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※注意※
この作品はフィクションです。当作品では実在する音楽グループが登場しますが、グループ名及び曲名、歌詞を除き、作中で語られる全てのことは現実の如何なる事象、現象その他と何の関係もございません。
某日、シブヤのストリートの、とあるライブハウス。
♪「“Oh,Christopher Colombus!”」
『S.O.Cru』を名乗る男の歌が響き渡っていた。
男の名は如月進ノ介。男は前世の記憶がある。
俗にいう転生者である。
男は生前、かなりの音楽好きであった。洋楽も邦楽も、現代のも昔のも、クラシックからEDMまで、ジャンルを問わずに音楽を嗜む男だった。
そんな彼が、他のどんな音楽よりハマった音楽がある。
SOUL'd OUT である。
彼らが世に放った曲の数々は、解散から十余年経って『時代が追い付いてきた』と言わしめるほどに、当時としては前衛的なものであり、刺さる人には刺さり散らかし、ファンからはカルト的な人気を誇っている。
男もその例にもれず、狂信的なS.O好きであった。
ある日、イヤホンで『And 7』を聞きながら、ノリノリで横断歩道を渡って…信号無視で突っ込んできたトラックに気づかず撥ねられて三途の川を渡った程には。
これを読んでいる諸君らは、よく周りを見て渡るように。
目が覚めたら知らない天井を見ていた男は、新たに『如月進ノ介』の名を得てすくすくと育ち…ある日愕然とした。
生まれ変わった世界は、紛うことなき日本であるはずなのに、SOUL'd OUT が存在しなかったのである。
進ノ介は憤った。あの曲たちがないことは、其れ則ち日本の音楽界の衰退を招くのと同義だろうと。
実際はそんなことはないのであろうが、S.O.狂信者の進ノ介はそう信じて疑わなかった。
転機が訪れたのは、進ノ介がピアノ教室に通い始めたことだった。
わずか数ヶ月でめきめきと上達し、気づけばその教室で一番出来る奴として有名になっていた。
どうやら男は、二度目は類まれなる音楽の才能をもって生まれたらしい。
将来はプロのピアニストだの何だのと講師が騒ぎ立てるのを右から左へと聞き流しながら、進ノ介は閃いた。
自分で再現してしまえばいいのではないか、と。
進ノ介は親に懇願し、パソコンと作曲ソフトにシンセサイザーを買ってもらい、小学、中学の大半を作曲と歌唱の練習(主に活舌)に費やした。
両親が、息子の部屋から流れる知らないメロディーとバカげた速さのラップ調の歌詞を聞き続け、SAN値が軽く削られる程に。
時間が経つのは早いもので、進ノ介は高校生になった。
二回目の人生というアドバンテージをフルに使い、要領よく成績を稼いで都立高校に進学した。
名を神山高校という。
入学して2か月ほど経っただろうか。
お騒がせ者の変人二名以外のことはある程度慣れてきた頃だ。
どうやら二年生に、ストリートでブイブイ言わせてるのが居るらしい。
ストリート。その単語を聞いた進ノ介に電流走る。
成程、小さなライブハウスでなら練習の成果を確かめるのには最適だろう。
飛び入り参加ができるところもあるだろうし、小手調べにはちょうどいい。
思い立ったが吉日、進ノ介は放課後、ストリートに繰り出すことにした。
「さぁ、次に歌うのはコイツだ! 飛び入り参加の高校生、『S.O.Cru』!」
観客たちは、素人がカラオケをしに来たと冷笑するものが半分、さほど興味を持たず酒のアテになればいいと考えている者がもう半分。
このストリートでデキる高校生と言えば、あの四人組しかいないのだから、それ以外は有象無象だ。それとも、あの四人の噂を聞いて勘違いしたのだろうか。
どちらにしろ、大したことはない。そう思っていた。
「…Track 1, LET'S GO.」
キャップを被った少年が音響係に指示を飛ばす。そして聞いたことのないイントロが流れ始める。
なんだか、不思議と聞き入ってしまうような――――
♪「NAH ウェカピポ YO!」
「『S.O.Cru』?」
「そう、今日の対バンの相手。なんか、最近勢いづいてるんだって。」
Vivid BAD SQUAD の東雲彰人は、同じく仲間であり、このライブカフェ『WEEKEND GARAGE』の看板娘でもある白石杏の言葉に顔を顰める。
「聞いたことないぜ、そいつ。小さい箱でもてはやされてるだけじゃねぇのか?」
「さぁ、細かいことは何もわからないわよ。ただ、不思議なのは本人からじゃなくて、ライブハウスの支配人からの連絡だったのよね。アイツはすごい、って。相当気に入られてるようね。」
「ふぅん…。何人なんだ?」
「どうやら一人らしいよ。」
「お待たせー!」
「すまない、遅くなった。」
そんな会話をしていると、同じグループの小動物担当小豆沢こはねと青柳冬弥が店に入ってくる。
「ううん、そんなに待ってないよ。それより、今日対バンになったから。」
「えっ、対バン? 私今日友達呼んじゃった…」
「それくらいなら問題ないだろう。いつものように歌うだけだ。」
どうやら予期せぬ客が来るらしいが、そんなこと彼らには関係ない。
むしろ、いずれ『RAD WEEKEND』を超える時にはぜひ友人たちにも見てもらいたいものだ。
友が見ている手前、下手な歌は聞かせられない。気合が入る四人であった。
「「「「ありがとうございました!!」」」」
「こはねちゃん、すごかった…」
「杏も、前より歌に磨きがかかったって感じがするね。」
「彰人君も頑張ってるわね。…絵名のやつ、迷惑かけてないかしら…?」
「とーやくん、上手だった~!」
「そうだね、私ももっと練習しないとな…」
Vivid BAD SQUAD の歌が終わる。
こはねに招かれていたLeo/need、MORE MORE JUMP! の八人は、WEEKEND GARAGE で彼らの歌に聞き入っていた。
バンド、アイドル、そしてストリート。ジャンルは違えど切磋琢磨しあう間柄の彼ら、彼女らは、たまにこうして互いの歌を聴くことがある。
そして、観客の熱が冷めないうちに、次の歌い手がステージに上がる。
「次はこいつだぁ! 新進気鋭のルーキー、『S.O.Cru』!」
「…あれ、一人?」
こはねの友人の一人、花里みのりが困惑の声を上げる。
それと同時、周囲から歓声が沸き上がった。
「…Track 6, LET'S GO.」
彼の短い言葉に続き、イントロが流れ始める。どこか前時代的な、そして心をつかんで離さないような――――
♪「NOW EVERYBODY MOVE, CAN YOU GET A LITTLE SOMETHIN' GOT TO DO」
♪「SO BETTER BELIEVE IN, BETTER BELIEVE IN YOURSELF」
衝撃。ただそれだけが、12人の頭の中にあった。
なんて型破りで、そして心を揺さぶる歌なのだろうか。
♪「この風ん中でお前の夢を掴め Dreamers」
「…夢を、掴む、かぁ…」
彼の歌の強いメッセージに揺さぶられ、自然と拳に力が入る。
歓声は、既に Vivid BAD SQUAD より大きい。
超えるべき壁が、現れた。
「…Next, C'mon!」
そして、彼のステージは続く。
この場は最早、彼に支配されてしまっていた。
♪「Yo, look into my evil eyez…」
To be continued
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