機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
力に頼るなと大人は言う。じゃあ、その力を取り上げられたとき、あたしに何が残るのか。——今日、あたしはその答えを、自分の手で掴んだ。
宇宙世紀0088年。ニュータイプ素養の有無が生む格差は、基地の暗部に「スキルアウト」という武装集団を生んでいた。
あたし、エルピー・プルは、第7支部のハンガーで、愛機キュベレイMk-IIのコクピット・ハッチを開けて、ミリィ・チャイルドの説明を聞いていた。
「プルさん、最近のスキルアウトは、放棄された作業用プチMSを武装化してテロを行っています。さらに彼らは“キャパシティダウン”という音響妨害装置を導入しました。この特殊な低周波は、MSのバイオ・センサーを物理的に共鳴させ、パイロットに逆流した感応波を叩きつけるんです」
「……へーきだよ。そんなの、あたしがファンネルでちょちょいのちょいって」
その時、居住区の物資搬入路が占拠されたという緊急警報が鳴り響いた。
「プル、キャラ、出るわよ!相手は非能力者とはいえ重武装。油断しないで」
イリア・パゾムの号令で、あたしのキュベレイMk-IIと、キャラ・スーンのR・ジャジャがカタパルトから発進した。
現場に踏み込んだ瞬間、機体のアラートが激しく鳴り出す。
「……っ、なに、この音……頭が、割れそう!」
コクピットが嫌な振動に包まれる。バイオ・センサーが異常なノイズを拾い、サイコミュによる姿勢制御が次々ダウン。ファンネルのコンテナもロックされて開かない。
「お、お姉さま……わたくしのR・ジャジャが……愛のプレッシャーが、霧散してしまいますわぁ!」
隣を走るキャラ機も姿勢制御を失いかける。これが、能力者を無力化するキャパシティダウンの正体だ。
「ハハハ!ジャッジメントも形無しだな!モビルスーツなんて、バイオ・センサーを止めればただのデカい鉄屑だ!」
物陰から、ミサイル・ランチャー装備の作業用プチMSが数機現れる。スキルアウトの少年兵たちだ。容赦ない弾幕。
「……能力が使えなきゃ、何もできないと思ってるの?」
あたしは歯を食いしばり、コンソールを次々マニュアル・モードへ切り替えた。バイオ・センサーを物理的に遮断し、旧来の有線制御による手動操縦へ移行する。
「ミリィ、ノイズの波形から発振源を逆探知して!キャラ、バイオ・センサーは切って!肉眼とサブ・カメラだけで敵を捕捉するよ!」
「了解しました!プルさん、左前方30メートル、コンテナの影に高出力の発振源!」
ミリィの正確なナビが、あたしの目になる。あたしはキュベレイMk-IIの推進力をマニュアル・スロットルで制御し、不規則な機動で敵の射線を回避した。感応波による未来予測はできない。けれど、これまでの訓練で叩き込まれた、パイロットとしての技量がある。
「えいっ」
鋭いマニピュレーターが、発振装置をコンテナごと握りつぶす。耳障りなノイズが消えた瞬間、脳内に宇宙(そら)の静寂が戻り、バイオ・センサーが再び青白い光を放った。
「……さあ、お仕置きの時間だよ」
解放されたファンネルが、瞬時に敵のプチMSの武装だけを焼き切る。
「お見事ですお姉さまぁっ——ジャッジメントですのっ!」
「今のはギリ場面合ってる……ことにしとく」
事件解決後、夕暮れのハンガー。あたしは機体の肩部バインダーに腰掛けて、自分の掌を見つめた。
「……ミリィ。あたし、力がなくても、ちゃんと戦えたよ。……なんか、ちょっとだけ自信ついたかも」
「はい。プルさんは、サイコミュがなくても、立派なパイロットです」
——でも、あたしは知らなかった。あの日、培養槽で目覚めた妹達の中でも、いちばん最初に自我を持ったプルツーが、遠い暗がりから、あたしのこの「能力に頼らない戦い」を、じっと観測していたことを。
『……姉さんは、力を奪われても、折れない。……なぜ。わたしたちは、力がなければ、ただの、いらない部品なのに。……“姉さん”という存在の意味、解析、継続。オーバー』
そのつぶやきには、殺意よりも——羨望に、よく似た、何かが混じっていた。