機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ここは、選ばれた者の楽園じゃない。戦うことでしか存在を許されない、漂流者たちの城塞だ。
宇宙世紀0088年。中央第2庭園。スキルアウトとの小競り合いから一夜明け、あたし、エルピー・プルは珍しく非番だった。ミリィ・チャイルドを誘って、居住区のカフェテラスで山盛りのアイスクリームを突いていた。
「ねえミリィ。ミリィはどうしてジャッジメントに入ったの?ミリィの能力なら、もっと安全な研究セクターにだっていけたでしょ」
問いに、ミリィはタブレットを操作する手を止め、少し困ったように笑った。
「プルさんみたいに、モビルスーツで最前線に立てるわけじゃありませんから。……でも、私は自分の“マルチデバイス並列接続能力”……この電子戦適性が、誰かの盾になれるなら、それが一番いいと思ったんです。こういうことには、みんな消極的ですけど……私は、積極的でいたいんです」
「……あたし、時々怖くなるんだ。この力が、誰かを傷つけるためだけのものだったらどうしようって」
その時、テラスの一角で、非能力者の少年兵たちがミリィに嫌がらせをしているのが見えた。
「おい、ジャッジメント。お前らエリート様はいいよな、端末1つで何でもわかった気になれて。……俺たちの気持ちなんて、スキャンしてもわからないんだろ」
「……公共の場での威圧行為は、やめてください」
毅然と言い返すミリィの指先が、小さく震えている。あたしが立ち上がろうとした瞬間、イリア・パゾムが背後から彼らの肩を掴んだ。
「そのくらいにしなさい。彼女たちが背負っている能力の重圧も知らずに、よくそんな口が叩けるわね。……消えなさい。次は軍法会議よ」
少年たちが逃げ出したあと、イリアはあたしたちのテーブルに座った。
「プル、ミリィ。私たちがここにいるのは、誰かに認められるためじゃない。このアクシズという箱舟を、最後の1人まで生かすためよ」
重く、鋭い言葉。
「……あたし、決めた。ミリィが演算で守ってくれる世界を、あたしがこの力で、全部守ってみせる。……妹達も、その世界の“最後の1人”に、ちゃんと入れるんだから」
その言葉に、イリアが、静かにあたしを見た。そして、声を落とす。
「プル。……あなたが匿っているエゥーゴの少年のこと。気づいていないとでも?」
心臓が、止まるかと思った。イリアの、あの殺気を見抜く直感。ばれていたんだ、最初から。
「……イ、イリア、あたし——」
「今は、何も言わない。……ただ、覚えておきなさい。テレスティーナは、プル・シリーズだけじゃなく、その少年の妹——攫われた非能力者の子どもたちも、まだ演算の“燃料”として狙っている。あなたが守りたいものは、ぜんぶ、同じ場所にあるのよ」
イリアは、それだけ言うと、席を立った。……この人は、あたしの秘密を知った上で、見逃してくれている。あたしは、拳を握りしめた。
——その夜。あたしの端末に、暗号化された短いメッセージが届いた。発信元は、不明。でも、あたしにはわかった。この波長は。
『……姉さん。“妹達・ネットワーク”に、抵抗しているのは、わたし1体だけ。……でも、もう、限界。テレスティーナに、繋がれたら、わたしは、姉さんを、撃つ。……そうなる前に。姉さんが、わたしを、止めて』
プルツーの、助けを求める、最初で最後の声だった。