」
何故ティータイムの場にこんな物がというセイアの声に止まった時から復帰したナギサも便乗する。
「うん?どういう事も何も置いているだけだが。」
だが、それに返すミエルの回答は「食卓の場に食器が置かれている事に何の問題がある?」と言わんばかりの反応。これには溜息も出ない。
「・・・何故茶会の場でそれを出す必要があるのかを聞いているのです。それに、その銃は普段あなたが使っている銃とは違う物ではないですか?」
「まぁ普段使っているこれとは別物だな。」
呆れの感情を最低限取り繕って問うナギサに対し、あっけからんとした様子で普段愛用している銀色のリボルバー――S&W M500を懐から取り出すミエル。彼女の性格上割とぶっ放す機会が多いこの銃だが、ナギサやセイアの眼に映る大型リボルバーには酷使の痕跡が欠片も見当たらない。
「普段からよく撃っているとの話はよく聞きますが、本当に丁寧な手入れが・・・いえ、焦点が逸れました。」
しかし、それは机の上に鎮座している一切の塗装のない武骨なリボルバーの説明にはならない。ナギサとセイアが知りたいのは、何故ティータイム中の机の上にそんな物が置かれているのかだ。
「別の銃を持ち歩くこと自体は何も不自然ではない・・・ただ、ホルスターに収めず、生身のまま机に置くその真意を私達はまだ聞いていない。」
一体何故それを茶会の場に出すのか。そんな二人の視線を受けたミエルは、何でもない様に理由を口に出す。
「どうしても何も、ここ以外に置くところがないんだもん。」
しかし、返した答えは馬鹿丸出しのそれ。ナギサはえ?と困惑に眉根を寄せ、セイアは諦めたように紅茶を啜る。
「・・・別に良くないか?置いただけで誰か困る訳でもないし。というかうちじゃよくやるし。」
そんな反応を見たミエルは欠片も悪びれる様子もなく首をかしげる。本当にひどい空気が場を埋め尽くす。
「現在進行形で私達も困っているのですが。そんな適当な理由でそんな代物を出されても・・・」
「休憩時間だってのに一々うるさいなぁ。弾なんて入ってないよ。」
「弾が入ってる入ってないの問題ではないと思うのですが。」
置きたいから置いた。普段の相手になら通じる道理が通じない事をなんとなく察したミエルはホルスターから丁寧なニッケル加工が施された大型
「【鉄の咆哮】・・・普段の戦闘などこれ一本で十分なのだが、偶に、本当に稀にリロードが間に合わなかったり手数が欲しくなったりする時がある。」
軽く目を細め、思いを馳せる様に呟く様は、彼女の服装も相まってまるで歴戦の軍人を彷彿とさせる出で立ちのそれなのだが、言っている事自体は大隊の長というよりは最前線で銃を持って戦う兵士のそれである。
天橋ミエル。・・・こんなでも一応フォルティス分派の首長である。
「・・・あなたの立場からすれば、本来は前線に出る事などまずないと思うのですが。」
「そんな事はない。戦闘を指揮していてふと自らの銃撃や砲撃で敵を撃ちたくなった時に――」
「結局そこに帰結するのか。」
・・・結局は砲撃したい銃撃したい。そこに行き着くのがミエルであり、ミエルでもある(?)。大艦巨砲主義の前に正義も悪もない(適当)これには溜息も出ない。
「とはいえさっきも言った通り、こいつ1本で行くと本当に偶に隙を晒さざるを得ない時が出てしまう。その為の
「拳銃と呼ぶには余りにも大き過ぎるこれを、平時から2丁も持ち歩いているんですか・・・?」
「Pfeifer Zeliska。れっきとした拳銃だぞ。まぁ隠し武器の割に私の
「そ、そうなんですね・・・」
常識と言わんばかりに非常識な代物を語るミエルに、もうドン引きの表情を隠しもしなくなったナギサ。まぁティータイムの由来は午後の休憩がどうのと言っていた奴がいきなり砲だの銃だの抜かし始めるのだから無理もないが。
「ついさっき、これを隠している内帯が破れてしまってね。」
「なら置いてくれば良かったのでは・・・?」
「私の信念の象徴を置いて行く?君は紅茶を取り上げられて一日が過ごせると言うのかね。」
「流石に紅茶と銃とでは・・・」
愛銃。ゲーム内では固有武器と呼称される生徒それぞれがスマホ同様に当たり前の様に所持し、十人十色のカスタムと装飾を施すキヴォトス特有の文化であり常識。
戦闘の機会など殆どないナギサやセイアなどのティーパーティーのホスト達でさえ当然の様に愛銃を持ち、当然の様に手入れや射撃までもをこなす。なんならスマホすら持っていない園児ですら当然の様に銃を持っている為、銃文化の規模だけで言えばアメリカよりも深く広く浸透しているだろう。
【鉄の咆哮】
S&W M500をベースに部品の細部に至るまでの専用の調整とカスタムを施した特注品であり、天橋ミエルの固有武器。
数万円程度、物によっては1万円を切る値段で銃火器が販売されているキヴォトスにおいて100万円を優に超える高級品でありながら、"優れた巨砲"を体現するかのように高精度と高耐久を両立した一品。
トリニティのお嬢様達の中には銃に数十万円、果てには100万超えという金をつぎ込む者も決して珍しくはない。だが、その多くは装飾に純金や宝石を用いるなど外面的な要素に金をかけている場合が多く、精度と耐久性、信頼性などの性能面に100万を超える金をつぎ込むミエルはかなり異端ともいえる。
「Pfeifer Zeliska。鉄の咆哮の銘はこいつに付けるつもりだったんだがな。過去に実習の際、組んだペアの奴に正義実現委員会でもないのに武骨過ぎるとか言われて・・・」
しかし、ミエルからすれば鉄の咆哮の銘を与えたいのはテーブルの上に鎮座する
「まぁ、その方が言わんとしていたであろう事は分かります。」
「美麗と華々しさで敵を討てるのなら苦労はしない。それを理解もしようとしないでゲヘナがどうだの抜かす奴らの気が知れん。」
カップを置き、淡々と言い切るミエル。しかし、その様を見るナギサとセイアの表情はかなり微妙だ。それはごく最近にあったエデン条約絡みの一連の事件でもあり、デカくてぶっといモノ(物理)しか頭にない変人の珍妙な癖の事でもある。
「まぁそのゲヘナもエデン条約により敵ではなくなった。ごたごたこそあったものの、シャーレ介入のおかげもあって無事にエデン条約は締結された。討つべき敵は消え去った。どっかの馬鹿がシャーレの超法規権限に手を付けようともしたが・・・まぁ蝶の悪戯とでも言っておこうか。」
「結果良ければ全て良し。とはいかないが・・・少なくとも先生に返しきれない程の借りと恩を作る程度で誰も失わずに済んだのなら十二分に安上がりだと言えるだろうね。結果論だが。」
「う・・・」
茶の話から銃の話。銃の話から
「あとは如何にしてこの莫大な借りを返すかだが・・・」
「一つ一つ小さな事から便宜を図っていくのが最良でしょう。先生の意向というのもありますが、何より今のトリニティに学園消滅の危機を救っていただいた恩を返せるだけの余裕はないというのもあります。議会でも――」
「議会はやめろ議会は。どうせ下らん意見の渋滞が起きるだけだ。君はホストなんだから無理やりな恩義の返済は厳禁だとはっきりと言えばいい。変に条例じみた事を言うから結論が出ないんだ。ったくどいつもこいつも・・・」
「流石、戦車隊で議会を制圧した人が言うと説得力が違う。」
「あれは私の派閥の決定に一々屁理屈を捏ねるお前の先代が悪い。だからこちらも事前の勧告通り――ってそんな事を思い出させるな。」
趣味嗜好やふと思いついた題材など、様々な話題が泡の様に浮かんでは消える。だが、普段顔を突き合わせない者を交えた世間話のテーマともなればやはり直近に起きた出来事に帰結する。つまりエデン条約とそれにまつわるアリウス分校が引き起こしたテロ攻撃。
「そういえばアリウス分校の連中はどうなんだ?先生とアリウスから離反した一部の生徒が生徒会長を名乗る化け物を倒したという所までは割と有名だが・・・審問会での先生の言葉の通り私もアリウスへの干渉は控えているから情報がない。」
「そうですね・・・結果はまだ未公表ですが、先に行われたアリウス修復作戦は成功。アリウス分校の残存勢力の組織的抵抗力を撃破したとの事ですが、投降しなかったアリウス生達は未だカタコンベ内に残っているとの報告もあります。」
「・・・ベアトリーチェとかいう奴の思想は相当深くまで根付いているらしいな。まともな者なら精神的にも肉体的にも極限なあの環境に戻ろうなど――いや、既にまともじゃないからああなのか。生まれ育ちがアリウスなら、そいつにとっての普通もまたアリウス・・・」
「それが彼女たちの常識なんだろうね。私達が当然の様に享受できているものも、向こうから見れば理解し難いもの・・・いや、忌むべきものの方が正しいかな?だが私達から見ても、アリウス分校の環境は到底理解し難いものだ。」
昼頃を過ぎ日の傾きが肌でも感じられる午後3時半過ぎ。政治家達の世間話は終わる気配を見せない。
「元々トリニティ内ではアリウスに関する文書が軒並み禁書扱いだったからなぁ。戦争直後からそんなレベルの情報統制なんてされてしまえば、すぐに人の記憶から消えてしまうだろうさ。」
空になったティーカップの持ち手を人差し指で押し、置き皿の上でカップを回しながら、ミエルは緊張の欠片もない様子で滔々と喋る。
「全く苦労したよ。分派の首長の座を得て、ティーパーティーに物言いできるまで勢力を広げて尚閲覧が許されないってんだから。まるで知る事が罪であるかの様な扱いだったな・・・」
「・・・見たんですか?」
「見たとも。だいぶ前にね。掃除が数年に一度なせいか滅茶苦茶埃を被っていたぞ。一通り埃は払ったが、今度図書委員会のウイに正式な保護と修繕を依頼するべきだ。」
「君に罰則を適応するのが先になりそうなんだが。」
・・・滔々と喋りすぎて喋らなくていい事まで喋っているが。
「残念時効で~す。というか既に禁書扱いのあれらは図書委員会に引き渡し済で~す。一歩遅かったなぁティーパーティー?」
「ごほっ!?ちょ・・・え・・・!?冗談ですよね・・・?」
しれっと禁書破りをしていたミエルに紅茶を吹きかけたナギサを横目に、したり顔でこれ以上喋らない方が身の為な筈の口を回す。
「いやぁ~、手の周りが遅いねぇ?事後処理に忙殺されていたのは認めるが、もう少し緊張を抜いて足元を見るべきだ。当時も足元を見なかった結果首を切り飛ばされそうになっただろうに。」
「・・・ミカさんと同様に奉仕活動を命じますよ?審問会を通して正式に。」
「ごめん本当は作戦後のミネとサクラコと話し合って決めた。一応だけど君の付き人の一人も同席してた。」
しかし、そこは元疑心暗鬼ナギサの必殺技。即座に審問会と刑罰をチラつかせる。勿論こうかはばつぐんだ。即行真顔に戻ったミエルは白旗を上げ、真相を吐く。
「先に言ってくださいそういうものは・・・!どうしてさも謀略であるかの様に言うのですか。」
「さしものミエルも草むしりは嫌か。」
「草むしりも罰も構わないが、この時期の審問会は流石にまずい。トリニティの裏切り者と同じ扱いをされかねん。」
政治や戦術においてはナギサもセイアも舌を巻くほど頭が回るのに、なぜこういう場面で要らないおふざけをするのかと盛大に溜息をつくナギサ。全く、どうして神はこの大艦巨砲主義者に頭脳を与えてしまったのだろうか。おかげで胃痛の種が増えていく一方だ。
「まぁそう呆れてくれるな。君達がその席に着いてからは私も然るべき忠を尽くしているんだ、ちょっと調べればすぐ分かる嘘であいつもこいつも魔女裁判にかけては政治が瓦解するぞ?」
しかも次いだミエルの声はつい今しがたの脅しなどなかったかの様な物言いときた。これでは救いようがない。
「本当に悪質な冗談がお好きですね・・・」
「戯れと言ってくれ。君にまでブラックジョークと片付けられてしまえば、もう会議の場での皮肉にしか使えん。ミカ本人に言う言葉でもないしな。」
最も、政治の場ではこの図々しさに要塞の如き論理武装と揺ぎ無い物的証拠を合わせてくるので、これでもまだ全然マシな方というのが良いのやら悪いのやら。本当に厄介極まりない。
「トリニティの裏切り者。この概念が早急に日常会話の下らない冗談に成り下がるのならそれに越したことはない。むしろ、それを言うだけで批判や政治的意図を孕む発言になっている今の方がずっと危ない。」
・・・だからこそ、当時解散寸前だったフォルティス分派を再興出来たのだろうが。
「それは・・・」
冗談一つから、いとも容易にこういう話に繋げられる。唐突に場の空気をひっくり返す、天橋ミエルの恐るべき特徴の一つ。
「現にミカを忌む連中は彼女の事を魔女と呼び、裏切り者と叫んで憚らない。・・・アリウスと同じではないか?こうして裏切り者と叫ぶ声で誰かの居場所が分かってしまう様は。」
何処ぞのゲヘナのトンデモニウムな様子で巫山戯る無能の顔はどこへやら。表情こそ変わらないものの、その眼光は相手を貫かんばかりに鋭利に研ぎ澄まされる。
「私は別に構わないよ?猜疑と謀略こそが私の本領の1つでもあるからね。ただ、君達はそれを望まないのだろう?」
天橋ミエル。トリニティ入学時から政治の闇に浸かり、肥溜めの如く醜い大政争を素面で蹂躙した謀略と策略の申し子。
「シャーレの先生はああ見えてもかなりの寡黙だ。言葉を尽くす様で、抽象な物言いを好む。我らの主体性を是とする以上無理もない事だが、かといって言葉を尽くし過ぎればそれは指示となり命令と成りやがて従属になる。」
彼女の極まった大艦巨砲主義の一面もまた、天橋ミエルという一人の本質を隠す為のヴェールに過ぎないと言う者も少なくない。
「一枚岩では全体主義になる。」
カップに茶を注ぐ手を止め、見えない平らを撫でる様に両手を空に滑らせる。議会では、彼女のこの一挙手の動作にすら怖気を感じる者も居るという。
「しかし制御不能状態では組織にならない。」
そして次に、表現されていた見えない平らを一息に握り潰す。無秩序に乱立し別を向く小点の集まりは、あくまでも値の集まりでしかない。
「幾つもの岩くれが無数に重なり合って不安定に歪みながら進み続ける。人の集まりはいつにしても安定しないものだ。」
大まかに集い不安定に削げ落ちくっ付き、各々の向きが若干逸れた方向に向きながらも全体では概ね同じ方向を見ている。どの学園でも変わらない、組織たるものの在り方。
「神ですら完全な秩序を保つ事は出来なかった。だからこそ、我らは歪みを認め、受け入れて進み続ける。完璧など在り無いからこそ、人は変化できる。変化するから、先へ進める。」
聖戦を前にした演説を彷彿とさせる所作と語り口。今の今までで、彼女のこのやり口に一体どれだけの者が騙され、陥れられたのだろうか。
今でも覚えている。入学して間もない頃、当時の先輩が何れティーパーティーを支える一翼になる者として見ておくべきだと連れられた分派合同会議。入学して数か月もない1年生などが政治など分かるはずもないので、傍聴席に座っていたナギサ。
しかし、その会議の場において、本来分派の首長か3年生が座る筈の代表席に座り上級生を傍に控えさせ、自身より遥かに経験と知識を持っている筈の格上の相手の悉くを論破する
――それが、たった数か月でこうも違う。
恐ろしかった。
この先、自分がフィリウス分派に加わりどういう道を進むのかに対しては何の心配もなかった。むしろ如何なハプニングと難題のが待ち受けているのだろうかとやや高揚すらあった。だが、この時だけは、この時ばかりは、彼女を相手に論弁を振るわねばならない自らの未来に恐怖した。
「だからこそ――――」
だからこそ―――
「ミエル様ぁぁぁぁーーッ!!」
「うるっさいわこの戯けがッッ!!」
ボガァーン!!
・・・天橋ミエルがここまでの変人であると知った時の衝撃は今でも鮮明だった。
「へぶッ!?」
冗談から跳ね上がるように始まったミエルの演説は、彼女の部下――フォルティス分派の生徒の大声とそれを吹き飛ばす大銃声により終わりを告げた。
「貴様、ここを何処だと心得る!いくら礼儀不要と言えど大声で叫び散らしながら走る馬鹿が何処にいる!火薬に埋めるぞ!!」
何が起きたか、それは単純。ミエルが語りを締めくくろうとした時、テラスの外を爆走するフォルティス分派の生徒が大声でミエルの名を叫び、それに切れたミエルが机の上に置いてあったPfeifer Zeliskaでその頭部を撃ち抜いた。・・・あれ、さっき弾入ってないと言ってなかったかこいつ。
「・・・弾、入ってるじゃないか。」
「手入れ前の状態じゃないんだし当たり前だろう。」
「流れるように嘘を自白しましたね。」
咳払いで完全にぶっ壊された場の空気を誤魔化したミエルはテラスの柵を跨いで外に出るという品性もクソも投げ捨てた動作で倒れ伏す自分派の生徒に近寄ると、そのままチンピラ座りで問いかける。
「今私は貴重な友人達と親交を深めていたんだが。そんな私の気分を害した上に恥までかかせて一体何の用だ?返答次第ではお前のシャンプーとリンスにRDXを混ぜ込むぞ。」
「脅しが陰湿越えてほぼ犯罪ですね・・・」
「ナギサの化粧品にも混ぜてあげようか?」
「・・・」
「君がそれを言うと冗談に聞こえないから止めてくれないか。現にナギサが固まってしまった。」
人の心を肥溜めに投げ捨てたと言わんばかりの脅しに外野(二名)がドン引く中、注目の的となったフォルティス分派の生徒は地面に突っ伏したまま息も絶え絶え()に要件を告げる。
「ミエル様・・・例の"ブツ"・・・が・・・完成、しました・・・私は、その報告に・・・」
それを聞いたミエルの顔色がパッと明るくなる。
「おい馬鹿そういう事は早く言え!」
ボガァーン・・・!!
部下の報告で何を喜んだか、強く両手を握りこんだ事で再度火を噴くPfeifer Zeliska。射出された銃弾の軌道上には倒れ伏す生徒の後頭部がある。え?普通ならそうはならないだろって?知らないっスね、そんな普通。
「ぐぇぇっ!?」
「よっしゃそうとなればティーブレイクは終わりだ!ナギサ!セイア!少々の時間邪魔したな!また次の分派会議で会おうッ!」
「えぇ・・・」
下手をすると通常のスナイパーライフル以上の威力を誇る.600.N.E.弾が衝撃の抜けない頭に再度至近直撃したフォルティス分派の生徒はヘイローを消失させ、完全に気を失う・・・のを気にも留めず、ミエルは意気揚々とその場を後にするのであった。
―――天橋ミエル。
その政治手腕から行き過ぎた大艦巨砲主義ですら彼女の本性を覆い隠すヴェールの一枚だと云う者も居る。
・・・しかし、そういう者こそ、彼女の掌の上で踊らされている第一の証拠とも言える。
天橋ミエル
紅茶よりも緑茶や抹茶の方が好き。アイスのフレーバーの好みも抹茶。次点でバニラ。
終始雑なのは許しておくんなまし。もう片方のお話はこっち以上に詰んでいる状況で、今合間を縫ってどうにか執筆と調整を進めています。本当に申し訳ございません。