機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0088年。
小惑星基地アクシズ、軍事研究セクター・第4訓練場。
感応波拡張ネットワーク、通称「レベルアッパー」事件の終結に伴い、関与した全少年兵および治安維持部隊(ジャッジメント)のメンバーには、軍上層部より「感応波再固定のための特別講習(スキルチェック)」が義務付けられていた。
あたし、エルピー・プルは、頭にいくつもの電極を付けられた状態で、シミュレーターのシートに座っていた。
「プルさん、リラックスしてください。脳波の波形が乱れると、バイオ・センサーのキャリブレーションに誤差が出ます」
管制室のモニター越しに指示を出すのは、今回、軍側のオペレーターとして正式に講習の進行を任されたミリィ・チャイルドだ。
彼女はアクシズのメインフレームと直結し、あたしの脳波が発する「感応波」が、前回の暴走事件を経て変質していないかを厳密にチェックしている。
「だって、これ退屈なんだもん! 敵が出てくるわけでもないのに、ずっと数字を追いかけるなんて!」
あたしが不満を漏らすと、隣のシミュレーターからキャラ・スーンの気合の入った声が聞こえてきた。
「お姉様! これも愛の試練ですわ! 私(わたくし)のバイオ・センサーは今、お姉様への忠誠心だけで、出力120パーセントを維持しております! ほら、針が振り切れて……あら? 煙が……?」
「キャラ! 計測器を壊さないでくださいって言ったばかりでしょう!」
ミリィの叱責が飛ぶ。第7支部の日常は、訓練場でも変わらない。
けれど、今回の講習にはもっと深刻な目的があった。レベルアッパーによって脳波を無理やり拡張された少年兵たちが、その後遺症でサイコミュを制御できなくなる事態を防ぐための「精神安定化」訓練だ。
休憩時間、あたしたちは訓練場のロビーでイリア・パゾムと合流した。彼女は公式にネオ・ジオンの士官として、今回の講習の監督を務めている。
「プル、キャラ。あなたたちの能力は、一歩間違えれば、あのレベルアッパーの怪物と同じ破壊を撒き散らす。……力を持つ者は、その力を持たない者のためにどう振るうべきか、常に問い続けなさい」
イリアさんの厳しい言葉。それは、かつてオーガスタで子供たちを道具にしたローレン・ナカモトのような大人たちへの、彼女なりの怒りでもあった。
その時、訓練場の外で小さな騒動が起きた。
レベルアッパーの後遺症で、微弱なサイコミュ干渉が止まらなくなった練習生が、パニックを起こして演習用の資材を浮き上がらせてしまったんだ。
「あわわ……止まらないんだ! 僕の頭の中で、ずっとノイズが……!」
「ミリィ、誘導して! あたしが同調(シンクロ)して落ち着かせる!」
あたしは駆け寄り、練習生の肩に手を触れた。
あたしのバイオ・センサーを最低出力に絞り、波長を彼のリズムに優しく合わせる。ミリィが計算した安定化周波数を、あたしの感応波に乗せて、彼の脳内へ静かに流し込んだ。
「……大丈夫。ゆっくり、息を吐いて。あたしのリズムを見てて」
あたしの光が彼のノイズを包み込むと、浮き上がっていた資材はゆっくりと地面に降りた。練習生の瞳に、ようやく安堵の色が戻る。
宇宙世紀0088年。
戦うために与えられたこの力は、誰かを傷つけるためじゃなく、自分を見失いそうな誰かの手を握るためにある。
「プルさん、お疲れ様です。……ジャッジメントとしての特別講習、合格ですね」
ミリィの優しい声が通信機から聞こえる。
「さあ、お姉様! 講習が終われば、お待ちかねの特別配給パフェの時間ですわ!」
キャラが駆け寄り、あたしを抱きしめる。
あたし、エルピー・プル。
どんなに厳しい訓練があっても、みんなと一緒に、この力を誰かのための光に変えていくんだから!