機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
平和な日常には、時々、技術という名の魔物が紛れ込む。それを掃除するのが、あたしたちの仕事だ。……たとえ相手が、お掃除ロボットだとしても。
宇宙世紀0088年。少年兵に与えられた短期休暇。あたし、エルピー・プルは、第7支部のハンガーでキュベレイMk-IIのバイオ・センサー調整講習という、退屈な「補習」を受けていた。
「もう、非番の日くらい、もっとパァーっと遊びたいのに!」
コクピットで愚痴をこぼすと、隣で調整中のキャラ・スーンのR・ジャジャから、通信越しに高笑いが響いた。
「あら、お姉さま。このわたくし、キャラ・スーンの愛のプレッシャーに比べれば、微細な調整など瞬きする間に終わりますわ!さあミリィさん、早くチェックを——ジャッジメントですのっ!」
「調整中に決め台詞いらないってば!」
「キャラさん、無茶を言わないでください。R・ジャジャの武装同調率はまだ60パーセントです」
管制室のミリィが溜息混じりに答えた、その時だった。
「プルさん、緊急事態です!第13資材倉庫で、自動作業用のプチMS群が暴走を開始。さらに、倉庫に保管されていた極秘素材——サイコ・フレームの試験端材を機械が取り込み、機体構造を勝手に再構成しています!」
「サイコ・フレーム?それって、人の思念を物理現象に変えるっていう……!」
背筋に冷たいものが走る。作業機たちは、アクシズに漂う兵士たちの焦燥や怒りを吸い込み、巨大な自律兵器へ姿を変えつつあるという。
「お姉さま、出撃ですわ!アクシズの平和と、わたくしたちのバカンスを守るために!」
補習を切り上げ、2機を緊急発進させる。第13資材倉庫には、サイコミュ・チップの不気味な輝きを纏い、複数の作業機が合体した巨大な塊が浮遊していた。
「なにあれ……。バイオ・センサーが、あいつの“意志のない怒り”を拾って、痛いよ」
「お姉さま、怯まないで!わたくしが正面から抑え込みますわ!」
キャラがR・ジャジャのビーム砲を斉射するが、サイコ・フレームを纏った敵は、物理法則を無視した鋭角な加速で回避する。まるで、こちらの攻撃の意志を先読みしているみたいだ。
「……そうか。あいつ、サイコミュ越しにあたしたちの殺気を感知してるんだ。だったら……」
あたしはバイオ・センサーの出力を極限まで絞り、機体の殺気を消した。バインダーをマントのように閉じ、慣性移動だけで敵の死角に潜り込む。
「ミリィ、あいつのフレームの一番もろい結合点を教えて」
「了解!左舷3時方向、接合ユニットの第4ラッチです。そこを叩けば共鳴が止まります!」
一瞬だけスロットルを叩き、ビーム・サーベルを抜き放つ。「そこっ」
光の刃が継ぎ目を断ち切ると、敵を繋ぎ止めていた光が霧散し、合体した機械たちがバラバラに崩れ落ちた。
「ふぅ……。掃除ロボット相手に、キュベレイで本気を出す羽目になるなんてね」
——でも。崩れ落ちた残骸の中で、サイコ・フレームの端材が1つだけ、まだ青白く光っていた。それは、機械の暴走じゃない。誰かが遠隔で、意図的に、サイコ・フレームの“反応実験”をしていた痕跡。
「……ミリィ。この暴走、事故じゃないよ。誰かが、アクシズを実験場にしてる」
「はい……解析しました。この実験の目的は、サイコ・フレームと、プル・シリーズの感応波を“同調”させること。……テレスティーナは、妹達を、生身の兵器じゃなく、機体そのものと融合した“怪物”に、造り替えようとしています」
あたしの掌が、冷たくなる。妹達が、機械と溶け合わされる。二度と、人間に戻れなくなる前に——あたしは、急がなきゃいけない。