機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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サイレント・マジョリティ

宇宙世紀0088年。

小惑星基地アクシズ、居住区第13環境維持ブロック「アクア・ドーム」。

 

感応波拡張ネットワーク事件の解決から数日。極度の緊張から解放されたあたしたち治安維持部隊(ジャッジメント)第7支部には、イリアさんの計らいで半日の特別休暇が与えられていた。

 

「わあーい! 水だ、水だ! キャラ、見て見て、大きいね!」

 

あたし、エルピー・プルは、アクシズが誇る巨大人工ビーチに飛び込んでいた。ここは宇宙にあるとは思えないほど広い砂浜と、循環システムによる本物そっくりの波がある、あたしたちのお気に入りの場所だ。

 

「お姉様! その、選りすぐりのフリルがあしらわれた水着姿……! 眩しすぎて、私(わたくし)のバイオ・センサーが視覚情報を処理しきれませんわぁ!」

 

キャラ・スーンが、軍用とは思えないほど派手な水着を身にまとい、あたしを追いかけてくる。彼女のプレッシャーは相変わらずだけど、今日はトゲトゲした殺気じゃなくて、純粋な楽しさに満ちていた。

 

「プル、あんまり遠くまで泳ぐなよ。人工波の吸込口は危ないんだからな」

 

ビーチサイドのパラソルの下では、ジュドーが呆れたように声をかけてくる。隣にはリィナと、ようやく医務局から退院したばかりのメッチャー・ムチャの姿もあった。

 

「……ごめんな、プル。あたしが変なデバイスなんかに手を出したせいで、みんなに迷惑かけちゃって」

 

メッチャーが申し訳なさそうに頭をかく。彼はまだ少し顔色が悪いけれど、その瞳にはかつての卑屈な影はなく、ただの少年に戻っていた。

 

「いいよ、メッチャー! 元気になったら、一緒にパフェ食べるって約束したもんね!」

 

「はい、プルさん! メッチャーさんの全快祝いも含めて、特大のパフェを予約しておきました。……あ、でも、あんまり食べすぎると、午後の身体検査の数値に響きますから気をつけてくださいね」

 

通信端末越しではなく、今日はミリィ・チャイルドも砂浜に座って、膝の上に載せた情報端末でパフェの注文を確認している。彼女も今日ばかりはオペレーターではなく、ただの女の子としてあたしたちの輪の中にいた。

あたしたちは、人工の太陽の下で、追いかけっこをしたり、砂の城を作ったりして過ごした。

 

戦争のこと、強化人間のこと、アクシズの重苦しい空気……。

そんなの、全部忘れてしまいたいくらい、穏やかで幸せな時間。

 

「……ねえ、ジュドー。あたしたち、ずっとこうしていられるかな?」

 

ふと、あたしが漏らした言葉に、ジュドーは少しだけ遠い目をして宇宙(そら)の天井を見上げた。

 

「……ああ、そうだな。こんな時間が、ずっと続けばいいって思うよ」

 

夕刻。人工太陽の出力が下がり、ドーム全体がオレンジ色の黄昏に染まっていく。

 

遊び疲れたあたしたちは、イリアさんが用意してくれた軍用車両で宿舎へと戻ることになった。

 

「お姉様、今日は本当に素晴らしい一日でしたわ。私、お姉様との思い出を、バイオ・センサーの記録チップが焼き切れるほど保存いたしましたわ!」

 

キャラの騒がしい声を聞きながら、あたしは車窓から流れるアクシズの街並みを見つめていた。

けれど、その時。

あたしの脳裏に、チリリとした鋭いノイズが走った。

 

(……え?)

 

一瞬、ほんの一瞬だけ。

居住区の地下深層部、一般人が決して立ち入れない第13ラボの方向から、あたしと全く同じ波長……けれど、意思を持たない機械のような冷たい感応波の残響が聞こえた気がした。

 

「……プル? どうしたんだよ、急に黙り込んで」

 

ジュドーが心配そうに顔を覗き込む。

 

「……ううん、なんでもない。ちょっと疲れちゃっただけ」

 

あたしは笑顔で答えたけれど、胸の奥のざわつきは消えなかった。

感応波拡張事件は終わったはず。けれど、アクシズの闇は、あたしたちが知らないところで、もっと深く、もっと恐ろしい何かを育んでいる……そんな予感がした。

 

宇宙世紀0088年。

束の間の休息は、これから始まる嵐の前の、静かな静かなパーティー。

 

「……明日も、みんなと笑っていられますように」

 

あたしは、お守りのように握りしめたリボンをそっと撫でた。

 

あたし、エルピー・プル。

どんな闇が迫ってきても、あたしはみんなの手を、絶対に離さない。

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