機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0088年。小惑星基地アクシズ。
ネオ・ジオンの少年兵たちに与えられた短期休暇も終盤。あたし、エルピー・プルは、イリア・パゾムさんから課された「感応波再調整講習」の補習に追われていた。
「もう! なんであたしまでこんな居残り訓練しなきゃいけないのよ!」
あたしが訓練用シミュレーターのシートを蹴飛ばしていると、隣のレーンから聞き覚えのある、高飛車で激しいプレッシャーが飛んできた。
「あら、お姉様。奇遇ですわね! この私(わたくし)、キャラ・スーンも、バイオ・センサーの出力が安定しすぎて『参考データが取れない』という理由で呼び出されましたの。これも宇宙の導き、愛のデスティニーですわ!」
キャラは軍服の襟を正しながら、相変わらずのテンションで迫ってくる。どうやら彼女も、前回の事件での暴走を問題視されて、再教育プログラムに放り込まれたらしい。
「はいはい、愛のデスティニーね……。ミリィ、まだ終わらないの?」
あたしが通信機で呼びかけると、管制室のミリィ・チャイルドが困ったような声を返してきた。
「プルさん、もう少しだけ我慢してください。今、居住区のメンテナンス用自動機『メディック・クローラー』たちが、何者かのハッキングによって制御不能になっているんです。その解析にリソースを割いていて……」
「メンテナンス・ボットが暴走? そんなの、あたしがちょっとプレッシャーをかければ止まるんじゃない?」
「それが、そうもいかないんです! 暴走した機体の一群が、よりにもよって第13資材倉庫……そこにある『サイコミュ・チップの予備端材』を勝手に回収して、自分たちの装甲に取り込み始めました!」
ミリィの報告に、キャラの顔つきが変わった。
サイコミュ用デバイス。それは人の意志を物理的な圧力に変換しかねない禁忌の素材。そんなものを自動機が纏えば、ただの掃除機械が「意志なき自律兵器」に化けてしまう。
「お姉様、これは治安維持部隊(ジャッジメント)の出番ですわ! アクシズの平和と、私(わたくし)たちのパフェタイムを守るために!」
「わかってるよ! ミリィ、場所を教えて!」
あたしたちは訓練場を飛び出し、居住区の地下通路を駆け抜けた。
そこには、サイコミュ・チップの破片を無骨なアームで溶接し、青白い光を放ちながら巨大化していくメンテナンス機の姿があった。
「なにあれ、不気味……! 意志がないのに、誰かの怒りだけを吸い込んで動いてるみたい」
「お姉様、下がって! 私(わたくし)のバイオ・センサーが、あのアレな感じの輝きに共鳴してしまいますわぁ!」
キャラが興奮し、不必要なまでに高いプレッシャーを放ちながら突撃する。彼女の格闘戦は凄まじいが、サイコミュ・デバイスを纏った機械は、キャラの殺気を感知するように回避した。
「……あいつ、キャラのプレッシャーを感知して動いてるんだ! だったら、あたしが動きを止める!」
あたしはわざと感応波をゼロにまで絞り、気配を消して機械の背後に回り込んだ。
機械には感情がない。けれど、サイコミュが介在するなら、そこには「思念の淀み」が生じる。
「そこっ!」
あたしはバイオ・センサーを一点に集中させ、機械の動力源に向けて鋭いプレッシャーの針を打ち込んだ。一瞬の硬直。その隙を逃さず、キャラの強烈な回し蹴りが基幹ユニットを粉砕した。
「……ふぅ。掃除ロボット相手に、本気になっちゃったじゃない」
あたしは乱れた髪をかき上げた。
バラバラになった残骸からは、もうあの不気味な光は消えていた。
宇宙世紀0088年。
どれだけ平和な日常を装っても、ここは戦うために造られた要塞。
自動掃除機ですら、一歩間違えれば凶器に変わる場所なんだ。
「プルさん、キャラさん、制圧確認しました。補習の続きは……明日に回しましょうか」
ミリィの苦笑い混じりの通信に、あたしとキャラは顔を見合わせて笑った。
「パフェ! パフェ食べに行こう、キャラ!」
「お姉様の仰せのままに! 愛のストロベリー・ミックスを注文いたしますわ!」
あたし、エルピー・プル。
アクシズの夏休みはまだまだ終わらない。明日も明後日も、あたしは全力で遊んで、全力で戦ってやるんだから!