機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0088年。
小惑星基地アクシズ、治安維持部隊(ジャッジメント)第7支部。
感応波拡張ネットワーク事件の主犯として拘束されたローレン・ナカモト。あたし、エルピー・プルは、ミリィ・チャイルドが復元した彼の秘匿データファイルを閲覧していた。
そこに記録されていたのは、冷徹な科学者の仮面の裏に隠された、あまりにも残酷な過去だった。
「……これ、ローレン先生が以前いた、地球のオーガスタ研究所の記録?」
モニターに映し出されたのは、数年前の映像。そこには、まだ被検体として扱われる前の、幼い孤児たちの笑顔があった。ローレンは彼らの教官として、温かい眼差しで勉強を教えていたんだ。
「プルさん、見てください。……彼らはニュータイプ素養を持つ孤児として集められた子供たちです。でも、地球連邦軍の上層部が求めたのは教育ではなく、即戦力となる生体CPUとしての性能でした」
ミリィの声が沈んでいる。映像は、ある暴走事故の記録へと切り替わった。
不完全なサイコミュ・システムを強制接続された子供たちが、過負荷によって次々と精神を崩壊させていく。脳波がフラットになり、ただの肉の塊のようになってしまった教え子たちを前に、ローレンは絶望に叫んでいた。
「……私のせいだ。私が彼らに、宇宙(そら)の認識能力を与えようとしたばかりに……」
連邦軍は事故を隠蔽し、子供たちの再調整を拒否して、彼らを冷凍睡眠という名の廃棄処分にした。ローレンがアクシズへ亡命し、擬似感応波拡張プログラムを開発したのは、一万人の脳を並列化することで、かつての教え子たちの意識を再起動させるための演算能力を手に入れるためだったんだ。
「……だからって、メッチャーたちを道具にしていい理由にはならないよ!」
あたしは拳を握りしめた。でも、モニターの中のローレンの泣き顔を見て、胸の奥がチリチリと痛んだ。
その時、キャラ・スーンが慌てた様子で部屋に飛び込んできた。
「お姉様! 大変ですわ! 拘束されていたローレン・ナカモトを、軍の特務部隊が連れ出しました! 彼の頭脳を強化人間最終調整に利用するつもりに違いありませんわ!」
「……行かせない。ローレン先生を、これ以上汚させない!」
あたしはミリィの誘導で、基地の最下層にある隔離区画へと急いだ。そこは、あたしが生まれた場所……クローン・プルたちの培養槽が並ぶ、冷たい施設へと繋がっていた。
薄暗い通路の先で、ローレンは軍の兵士たちに囲まれながら、力なく笑っていた。
「……プルか。君のような成功作には、私の絶望など理解できないだろう。私は、ただもう一度、彼らと笑い合いたかっただけなのだ……」
「先生、間違ってるよ! 誰かを犠牲にして取り戻した笑顔なんて、あの子たちは喜ばない!」
あたしのバイオ・センサーが、施設全体と共鳴し始める。あたしが叫んだ瞬間、格納されていたプロトタイプ・サイコミュ機器が共鳴し、兵士たちの銃を弾き飛ばした。
「……先生。あたしと一緒に、あの子たちを救う正しい方法を探そう? 逃げちゃダメだよ!」
あたしは、自分と同じ造られた存在の悲しみを背負うローレンの手を、ぎゅっと握りしめた。
宇宙世紀0088年。
大人の身勝手な野望と、過去の亡霊。
あたしたちは、その鎖を断ち切るために、この力を使わなきゃいけないんだ。
「ミリィ、記録を保存して。……いつか、あの子たちが目を覚ました時、先生が胸を張っていられるように」
あたし、エルピー・プル。
悲しい過去を繰り返さないために、あたしは明日も、このアクシズを駆け抜ける。