勇者が生まれないか街を見張っていた魔物の私、懐いてきた子をうっかり勇者に育て上げてしまう   作:うちっち

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魔王様は部下の正気が信じられない

 迷子札騒動は、昼前にはどうにか片づいた。

 

 白帳には、午前中の騒動もすでに記録されていた。というか、私がせっかく書いた報告がまた上書きされていた。

 

 

 

 

 

 

(私の書いた報告)

 

 迷子札がいっぱい飛んできた。

 札なのにつきたてのお餅みたいにペタペタくっつく。

 ユリスくんは札に埋もれていて面白かった。

 お昼の焼き菓子がとても美味しくて昼寝がはかどります。

 すやや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(上書きされた報告)

 

 事象:白楔宿内における迷子札の誘導不良。

 原因候補:深層刻印後の標残響と、宿場内導き結界の干渉。

 ユリス:迷子札多数を受け止め、対象者の誘導。

 クラリッサ:札導線の調整。仮受付方式を採用。

 エルミナ:対象者の鎮静および香草茶配布。

 ネリネ:仮受付。読札担当。起立なし。返却先:勇者一行。

 備考:すやや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はバタン! と音を立てて白帳を閉じた。

 書くのに30分もかかったのに。残ってるのなんて、備考の「すやや」だけである。3文字。3秒で書ける部分しか残ってない。かなしい。貼りついた迷子札も全然はがれなかったし……。

 私はきっと、この宿と相性が悪いのだ。

 

 

 

 

 その後の昼食には、黒パンと豆の煮込みと、小さな焼き菓子が出た。焼き菓子は巡礼者用の堅めのものだったが、噛むと蜂蜜と木の実の香りがした。おいしい。お土産にといくつか包んでもらい、私は感動した。

 訂正。白楔宿はとても良い宿である。

 

 

 

 

 

 ところが、食事が終わるころ、女将さんの顔が少し曇った。

 

「王家の救護馬車が、まだ着かないんです」

 

 ユリスくんが顔を上げる。

 クラリッサさんは水差しを置き、エルミナさんは薬草袋を結ぶ手を止めた。

 

「救護馬車?」

「はい。王家から巡礼宿へ回ってくる馬車です。薬、包帯、保存食、通行札、道具類を積んでいます。あれが届かないと、夕方以降の受け入れに支障が出てしまって」

 

 女将さんは、少し申し訳なさそうに私たちを見た。

 

「本来なら宿場の者で見に行くのですが、今朝の札騒ぎで人手が足りません。もし、西の街道を少し見てきていただけるなら……」

「行きます、ちょうど途中ですし」

 

 ユリスくんはすぐに答えた。

 こういう時のユリスくんは止まらない。

 

「王家の馬車なのですね」

 

 エルミナさんが確認するように言った。

 

「はい。教会の救護品ではなく、王家の巡礼路支援品です。この辺りの宿場や救護所には、王城アルディアからも物資が回ってくるんです」

 

 王城アルディア。

 

 私も名前だけは聞いたことがある。人間の王様がいる大きな都。聖都とは別に、この国を治めている場所らしい。聖都と王城、ややこしい。一緒にしちゃえばいいのに。魔王城は一つしかないので、こういうとき便利だなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、私たちは白楔宿を出て、西の街道へ向かった。

 

 街道は、聖都へ続く白い石畳ほど整ってはいなかったが、巡礼路らしく、ところどころに白い道標が立っている。道の脇には低い草が広がり、遠くには灰色の丘が重なっていた。

 

 風が吹くと、乾いた草の匂いと、馬車の轍にたまった土の匂いが混じる。

 

「馬車の跡があるわ」

 

 クラリッサさんが道の土を見て言った。

 ユリスくんがしゃがみ込む。

 

「車輪が片方、深く沈んでいます。急に止まったのかもしれません」

 

 エルミナさんが、草の折れ方を見ながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 道を少し外れた先に、王家の救護馬車はあった。

 

 荷台の片側が低く傾き、車輪の近くに木片が散らばっている。馬は二頭とも怯えて鼻を鳴らしており、御者らしい男の人が片膝をついて、腕を押さえていた。

 

 そして、その荷台に群がる灰色の影が見えた。

 犬ほどの大きさの鼠だった。

 

 ただの鼠ではない。口元からは曲がった牙が二本突き出ている。何匹もが荷袋や木箱に噛みつき、ばきばきと音を立てて角を削っていた。

 

 

 

 

「牙鼠だわ」

 

 クラリッサさんが短く言った。

 

「荷をかじるの?」

「木箱、革袋、乾燥肉、薬草の束。噛めるものはだいたい噛むわ。放っておくと、馬車ごと穴だらけになる」

 

 牙鼠の一匹が、薬箱らしい木箱の角に牙を立てた。乾いた音がして、箱の蓋が少し割れる。

 

「薬箱が!」

 

 エルミナさんの声が強くなった。

 珍しい。薬湯を作る人として、薬箱がかじられるのは許せないらしい。

 

 

 

 

 

 その時、牙鼠のうち何匹かが、同時にこちらを向いた。

 

 灰色の小さな目が、療養椅子の上にいる私を見た。たぶん、浮いているから一番目立っていたのだろう。とりあえず、笑って手を振ってみた。

 

 すると次の瞬間、群れの半分ほどが、荷物を放り出して草むらへ逃げた。背中の針毛を逆立て、きゅう、と変な声を上げて。どうやら鼠は私の笑顔が嫌いらしい。失礼な。

 

 

 

 

 

 クラリッサさんが少しだけこちらを見たが、すぐに残った牙鼠へ視線を戻した。

 

「数が減ったなら好都合よ。ユリス、前へ。箱は壊さないで」

「分かってる!」

 

 ユリスくんは聖剣を抜いた。

 

 ただし、いつものように光の刃を伸ばしはしなかった。あれをここで使ったら、牙鼠どころか荷馬車ごと真っ二つである。ユリスくんは剣の腹で地面を打った。ばん、と乾いた音が鳴る。

 

 残った牙鼠が一斉に振り向いた。

 かなり顔が怖い。

 

「こっちだ!」

 

 ユリスくんが荷馬車から離れるように走る。牙鼠がそれを追っていく。速い。足が短いのに速い。地面を這うように走る灰色のかたまりが、ずもももも、とユリスくんの足元へ殺到した。

 

 でも、ユリスくんはうまく引きつけていた。剣で斬るのではなく、柄や鞘で叩いて向きを変え、踏み込んできた牙鼠を横へ弾く。

 

 

 

 クラリッサさんは、荷馬車の周囲に小さな石を三つ投げた。

 

 石が地面に触れた瞬間、透明な壁が低く立ち上がる。牙鼠が荷台へ戻ろうとしても、鼻先をぶつけて跳ね返された。

 

「荷箱は囲うわ。エルミナ、御者を」

 

 エルミナさんはすぐに御者の方へ走った。御者の腕には噛み跡があり、血がにじんでいる。馬の脚にも擦り傷があった。

 

「痛みますか」

「す、すみません、薬箱が」

「薬箱より先に腕です」

 

 エルミナさんは真面目に言って、御者の腕へ手をかざした。淡い光が包帯のように広がり、血が止まっていく。

 

 

 

 

 牙鼠はまだ荷馬車の下にも潜っていた。

 

 私は療養椅子の上から、馬車の影を見下ろす。高い位置にいると、荷台の隙間や車輪の裏がよく見えた。地面の影の中で、灰色の尻尾が一本動く。

 

「右の車輪の下に一匹いるよ」

「右!」

 

 牙鼠が飛び出す。クラリッサさんの結界にぶつかって跳ね返り、そこをユリスくんが剣の平で押さえた。

 

 

 私が見つける。

 ユリスくんが追い払う。

 クラリッサさんが逃げ道を塞ぐ。

 エルミナさんが御者と馬を診る。

 

 そうやって一匹ずつ荷馬車から離していくうちに、牙鼠の群れはだんだん勢いをなくしていった。

 

 最後の一匹も、ユリスくんが剣の平で荷台から押し返すと、短く鳴いて草むらの奥へ逃げていった。

 

 追わなかった。

 荷を守るのが目的で、巣を壊す必要はない。そうクラリッサさんが言ったからだ。ユリスくんも頷いた。

 

 

 

 

 荷馬車の周りが静かになると、御者の男の人がようやく息を吐いた。

 

「た、助かりました……」

「どうして止まったの? 走り抜けてしまえば良かったのに」

「いえ最初に襲われた時、一匹だけ……急に炎を」

「炎、ですか?」

 

 

 

 

 

 

 その時だった。

 荷台の下で、かさり、と音がした。

 

 逃げたはずの牙鼠が、一匹だけ残っていた。薬箱の陰に潜り込んでいる。

 

 他の鼠より赤い背中の針毛の間を、ぱちぱちと赤い火花が走った。

 クラリッサさんの顔色が変わる。

 

「火走り鼠よ!」

 

 次の瞬間、鼠が大きな火を吐いた。

 

 荷馬車と同じくらいの大きさの炎は風を巻き込み、布を広げるみたいに膨らんだ。そしてそのまま、まっすぐ私の方へ向かってくる。

 

「ネリネ!」

 

 ユリスくんの声がした。

 ぼふん、と音がして、療養椅子ごと全身が炎に包まれる。

 大丈夫大丈夫。あ、でも、前髪が少し焦げた気がする。

 

 

 

 

 そのとき、炎の音が、急に遠くなった。

 目の前に、白い布があった。

 

 さっきまでなかったはずの布。

 けれど、最初からそこに掛かっていたみたいに、私の膝先でぴんと張られている。

 

 布の向こうで、誰かが医療鞄の留め具を外す音がした。

 

「診察しましょう」

「!?」

 

 ノルクだった。

 手には医療鞄。

 

 早い。意味がわからなかった。

 いつにも増して早すぎる。

 

 

 

 

 

「せ、せ、せせせ先生……?」

 

 エルミナさんが両手で口を押えた。

 

「ど、ど、どうしてここに?」

「経過観察です」

「今、火が当たった瞬間に出てこなかったかしら?」

「経過観察です」

「答えになってないわ」

 

 クラリッサさんは、焦げた草と、ほぼ無傷の私の療養椅子を見比べていた。

 

「あなた、ネリネが怪我をした瞬間に地面から出てくる医者なの?」

「理想的には」

「理想の医者の形が少し怖いわ」

 

 ノルクは、まったく気にしない顔で私の前に立った。黒い外套。細い眼鏡。いかにも、書類の不備を許さなさそうな立ち姿。

 

「髪先に軽微な焼け。皮膚、呼吸、魔力循環に異常なし」

「ほらユリスくん、大丈夫だって」

 

 ユリスくんは、まだ少し青い顔をしていた。

 

「ネリネ、痛まない?」

「痛くないよ。大丈夫」

「本当に?」

「本当に。前髪がちょっと焦げてびっくりしただけ」

「炎が直撃してそれはどうなのかしら……?」

「椅子が結界になって守ってくれたんだと思う」

 

 ユリスくんは、まだ不安そうにノルクを見た。

 

「ノルク先生、本当に大丈夫なんですか」

「痛覚反応なし。焦げは軽微です」

「……そうですか」

 

 ユリスくんは安心したように息を吐いた。わ、私もさっき、同じこと言った……!

 けれど、ユリスくんは少しだけ眉を寄せる。

 

「先生は、すぐ分かるんですね」

「診察しましたので」

「……そうですよね」

 

 なんだか、ユリスくんの声が少し低い。

 

 ノルクが私の前髪の焦げを軽く払ってくれる。

 ユリスくんの眉が、もう一段寄った。

 

「先生、患者に触らないと診察できないんですか」

「触診は基本です」

「……そうですか」

 

 ユリスくんの「そうですか」がなんかだんだん増えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてノルクはいつもの手術用の囲いを広げた。

 

「で、ノルク、なんで来たの?」

 

 私が小声で聞くと、ノルクは、医療鞄から取り出した薄い紙を広げた。

 私が送った白帳の写しだった。

 

「昨夜届いた報告書に異常がありました」

「ちゃんとしてたでしょ?」

「はい。異常です」

「ちゃんとしてたのに?」

「発生事案、原因候補、参加者および確認事項、負傷者、次回確認事項。極めて整っています」

「いいことでは?」

 

「ネリネ様の報告書としては異常です」

「ひどい」

「食事、菓子、同行者への雑感、余計な自己弁護が欠落していました」

「ノルクって私の報告書のこと、そう思ってたんだ……」

「重要な識別要素です。それに比べたらこんなもの! 何の価値もない!」

 

 ぺいっ! とノルクは私の報告書(修正されたやつ)を宙に投げ捨てた。物は大事にしてほしい。

 

 

 

 

 

「報告書がおかしいってだけで、ここまで来たの? 調子が悪そうって?」

「文体の急変は、精神干渉、代筆、または判断能力低下の兆候である可能性がある、と魔王様と結論付けました」

「つまり?」

「頭部および思考の確認に来ました。魔王様もすぐ行ってこいと」

「頭がおかしくなったと思ったんだ……」

 

 

 

 

 

 ノルクは私ではなく、ユリスくんたちに向かって言った。

 

「灰鐘村まで同行します。医者として」

「同行するんですか」

 

 ユリスくんの声が、さらに低くなった。うわ、こっちはこっちで、なんか嫌そう。

 

「ネリネは、俺たちが見ています」

「見ていることと、診られることは別です」

「俺がちゃんと見ます」

「勇者様には聖剣の振り方があります。患者の経過は専門家に」

「俺は、ネリネの専門家です」

「……」

「……」

 

 二人とも黙った。

 

 ユリスくんは、ネリネの専門家。

 私もそんな専門があるとは初めて知った。

 

 

 

 

 

 そして2人が黙ってしまったせいか、クラリッサさんが代わりに口を開く。

 

「ノルク先生、あなた、いつも都合よく現れるわね」

「医者ですので」

「せ、先生はさすらいのお医者様なんです!」

 

 エルミナさんが慌てて擁護してくれる。いい人。

 しかし、クラリッサさんは不服そうな表情を変えなかった。

 

「ほー。すごい信念ねえ」

「恐縮です」

「褒めていないわ。何一つ」

「恐縮です」

 

 

 

 

 

 結局、ノルクは同行することになった。

 

 私は前髪を触った。

 少しちりちりしている気がする。

 

 荷馬車の周りがようやく静かになると、御者の男の人が深く頭を下げた。

 

「助かりました。王家巡礼路管理局のラウエルと申します。白楔宿へ救護品を運ぶ途中だったのですが、この有様で……」

「巡礼路管理局って何ですか?」

 

 ユリスくんが聞き返す。

 

「王城アルディアに本局を置く、王家直轄の巡礼路管理部署です。教会の祈りとは別に、道を通れるようにする仕事ですね」

 

 王城アルディア。王家の本拠地。

 聖都とは別に、人間の王様たちがいる場所。

 

 

 

 

 

 馬車の車輪は応急で補強し、荷箱はクラリッサさんの結界で固定した。牙鼠にかじられた袋は何枚か交換し、無事だった薬箱と包帯箱はエルミナさんが確認した。

 

 

「ありがとうございます。これが駄目になると、宿場の救護所が困るところでした」

 

 ラウエルさんは荷を確認し始めた。薬、包帯、乾燥食、補修用の釘、通行札の束。王家の印が入った木箱がいくつもある。

 

 エルミナさんは、その箱を静かに見ていた。

 

「巡礼路は、教会だけで支えているわけではないのですね」

「ええ。祈りは教会に。道と荷と記録は王家に。もちろん、実際にはもっと入り組んでいますが」

「記録も?」

 

 クラリッサさんが反応する。

 

「はい。通行記録、救護物資の搬入、宿場の補修、巡察報告などです。地味な仕事ですよ」

「地味な仕事ほど、あとで効くものよ」

 

 クラリッサさんはそう言って、白帳へ視線を落とした。

 ラウエルさんは少しだけ笑った。

 

 

 

 

 

「勇者様方のおかげで、救護品はほとんど無事です。せめてもの礼として、これを」

 

 彼は腰の革袋から、青い印の入った小さな札を取り出した。

 王家の紋章が押されている。教会の白い札とは違い、落ち着いた青色だった。

 

「王家の青印札です。王家管轄の宿場、救護倉庫、街道門で身分確認に使えます。それに、勇者様方は灰鐘村へ向かわれるのでしょう?」

 

 ラウエルさんは、ほんの少しだけ声を落とした。

 

「西巡礼路は、おそらくこれから少し荒れます。王家の札があって損はありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして午後。

 私たちは、もう1度、灰鐘村を目指して歩き出した。

 

 ノルクは、当然のように私の療養椅子の少し後ろを歩いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 灰鐘村へ近づくにつれて、風の匂いが変わった。

 草の匂いに、焦げた木の匂いが混じる。

 遠くの丘の向こうに、細い煙が上がっていた。

 

 エルミナさんの表情が引き締まる。

 

「急ぎましょう」

 

 

 

 

 

 

 灰鐘村は、名前の通り、灰色の石壁に囲まれた小さな村だった。

 

 村の中央には、古い鐘楼がある。広場の端には壊れた荷車があり、柵の一部が焼け焦げていた。

 

 村人たちは無事に見えた。

 けれど、村の入り口に立っていた男の人が、私たちを見るなり息を呑んだ。

 

 

 

 

 

「勇者様……!」

 

 ユリスくんが前へ出る。

 

「神託を受けて来ました。魔王軍の影があると」

 

 その言葉に、村人たちのざわめきが広がった。

 魔王軍。私たちの影がここにはあるらしい。

 

 黒く焦げた柵。壊された荷車。けれど、食料庫は無事。井戸も無事。鐘楼も壊されていない。家を狙ったようでいて、逃げ道は残っている。

 

 なんだろう。

 何がしたいのか、よくわからない。

 

 

 

 

 村の子どもが、小さな声で言った。

 

「黒い角の魔物が来たんだ! キーキーって高い声で鳴いてて!」

 

 私は、ぴくりと反応しそうになった。

 黒い角。

 

「布みたいなのをかぶってて、こう、稲妻みたいなのを出してた!」

 

 子どもは両手を頭の横に立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ノルク』

『はい』

『ああいう魔物、いたっけ?』

『該当なし』

『だよね。角だけなら、魔王様にもあるけど』

『魔王様は布を被って高い声で鳴きません』

『だよねえ』

 

 私は少しだけ、村の焼け跡を見た。

 黒い角。布。いかにも魔王軍です、という雑な見た目。

 

 

 

 

 

 

 

 灰鐘村。

 

 魔王軍の影あり。

 救いを待つ者あり。

 

 

 

 

 神託は、そう言っていたのに。

 ……はて?

 

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